津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ 海外グランプリ特集

更新日 Feature on 2014年 11月 13日

By 津村 健志

 みなさん、こんにちは!

 前回の復帰第1回目に多くの反響をいただき、誠にありがとうございました。これからも誠心誠意がんばっていく所存ですので、今後ともよろしくお願いいたします!

 プロツアー『タルキール覇王譚』で「アブザン(黒緑白)」と「ジェスカイ(青白赤)」が大勝を収めてから、早1ヶ月。その間に3つのグランプリが行われ、その他にもいくつかの大型大会が幕を閉じました。

 プロツアー直後は、世界は「アブザン」と「ジェスカイ」に埋め尽くされるのではないかと危惧されていましたが、実際のメタゲームの流れは想像以上に流動的なものでした。今回はプロツアー『タルキール覇王譚』後に行われた3つのグランプリを中心に、際立った活躍を見せたデッキとメタゲームの流れを見ていきたいと思います。それでは、まずは各大会の結果をご覧ください。


グランプリ・ロサンゼルス2014」(2014年10月18〜19日)

トップ8
  • 優勝・「グルール(赤緑)・モンスターズ」
  • 準優勝・「ラブル・レッド」
  • 3位・「Boss Sligh」
  • 4位・「アブザン(黒緑白)・ミッドレンジ」
  • 5位・「アブザン(黒緑白)・アグロ」
  • 6位・「マルドゥ(赤白黒)・ミッドレンジ」
  • 7位・「アブザン(黒緑白)・アグロ」
  • 8位・「アブザン(黒緑白)・ミッドレンジ」

グランプリ・ストックホルム2014」(2014年10月25〜26日)

トップ8
  • 優勝・「ジェスカイ(青白赤)・ウィンズ」
  • 準優勝・「ティムール(青緑赤)・ミッドレンジ」
  • 3位・「アブザン(黒緑白)・ミッドレンジ」
  • 4位・「ゴルガリ(黒緑)・エンチャントレス」
  • 5位・「ラブル・レッド」
  • 6位・「ゴルガリ(黒緑)・エンチャントレス」
  • 7位・「シディシ・ウィップ」
  • 8位・「ジェスカイ(青白赤)・ウィンズ」

グランプリ・サンティアゴ2014」(2014年11月1〜2日)

トップ8
  • 優勝・「アブザン(黒緑白)・リアニメイト」
  • 準優勝・「アブザン(黒緑白)・アグロ」
  • 3位・「アブザン(黒緑白)・ミッドレンジ」
  • 4位・「Boss Sligh」
  • 5位・「シディシ・ウィップ」
  • 6位・「ティムール(青緑赤)・アグロ」
  • 7位・「ティムール(青緑赤)・アグロ」
  • 8位・「ティムール(青緑赤)・アグロ」

 相変わらず好調を維持している「アブザン」とは対照的に、「ジェスカイ・ウィンズ」の減少が印象的なこれらの結果。その代わりに台頭してきたのが、「マルドゥ(赤白黒)・ミッドレンジ」や「シディシ・シップ(黒緑青)」、そして「アブザン・リアニメイト」といった目新しいデッキの数々。まさかここまで大きくメタゲームが様変わりしようとは、一体誰が予想できたでしょう。プロツアー前とは違い、今では「アブザン」と「ジェスカイ」という明確に「倒すべきデッキ」が存在することが、この事象を生み出したのではないかと思います。ここ最近で結果を残しているデッキはどのようなアプローチをしているのか。まずは勝ち頭であるこのデッキからひも解いていきましょう。

マルドゥ・ミッドレンジ


Brad Nelson
グランプリ・ロサンゼルス2014 6位 / スタンダード

土地(25)
6 《
1 《
4 《血染めのぬかるみ
4 《遊牧民の前哨地
3 《戦場の鍛冶場
4 《凱旋の神殿
2 《コイロスの洞窟
1 《静寂の神殿

クリーチャー(15)
4 《道の探求者
4 《ゴブリンの熟練扇動者
4 《軍族の解体者
3 《風番いのロック


 現スタンダード環境において、一番の勝ち組と呼べるデッキがこの「マルドゥ・ミッドレンジ」です。「グランプリ・ロサンゼルス2014」でのトップ8を皮切りに、「MaxPoint Championship」や「Magic OnlineスタンダードPTQ」の両大会でワンツーフィニッシュを飾るなど、その快挙にはいとまがありません。『タルキール覇王譚』発売直後に、その性能の高さが話題になったものの、いまひとつ目立つことのなかった《軍族の解体者》ですが、ここにきてようやく真価を発揮できるデッキと巡り合えたようです。

 このデッキの基本戦略は、《軍族童の突発》と《ゴブリンの熟練扇動者》から生み出されるトークンを用いた数の暴力です。おそらくすでに《ゴブリンの熟練扇動者》の恐ろしさはご存じかと思いますが、《軍族童の突発》も今後要注目の1枚です。

 《軍族童の突発》には《ゴブリンの熟練扇動者》ほどの爆発力はないものの、単体除去に強いという明確な利点があり、これはとりわけ除去カードを《マグマの噴流》や《稲妻の一撃》に頼った「ジェスカイ(青白赤)・ウィンズ」に有効な戦略です。

 また、「マルドゥ」カラーを選ぶ最大の動機である《軍族の解体者》、そして《真面目な訪問者、ソリン》は、上記トークン生産カードと抜群の相性を誇ります。特に《真面目な訪問者、ソリン》の[+1]能力の威力はすさまじく、《軍族童の突発》との組み合わせはそれだけで赤系統のデッキに勝ててしまうほど。

 攻撃陣以外のカードを見てみると、《岩への繋ぎ止め》、《稲妻の一撃》、《はじける破滅》と優秀な除去が揃い踏みです。《岩への繋ぎ止め》と《はじける破滅》は、このデッキならではのチョイスと言っていいでしょう。

 《岩への繋ぎ止め》は、その性質上相当数の《》を必要とするので、デッキ構築に制限がかかってしまうという難点はあるものの、その分効果は強力そのもの。「アブザン」・「ジェスカイ」に強いだけでなく、「追放」するため《エレボスの鞭》を利用するデッキにも非常に効果的です。

 《はじける破滅》もこのデッキを象徴する1枚で、《予知するスフィンクス》のような「呪禁」持ちクリーチャーから、火力での対処が難しい《クルフィックスの狩猟者》、《包囲サイ》、《嵐の息吹のドラゴン》、《龍語りのサルカン》などなど、制限のない除去として重宝します。《はじける破滅》ならば《森の女人像》なんかも対処できますが、個人的にこのデッキと対峙した、または使用した経験から、ほとんどの場合は無視した方が良い結果に繋がりやすいと思います。緑系のデッキに対しては、短期決戦の見込みが立たない限りは、《森の女人像》を無視して《はじける破滅》は温存し、後続のデカブツを討ち取るといいでしょう。

 最後に、「マルドゥ・ミッドレンジ」はサイドボードからコントロールデッキにシフトができる点も覚えておきましょう。《道の探求者》、《軍族童の突発》、《ゴブリンの熟練扇動者》あたりのカードをサイドアウトしてしまい、全体除去と「プレインズウォーカー」、そして《骨読み》を追加すれば、あっという間にコントロールデッキの完成というわけですね。

 このデッキには《軍族の解体者》と《真面目な訪問者、ソリン》に加えて《風番いのロック》までもが控えており、ライフを回復するカードが多いため、デッキ全体の構造として「ジェスカイ・ウィンズ」に強いデッキに仕上がっています。近頃では《真面目な訪問者、ソリン》や《風番いのロック》以外にも、《エレボスの鞭》の露出が増えているので、それが「ジェスカイ・ウィンズ」の衰退に繋がっているのではないかと思います。

 そんな「ジェスカイ・ウィンズ」が目の敵にされてきた中で、「グランプリ・ロサンゼルス2014」を制したデッキは、「アブザン・ミッドレンジ」を意識したこのデッキでした。

グルール・モンスターズ


Daniel Scheid
グランプリ・ロサンゼルス2014 優勝 / スタンダード


 《ニクスの祭殿、ニクソス》を利用した爆発力、そしてそこから繰り出される《女王スズメバチ》は、どちらも「アブザン」系のデッキが苦手とするものです。さらには《起源のハイドラ》や《歓楽者ゼナゴス》のアドバンテージ、そして「アブザン」と「ジェスカイ」の両者に強い《嵐の息吹のドラゴン》など、当時のメタゲームを意識したカード選択が目を引きます。

 そういった細かなカード選択をもって見事に優勝を勝ち取ったこのデッキですが、「信心」系統のデッキの常として、安定性に難があることは懸念材料でした。また、このデッキの優勝を機に、メタゲームは「倒すべくはミッドレンジ」という確かな流れを見せていきます。

シディシ・ウィップ


Willy Edel
グランプリ・サンティアゴ2014 5位 / スタンダード

呪文(13)
3 《思考囲い
3 《英雄の破滅
3 《エレボスの鞭
4 《残忍な切断

サイドボード(15)
1 《再利用の賢者
1 《ナイレアの信奉者
3 《軽蔑的な一撃
2 《胆汁病
2 《悲哀まみれ
2 《スゥルタイの魔除け
1 《エレボスの鞭
3 《悪夢の織り手、アショク


 このデッキは《血の暴君、シディシ》と《エレボスの鞭》を軸に据えた「シディシ・ウィップ」デッキです。このデッキもまた、ここ数週間でメキメキと頭角を現してきたデッキのひとつですが、その理由としては《エレボスの鞭》が赤系統のデッキに強力であること、そして《女王スズメバチ》が「ミッドレンジ」全般に対して強いことが挙げられます。

 「ミッドレンジ」対決を制するためにはどうすべきか。世界の強豪たちがたどり着いた結論は、このデッキの活躍が示すように、「いかにして《女王スズメバチ》を悪用するか」というものでした。《女王スズメバチ》と《エレボスの鞭》の組み合わせは「ミッドレンジ」の海を泳ぎ切るための鍵であり、なおかつ《エレボスの鞭》が「絆魂」を付与してくれるため、「ジェスカイ・ウィンズ」やその他の赤いデッキに対しても強い構成になっています。

 そのような《女王スズメバチ》の台頭を受け、プレイヤーたちの意識は「いかに効率良く《女王スズメバチ》を対処するか」へと移っていきました。そこで日の目を浴びたのは、「テーロス・ブロック構築」で《太陽の勇者、エルズペス》対策としてその名を轟かせたあのカードです。

 《破滅喚起の巨人》は《女王スズメバチ》対策として優れているだけでなく、「マルドゥ・ミッドレンジ」のトークン戦略や赤系のデッキのタフネス1軍団にも強い優良カード。同形対決では、片方にだけこのカードが入っているとゲームにならないほどに強いので、今現在のメタゲームならば入れておいて損のない1枚です。

 《女王スズメバチ》の増量、そしてそれに伴う《破滅喚起の巨人》や《エレボスの鞭》などなど、ここ数週間で目まぐるしい変化を見せてきたスタンダード環境。これだけでも十分お腹いっぱいになってしまいそうなものですが、「グランプリ・サンティアゴ2014」を制したデッキは、メタゲームの停滞を良しとしない意欲作でした。

アブザン・リアニメイト


Eduardo Dos Santos Vieira
グランプリ・サンティアゴ2014 優勝 / スタンダード

呪文(10)
2 《神々との融和
2 《払拭の光
3 《エレボスの鞭
3 《残忍な切断

サイドボード(15)
4 《羊毛鬣のライオン
1 《再利用の賢者
3 《思考囲い
1 《異端の輝き
1 《停止の場
3 《悲哀まみれ
1 《完全なる終わり
1 《エレボスの鞭


 《女王スズメバチ》を最も効率良く対処できるカードは《破滅喚起の巨人》である、というのは先ほどお伝えした通りです。では《女王スズメバチ》を最も上手く活用できるカードはなんでしょうか? おそらく《エレボスの鞭》こそがその筆頭でしょうが、このリストに採用されている《テーロスの魂》も、《女王スズメバチ》と相性が良く、同カード対決を制するために大きく貢献する1枚です。

 これまではあまり露出の多くなかった《テーロスの魂》ですが、《女王スズメバチ》という最高の相方を見つけたことで、一躍スタンダードシーンのトップに躍り出ました。墓地からその能力を使用するだけでも、「先制攻撃」と「接死」の組み合わせで一方的な戦闘を演出してくれますし、仮に《テーロスの魂》が戦場に出ることがあれば、そのままゲームを掌握できるでしょう。

 この手の《エレボスの鞭》を使用したデッキは《サテュロスの道探し》や《神々との融和》で墓地を肥やしやすいので、《テーロスの魂》や《イニストラードの魂》のように、墓地に落ちてなお有効活用できるカードは理想的ですね。

 ここまで見てきたように、現スタンダードは《女王スズメバチ》と《エレボスの鞭》を軸に回っていると言っても過言ではありません。どのデッキであれ、これらのカードを無視して勝つのは難しいため、《完全なる終わり》のように無理なくエンチャントに触る手段であったり、《神々の憤怒》のような全体除去は必須だと思います。もしも自分が《女王スズメバチ》と《エレボスの鞭》を使う側であっても、《女王スズメバチ》による睨み合いを突破できる《破滅喚起の巨人》や《テーロスの魂》などは採用しておきたいですね。

 さて、「マルドゥ・ミッドレンジ」と「シディシ・ウィップ」が環境に登場したことで、5つの氏族で主だった活躍ができていないのは「ティムール(赤緑青)」のみとなりました。《凶暴な拳刃》は日の目を浴びることはないのか...と不安になっている読者の方もいらっしゃるかと思われますが、アメリカの殿堂顕彰者であるBrian Kiblerが、そんな不安を打ち消す新機軸のデッキで結果を残しています。

ティムール・アグロ


Brian Kibler
グランプリ・ロサンゼルス2014 12位 / スタンダード


 緑のデッキをこよなく愛するブライアン・キブラー。自身のTwitterで「《生命散らしのゾンビ》がスタンダードを去ったことで、再び俺の時代がやってきた!」と仰るように、ローテーション後すぐに自慢の「ティムール」デッキで結果を残しました。

 このデッキはマナ加速から《凶暴な拳刃》や《世界を喰らう者、ポルクラノス》といったマナレシオに優れたクリーチャーで攻め入り、最後は4枚採用された《火口の爪》でフィニッシュ、という動きを念頭においたデッキです。《火口の爪》は見た目以上に使い勝手の良いカードで、この手のデッキには欠かせないカードとなっています。

 また、「ジェスカイ・ウィンズ」などでも使用されることの増えてきた《灰雲のフェニックス》もメタゲームに合致したカードで、特に「マルドゥ・ミッドレンジ」の《はじける破滅》に強い点が秀逸です。

 突如として《女王スズメバチ》と《エレボスの鞭》が増えてきたため、メタゲーム的に少し苦しい立ち位置に追いやられた感は否めませんが、「さすがKibler」と世間に知らしめた素晴らしいデッキですね。もしもそういったデッキを意識するのであれば、《ティムールの魔除け》を増量してカウンター色を強めたり、《クルフィックスの狩猟者》や《神々の憤怒》を採用した「ミッドレンジ」タイプを作ってみても面白いと思います。

 まだまだ完成してから日の浅いデッキですので、「ティムール」ファンの方はそういった形もぜひご検討ください。

 本編は以上となります。総評すると、ついに出揃った5つの氏族や、「ミッドレンジ」デッキの大隆盛と、話題に事欠かなかった1ヶ月でした。個人的に大好きな「ジェスカイ・ウィンズ」に元気がないことだけ気がかりですが、「グランプリ・ストックホルム2014」では優勝を収めていますし、すぐに巻き返しを見せてくれることでしょう。

 もしも今「ジェスカイ・ウィンズ」を使用するのであれば、メインから《軽蔑的な一撃》を採用し、サイドボードにそれの追加と《消去》を用意して《エレボスの鞭》対策を増量しておくといいでしょう。また、《時を越えた探索》は今ならば4枚必須だと思います。環境に「絆魂」カードが多い関係でどうしてもゲームが長期戦になりがちなので、ロングゲームで抜群に強い《時を越えた探索》は何枚あっても困りませんからね。

 そういった意味では、「アグロ」型ではなく、このような「コントロール」型も面白いのではないかと思います。

「今週の一押し」〜「ナーセット・コントロール」


「ナーセット・コントロール」 by kogamo
スタンダード

土地(27)
3 《
3 《
2 《平地
4 《溢れかえる岸辺
4 《神秘の僧院
2 《シヴの浅瀬
4 《天啓の神殿
1 《戦場の鍛冶場
4 《凱旋の神殿

クリーチャー(3)
2 《嵐の神、ケラノス
1 《悟った達人、ナーセット


 《軽蔑的な一撃》はメインから4枚でも問題ないでしょうし、サイドボードも含めてまだまだ粗削りですが、こんなリストも一考の余地があると思います。《悟った達人、ナーセット》から、複数枚の《時を越えた探索》を唱えた時の快感は他では味わえませんよ!


 今回は以上です。今後も「ミッドレンジ」デッキの天下は続くのか、それとも「コントロール」デッキがそれを狙う食物連鎖が続くのか。いずれにせよしばらくは《女王スズメバチ》と《エレボスの鞭》を見ない日はなさそうですね。大会に参加される方は対策をお忘れなく!

 それでは、また次回の記事でお会いしましょう。

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