時間旅行も楽じゃない

更新日 Latest Developments on 2015年 1月 30日

By Sam Stoddard

Sam Stoddard came to Wizards of the Coast as an intern in May 2012. He is currently a game designer working on final design and development for Magic: The Gathering.

原文はこちら

 今回はDailyMTG.comの時間旅行特集です。つまり過去と未来について、そして我々が最終的にそれらをどのようにしてマジックに変換したかについて、お話しする時です。

 マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterがよく言っていますが、このブロックは独特なドラフト構造に基づいています。そしてあなたは今、まさにその最終目的地たるものを経験しているのです――少なくともその一部を。現在のドラフト・フォーマットはあなたが普通の小型セットで見てきたものと違いはありませんが、デベロップの方法はそれらとは違います。これはさらに大きなものの一部としてデベロップされました。『運命再編』は『タルキール覇王譚』の過去を垣間見せるのと同じように、『タルキール龍紀伝』の過去もまた垣間見せるのです。しかしながら、これを機能させるためには多くの取り組みがありました。私は今回、それを説明しようと思います。

自らの過去から学ぶ

 我々はこのようなフォーマットをこれまでにやったことがありませんでしたが、過去に正統派ではないドラフト・フォーマットを成し遂げたことがあります――具体的には『ラヴニカへの回帰』ブロックです。そこには2つの大型セットがありましたが、3番目のセットはそれら両方とドラフトするように作られていました。

 これは大きな経験であり、私は全体的に満足していますが、一方でいくつかの欠点も存在しました。マジックの開発部は繰り返すことと自らの間違いから教訓を得るチームですが、何か新しいことを行うとき、我々ができることは最良を推測することと、最善を尽くすことだけです。我々が物事を完了して、そして人々がそれとやり取りする機会を得た後にのみ、我々は実際に何が機能して何がそうでなかったか、そして将来何を改善すればいいかを見つけ出すことができます。新しいことに挑戦し続けることは、我々にとって大事なことです――基本的に全てのブロックは新しい要素があります――が、同時に、これまでのことを踏まえることも大事なことです。結局のところ、我々は自らの過程を、現時点が最良になるように改善する取り組みを熱心に行っているのです。

 我々は毎回セットを発売するごとに、良し悪しは問わず多くのことを学び、そしてその経験から次のセットをより良いものにします。我々の『ラヴニカへの回帰』ブロックでの失敗の1つは、『ラヴニカへの回帰』と『ギルド門侵犯』のドラフトがどんなものであるかを実質的にプレイテストできていなかったことです。もしそうしていたならば、我々は2つのセット間の速度の不公平さに気づき、そして『ギルド門侵犯』を少し遅くしていたでしょう。我々が『ドラゴンの迷路』に取り組んでいたときには、『ギルド門侵犯』にできることはほとんどなく、その代わり『ドラゴンの迷路』を使って全ての問題を解決しようとしましたが、それは最終的に不十分に感じられました。私はこのドラフト・フォーマットはかなり優れていると思いますが、我々の希望通りには機能しませんでした。『ギルド門侵犯』のギルドが焦点を当てている基本的な戦略があまりにも支配的すぎました。

 『タルキール覇王譚』ブロックを見てみると、我々は同じようなリスクを抱えており、その1つは同じように解決が困難ですが、1つは我々が警戒しているものでした。目的は『タルキール覇王譚』、『運命再編』、そして『タルキール龍紀伝』をそれぞれ異なる雰囲気のセットにし、『運命再編』を『タルキール覇王譚』と一緒にプレイした場合と、『タルキール龍紀伝』とプレイした場合で異なるものにすることでした。通常のスケジュールでは、『タルキール龍紀伝』と『運命再編』のリミテッドに取り組んでいる時点では、『タルキール覇王譚』に変更を加えられず、『運命再編』もわずかしか変更できないので、『タルキール龍紀伝』の方を適応させる必要があります。大型セットを小型セットに合わせることはかなり難しい課題です。

 この課題への答えは、『タルキール龍紀伝』と『運命再編』のスケジュールを少しずらし、そして『運命再編』のリミテッドにおける複雑な立ち位置の、より良い取り扱い方法を考え出すことでした。

時間の衝突

 ここはセットのデベロップで最も楽しく興味深い部分の1つ――スケジュールの作成です! そうです、すごくエキサイティングなものではありませんが、たとえありふれたスケジュールであっても仕事の重要な部分です。実際にそれを仕上げる時期までに、実際にその仕事を仕上げるために必要な時間を正確に確保することは、必要不可欠なのです。

時を越えた探索》 アート:Ryan Yee

 我々は概ね3か月ごとにセットを発売しますが、セットに取り組む時間は3か月よりもずっと長くかかります――デザインとデベロップだけを見ても、だいたい2年はかかっています。先行デザインを加えればさらに時間が増えます。そしてこれら全ての仕事は、そのセットがお店の棚に並ぶ8ヶ月前に完了します。小型セットはもう少し短くなりますが、我々は大型セットのデザインが始まってデベロップに引き渡されるまで待ちます。ここでの問題は、我々は『運命再編』を『タルキール覇王譚』や『タルキール龍紀伝』から切り離してデザインできなかったことが原因でした――我々は『運命再編』を必要とされる形にできるように、全てのセットのスケジュールをずらす必要がありました。

 我々はこのブロックに、他の2つのセットと組み合わせてうまくプレイできる小型セットを必要としていましたが、それはその2つのセットの満足行く中間を見つけるだけでは不可能だったので、事態は『ラヴニカへの回帰』よりも複雑でした。異なるプレイ感覚を必要としていたのです。大型セットは約1年かけてデザインされます。すなわち『タルキール龍紀伝』のデザインは『タルキール覇王譚』のデベロップが始まるかなり前、そして『運命再編』のデザインが始まるはるか前に始まるということです。

 最終的な答えは、『運命再編』のデベロップの大部分で『タルキール覇王譚』を使ってリミテッドのプレイテストを行い、そして同時に、現実世界では実際に行われなくても『タルキール龍紀伝』3つを使ったドラフトをすることでした。一度『タルキール龍紀伝』がいいところまで行ってから、『運命再編』と『タルキール龍紀伝』とのドラフトが始まるまで数か月の間が置かれました。しばらく調整する時間が置かれた後、『タルキール龍紀伝』のデベロップがリミテッドのプレイテストに『運命再編』1パックを加えて再開されました。

 こうすることでいくつかの問題が自然に目に付きます――『タルキール龍紀伝』の大部分が『タルキール覇王譚』で行ったカードやマナ・コストを避けようとしたことによって、『運命再編』が同じような働きをしていたのに気づいただけでなく、『タルキール龍紀伝』と『運命再編』のカードをお互い別々にするために多くの変更が必要になりました。これはかなりややこしい事態を引き起こしましたが、タイトルにあるように、時間旅行は楽じゃないのです。しかし、新しいものに挑戦し、開発部全体が試行錯誤を通して成長するために、このような大きなリスクを負う価値があることもあります。

未来からの借り物

 『タルキール覇王譚』ブロックは時間旅行の物語です。『タルキール覇王譚』3つ、『運命再編』1つと『タルキール覇王譚』2つ、『タルキール龍紀伝』2つと『運命再編』1つのドラフト方式はマーク・ローズウォーターの基本アイデアでしたが、それをやり遂げることは、ただセットを作りそれが機能するかどうかを見ることでは済みませんでした。我々は組み合わせてプレイされることのない2つのセットから要素をくみ取り、それらを組み合わせて第3のセットを作りました。ある意味では、『運命再編』は『タルキール龍紀伝』から『タルキール覇王譚』と同じぐらい借り物をしているのです。ちょうど半分ではないでしょうが、かなりの数になります。ほのめかされているクールな「過去のバージョン」のカードはすべて、『タルキール覇王譚』で関連したものがあったのでしょうか? いいえ、『タルキール龍紀伝』から来ているものも多くあります――あなたはまだそれを知らないだけなのです。1つ言えることは、2つのメカニズム――鼓舞疾駆――が『タルキール龍紀伝』にあるということです。

 このブロックの最初期のプランは3つのセット全てに全く異なるメカニズムを持たせるというもので、『運命再編』はいくつかのメカニズムの「プロトタイプ」がありました。このプランは最終的に2つの理由によって没となりました――1つ、このブロックで使うキーワード能力が多くなりすぎること、2つ、「クールじゃないバージョンのこのメカニズムをお見せしましょう!」という狙いの楽しいメカニズムを作るのは相当難しいこと、です。その代わりに下された決定は、『タルキール龍紀伝』のメカニズムをいくつか取り上げるというものでした。このことは我々に時間旅行のギャグを見せることを可能にしましたが、「原始のスープ」的なものとは対照的な「別の時間線で変化した物事」的なものになりました。全体的に私はこの決定にとても満足しており、プレイヤーにとっても同じようにより良いものだと考えています。

苦しめる声》 アート:Volkan Baga

 最終的には、多くの個別のデザインが『タルキール龍紀伝』から『運命再編』のファイルへとやってきました――しかしながら私は、それらのうちどれだけが『運命再編』のリード・デザイナーのケン・ネーグル/Ken Nagleが実際に『タルキール龍紀伝』をテンプレートとして使った結果なのか、そしてどれだけがただ単に『タルキール龍紀伝』デザイン・チームとの並行進化なのかは分かりません。これは興味深い過程によって作られ、そして『運命再編』は結果的に、おそらくあなたが今までの小型セットで見たことのないような独特な雰囲気になっています。私は数ヶ月後に、『タルキール龍紀伝』や変化した時間線をプレイするいくつかの方法をご紹介するのを楽しみにしています。

 しかし、それはまだ先のことです。来週はスゥルタイ特集ということで、歴史を振り返って様々な墓地戦略についてお話ししようと思います。

 それではまた来週お会いしましょう。

 サムより (@samstod)

(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)

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