『タルキール龍紀伝』のデベロップ

更新日 Feature on 2015年 3月 9日

By Dave Humpherys

Dave Humpherys has been managing the development team for Magic R&D since 2010. He led development for the Avacyn Restored and Gatecrash sets. He was inducted into the Magic Pro Tour Hall of Fame in 2006.

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 まず、『タルキール龍紀伝』のデベロップ・チームの紹介から入らせてください。メンバーの入れ替えもあった大人数のチームですから、簡単に触れていきます。

トム・ラピル/Tom LaPille(共同リード)

 トムは最近、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社を離れて別のゲーム・デザインの仕事に就きました。彼は私たちとともにいた間に、『基本セット2012』『闇の隆盛』『神々の軍勢』、そしてこれから登場する『モダンマスターズ 2015年版』など多くのセットのリード・デベロッパーを務めました。彼はこのデベロップの前半、構造デベロップと呼ばれる部分のリーダーを務め、そして私にたすきを渡したのです。私がリード・デベロッパーを継いでからも彼は一人のメンバーとして、私が何か困難に突き当たったときにその経験を活かして助けてくれました。

デイブ・ハンフリー/Dave Humpherys(共同リード)

 私です。最近も、『運命再編』のリード・デベロッパーとして皆さんの前に顔を出させてもらいました。マジック開発部のデベロップ・チームをマネジメントするようになって、今年で5年目になります。『タルキール龍紀伝』で、『イニストラード』から最近12個の「ブロック」エキスパンション・セットのデベロップ・チームのうち、『ドラゴンの迷路』を除く11個に所属していることになります。私は『タルキール龍紀伝』のチーム会議の終盤、環境デベロップと呼ばれる部分でリード・デベロッパーを務め、それから最後まで変更していったのです。

ティム・アテン/Tim Aten

 ティムはマジック開発部のエディターです。私たちは彼のことを、特に強くて才能あるリミテッド・プレイヤーだと思っていますので、デベロップ・チームのうち、環境デベロップ部分においてシールドやドラフトを向上させるために彼をチームに招いたのです。クリエイティブ要素が確定して、チームの注目点がリミテッドや構築の環境へと移ったところで、チームのクリエイティブ枠に変わって彼が参入してくれました。ティムは初めてのデベロップ・チーム入りでしたが、私たちのデベロップ的な理念をうまく掴み、積極的にカードをデザインしてくれました。

コリン・カワカミ/Colin Kawakami

 コリンはアート・ディレクション担当のチームをマネジメントする、クリエイティブ・マネージャーです。コリンの役割は、私たちがこのセットで正しくクリエイティブの指定を踏まえるようにすることでした。私はコリンと同時にこのチームに所属してはいませんでしたが、彼は単純化の代弁者だったと聞いています。コリンは積極的に発言する人なので、その主張は届いていたことでしょう。

エリック・ラウアー/Erik Lauer

 エリックはマジックの主席デベロッパーです。私がデベロップ・チームのマネジメントを担当し、彼はデベロップ・チームの技術的部分を主導しています。エリックはもっとも評価の高かったいくつかのセットでリード・デベロッパーを務め、また『イニストラード』以降各ブロックの第1セットでリード・デベロッパーを務めています。エリックはこのセットの最終局面で、スタンダード環境を進化させるための新カードをデザインする上でかけがえのない助けとなりました。

ケン・ネーグル/Ken Nagle

 ケンはマジックのデザイン・チームに所属しており、最近では『運命再編』のリード・デザイナーを務めました。他にも『神々の軍勢』や『ラヴニカへの回帰』のリード・デザイナーでもあります。マジックのデザイン・チームから来ているのは彼だけなので、カードの新鮮な発想が必要になったときに選択肢となる大量のカード・デザインを作る役目を担ってくれました。

サム・スタッダード/Sam Stoddard

 サムはマジックのデベロッパーです。毎週のコラム「Latest Developments」を通して、デベロップ・チームの代弁をしてくれています。彼はデザイン・チームのメンバーでもありましたから、私たちがこのセットのデザインの展望を守っていけるようにすることが彼の役割の1つでした。サムは近いうちにお目見えする『マジック・オリジン』のリード・デベロッパーを務めています。

ゲイリー・トンプソン/Gerry Thompson

 ゲイリーは昨年の春まで6ヶ月の間、マジック開発部でデベロップ・インターンを務めていました。『タルキール龍紀伝』のチームでは私と時期が被っていませんが、このブロックのスタンダードのフューチャー・フューチャー・リーグで使うための大量の安定したデッキを彼が作ったことは確認しています。彼はウィザーズを離れて再びマジック・コミュニティに戻っていきましたが、彼がクリエイティブなコンテンツやデッキを大量に作り続けているだろうと思います。現在のスタンダード環境の品質を保つ上で、ゲイリーがここで費やした労力の影響は小さくないと考えています。『タルキール龍紀伝』では、彼の開発部での最後の仕事を目にすることができるでしょう。

龍、ドラゴン、そして龍

 『タルキール龍紀伝』最大の難関の1つが、龍をいかに扱うか、でした。大量の龍がいるべきだ、というのは誰もが同意するところです。ですが、具体的な数については活発な議論がありました。このセットに、『運命再編』に比べて1段階上の龍っぽさが必要なのは判っていました。なんといっても、このセットは龍のセットなのです! 同時に、このブロックに30種類以上いるそれぞれのドラゴンを新しくて意味のあるものにするということも難関でした。特に、それぞれのドラゴンを印象的なものにしようと思うとなおのことです。また、ドラゴンの卵やドラゴンの子供を入れたくはありませんでした。どのドラゴンもドラゴンのサブタイプに相応しい強力さを持つようにする必要があったのです。

 同時に、龍に新しい意味を持たせたいと考えていました。ドラゴンと組み合わせて使いたいと思わせるようなカードが大量に存在します。『運命再編』の《命運の核心》と比較的無難な各伝説のドラゴンのテキストは、このブロックで他のクリーチャーよりもドラゴンを使うことを考慮するべきだという理由の氷山の一角です。ドラゴンを主軸にしたデッキの足りない部分を埋めるため、『タルキール龍紀伝』の多くのカードは比較的軽くなっています。例えば〈鱗衛兵の歩哨〉はアンコモンのサイクルを作っている中の1枚ですが、少しばかり長い文章と引き替えに、デッキにさらに多くのドラゴンを入れたくなるようにしています。このサイクルの文は十分に吟味して、これに対応してドラゴンを殺されたとしても「嫌な感じ」にならないように、戦場にドラゴンが出せるまで待たなくても、手札からドラゴンを公開することができる柔軟性を持たせているのです。

 手札のドラゴンを見ましたか? もうすぐそっちを襲いますよ!

 私たちは、ドラゴンというクリーチャーを構築だけでなくリミテッドでも使いたいと思いました。そのための技法が、すべてのドラゴンを強烈にして、ドラゴンを使いたいと思う1~2人のプレイヤーまでドラゴンが流れるようにして、そして大量にドラゴンを使うプレイヤーにはメリットがあるようにしたのです。では、5~7マナ範囲のカードを大量に使いたいプレイヤーはいるのでしょうか?

 「ドラゴンをドラフト」したい人を励ますために最初に思いついた構想の1つが、大変異を持ったドラゴンのサイクルを作ることでした。こうすれば、ドラゴンをデッキの3マナ枠に入れることができます。大変異はクリーチャーを表向きにして+1/+1カウンターを載せるというものなので、それらのドラゴンは平均的なドラゴンよりもやや小さいサイズにすることができます。それでも、実際に使ったときに、実質的に4/4飛行で、何か長所となる能力があるようになるのです。大変異について私が気に入っているところの1つが、この調整によってクリーチャーを裏向きに出したいという強い動機に繋がるようになったことです。これらのドラゴン・カードは、「ドラゴンだから」と他のカードよりも優先してドラフトする人にまで回りやすいよう、パワーレベルを調整しています。

 本日のプレビュー・カードは、ドラゴンを最初に大量のマナを必要としないカードと関連づけるもう1つの方法です。私たちは、そのカード単体でも印象的で、長期戦になったらドラゴンを助けるような選択肢となるカードを作ることができました。

 〈龍を操る者〉をご覧ください。

 2マナで2/2、さらにマナを使って飛行を与えたりパワーを上昇させたりできます。これだけでもカードの始点としては充分に思えますが、さらなる長所があるのです。ゲーム中、局面が複雑になってきて、〈龍を操る者〉を安全に通すのが難しいとなったら、コントロールしているクリーチャーのパワーの合計を8以上にすればいいのです。そうなると、〈龍を操る者〉自身を強化するのではなく、マナを使ってドラゴンの軍勢を呼び出すことができます。私は基本的に多様性、そしてこのカードの感覚が好きです。《竜使いののけ者》《ドラゴンの休息地》《カルガの竜王》の様々な性質がこの1枚に集約しているのです。

龍だけの話ではなく

 これを書いている時点で、〈龍王シルムガル〉に皆さんが興奮していることが耳に届きました。私は、このカードに「プレインズウォーカー」という重要な記述を書き足すことを思いついたことに満足しています。私は直接関係ありませんが、イラストにも皆さんが興奮されているようでなによりです。プレビュー時期の反響を見ることは、この仕事の一番の楽しみの1つです。

 ドラゴンはこのセットの重要な焦点で、当然初期の注目を集めることになります。そして、セットの他の要素と引き替えに輝かせるにあたって道を誤ってしまうのはよくあることです。私のリード・デベロッパーとしての重点は、上記で例示した2つの難関への解決策を見付けることよりも、セットの他の部分をきちんと組み合わせていくことにありました。このセットに存在するドラゴン以外のカードをこのブロック全体で語ってきた物語にふさわしいようにする必要が、このセットのドラゴン以外のカードが輝ける場所を居着けて適正なマナ・コストに動かす必要が、他のデッキ・テーマを助ける必要が、あったのです。私たちはそれまでのデッキに彩りを加えるとともに、ドラゴンの前に登場してドラゴンと闘うクリーチャーを見付けたいと考えました。

〈龍を操る者〉 アート:Chris Rallis

 リミテッドでは、プレイしたいドラゴンを手に入れられなくても楽しめるサンドボックスがあるようにする必要がありました。そのため、私たちはドラゴンが強くてプレイできるものであるようにすると同時に、失望を導くようなものでないようにする必要があります。ドラゴンへの対策となるカードも充分に必要です。これは、前回の大型飛行クリーチャーのドラフト環境の『アヴァシンの帰還』の時には充分に準備できていなかったものです。

 私がこのセットのリード・デベロッパーになるまでに、全てのキーワード・メカニズムが確定していましたので、後はこれらのカードをどう実装するのがベストであるかを探すという問題でした。メカニズムを可能な限りうまく組み合わせ、果敢と反復のような楽しいシナジーを作るという問題でした。『タルキール龍紀伝』の作業を始めるまで、私は『運命再編』のリード・デベロッパーとして反対の端から関係しているだけでした。そして今、私はこのブロックの全ての要素が1つになっていくことにエキサイトしています。皆さんも楽しんでください!

 また今回も、ご清覧いただきありがとうございました。

 デイブ・ハンフリー/Dave Humpherys

( Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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