運命のデザイン

更新日 Feature on 2014年 12月 29日

By Ken Nagle

Ken Nagle was a finalist in the first Great Designer Search and joined Wizards of the Coast as a design intern. He has since gone on to work on twelve Magic expansions, including four of which he led, as well as leading the design of Archenemy and the first Commander decks.

原文はこちら

 おめでとう! あなたは『運命再編』のデザインに関する私の記事を読むことにしましたね。『運命再編』のリード・デザイナーとして、私はどんなカードを印刷するのかを決めるにあたっての選択に関する考察をお教えします。それに、印刷されなかったカード2枚と、プレビュー・カード2枚もお見せしましょう。

 『運命再編』には、深淵のるつぼとも言うべき、絡み合ったデザインとデベロップの要素があります。皆さんに自力で見つけ出してもらえるよう、触れない部分も充分に残した上で、今日はそのいくつかについてお話ししましょう。

自由意志

 自由意志は選択する能力、究極的にはあなたの運命を定める能力を与えます。そして、選択こそが『運命再編』の大きな要素です。

  • ストーリーという観点から言うと、サルカンは選択を改め、ニコル・ボーラスと戦って倒れたウギンを助けました。
  • デッキ作成という観点から言うと、『運命再編』のカードをデッキに入れるかどうかという選択があります。そして、手に入れたく、そしてデッキに入れたくなるような魅力的なマジックのカードをデザインするのがゲーム・デザイナーとしての私の仕事です。
  • ゲームプレイという観点から言うと、いつ、どうやって『運命再編』のカードを投入するかという選択があります。

ストーリー

 サルカンは『タルキール覇王譚』の時代から1280年を遡り、『運命再編』にたどり着きました。(時間旅行はプレインズウォーカーならできるというものではありませんが、《ウギンのきずな》は普通のプレインズウォーカーにとっての普通の墓所ではなかったのです。)

 私たちはこのストーリー上のポイントを、『運命再編』のプレビュー初日から可能な限り強調してきました。

 マジックの舞台設定には(そしてあらゆるストーリーには)、対立が必要です。マジックというものは、戦場に立つ強力なプレインズウォーカーのゲームなのです。『タルキール覇王譚』における対立には、次のようなものがありました。

  • 氏族と氏族の対立:迅速なマルドゥと残忍なスゥルタイ、など。
  • 氏族内の対立:次のカンとなって氏族を統べるのは誰か?
  • もちろん、カンと熊の対立もありました。最近、1頭の熊がうちのリンゴの樹から100個以上のリンゴを食べるという事件があり、これも間違いなく私との対立です。冗談じゃありませんよ。

 さておき、タルキールは 単にサルカンの出身地というだけではありません。過去である『運命再編』では、龍がいるのです! 龍には龍の一族がおり、動機があり、ブレスがあります。実のところ、『運命再編』はドラゴン・カードの開封比(ブースター・パック1つあたりのカードの枚数、あるいは「パックを開封した時の比率」のこと)がマジック史上のどのセットに比べても高くなっています。

 ここで〈嵐の憤怒、コラガン〉をご紹介しましょう。

 コラガンは疾駆能力を持っています。疾駆能力とその相互作用に関しては、「『運命再編』のメカニズム」で紹介されています。一言で言うと……コラガンは速いんです! 彼女は友好色各色 (WU, UB, BR, RG, GW)に存在する5枚のレアからなる伝説のドラゴンのサイクルのうちの1枚です。これらには、あなたがコントロールするドラゴンが攻撃したときに誘発する誘発型能力があります。自分自身でも誘発しますが、複数のドラゴンが攻撃したなら複数回誘発するのです。この5体はそれぞれ自分の群を支配している龍です。このデザインの元になったのは、『ラヴニカへの回帰』で私がデザインした《ウトヴァラのヘルカイト》でした(私はこの両方を統率者戦用のデッキに入れています)。

デッキ作成

 『運命再編』のもう一つの特徴が、『タルキール覇王譚』ブロックの構造における比類なき立ち位置です。『運命再編』に関する一番最初のデザイン上の決定は、「BAAとCCBでドラフトされる小型の第2セットである」というものでした。つまり、『運命再編』が世に出た時、ドラフトの形式は次のようになります。

  • 『運命再編』『タルキール覇王譚』『タルキール覇王譚』

 その後、『タルキール龍紀伝』が発売されると、ドラフトはこうなります。

  • 『タルキール龍紀伝』『タルキール龍紀伝』『運命再編』

 つまり、『運命再編』は文字通り「旋回軸」のセットとなるのです。『運命再編』の中には、最初のドラフトでは強くて2種類目のドラフトで弱いカードも、その逆となるカードも必要でした。『タルキール覇王譚』と『タルキール龍紀伝』はメカニズム、ドラフト上のテーマ、環境のどれもが異なった、全く違うセットです。『運命再編』は何らかの形でその違いを活かさなければなりません。

 これはデザインの裏側を語る記事ですが、プレビュー・カードは2枚しかありません。そこで、実際に印刷には到らなかったカードを使って具体的な例をお見せしましょう。一見すると出来がよくて面白く思えた、『運命再編』のプレイテスト・カードです。

〈知識の卵〉
1U
クリーチャー ― 壁
0/1
[カード名]が死亡するかまたは探査のためにあなたの墓地から追放されたとき、カードを1枚引く。

 これは『タルキール覇王譚』に大量に存在する探査カードと組み合わせてプレイすると割のいい見返りとなりますが、後半のドラフトではあまりにも無意味でした。私はこのカードを削除しました。何とかして探査関連のカードを作りたかったので、ガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verhey の助けを借りてこんなカードをデザインしました。

〈ヴァーヘイなもの〉

クリーチャー ― ナーガ
4/4
探査
あなたが[カード名]を唱えるために青か緑のカードを探査したなら、これは+1/+1カウンターが1個置かれた状態で戦場に出るとともに呪禁を持つ。

 このカードは、〈知識の卵〉が必要とするように他の探査カードを詰め込むことなく、目端の利くプレイヤーがドラフトしたりデッキを組んだりできる、探査の進化形です。これは同時に、『運命再編』のもう一つのテーマにもなっている「楔っぽい」カードでもあります。このデザインそのものは残りませんでしたが、こういった類のカードは『運命再編』に入っています!

ゲームプレイ

 サルカン・ヴォルがタルキールの運命を握っているのと同じく、プレイヤーにはタルキールのカードを使って自分自身の運命を握っていると実感してもらいたいと思います。『運命再編』には「AかBを選ぶ」から始まるモードを持つカードのサイクルが3つ存在します。選択そのものは、マジックの全てのセットに「対象を取る呪文」という形で内包されていますが、『運命再編』はそれをさらに強調した形になっています。選択肢を箇条書きにしたのです! 選択の重要性は強調されるようになりました。『タルキール覇王譚』のエディット・チームはこの箇条書きというやり方を《ティムールの魔除け》から《原初の命令》系テンプレートに到るまでに当てはめました。

 先に公開した〈命運の核心〉は、呪文サイクルの中の1枚です。

 さて、ここで〈前哨地の包囲〉をご紹介しましょう。

 レアのエンチャントからなる包囲サイクルは、氏族と龍の一族との壮大な戦いを表しています。《前哨地の包囲》は、龍王コラガン率いる音速の四翼の龍の群がマルドゥの前哨地を攻撃しているシーンを描いています。どちらも主たる色、その本質は「赤」です。

 この「モードを持つエンチャント」のサイクルでモードを選ぶ際に「カン」「龍」という選択ができるように、総合ルールに新しい表記法が追記されました。デザインの構造は、ファイルに入った時から一貫しています。

〈赤の忠誠の誓い〉

エンチャント
[カード名]が戦場に出るに際し、マルドゥか黒赤ドラゴンかを選ぶ。
マルドゥ ― あなたがコントロールするクリーチャーが1体死亡するたび、[カード名]は各対戦相手に1点のダメージを与える。
黒赤ドラゴン ― クリーチャーが1体あなたのコントロール下で戦場に出るたび、[カード名]は各対戦相手に1点のダメージを与える。

 見ての通り、本来は「どちらの赤の氏族が勝つのか」を選ぶというものでした。まだコラガンのような伝説の龍の命名もされていませんでした。さらに、この1つめの能力を強襲(や《子馬乗り部隊》や《血に染まりし勇者》などのカード)と、2つめの能力を疾駆とうまくかみ合うようにしようとしました。片方の能力は短期戦で、もう一方の能力は長期戦で強くなるようにし、このエンチャントがいつでも強烈になるようにしたのです。

 このアートのアートをよくご覧ください!

〈前哨地の包囲〉 アート:Daarken

未来の姿は

 もっともっと話したいのですが、皆さんご自身に探してもらう余地を残さなければなりません。『タルキール覇王譚』ブロックはマジック史上最後となる3セットからなるブロックです(現在の予定では)。このセットは3セットを必要とする物語の一部であり、セット内にはヒントが散りばめられています。楽しんでいただくためにも、その全てを教えてしまうことはできません。

 他にも(マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterの『運命再編』のデザインに関する記事など)選択肢のある中、この記事を読んでいただき、本当にありがとうございました。

 『運命再編』のゲーム・デザイナーに何か伝えたいことがあれば、私宛にツイートする(@NorrYtt)か、メールでお願いします。ちゃんとお伝えします。あと、私はYouTubeのチャンネルも持っています。(各リンク先は英語)

おまけ!

 『運命再編』のカードのプレイテスト名を一部お見せします。これらはメカニズム的には採用されているので、名前が何かのヒントになるかもしれません。

  1. Snicker-Snack
  2. Stinkwing
  3. Inventor
  4. Less Options
  5. Improvised Grenade
  6. Rewind Existence
  7. Sultai Reassembler
  8. Phantom Lancer
  9. Slow-Roasted Meal
  10. Protective Trench
  11. Picked for the Team
  12. Hire an Underling
  13. Fused Firecracker
  14. Steal Stats
  15. Recruit Two Ducklings
  16. Recruit a Boss
  17. Acidic Dragon
  18. Sword in the Stone
  19. Knowledge or Ignorance
  20. Jeskai Spellbender

 これらのカードは、最終的に何らかの形でこのセットに入っています。いつか、どのカードがどうなったかをお見せできるかも。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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