6枚のカード、6つの物語

更新日 Latest Developments on 2015年 1月 9日

By Sam Stoddard

Sam Stoddard came to Wizards of the Coast as an intern in May 2012. He is currently a game designer working on final design and development for Magic: The Gathering.

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 今回の「Latest Developments」では、プレビュー・カードはありません。しかし別の方法でセット全体を見ることができます! カードギャラリーをご覧ください。

 その代わり、今回は皆さんに『運命再編』の何枚かのカードの陰にある物語と、それらがこのセットのデベロップに影響を与えた理由や方法をお話ししたいと思います。

〈マルドゥの悲哀狩り〉

 こいつはちょっと変な奴のように見えます。彼は色々と慌ただしい奴です。それにはこんなわけがあります。デベロップに引き渡されたバージョンでは、これは実はマルドゥのカードではなくアブザンのカードで、こんな感じでした。

〈Bone Purifier/骨洗い〉

先制攻撃
[カード名]がプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、あなたはそのプレイヤーの墓地にあるカードを最大2枚まで対象とし、それらを追放してもよい。あなたはこれにより追放したカード1枚につき1点のライフを得る。
2/1

 これはアブザンがスゥルタイのような氏族にどう立ち向かっていたかという物語を伝えてくれましたが、我々が本当にスタンダードに求めているような類のカードではありませんでした。FFLのテストではスゥルタイは最強のデッキの1つでした。そして我々は『テーロス』ブロック構築で最強のデッキの1つだったリアニメイト・デッキ対策として、サイドボードかメインデッキのどちらかに適合する何らかの手段が必要だと分かっていました。ブロック構築は我々のスタンダードのための指標の1つです。

 しかし我々はこのカードを探査のプレイを妨げるだけでなく、リアニメイト対策にしたいと思いました。同時に、白黒戦士デッキを構築フォーマットで長持ちさせようと取り組んでもいました。2つの目的が組み合わさって、両方の役割を満たせるカードが出来上がりました。

〈霜歩き〉

 『タルキール覇王譚』のティムールの問題点は、青らしさがないことでした。つまり、青は存在するけども、それはこの氏族の他の色とほとんど噛み合わない色であると私は信じているのです。我々が『運命再編』でやりたかったことの1つは、よりティムールらしい青のクリーチャーをいくつか入れること、そして獰猛デッキに可能性を与えることでした。この基準の問題は、青に大きいクリーチャーが多いとはとても言えず、特にティムールが必要とした軽いものがないことでした。

 これの答えは幻影クリーチャーを作ることでした。青のカラー・パイのうちあまり使われていない一部分であり、幻影メカニズムはかなり強力なクリーチャーを作り得ます。しかし《頑固な否認》で《残忍な切断》から〈霜歩き〉を守ることができないように、「打ち消し呪文で優勢を維持して前進する」青の強さを過剰にすることはありません。

 その結果できたカードは、ヴィンテージ級のカードになり得るが、恐らくスタンダードではリスクが大きすぎることはないと我々がすぐに確認できるものでした。おそらく、これに対処しづらいデッキに対してのサイドボード・カードとして、ほぼ間違いなくプレイされるところを見かけることになるでしょう。

〈実在への書き込み〉

 当初、予示はプレイヤーにクリーチャーを表向きにすることを許していませんでした。このアイデアは、基本的に予示されたクリーチャーを2/2以上のものにはしないというものでしたが、予示されたクリーチャーが変異を持っていない限りアドバンテージを得る方法がありませんでした。これは予示されたクリーチャーが本当に変異を持っていた場合に多くの利益を得られることから、対戦相手により大きな推測ゲームをさせるという考えによるものでした。その一部として、元々の予示カードのより多くは予示させる方法がもっと狡猾なものでした――手札からのもの、教示者してくるもの、墓地からのものなどなどです。

 どこからカードを持ってきて予示できるかの選択に、デベロップはとても神経質になっていました。我々はこのメカニズムのために、十分長い間(デザインの要求に従い)『テーロス』ブロックにほとんど「明滅」効果を印刷しなかったことは分かっていました。デザインが『タルキール覇王譚』ブロックの変異のために思いついたものと組み合わせた場合、それは強すぎることになるかどうか確信が持てずにいましたが、我々は《雲隠れ》をリミテッドでのありふれたトリックにしたかったので、多くの興味深く楽しいメカニズムを潰さなければならないようにはしたくありませんでした。例えば「あなたの手札にあるクリーチャー・カード1枚を予示する」というのソーサリーを作った場合、それはモダンで「:あなたの手札から《グリセルブランド》を戦場に出す」を作ったのと同義です。これは全くもってよろしくありません。

 結局、デイブ・ハンフリー/David Humpherysが強い興味を持ったのは、予示がランダムにしすぎていることがこのメカニズムを全く機能しないようにしているのではないか、という考えでした。たとえあなたがクリーチャーを予示できたとしてもそれが変異を持っていなければならず、さらに対戦相手があなたに都合の良いやり取りをしてきた上で、攻撃に全部生き残る必要があったのです。

 代わりに、彼はどんなクリーチャーでもそのマナ・コストで表向きにできるというアイデアを提案しました。このアイデアはリミテッドをより面白くしましたが、どこからでもカードを持ってくることができ、それを表向きにできた場合より危険になりました。結果として、予示がもたらした多くの選択はなくなりましたが、〈実在への書き込み〉はそのまま残されました。このカードは楽しく、そして我々はこれが構築フォーマットに入れるに値しないのでそれほど危険ではないと考えており、クリーチャーをライブラリーの上に積み込む方法なしでこれを唱えて《雲隠れ》する頃には、おそらくあなたはかなり大きなボーナスを受けても当然になっているでしょう。

〈乱撃斬〉

 〈乱撃斬〉の前に、ビル・スターク/Bill Starkについてのお話をさせてください。中西部のマジックプレイヤーであり元カバレッジ・ライター、元開発部インターンであり、現在はプロデューサーであるビルはターボ・フォグが大好きです。愛しています。もし我々が《濃霧》が2種類あるリミテッド環境を作った場合、彼がファースト・ピックでそれらのうち1つを取って他を回そうとすることは間違いないでしょう。これはまさに彼のものです。しかしこれはリミテッドに限ったことではありません。開発部でインターンをしていたとき、彼はスタンダードでターボ・フォグを作るのが好きでした。彼が開発部にいなくなってもその遺産は生きています。ガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verheyは時々彼の弟子になり(参考:英語記事)、ビルのためにテストをしています

 ターボ・フォグの特徴は、ある興味深い点にあります。人々が対策をしていない状態であなたがトーナメントに持ち込めるようなメタゲームのある一点においては、そのイベントを総ざらいできることです。他の特徴として、はこれが頻繁に出てきてほしくないと我々が思っていることが挙げられます。「カードをいっぱい引いて、《神の怒り》して、《濃霧》する」戦略が強いためにクリーチャー・デッキがプレイできないようならば、スタンダードは全く楽しくないでしょう。我々の目標の1つは、このようなデッキに対する回答があるようにすることです。必ずしも簡単に潰せるようなものである必要はありませんが、少なくともサイドボードで使える何かを用意することで、アグレッシブなデッキが何ゲームかを取れるようにします。

 『運命再編』のテスト時に、ガヴィンはかなりよく回るターボ・フォグを考え出しました。問題は、アグレッシブなデッキがターボ・フォグを倒すために特に有効なカードを、我々がこのフォーマットの中に持っていないことでした。最近この役目を果たしていた《頭蓋割り》は数ヶ月前にローテーション落ちしてしまいました。結果として、我々は〈乱撃斬〉の獰猛能力を《濃霧》の軽減効果を妨げるように変更し、さらにこのフォーマットの《濃霧》の1つを弱体化させたのです。

〈前哨地の包囲〉

 デザインはこのセットを運命の岐路であると捉えていました。デザイン・チームは重要な決断がなされる瞬間まで時間をさかのぼるセットを作りたいと考えていました。それに加えて、デザインはプレイヤーにタルキールの運命を決定するカードを与えたいとも考えていました。「包囲」サイクル(それらは当時「誓約」と呼ばれていました)は、プレイヤーにとても現実的な方法でどちらの陣営につくか決定させることを認めるエンチャントでした。デベロップに引き継がれたときのファイルでは、〈赤の誓約〉はこうでした。

〈赤の誓約〉

[カード名]が戦場に出るに際し、マルドゥかコラガンを選ぶ。
マルドゥ:あなたのコントロールするクリーチャーが死亡するたび、クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。そのクリーチャーはそれに1点のダメージを与える。
コラガン:クリーチャー1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、プレイヤー1人かクリーチャー1体を対象とする。そのクリーチャーはそれに1点のダメージを与える。

 オリジナル・バージョンのこのカードはフレイバーにあふれていましたが、きわめて良いほどではありませんでした。これのクールなところは、各側の働きがそれらのセットのキーワードと一致していることです。マルドゥはクリーチャーが戦闘で死亡することに利益をもたらし、コラガンはクリーチャーを疾駆で出すことに利益をもたらします。しかし、トークン製造機でこれをフォローすることのつまらなさのせいで、我々がこのカードを強力とは言えないまでにコストを高くすることが必要になってしまうなら、世界中のどんなフレーバーも助けにはならないでしょう。

 我々がこのような状況でデベロップ・チームとしばしば行ったことは、数日間手を止めることでした。何人かのメンバーが、このセットに実際に関わっていない人々とこのカードの新しい能力についてブレインストーミングを行うためのミニ・チームに分かれました。「誓約」チームは最終的に現在のものとよく似たテキストを思いつき、少しフレーバーが損なわれたものの、まさしく我々が構築フォーマットに望むようなカードになりました。

〈無残な競争〉

 リミテッド環境を作れば作るほど、2色のペアが自然に行える異なった事柄と、それらのためのより楽しく興味深いカードを見つけることがより重要になってきます。『運命再編』では、『タルキール覇王譚』と同じように、黒緑2色のデッキには「タフネスに関すること」を鍵となるメカニズムを与えたいと我々は考えていました。つまり、対戦相手とクリーチャーのタフネスに基づいたやり取りをする新しい方法を見つけるということでした。『タルキール覇王譚』では、タフネスに基づいたとても大きなトークンを作り出しましたが、我々は違ったものを必要としていました。

 タフネスの高いクリーチャーと巧く働くもののひとつが格闘でした。格闘したときに実際に生き残る確率がとても高いからです。多くのタフなクリーチャー――この世界では《朽ちゆくマストドン》――が抱えていた明らかな問題は、大きなクリーチャーを実際に倒すだけのパワーを持っていないことでした。適当な2/2を倒せてもドラゴンを止められない場合、この世界の全ての格闘を行うカードはデッキの成功の助けにはなりません。他の金色カードでいくつか実験していましたが、リード・デベロッパーのデイブ・ハンフリーは最終的に彼が「スモウ・ファイト」と呼ぶ、誰が最もパワーが高いのかではなく、誰が最もタフなのかを決めるために2体のクリーチャーが殴り合うカードを考えつきました。

 当然の成り行きとして、このカードに即興でついたニックネームは「ケツ格闘」となり、そしてすぐにデベロップ・チームから多くの人気を獲得しました。ただ素敵なだけではなく、これは我々が常に探していることを成しました――あなたのドラフト戦略にピタリとハマる状況、もしくは強力なシナジーをやり遂げるデッキのパーツを作り出したのです。


 今週はここまでです。来週はさらなる『運命再編』の深みをマルチバースのいくつかから探査します。

 それではまた来週お会いしましょう。

サムより (@samstod)

(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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