行弘賢のよくわかる!リミテッド講座 第4回:『タルキール龍紀伝』ドラフト 答え合わせ編

更新日 Feature on 2015年 4月 24日

By 行弘 賢

 皆さんこんにちは! 今回は前回から続いての後編ということで、『運命再編』の時と同様に「新環境リミテッド:プロツアー後の振り返り」をしていきましょう。

 まずはプロツアー『タルキール龍紀伝』を終えて、実際にどのような環境だったかを解説していきます。

1.プロツアーを終えて環境のまとめ

 前回の記事でも書きましたが、僕が感じた最初の印象がこれです。

  • 新たなキーワード能力「反復」「圧倒」「大変異」がリミテッド向きで強力
  • 赤のコモンがクリーチャー、除去ともに強く、人気色になりそう
  • 赤以外の色は、除去が弱い割にクリーチャーが強い
  • 3色以上は難しそう
  • 『運命再編』の対抗色カードが取りにくそう

 そして、その後の実際の練習過程やプロツアー本番で感じた環境の印象とファーストインプレッションの差、つまり「的中度」を点数にすると、以下のようになりました。

80点:新たなキーワード能力「反復」「圧倒」「大変異」がリミテッド向きで強力

 「圧倒」も「反復」も間違いなくただ強能力であり、特に反復にいたっては「果敢」等の呪文を唱えることでボーナスが得られるカードともシナジーするため、思った以上に強い能力でした。

 しかし「大変異」のカードは一部を除くと表向きにするコストが重く、表向きにしてもあまりサイズが変わらないカードが多く、変異というシステムが「選択肢のあるボーナス」とはいえ、予想よりも少し弱い能力だと感じました。

100点:赤のコモンがクリーチャー、除去ともに強く、人気色になりそう

 赤は8人ドラフトなら卓に4〜5人までなら許容できると思えるほどコモンが強く、事実赤は協調できるならしたほうが良い強力色でしたし、疑う余地の無い最強色であると言い切れます。

30点:赤以外の色は、除去が弱い割にクリーチャーが強い

 除去は予想通り弱かったのですが、クリーチャーについては青・黒・白はコモンのクリーチャーの線が細く、この組み合わせで組むとどうしてもクリーチャーが弱くなりがちです。除去や反復の呪文を駆使してその細いクリーチャーで攻めることになるので、赤と緑以外はクリーチャーが強いとは言えないと感じました。

70点:3色以上は難しそう

 マナベースの弱体化は確かで、基本的には2色環境になったのは間違いありません。しかし《進化する未開地》は多色土地としては優秀ですし、《シルムガルの碑》のような各種「ドラゴンの碑」などマナサポートも存在するため、保険として集めておくと3色としての受けを残すことができ、『運命再編』で出たレアなどの強力カードをタッチする2色タッチ1色の形は普通にありえますし、そうするべきケースも多々あると感じました。

30点:『運命再編』の対抗色カードが取りにくそう

 『タルキール龍紀伝』では基本的に友好色の組み合わせのピックになりやすいので、『運命再編』では対抗色のカードが取りにくいと思っていましたが、いざドラフトをやってみると、友好色の強いレアを引かない限りは友好色にこだわる必要もないと感じました。むしろ対抗色をやることで『運命再編』にて対抗色カードを取る機会に恵まれるので、狙える時は対抗色でも問題ないと思います。

 という感じで、今回の環境予想は半々といったところでしょうか。

 色の組み合わせの思い込みで決め付けていた部分で予想と違う所が多く、それが今回の反省点ですね。次回の予想の時は今回の反省を活かせたらと思います。

クリーチャーの質が重要

 また、今回予想していなかった部分もあります。それは、「クリーチャーの質が重要」という点です。この文字だけだと当たり前のことにように思えますが、普段の環境よりもさらに重要ということです。

 なぜクリーチャーの質が重要かというと、環境に軽い完全除去が少ないため、タフネスの大きなクリーチャーに対処するのが難しいからです。なので、レアをはじめとした強力なクリーチャーは普段よりも除去されにくく、いわゆる「ボムゲー」になりやすいと思います。

 また、クリーチャーの質で勝っていると他の環境以上に優位に戦闘を進めることもできます。というのも、この環境は多種多彩なコンバットトリックがあるからです。赤のコモンだけでも《火をつける怒り》、《ティムールの激闘》、と優秀な呪文があり、更に相方の色の呪文まで合わせると、ブロックする側に多大なリスクを押し付けられます。

 除去が弱くコンバットトリックが強い環境では、一度受けに回ると後手後手になってしまいます。そうなると逆転は難しいため、相手より一段階強いクリーチャーを出すことで攻めにしても受けるにしても、こちらからコンバットトリックや数少ない除去をプレイせず、相手から動かざるを得ないようにした方が優位に進めることをできます。戦闘を優位に進めること、すなわち「戦闘のイニシアチブ」を得ることこそがこの環境で一番大事なことではないかと、プロツアーまでのドラフトで感じました。

 「戦闘のイニチアチブ」についてピンとこない方もいるかと思いますので、具体例を挙げたいと思います。

「圧倒」を達成した《剣歯虎の先導隊》で攻撃し、残りライフが10しかない相手はやむなく《コロッソドンの一年仔》と《アイノクの弩弓手》でブロックした。

→ ここでパワーを+1する《火をつける怒り》をプレイし、どちらのブロック・クリーチャーも死亡させることに成功した。

 これは1マナのコンバットトリックで3マナのクリーチャーを2体除去したことになり、かなりのテンポとカードアドバンテージを得ています。

 これはかなり極端な例ですが、このように「こちらに選択肢がある状態」かつ「相手にあまり選択肢の無い状態」で攻撃できる状況をできるだけ作れるよう、「質の高いクリーチャー」を重要視するようにしたいですね。

 逆に、質の悪いクリーチャーとコンバットトリックでは《コロッソドンの一年仔》など壁となるクリーチャーを突破するのにコンバットトリックを必要としてしまうため、逆に相手のペースにひきずりこまれてしまうので、そうならないように注意しましょう。

新・環境のまとめ

 以上の点を加え、前回のファーストインプレッションと統合した環境のまとめは以下になります。

  • 新たなキーワード能力「反復」「圧倒」がリミテッド向きで強力。特に反復のカードは様々なカードとシナジーするため特に強力です。
  • 赤のコモンがクリーチャー、除去ともに強く、人気色です。
  • 赤と緑以外の色はクリーチャーの線が細いので、できるだけ赤や緑のクリーチャーを主軸に優秀な除去やコンバットトリックをピックするようにしましょう。線の細い色の組み合わせになった時はクリーチャーの質も意識しないと戦闘のイニシアチブを失いやすくなってしまいます。
  • 基本的に2色ビートダウン推奨ですが、ボムが除去されにくい環境なので3色目のマナベースカードを取って渡りをつけて、できるだけ3色目のボムをタッチできるようにしておくことを考慮しましょう。
  • 友好色や対抗色の括りを気にするより、できるだけクリーチャーの線が細くならない色の組み合わせでデッキを組むようにしましょう。

 さて、次はこの環境で実際にどのようなアーキタイプが活躍しているかを、代表カードとともに解説していきます。

2.各種注目アーキタイプ

「青黒濫用」

 青と黒は色的に「濫用」の組み合わせなので、濫用を上手く使えるデッキを組むようにしなくてはいけません。青と黒には2マナ粋に《宮殿の使い魔》、《ジェスカイの賢者》、《スゥルタイの使者》と濫用に適したクリーチャーがおり、この2色の組み合わせを肯定する根幹となります。そして、これらを濫用してアドバンテージを稼ぐのが《禿鷹エイヴン》や《グルマグの溺れさせるもの》などです。

 これらのカードが全てコモンなので、この2色の流れが良い時は自然とこの濫用システムが完成してしまい、コモンだけでかなり完成度の高いデッキとなります。さらにフィニッシャー要素のある強力レアが1〜2枚あるとそれにたどり着きやすい構成になるので、青か黒の強いレアが引けたら積極的に狙ってみても良いかもしれません。

「赤白ビートダウン」

 赤白は、赤の優秀なクリーチャーを白の優秀なコンバットトリックでサポートする形になります。特に「反復」の呪文が優秀で、《巧みな機動》や《魂の基点》は赤のパワー偏重のクリーチャーをサポートするのにはうってつけです。『運命再編』では対抗色コモンである《戦乱の閃光》を以前にも増してピックしやすくなったため、クリーチャーを多めにピックしてても最後に呪文が取れる可能性が高いのも嬉しいですね。

「白黒戦士」

 《血顎の憤怒鬼》は、攻撃時に他の戦士にブロック制限能力を付与する強力な能力を持ちます。アンコモンなのでなかなかピックできないかもしれませんが、ドラフトの序盤でピックできたら戦士デッキを目指すのもありです。

 戦士に警戒を持たせることができる《ドロモカの伝令》をはじめ、白にも戦士が多く存在するため、戦士シナジーを組み込んだデッキを組むなら白黒の組み合わせがベストだと思います。強力な除去兼フィニッシュ手段である《過酷な命の糧》も使えるのも白黒の良い点です。クリーチャーの線が細くなりがちなので、できるだけ飛行をピックし、攻め手が止まらないようにしましょう。

「緑白カウンター」

 《鱗の祝福》と《鼓舞する呼び声》はアンコモンながら、+1/+1カウンターのシナジーがなければ使いづらいカードであるために安く拾えることがあります。緑と白は+1/+1カウンターをクリーチャーに置いたり、自身がカウンターを伴って戦場に出るクリーチャーの種類が多く、上手くはまれば爆発的にアドバンテージを稼ぐことができます。この2種の呪文は思ったより安く拾えることも多いので、呪文よりクリーチャーを優先してピックするようにしましょう。

 以上、4つの注目アーキタイプの解説でした。

 他にも「赤緑圧倒」や「青白反復」は分かりやすく強いですし、「赤黒疾駆デッキ」なんかもあります。これらのアーキタイプはドラフトの回数をこなせば自然とできてしまうアーキタイプだと思いますが、今回紹介した4つは完成形を見てみないと意外とピックが難しいアーキタイプですので、今回解説をさせていただきました。

 「いつも似たようなデッキになる……。」と感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。

3.『タルキール龍紀伝』ののトップコモン&アンコモン

 前回も『タルキール龍紀伝』の各色トップ3を挙げましたが、今回はそれの改訂版です。

 前回から評価が変わってトップ3から抜けたカードと入ったカードを解説していきますので、前回の記事を読んでいない方はぜひそちらも確認していただけたらと思います。惜しくもトップ3に入らなかったものの、評価が急上昇したカードなどについても少し触れていきます。

白・アンコモン

今回のトップ3 前回のトップ3
エイヴンの陽光弾手 エイヴンの陽光弾手
ドロモカの隊長 ドロモカの隊長
偉大なる師の指令 絹包み

in偉大なる師の指令》:+2/+1修正を全体に与えるというのは4マナの仕事としては普通ですが、それが2回ともなると勝手が違います。2回目に関してはこちらのマナが立っている状態なのでより戦闘を優位に進められますし、場が五分ぐらいの時に適当にプレイしてもそれだけでかなりの痛手を与えることができる、個人的に今回一番評価が上がったアンコモンです。

out絹包み》:弱い除去ではないのですが、白のトップアンコモン3種と比べると少し見劣りしてしまいます。

白・コモン

トップ3(変更なし)
平和な心
巧みな機動
霧蹄の麒麟

 《魂の基点》は質の良いクリーチャーと相性が良く、反復のシナジーもあるので、トップ3にこそ入りませんが評価はトップ3に近いものがあります。

青・アンコモン

トップ3(変更なし)
シルムガルの魔術師
空智の教え
虚空のスコール

青・コモン

トップ3(変更なし)
神出鬼没の呪拳士
オジュタイの召喚
オジュタイの息吹

 《宮殿の使い魔》は青黒濫用では重宝するので、場合によっては《オジュタイの息吹》よりも優先するタイミングがあります。

黒・アンコモン

トップ3(変更なし)
究極の価格
ウクドのコブラ
ラクシャーサの墓呼び

黒・コモン

今回のトップ3 前回のトップ3
シルムガルの手の者 押し倒し
押し拉ぎ 押し拉ぎ
禿鷹エイヴン 禿鷹エイヴン

in

シルムガルの手の者》:黒は線が細いので接死持ちは重宝します。

out

押し倒し》:正直に言うと、前回の記事を書いた時にはインスタントと勘違いしていました。ソーサリーであるならば弱くはありませんが、トップ3とまではいきません。

赤・アンコモン

今回のトップ3 前回のトップ3
コラガンの先陣 龍詞の咆哮
焙り焼き 焙り焼き
カル・シスマのビヒモス カル・シスマのビヒモス

inコラガンの先陣》:クリーチャーの数だけパワーがあがる上に素でトランプル持ち、さらに疾駆までついており、3マナのクリーチャーとしては破格のスペックです。文句無くトップ3に入ります。

out龍詞の咆哮》:2マナ3点火力は弱くはないどころかむしろ強いのですが、赤には《龍詞の咆哮》の代わりとなる除去が複数あります。今回トップ3入りした《コラガンの先陣》となどのクリーチャーと呪文を比較して、相対的に評価を下げました。

赤・コモン

今回のトップ3 前回のトップ3
サルカンの怒り サルカンの怒り
アタルカのイフリート 双雷弾
尾の切りつけ 尾の切りつけ

inアタルカのイフリート》:3ターン目に変異でプレイ、4ターン目に表向きにして、クリーチャーを除去しながら6点!という動きは良く見られますし、このマナ域にあるまじきサイズでプレッシャーが半端無いので評価を上げました。

out

双雷弾》:軽いクリーチャーは除去する必要性が薄いことが多く、赤いデッキに必須ではないと判断し評価を下げました。

緑・アンコモン

トップ3(変更なし)
塩路補給部隊
鱗衛兵の歩哨
押し進み

緑・コモン

今回のトップ3 前回のトップ3
勇壮な対決 勇壮な対決
高楼の弓使い 龍傷負いの熊
アタルカの獣壊し アタルカの獣壊し

in高楼の弓使い》:4マナ3/4到達、さらに大変異持ちと、ハイスペッククリーチャーであることに疑いの余地はありません。

out龍傷負いの熊》:依然として強いクリーチャーであるという評価は変わりませんが、《高楼の弓使い》と比べて相対的にトップ3から抜ける形となります。

 以上各色トップ3でした。皆さんと評価が違う部分ももちろんあると思いますので、ぜひ見比べてみてください。

4.最後に

 今回の記事はこれで終わりです。『運命再編』に引き続き前編・後編とやらせていただきましたが、いかがでしたか? 感想いただけましたら今後の参考とさせていただきますので、ぜひTwitterなどでお送りください。

 次回は『マジック・オリジン』発売直前にまたお会いしましょう。それでは!

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