津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ グランプリ・セビリア2015特集

更新日 Feature on 2015年 2月 20日

By 津村 健志

 こんにちは!

 前回の記事から随分と日が空いてしまいましたが、本日から連載を再開させていただきます。この度の記事では、先週末に終了した「グランプリ・セビリア2015」を特集していきたいと思います。『運命再編』が加入して最初のスタンダードでの大型イベントということで、個人的にも大注目していました!

 まずは、トップ8に残ったデッキをご覧ください。

「グランプリ・セビリア2015」

トップ8

  • 優勝・「青黒コントロール」
  • 準優勝・「アブザン・アグロ」
  • 3位・「アブザン・アグロ/ミッドレンジ」
  • 4位・「赤緑ミッドレンジ」
  • 5位・「ジェスカイ・アグロ」
  • 6位・「緑単信心」
  • 7位・「青白英雄的」
  • 8位・「シディシ・ウィップ」

 「グランプリ・セビリア2015」を制したデッキは、『運命再編』発売前から好調を維持していた「青黒コントロール」でした。そこに「アブザン・アグロ」や「シディシ・ウィップ」といった前環境の常連組が続き、さらには「緑単信心」のような久々に日の目を浴びたデッキが名を連ねます。

 雑感としては、『運命再編』加入前と比べると、単色や2色のデッキの躍進が目立つようになり、環境が激変したという印象を受けています。『運命再編』のカードパワーは特筆に値するもので、多くのデッキが大幅に強化されました。

 僕自身はまだ十分な試合数をこなせていませんが、今のスタンダードは「青黒コントロール」、「赤白ビートダウン」、「緑単信心」、「アブザン・アグロ」の4つのデッキが抜きんでているように思います。「赤白ビートダウン」こそトップ8に残ることができませんでしたが、トップ16には2人を送り込んでいますし、これらのデッキはMagic Online上での活躍も顕著です。

 久しぶりの記事ということもあり、紹介したいデッキがたくさんありすぎて困ってしまいましたが、今回は「グランプリ・セビリア2015」で主だった活躍を見せたデッキが、『運命再編』でどのように強化されたかを中心にお届けしたいと思います。

 それでは、まずは「青黒コントロール」からご覧いただきましょう。

■「青黒コントロール」

Immanuel Gerschenson

グランプリ・セビリア2015 優勝 / スタンダード
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 新環境を制したデッキは、『運命再編』で大幅に強化された「青黒コントロール」でした。

 《命運の核心》は、このアーキタイプにとって待望の全体除去。以前は《危険な櫃》がその役割を担っていましたが、《危険な櫃》の唯一にして最大の欠点は設置から起動までのコストの重さでした。《命運の核心》ならばそのようなタイムラグはありませんし、中盤にトップデッキした際に速やかに戦場を一掃することが可能です。《危険な櫃》が減ってしまったせいで、「アーティファクト」や「エンチャント」に触りづらくなってはしまいましたが、そこはもう1枚の新戦力である《精霊龍、ウギン》が補ってくれています。

 《精霊龍、ウギン》は文句の付けようのない完璧なフィニッシャー兼全体除去として、「青黒コントロール」にこれ以上ないほどフィットしています。[+2]能力と[-X]能力の組み合わせは極悪そのもので、コントロールデッキが欲していたもの全てが1枚に凝縮されたようなカードです。《エレボスの鞭》や《前哨地の包囲》といった強力な「エンチャント」カードが氾濫する中でも、《危険な櫃》を減らすことができるのは、このカードのおかげと言って差し支えないでしょう。

 また、サイドボードにも新カードの《黄金牙、タシグル》が採用されています。

 「青黒コントロール」に対しては、多くのデッキが除去呪文をサイドアウトしてくるので、《黄金牙、タシグル》はオフェンシブサイドボードにうってつけです。墓地さえあれば1マナでキャストできるので、予想外のターンに急に手数が増える点も秀逸です。

 サイド後も《英雄の破滅》や《払拭の光》は残っているでしょうが、そういったカードを《黄金牙、タシグル》に使わせることができれば、後続の《悪夢の織り手、アショク》や《精霊龍、ウギン》が生き残りやすくなるという付加価値もあります。「青黒コントロール」を使う際には、50分という「時間制限」も気にかけなければいけないため、そういった意味でもサイドボードに《黄金牙、タシグル》を採用するのは非常に良い選択だと思います。

 ここ最近で「青黒コントロール」の活躍が目立つようになった理由としては、それら新カードの登場でデッキパワーが大幅に向上したこと、後述の「赤白ビートダウン」の隆盛の2点が挙げられます。「赤白ビートダウン」は非常に強力なデッキではありますが、4枚の《岩への繋ぎ止め》を筆頭に、「青黒コントロール」に対して無駄なカードを多く抱えています。それゆえにこのマッチアップは「青黒コントロール」が有利が付き、メインボード戦は《前哨地の包囲》が数ターンに渡って機能するくらいしか負け目がないほどです。

 続いては、その「赤白ビートダウン」をご覧ください。

■「赤白ビートダウン」

Rafael Camargo Gálvez

グランプリ・セビリア2015 トップ16 / スタンダード
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 前回の記事でも触れた「赤白ビートダウン」。『運命再編』の加入により一気に存在感を増し、今では押しも押されぬ常勝軍団の一角としてスタンダード環境を賑わせています。この度のグランプリでも、初日全勝に2人、トップ16に2人を送り込む活躍を見せてくれました。

 このデッキの強みは、手数が多く、それでいてひとつひとつのアクションが強力なことです。《岩への繋ぎ止め》+クリーチャーや、《軍族童の突発》+《かき立てる炎》のように、これほどまでに強力なカードを序盤から連打できるデッキは他にありません。

 このデッキにもたくさんの新カードが採用されていますが、このデッキの躍進を支えているカードが《前哨地の包囲》です。

 『運命再編』発売当初は、劣化版《紅蓮の達人チャンドラ》と非難されることが多かったように思えますが、実際に使ってみてその評価は一変しました。《紅蓮の達人チャンドラ》と違って戦闘で落とされることも、《英雄の破滅》で除去されることもありません。極稀にではありますが、「龍」モードを選ぶこともありますし、なんと言っても《紅蓮の達人チャンドラ》との最大の相違点は、重ね張りができることです。2枚、3枚とプレイできたのなら、長期戦に負けることはほとんどないでしょう。ただし、戦場に出たターンに何もしないという弱点はあるので、《紅蓮の達人チャンドラ》と併用するのが良いのではないかと思います。

 各デッキとの相性に関しては、前述の通り「青黒コントロール」が最悪です。相性の改善を図るためには、《前哨地の包囲》や《紅蓮の達人チャンドラ》を増量するのが手っ取り早いと思いますが、あまりに多くの枠を割いてしまうと他のデッキに弱くなってしまうので、さじ加減が難しいところ。「青黒コントロール」には《灰雲のフェニックス》も強いので、《精霊龍、ウギン》の[-X]能力で「追放」されてしまわぬように、「変異」状態のままにしておくことも念頭に置いてプレイするといいでしょう。

 その他に絶望的だと感じるマッチアップは少なかったので、「青黒コントロール」が大幅に増加しない限りは、このままのリストでも十分だと思います。なお、トップ8にはこの「赤白ビートダウン」によく似た思想を持つ「ジェスカイ・アグロ」デッキが入賞していたので、そちらもご覧いただきましょう。

■「ジェスカイ・アグロ」

Martin Juza

グランプリ・セビリア2015 5位 / スタンダード
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 Juzaが持ち込んだデッキは、先ほどの「赤白ビートダウン」に青を足したような「ジェスカイ・アグロ」デッキでした。3色になった影響で、《岩への繋ぎ止め》こそ使えなくなってしまいましたが、軽量除去は《乱撃斬》と《勇敢な姿勢》で埋め合わせをし、《宝船の巡航》や《時を越えた探索》といった、青特有のカードで長期戦に強くなっているのが特徴的です。

 《乱撃斬》は《岩への繋ぎ止め》には及ばないものの、1マナというテンポの良さが光る1枚。特に「赤白ビートダウン」に対して強力で、今後も「赤白ビートダウン」が同様の活躍を見せるようであれば、全ての赤いデッキで採用を検討すべき1枚だと思います。このデッキのようにタップインランド(占術土地や3色土地)が多めのデッキだと、なおのことその軽さが生きる展開が多いので、サイドには4枚目を検討してもいいと思います。

 もう一方の《勇敢な姿勢》は、《クルフィックスの狩猟者》や《世界を喰らう者、ポルクラノス》など、「ジェスカイ」カラーにとって比較的対処の難しかった高タフネスのクリーチャーを対処できる優良カード。とりわけ「緑単信心」に有効なカードで、「青黒コントロール」に対しても、自身のクリーチャーを守る術として役立ちます。

 また、1枚だけ採用された《アブザンの優位》もメタゲームを読み切った優秀なカードです。現環境には《岩への繋ぎ止め》、《クルフィックスの狩猟者》、《前哨地の包囲》と、上位デッキの多くが「エンチャント」を採用しているため、メインから「エンチャント」対策を施すことが正当化されています。「エンチャント」を含まない「青黒コントロール」が勢力を増してきているため、引き続きメインデッキに採用すべきかは難しいところですが、サイドボードに投入する「エンチャント」対策としては、かなり優れていると思います。

 このデッキは「赤白ビートダウン」とは違い、《宝船の巡航》や《時を越えた探索》といったカードのおかげで、「青黒コントロール」にも善戦できるようになっています。グランプリを制した影響で、「青黒コントロール」は増加すると予想されるので、「赤白ビートダウン」を使っていて「青黒コントロール」に勝てないと行き詰ってしまったしまった際には、ぜひともこの「ジェスカイ・アグロ」デッキをお試しください。

■「緑単信心」

Marcio Carvalho

グランプリ・セビリア2015 6位 / スタンダード
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 こちらも新カード満載の「緑単信心」。個人的に『運命再編』によって最も強化されたアーキタイプは、「青黒コントロール」か「緑単信心」だと思います。このデッキにも《精霊龍、ウギン》が採用されていますが、「青黒コントロール」のそれとは、また違った役割が与えられています。

 このデッキにはこれでもかと言わんばかりのマナ加速が搭載されているため、4~5ターン目に《精霊龍、ウギン》をキャストすることも夢ではありません。1枚しか採用されていませんが、《開拓地の包囲》があれば、概ねそれを実現できるでしょう。このデッキにおける《精霊龍、ウギン》の役割は、基本的には[+2]能力による盤面掌握ですが、予想以上に[-X]能力も役立ちます。《囁きの森の精霊》で「予示」したクリーチャーと、《世界を目覚めさせる者、ニッサ》でクリーチャーにした土地は色を持たないので、一方的な戦場を作り上げることも容易です。《囁きの森の精霊》もまた、このデッキを大幅に強化した1枚で、その性能の高さにはただただ驚くばかりです。

 このカードも《前哨地の包囲》と同じく、事前の予想よりもはるかに強いカードでした。「予示」能力による圧倒的な展開力もさることながら、何よりもこのデッキが最も苦手とする全体除去対策能力が重宝します。今をときめく「青黒コントロール」には《命運の核心》が搭載されているので、それに対抗できる《囁きの森の精霊》は非常に重要です。《囁きの森の精霊》はサイドボードに潜む《頭巾被りのハイドラ》とも相性が良いカードで、《頭巾被りのハイドラ》を「予示」すれば、わずか2マナで5/5クリーチャーを手に入れることができます。

 「緑単信心」デッキは、暴力的なまでの爆発力ゆえに、以前から「ミッドレンジ」系のデッキに強いデッキでした。『運命再編』後もそれは変わらず、それゆえにサイドボードは「ビートダウン」や「コントロール」デッキ対策のカードを中心に構築されています。

 《スズメバチの巣》と《ナイレアの信奉者》は「赤白」系のデッキに強く、特に前者は《ゴブリンの熟練扇動者》対策として優秀です。

 「コントロール」デッキに対しては、《頭巾被りのハイドラ》と《世界を目覚めさせる者、ニッサ》で対抗します。《世界を目覚めさせる者、ニッサ》は全体除去の返しでキャストする最高のカードなので、4枚必須と言っていいでしょう。《頭巾被りのハイドラ》は全体除去に耐性があるのは魅力的なものの、「変異」から表になるのに少しマナがかかるので、青系のデッキを意識するのであれば、《霧裂きのハイドラ》を採用してもいいと思います。

■「アブザン・アグロ」

Pierre Sommen

グランプリ・セビリア2015 準優勝 / スタンダード
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 前環境で最多勢力を誇っていた「アブザン・アグロ」。ここ最近では《エレボスの鞭》などで墓地を活用するデッキが数を減らしてきたこともあり、《先頭に立つもの、アナフェンザ》を減らして《クルフィックスの狩猟者》を採用したリストを頻繁に見かけるようになりました。こうすることでミラーマッチや「赤白ビートダウン」戦における消耗戦に強くなります。

 「アブザン・アグロ」は前環境から既に完成度が高かったデッキということで、これといって目新しいカードが採用されていませんが、いくつかのリストでは《始まりの木の管理人》、《黄金牙、タシグル》、《勇敢な姿勢》といったカードが散見されました。完成されたデッキだからこそ、解雇するカードが難しいという嬉しい悲鳴もあると思いますが、今後も新カードの行く末には要注目です。

■「シディシ・ウィップ」

Alexandre Habert

グランプリ・セビリア2015 8位 / スタンダード
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 世界選手権2014での優勝も記憶に新しい「シディシ・ウィップ」。『運命再編』からは《奔流の精霊》と《黄金牙、タシグル》といった優良クリーチャーを手に入れています。

 《奔流の精霊》は、対戦相手の《女王スズメバチ》すらも無力化する攻撃性はもちろんのこと、「探査」持ちの《黄金牙、タシグル》や、このデッキのキーカードである《エレボスの鞭》との相性も特筆に値します。

 これまでは墓地を肥やしても、それを即座に使用できるカードが《残忍な切断》しかなかったため、《神々との融和》の採用は躊躇われる傾向にありましたが、《黄金牙、タシグル》が入ったおかげで、以前よりも墓地を増やす行為が有意義になりました。そのため、これからは《神々との融和》を入れて、よりスピードに特化した形も面白いと思います。

 もとより「ビートダウン」デッキと「ミッドレンジ」系のデッキには強いデッキとして知られていますが、デッキの速度の都合で《危険な櫃》や《精霊龍、ウギン》といったカードを苦手とします。そういった意味でも、サイドボードに4枚目の《思考囲い》だったり、《軽蔑的な一撃》や《否認》といったカウンター呪文の採用を検討してみてもいいでしょう。

■今週の一押し~「《彩色マンティコア》-《魂剥ぎ》」~

Héctor Cárceles Méndez

グランプリ・セビリア2015 2日目進出 / スタンダード
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 誰もが憧れる《彩色マンティコア》と《魂剥ぎ》の組み合わせ。このグランプリ・セビリア2015で、早くもそれを実行し、2日目に進出したプレイヤーがいました。

 このデッキは《サテュロスの道探し》、《神々との融和》、《僧院の包囲》といったカードで《彩色マンティコア》を墓地に送り込み、究極の《魂剥ぎ》を完成させることを主目的としたデッキです。

 《彩色マンティコア》以外にも、《森の女人像》と《サグのやっかいもの》による「呪禁」、《苦悶の神、ファリカ》と《嵐の神、ケラノス》による「破壊不能」などなど、このデッキは《魂剥ぎ》を有効活用すべく様々なカードが詰め込まれています。そして、このデッキの秀逸な点は、それらのカードが単体でも十分に強力なことです。

 ただし、《サテュロスの道探し》、《神々との融和》、《僧院の包囲》のような、「戦場に干渉しないカード」が多めに含まれているため、ブロッカーとしての活躍が見込める《クルフィックスの狩猟者》であったり、序盤からキャストしやすい《黄金牙、タシグル》や《残忍な切断》のような「探査」カードを採用してみてもいいと思います。

 いずれにせよ、新カードの可能性もこれ以上なく披露した素晴らしいデッキですね。《彩色マンティコア》ファンのみなさんは、ぜひ一度お試しください!


 『運命再編』加入後最初の「スタンダード・アナライズ」は以上です。

 率直な感想として、『運命再編』がここまで大きな影響を与えるとは予想だにしていませんでした。《囁きの森の精霊》や《前哨地の包囲》を筆頭に、全体的にカードを過小評価してしまっていたと思います。「今週の一押し」デッキが示すように、まだまだ隠されたデッキやテクニックはたくさんあると思うので、みなさんもお気に入りのカードを使って、ぜひとも自分なりのデッキを組み上げてみてください!

 それでは、また次回の記事でお会いしましょう。

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