津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ 世界選手権2014特集

更新日 Feature on 2014年 12月 11日

By 津村 健志

 こんにちは!

 みなさん、先週の「ワールド・ウィーク」はご覧になりましたか? シャハール・シェンハー/Shahar Shenharが見事な2連覇を成し遂げた「世界選手権2014」や、「ワールド・マジック・カップ2014」でのトップデッキ《砂塵破》など、見どころ満載の週末となりましたが、僕もMagic Onlineをしながら生放送やカバレージを拝見させていただきました。一昔前に比べると、本当に良い時代になったと感動してしまいますね。個人的なツボは金子さんのサンタクロースでした(笑)

 今週は「世界選手権2014」のデッキをお届けしたいと思います。世界中から選ばれた名手たちは、一体どんなデッキ選択をしたのか。まずは24名のデッキ分布をご覧ください。

「世界選手権2014・デッキ分布」

  • 6 「シディシ・ウィップ」
  • 5 「アブザン・ミッドレンジ」
  • 1 「アブザン・リアニメイト」
  • 3 「緑黒星座」
  • 2 「青黒コントロール」
  • 2 「赤単アグロ」
  • 1 「マルドゥ・ミッドレンジ」
  • 1 「《ジェスカイの隆盛》コンボ」
  • 1 「ジェスカイ・コントロール」
  • 1 「ジェスカイ・トークン」
  • 1 「ボロス(赤白)・トークン」

 「シディシ・ウィップ」と「アブザン・ミッドレンジ」が大多数を占めた今大会。事前の予想通りに、緑系の「ミッドレンジ」系のデッキが最大勢力となったわけですが、もちろんほとんどのプレイヤーがそういった中長期戦を見越した構築を施してきていました。それでは、ここからは各デッキリストをご覧いただきながら、その工夫をひも解いていきましょう。

Shahar Shenhar - シディシ・ウィップ

世界選手権2014 優勝 / スタンダード(予選2-2 決勝2-0)
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山本 賢太郎 - シディシ・ウィップ

世界選手権2014 4位 / スタンダード(予選1-2-1 決勝0-1)
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 今大会の最多勢力となった「シディシ・ウィップ」は、予選ラウンドで6名ものプレイヤーが選択し、決勝ラウンドに2名を送り込む大活躍を見せました。《破滅喚起の巨人》と《女王スズメバチ》+《エレボスの鞭》ギミックがあることで、《女王スズメバチ》の入ったデッキに対して強いので、事前予想で最大勢力と言われていた緑絡みの「ミッドレンジ」デッキを意識したデッキ選択だと思われます。

 最近ではメインから《時を越えた探索》の入ったリスト(参考リスト:happymtg.comより)も散見されるようになりましたが、いずれのバージョンにせよ、近頃の傾向として《英雄の破滅》の枚数が増えてきている点に注目です。ミラーマッチの《悪夢の織り手、アショク》を筆頭とした各種「プレインズウォーカー」や、前回ご紹介した「青白英雄的」デッキなど、《英雄の破滅》が輝くマッチアップは増えていますし、除去カードだけは《エレボスの鞭》経由で調達できないため、上記リストのように多めに除去呪文を搭載しておけば、ゲームスピードをコントロールしやすくなるのでお勧めです。

 また、除去呪文を多用することで、《悪夢の織り手、アショク》を守りやすくなるといった副次効果もあります。実際に決勝戦でShenharが《悪夢の織り手、アショク》だけで勝利を掴み取ったゲームもありましたし、《悪夢の織り手、アショク》を採用するのであれば、なおのこと要注目のアプローチです。

 今後は同系対決や、このデッキに強いとされる「青黒コントロール」の増加が予想されるので、両マッチアップで強い《悪夢の織り手、アショク》を増やしたり、「青黒コントロール」の《危険な櫃》を壊せる《再利用の賢者》か《スゥルタイの魔除け》を採用しておくといいと思います。

 対「青黒コントロール」に関しては、《苦悶の神、ファリカ》や《イニストラードの魂》、はたまた《サグのやっかいもの》なども効果的なので、「青黒コントロール」に勝てないとお悩みの方はぜひそれらのカードの採用、増量をご検討してみてください。

Patrick Chapin - アブザン・ミッドレンジ

世界選手権2014 準優勝 / スタンダード(予選2-2 決勝1-1)
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 惜しくも決勝戦で敗れてしまったものの、堂々の準優勝で今大会をフィニッシュしたパトリック・チャピン/Patrick Chapin。今年はプロツアー『ニクスへの旅』で念願の優勝を収めていますし、彼にとって非常に充実した1年だったのではないでしょうか。

 デッキビルダーとしても名高いチャピンがこの度持ち込んだデッキは、大本命の「アブザン・ミッドレンジ」のアップデート版でした。メインボードに《オレスコスの王、ブリマーズ》を採用して序盤の攻防で出遅れないようにしていたり、《骨読み》を増量して「ミッドレンジ」や「コントロール」デッキに強くするといった工夫が見受けられます。

 メインボードは比較的バランス良く構築されている印象ですが、サイドボードには追加の《骨読み》、《リリアナ・ヴェス》、《世界を目覚めさせる者、ニッサ》や《砂塵破》などなど、「ミッドレンジ」や「コントロール」を意識したカードが盛りだくさん。「シディシ・ウィップ」デッキや《エレボスの鞭》を使ったデッキ全般に劇的に作用する《先頭に立つもの、アナフェンザ》も、今ならば非常に有効なサイドボードだと言えるでしょう。

 「アブザン・ミッドレンジ」は「シディシ・ウィップ」に次ぐ第2勢力で、5名の合計成績が13勝7敗と、今大会で一番の勝ち組となりました。プロツアー『タルキール覇王譚』で優勝してからというもの、多くのデッキがこのデッキを倒すべく中長期戦に強いアプローチを施していますが、「アブザン・ミッドレンジ」は見事にその荒波を泳ぎ切ってみせたというわけですね。

 もちろん「アブザン・ミッドレンジ」もリストが進化しているからこそ結果を残せているわけですが、その変化が最も顕著に現れているのは、ショーン・マクラーレン/Shaun McLarenさんのこのリストでしょう。

Shaun McLaren - アブザン・ミッドレンジ

世界選手権2014 / スタンダード(予選4-0)
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 ここまでに紹介させていただいたデッキだけでなく、後述するなべ君(渡辺 雄也)の「ジェスカイ・トークン」やチーム「ChannelFireBall」の「黒緑星座」など、たくさんの素晴らしいデッキが登場した今大会ですが、個人的に最も感銘を受けたリストがショーンさんの「アブザン・ミッドレンジ」でした。メインボードから採用された《骨読み》と《世界を目覚めさせる者、ニッサ》、極めつけは《砂塵破》と、このデッキには「ミッドレンジ」デッキの海を乗り切るためのエッセンスが詰まっています。

 『タルキール覇王譚』加入前の環境で猛威を振るった《骨読み》と《世界を目覚めさせる者、ニッサ》さんですが、『タルキール覇王譚』が加入してからというもの、高速ビートダウンデッキある「ジェスカイ・ウィンズ」の隆盛に押し出される形で、これらのカードは衰退の一途をたどりました。

 ただし、ここ数週間で「ジェスカイ・ウィンズ」が劇的に数を減らしてきたことで、再び活躍の機会が与えられました。憎き《カマキリの乗り手》や《ジェスカイの魔除け》が環境を支配する時代は終わりを告げたのです。そしてショーンさんはそんな環境の変化を見逃すことなく、上記カードだけでなく、定番の《思考囲い》に加え《潰瘍化》までをも採用しています。《潰瘍化》は今が旬の《血の暴君、シディシ》だけでなく、《ラクシャーサの死与え》や《羊毛鬣のライオン》を1マナで除去できる優良カード。火力の入ったデッキが多い状況では使用が躊躇われるカードですが、これも環境の変化をよく表している1枚と言えるでしょう。

 サイドボード後には大量の全体除去と「プレインズウォーカー」で「コントロール」デッキとしても振る舞えますし、このデッキは今の環境に合わせて最適化された至高のデッキリストだと思います。今後もスタンダードは「ミッドレンジ」を中心に周っていくことは間違いないので、このリストには要注目です。

渡辺 雄也 - ジェスカイ・トークン

世界選手権2014 3位 / スタンダード(予選3-0-1 決勝0-1)
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 あのパトリック・チャピンに褒められたというほどに素晴らしいデッキがなべ君の「ジェスカイ・トークンズ」。《道の探求者》、《ゴブリンの熟練扇動者》といった「ジェスカイ」でお馴染みの主力選手に、《急報》と《軍族童の突発》によるトークン戦略を加えたのがこのデッキです。

 前回紹介した「ジェスカイ・コンボ」とは違い、「無限コンボ」ギミックは搭載されていませんが、これはそれほどまでにトークンによる数の暴力、そしてそれをバックアップする《ジェスカイの隆盛》が強力だということを示唆しています。トークン戦略は《悲哀まみれ》や《神々の憤怒》を苦手としていますが、《ジェスカイの隆盛》の「+1/+1」能力さえあれば、対戦相手に全体除去を温存させる余裕など与えません。

 例えば《急報》から《ジェスカイの隆盛》と動いた場合、《ジェスカイの魔除け》か《かき立てる炎》が手札にあれば、それだけで次のターンには8点ものダメージが入ります。これを対戦相手が許容できるか否か、答えは限りなくノーに近いでしょう。つまるところ、《ジェスカイの魔除け》と《かき立てる炎》の存在もあいまって、ライフを守りたい対戦相手に、ある程度は全体除去の使用を強制することができるというわけです。

 逆に《ジェスカイの隆盛》を引かない際の脆弱さが気になるところですが、なべ君は一般的なリストに採用されている《宝船の巡航》4枚に加え、《紅蓮の達人チャンドラ》を採用して《ジェスカイの隆盛》にたどり着ける可能性を高めています。もちろん[+1]能力で、一時的にブロッカーを排除できる点も魅力的な1枚です。

 このデッキにとって唯一の懸念材料としては、トークンの天敵と言える《破滅喚起の巨人》が環境に蔓延していることでしょうか。それを見越してサイドボードには《消去》と《軽蔑的な一撃》が採用されていますし、《ジェスカイの隆盛》さえあればそれすらも乗り越えることが可能でしょうが、過剰にトークンを展開しないように気を付けたいですね。

 近頃では《包囲サイ》、《エレボスの鞭》、《真面目な訪問者、ソリン》とライフを回復するカードが環境に多く、苦戦を強いられていた「ジェスカイ・ウィンズ」ですが、この結果により完全復活と言っても差支えないでしょう。一般的な「ジェスカイ・ウィンズ」とは一味も二味も違う新機軸の「ジェスカイ」デッキを、ぜひ一度お試しください。

Reid Duke - 黒緑「星座」

世界選手権2014 / スタンダード(4-0)
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 「ミッドレンジ」対決で抜群に強いデッキがこの「緑黒星座」です。現環境を象徴する《破滅喚起の巨人》、《女王スズメバチ》、《エレボスの鞭》といったカードを、マナ加速と《開花の幻霊》でサポートするデッキです。「アブザン・リアニ」や「シディシ・ウィップ」など、《エレボスの鞭》を使用したデッキの弱点のひとつに「除去が薄い」というものがありますが、「星座」デッキの主力を務める《開花の幻霊》と《ニクスの祭殿、ニクソス》はその弱点を上手く突いたカードです。

 このデッキには《クルフィックスの狩猟者》や《破滅喚起の巨人》など、強力なエンチャント・カードが数多く含まれていますし、エンチャント・トークンを生み出す《苦悶の神、ファリカ》とも非常に相性が良いカードですね。一度生き残ってしまえば、瞬く間に爆発的なアドバンテージを生み出し、それらを《ニクスの祭殿、ニクソス》で戦場に解き放てば、悠々とゲームに勝利することができるでしょう。

 除去が少ない《エレボスの鞭》デッキにとって、《ニクスの祭殿、ニクソス》を利用した展開を阻害しづらいこともまた、このデッキを選ぶ大きな動機となっています。《開花の幻霊》によるアドバンテージ量、または《ニクスの祭殿、ニクソス》による展開力という、「ミッドレンジ」に強いふたつの軸こそが、このデッキの強さの秘訣です。

 「《エレボスの鞭》」デッキが除去呪文を増量する傾向にあることは気がかりですが、《開花の幻霊》は戦場に出た後に対処されても損をしない類のカードなので、今後も「ミッドレンジ」と「コントロール」過多の環境が続くようであれば、このデッキも有力な候補のひとつであり続けるでしょう。

Stanislav Cifka - 青黒コントロール

世界選手権2014 / スタンダード(1-3)
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 スタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifkaとイヴァン・フロック/Ivan Flochという2人のプロツアーチャンピオンが選んだのは、「ミッドレンジ」過多のフィールドにマッチした「青黒コントロール」でした。このリストの特徴的なところは、2枚に抑えられた《光輝の泉》と、サイドボードの《研磨時計》です。

 《光輝の泉》が4枚採用されているリストもよく見かけますが、が共存するこのデッキのマナベースは実にタイトです。それゆえ、《光輝の泉》は2枚、またはそれ以下の枚数が適切だと思います。「コントロール」デッキにとって序盤の遅れは致命的なので、こういったマナベースの問題は繊細かつ重要ですね。

 もうひとつの《研磨時計》は、ミラーマッチの必殺兵器。一般的には《悪夢の織り手、アショク》が採用されることが多い枠ですが、《悪夢の織り手、アショク》が《英雄の破滅》などで破壊されてしまうのに対し、《研磨時計》は《危険な櫃》くらいでしか対処されません。そしてその《危険な櫃》はミラーマッチでサイドアウトされやすいことを加味すると、《研磨時計》は一度着地さえしてしまえば、1枚でゲームを決定付けるだけの力があります。

 《悪夢の織り手、アショク》にはミラーマッチ以外にも「アブザン」系に強いという明確なメリットがあるものの、ことミラーマッチにおいては《研磨時計》の右に出るものはいません。今のメタゲームではまだこのカードを採用するには少し早いかもしれませんが、今後「青黒コントロール」が増加することがあれば、このカードを思い出してみてください。


 今週の「スタンダード・アナライズ」は以上です。やはり「ワールド・ウィーク」は最高のお祭りですね。僕自身も大変楽しませていただきましたが、来年か再来年には僕も参加できるようにがんばりたいと思います。

 さて、10月から再開させていただいた『津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ』ですが、今回が今年最後の連載となります。こうして記事を再開できたのも、連載を続けていられるのも、みなさまのおかげと深く感謝しております。来年以降も引き続き連載を継続させてもらえそうなので、今後とも何卒よろしくお願いいたします!

 それでは、少し早いですが、みなさま、良いお年を!

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