目覚めよ世界(ワールドウェイク)

更新日 Making Magic on 2015年 4月 20日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

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 諸君、ワールドウェイクのプレリリースはお楽しみいただけただろうか。ついに発売になったワールドウェイク、すべてのカードについての情報を開示できるときがやってきたのだ。このセットを通して見ながら、頭に思い浮かんだデザイン話をつらつらとお話ししていこうと思う。それでは早速、このカードから始めよう。

 一見すると、これは基本的な効果をちょっと弄っただけに見えるかもしれない。バウンス(○○1つを対象とし、それをオーナーの手札に戻す)呪文は各セットに複数入っていて、そのうちで少なくとも1つはコモンにあるものである。もちろん、ブロックのキーワードを使うものもあるが、すべてのカードがそうだというわけではない。年に何回も、我々は単純なひねりを加える必要が出てくる。基本的な論理がいずれ使い切られてしまいそうな印象もあるが、常々我々は新しい単純なひねりを探し続けている。そして、《上天の貿易風》のようなカードを作ることに成功したら幸せを感じるのだ。これは単純にして未踏のものだ。びっくり箱の中に収まりきらないようなアイデアを練るのも楽しいが、こういったシンプル極まりないアイデアを新発見したときこそ私の中のデザイナー魂が至福を感じるものなのだ。

 ゼンディカーにはタップ状態で戦場に出るカードがたくさん存在した。となれば、その効果を無効化するカードが作りたくなるのが情というものだ。最初の案では、「あなたのパーマネントはアンタップ状態で場に出る」と書かれている1マナのクリーチャーだった。これには2つの問題があった。まず、まるでゲームのルールの覚え書きのように見えてしまい、ファイルの上に「そしてあなたのすべてのクリーチャーは召喚酔いの影響を受ける」という落書きが増えていたほどだったのだ。

 2つめの問題は、ルール上の問題だった。詳しいことは忘れた(ゴットリーブがルールについて口うるさく言ってくるとき、大体私はルールを変えるべきだと思って聞き流すから)。結局、パーマネントをアンタップするのを戦場に出たときの誘発型能力にすれば問題ない、と同意してくれた。

 ワールドウェイクのリード・デザイナーを務めたケン・ネーグルはその私の小品を気に入ってくれたが、その能力はすべての色にあるべきだと感じ、色々と調整を始めた。まず、この能力を持った土地を作ってみた。タップして{1}を出すことができ、戦場に出る(ので、自分で自分をアンタップできる)。これは開発部のメンバーにとっても混乱を招くモノだった。土地バージョンは「バカ負け」というヤツだった。ケンが次に作ってみたのは1マナのアーティファクトだった。――それが、これだ。

 絆魂と接死にはシナジーは存在しないが、片方は「魂」でもう一方には「死」があるのだから組み合わせるとイメージがいい(《吸血鬼の夜鷲》のパワーレベルによってこの流れが変わることはないだろうね)。ああ、「二段攻撃」を「即死攻撃」とかにしとけばよかったかもしれないね。

 このカードが最初に提示されたとき、私はデザイン上の間違いだと思っていた《寄付》を思い出していた。他の開発部のメンバーはこのカードを気に入り、問題はないと判断していた。このカードを見たときにおかしな事が起こるんじゃないかと心配していた、ということだけ記しておくよ。

 2002年5月27日、トークン特集で書いた「私の愛したトークン」と題した記事の中で、トークンに関するルールをいくつか説明した。その中に、こんなルールがあった。

 2種類以上のトークンを作り出すカードを作らない。カードが2/2のトークン・クリーチャーを作るなら、そのカードが作れるトークンはそれだけだ。こうした理由は、混乱を避けるためである。ジャッジメントのデザインにおいて、「クリーチャー放射」という、1/1のリスと2/2の熊と3/3の象を生成するフラッシュバック呪文をデザインした。しかし、プレイテスト中に、プレイヤーはどのトークンがどれだかわからなくなってしまい、このカードはスクラップになったのだ。

 クリーチャー放射は、実際にはジャッジメントよりもかなり前にデザインされていた。このカードは《火炎放射》(カード名のパクり元だ)の直後にデザインされたわけだから、テンペストからウルザ・ブロックのどこかだろう。(《大使の樫》になった)「ムースとリス」の話でもしたとおり、私はずっと複数のクリーチャーを出すカードを作りたいと思っていたのだ。

 複数のクリーチャーでなくても、トークン・クリーチャーは大好きだ。おそらく開発部でも私以上にトークン好きなメンバーはいないだろう。トークン作成は、「マロのデザインで可能な限り増えるヤツ」としてまとめられているものの一つなのだ。私が関わったブロックのほとんどでは、強いトークンのサブテーマが存在していることにも気づけるだろう。

 さて、《獣性の脅威》。8年前に言った基本的なルールをここで破ることが出来た理由は何なのか。その答えは1つだけではない。

#1. トークン・カードがブースター・パックに入るようになり、トークン・クリーチャーとしてそれを使うことができるようになった。これによって、8年前にあった混乱は幾分軽減されている。

#2 ルールは破るものだ。しばしば、我々はそれまでしなかったことをすることでプレイヤーの想像を超えた刺激を与えてきた。もちろん、ルールを破るのには理由がある。例外を作ることに価値があると感じたときにのみ、ルールを破るのだ。このカードにおける理由は? なぜ今《獣性の脅威》を作ったのか? 正直なところ、それは分からない。ブロック内の他のカードとのコンボがよさげだった、開発部のメンバーが入れ替わり、前の議論の時にはいなかったメンバーが面白いと判断してGOを出した、そう、このカードは面白いと信じて、我々はルールを破ったのだ。

最後に:私の長年暖めてきたカードは、私がリーダーを務めていないセットで世に出ることが多い。《獣性の脅威》がファイルに入れられたのも私の手によってではなく、このカードを、これまで7年間私がチャンスを見計らっていたことを知らずにデザインしたケリー・ディグスの手によってだった(マジックのデザインにおいてこういう偶然はよくあることだ)。私はファイルを見てケリーが「クリーチャー放射」をセットに入れようとしたと思ったのだが、ケリーはその話を知りすらしなかったのだ。

 入れ替えカメだ。このカードは私の想像以上の遍歴を経てリリースに至ったという。しばしば、私は記事の中でリリースされていないカードについて触れることがあるけれども、このカードの反響は予想以上だった。そうなってしまうと不安なのは、はたしてこのカードがその期待に応えてくれるのかどうかということである。

 このカードのどこが私をくすぐるのかといえば、まずは名前だ。私は何年にも渡る経験から、評判のいいプレイテスト名の傾向を理解している。《方解石のカミツキガメ》の名前の由来は、デザイン名だった。デザインから生まれ、デベロップで抹消され、多元宇宙(マジックのデータベース)のくずになる代わりに次のセットに移動したのだ。

 もう一つの理由は、パワーとタフネスを入れ替えるという私のお気に入りのカードだと言うことだ。他の開発部のメンバーの中には、これを好むモノはほとんどいない。誰かがセットに入れると、多元宇宙でつけられるコメントはいつでも「マロ用」だ。

 《方解石のカミツキガメ》は最初、{2}{U}で1/4の、上陸でパワーとタフネスを入れ替えるというものだった。パワーとタフネスを入れ替えるということに関する最大の問題点は、他のパワー・タフネス変更効果との関連で混乱を招くんじゃないかということだった。それを防ぎ、このカードを強化するために、マイク・チュリアン(ワールドウェイクのデベロップ・チームのリーダー)が被覆をつけ(そしてコストを{1}{U}{U}に引き上げ)た。このシンプルな変更を経て、入れ替えカメは安住の地を得、カメとして印刷に至ったのだった。

 ああ、《方解石のカミツキガメ》がこれからも愛されんことを。

 このカードはもともとゼンディカーのデザインに存在しており、ゼンディカーのデザインとして手渡されたものだ。カードが気に入らなかったわけではないにも関わらずデベロップによって削除され、ワールドウェイクで再び投入されることになった。第2セット、第3セットの役目の1つには、前のセットで落とし穴に引っかかってしまったいいカードをすくい上げることもあるのだ。

 私は、銀枠世界から「真の」マジックこと黒枠世界への移行組のカードを数えている。《彗星の嵐》によって、その数は1増えることになった。諸君は《 The Ultimate Nightmare of Wizards of the Coast® Customer Service》というカードを覚えているだろうか?

 ルールに詳しい読者は、それは同一ではないと主張するだろうが、しかしほぼ同じと言っていい。少なくとも私にとっては同じようなモノだ。

 無色のエルドラージ呪文? なんだそれ?

 このカードは、開発部がこういう兆候を見せることを好むが故に存在している。もちろん、私も大好きだ。《スパイクの徒食者》をテンペストに入れてみたり、 カルドラ・サイクルをミラディン・ブロックにばらけさせてみたり(もちろん、ミラディンのデザイン・チーム全体でやったことだ)。

 このカードの意味は? 内緒だ。でもまあ、いずれ来るセットで明らかになることだろうとだけ答えておこう。

 長い期間にわたり、このカードの「戦場に出たとき」の能力は「プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーのライブラリーの上から3枚をそのプレイヤーの墓地に置く」だった。私はその能力がお気に入りで、《面晶体のカニ》と組み合わせて使っていたものだ。だが、不幸にして、その能力はデベロップの途中で消されてしまった。強すぎたんだ。デベロップが石臼能力を消すことは滅多にないことなので、そうするにはそれなりの理由があるものだ。

 プレインズウォーカーに4つ能力を持たせようと考えたのはいつだったかというと、ほとんどのプレインズウォーカーが3つの能力を持っている、と気づいたときだ。最初にプレインズウォーカーのカードの枠を試したとき、4つの能力を持つプレインズウォーカー用のものも作ってもらっていた。いつか必要になることは間違いないだろうし、そのときに同系のレイアウトが使えるようにしたかったのだ。

 最大の障害は、4つにすることではなく、4つにしないことだった。そこにはデザインの問題があった。プレインズウォーカーは我々も、そして諸君もみんなが大好きだ。我々の物語の、また他のメディア(XBox LIVE Arcadeでも大人気のDuels of the Planeswalkerdsのようなビデオゲームなど)や大きな市場への進出の核でもある。プレインズウォーカーのデザインについてのコラム「Planeswalk on the Wild Side(英語)」 (Part IPart II)で書いたとおり、我々はプレインズウォーカーというカード・タイプを作ってまでその重要性を示した。プレインズウォーカーは戦場に出なければならない、という制限の元ではそうするしかなかったのだ。

 プレインズウォーカーのデザインには非常に満足しているが、デザイン上の問題がなかったわけではない。プレインズウォーカーのデザインを広げる余地は、マジックの他の色々なデザインの余地に比べて小さかったのだ。つまり、すぐに使い尽くしてしまう危険性をはらんでいたと言っていい。そこで、私はプレインズウォーカーの進化を遅める必要があるという立場に立った。プレインズウォーカーでできること、やりたいことのアイデアは大量にあったが、短期間にそれらを投入するとプレインズウォーカーというものを燃やし尽くしてしまう危険があったのだ。これが、4つにするのに3年の年月をかけた理由だ。他の進化もまた準備されているが、表に出てくるのはゆっくりとしたものになるだろう。また、4つの能力を持ったプレインズウォーカーを再び出すことはあるだろうが、基本的には3つであることにもご注目いただきたい。能力が4つあるというのは特別なことなのだ。

 ゼンディカーで同盟者をデザインしたとき、これを変動させられるいくつかのことに気がついていた。まず、瞬速持ちの同盟者。そしてもう一つは同時に複数の同盟者を戦場に出すカードだ。もともと、これらは2つの別々のカードだった。デザイン版の《兵員への参加》は{1}{W}のソーサリーだった。私は《急報》を、インスタントだったのをソーサリーにして弱体化し、代わりに兵士を同盟者にして強化しているだけじゃないか、とクレームをつけた。デベロップのプレイテストにより、このカードはそれよりも少し強いという評価がされたので、コストを上げることになった。コストが高くなったので、それに見合うようにインスタントになったのだ。

 上陸インスタントについては前回のコラムでも触れたとおりだが、そのデザインについて言い忘れていたことがあった。デザインは新しいメカニズムを作ることに秀でていなければならないが、同時に、既存のメカニズムを再活用することも重要な能力である。私はこれを「ストレッチ」と呼んでいる。メカニズムを取り上げ、それを拡張できるところを探し出す能力のことだ。各メカニズムがどうストレッチできるか、そしてそれをどう組み合わせるかを見積もることは、ブロックの構成の一部なのだ。

 メカニズムをストレッチするときには、いくつかの小技がある。このサイクルはその小技の一つから生まれている(ストレッチは将来のコラムでもいいテーマになるだろう。誰か、そのときに言ってくれ)。たいてい、メカニズムはある1つのカード・タイプにだけ導入される。クリーチャーであることが多いだろう。メカニズムをストレッチする一つの方法は、他のカード・タイプに持たせてみることだ。

 上陸はパーマネントの能力として産声を上げた。ここで当然出てくるのは、上陸をインスタントやソーサリーにつけることができるのか、ということだ。ゼンディカーの上陸は土地があなたのコントロール下で戦場に出たときに誘発したので、そのままではインスタントやソーサリーに入れることはできない。つまり、上陸を使うなら別の文脈が必要になる。

 これについて考えているうちに、時のらせんの時に作ったサイクルが思い出されてきた。

 このサイクルは、自分のメイン・フェイズの間にプレイしたら強化されるというインスタントだ。これについて考えてみた私は、そのターンに土地を戦場に出していたら強化されるという呪文はどうだろう、という発想に行きあたった。起こることを待つのではなく、起こったことを見るのだ。上陸は能力語なので、変更することに問題はない(キーワードだったら変更するのは大変な労力を要する)。こうしてできあがったのが、上陸呪文だ。

 このカードは、敵対色罠サイクルが出来る前に作られたカードだ。私は、いかにも魔法の罠というイメージの、呪文を向け直す罠という発想が気に入っていた。私は、対戦相手が複数の呪文を唱えていた場合、あなたのターンに呪文を唱えていた場合、あなたの呪文を対象としていた場合、などなどの罠条件を試してみた。結局、ケンがこれを敵対色罠のサイクルに組み入れることを決めたことで「青の呪文を唱えた」という条件になったのだった。

 もう一つ私のお気に入りなのが、ちらつき(何かを追放し、そのターンのうちに戻すこと)だ(なんでこんなにお気に入りのメカニズムが多いんだって? それはもちろん、私が大量のマジックのカードをデザインしたからだ)。「土地テーマ」とちらつきをどう組み合わせることができるのか、といえば、もちろん、土地をちらつかせることに他ならない。単にちらつかせるだけじゃなく、即ちらつき――つまり追放した直後に戦場に戻す――ならどうだろう? 私はこれをクリーチャーの起動型能力にした。土地1つを1回だけちらつかせられる、っていうんじゃあまりにつまらなかったからだ。

 私は、他の誰も理解してくれないお気に入りのカードについて語ることがある。《廃墟の幽霊》はワールドウェイクでのその種のカードだ。何らかの理由で、このカードは私以外の人にはあまり好かれていない。開発部のメンバーの一人マーク・グローブスは例外的にこのカードを愛してくれている仲間だ。我々は協力してこのカードをセットの中に死守しぬくことに成功したのだ。このカードがレアに押し上げられそうになったときも、我々は抵抗した。リミテッドでの価値を語り、そしてアンコモンに引き戻すことに成功したのだ。

 クールなカードを作るために温故知新だけが必要なこともある。このカードはテンペストの《マナ切り離し》からの翻案だ。

 通常、充分な土地があれば、あとは呪文さえ引ければそれでいい。ゼンディカー・ブロックは土地が忠臣なので、その逆の効果がおもしろいだろう。最初は《マナ切り離し》にあわせて{1}{U}のコストだったが、デベロップは安すぎると判断した。

 このカードは最初、「巨大石弾の罠」と呼ばれていた。私はケンがインディ・ジョーンズの「レイダース・失われたアーク」の岩から逃げるシーンをモデルにして作ったと思う。名前が変更されたが、デザインの根幹は変わらなかった。ケンはこれをゼンディカーのためにデザインしたのだが、多少複雑だったので私はこれをエキスパンション向けの罠だと思った。たぶん、ケンがワールドウェイクのファイルに一番最初に入れたカードはこれだっただろう。

 「土地が攻撃するとき」というテーマを作る上で、土地が攻撃できるようにすることは必要だが、もう一つ、土地で攻撃したくなるようなカードも必要である。この《永遠の土》は攻撃したくなるようなカードだ。

カードを曲げて

 今日のコラムはこれまで。ざっと見てきた旅路が楽しんでいただければ、そして何か得るモノがあれば幸いだ。

 それではまた次回、すべてが動くときにお会いしよう。

 その日まで、立ちのぼるカードの香りがあなたとともにありますように。

 一見すると、これは基本的な効果をちょっと弄っただけに見えるかもしれない。バウンス(○○1つを対象とし、それをオーナーの手札に戻す)呪文は各セットに複数入っていて、そのうちで少なくとも1つはコモンにあるものである。もちろん、ブロックのキーワードを使うものもあるが、すべてのカードがそうだというわけではない。年に何回も、我々は単純なひねりを加える必要が出てくる。基本的な論理がいずれ使い切られてしまいそうな印象もあるが、常々我々は新しい単純なひねりを探し続けている。そして、《上天の貿易風》のようなカードを作ることに成功したら幸せを感じるのだ。これは単純にして未踏のものだ。びっくり箱の中に収まりきらないようなアイデアを練るのも楽しいが、こういったシンプル極まりないアイデアを新発見したときこそ私の中のデザイナー魂が至福を感じるものなのだ。

 ゼンディカーにはタップ状態で戦場に出るカードがたくさん存在した。となれば、その効果を無効化するカードが作りたくなるのが情というものだ。最初の案では、「あなたのパーマネントはアンタップ状態で場に出る」と書かれている1マナのクリーチャーだった。これには2つの問題があった。まず、まるでゲームのルールの覚え書きのように見えてしまい、ファイルの上に「そしてあなたのすべてのクリーチャーは召喚酔いの影響を受ける」という落書きが増えていたほどだったのだ。

 2つめの問題は、ルール上の問題だった。詳しいことは忘れた(ゴットリーブがルールについて口うるさく言ってくるとき、大体私はルールを変えるべきだと思って聞き流すから)。結局、パーマネントをアンタップするのを戦場に出たときの誘発型能力にすれば問題ない、と同意してくれた。

 ワールドウェイクのリード・デザイナーを務めたケン・ネーグルはその私の小品を気に入ってくれたが、その能力はすべての色にあるべきだと感じ、色々と調整を始めた。まず、この能力を持った土地を作ってみた。タップして{1}を出すことができ、戦場に出る(ので、自分で自分をアンタップできる)。これは開発部のメンバーにとっても混乱を招くモノだった。土地バージョンは「バカ負け」というヤツだった。ケンが次に作ってみたのは1マナのアーティファクトだった。――それが、これだ。

 絆魂と接死にはシナジーは存在しないが、片方は「魂」でもう一方には「死」があるのだから組み合わせるとイメージがいい(《吸血鬼の夜鷲》のパワーレベルによってこの流れが変わることはないだろうね)。ああ、「二段攻撃」を「即死攻撃」とかにしとけばよかったかもしれないね。

 このカードが最初に提示されたとき、私はデザイン上の間違いだと思っていた《寄付》を思い出していた。他の開発部のメンバーはこのカードを気に入り、問題はないと判断していた。このカードを見たときにおかしな事が起こるんじゃないかと心配していた、ということだけ記しておくよ。

 2002年5月27日、トークン特集で書いた「私の愛したトークン」と題した記事の中で、トークンに関するルールをいくつか説明した。その中に、こんなルールがあった。

 2種類以上のトークンを作り出すカードを作らない。カードが2/2のトークン・クリーチャーを作るなら、そのカードが作れるトークンはそれだけだ。こうした理由は、混乱を避けるためである。ジャッジメントのデザインにおいて、「クリーチャー放射」という、1/1のリスと2/2の熊と3/3の象を生成するフラッシュバック呪文をデザインした。しかし、プレイテスト中に、プレイヤーはどのトークンがどれだかわからなくなってしまい、このカードはスクラップになったのだ。

 クリーチャー放射は、実際にはジャッジメントよりもかなり前にデザインされていた。このカードは《火炎放射》(カード名のパクり元だ)の直後にデザインされたわけだから、テンペストからウルザ・ブロックのどこかだろう。(《大使の樫》になった)「ムースとリス」の話でもしたとおり、私はずっと複数のクリーチャーを出すカードを作りたいと思っていたのだ。

 複数のクリーチャーでなくても、トークン・クリーチャーは大好きだ。おそらく開発部でも私以上にトークン好きなメンバーはいないだろう。トークン作成は、「マロのデザインで可能な限り増えるヤツ」としてまとめられているものの一つなのだ。私が関わったブロックのほとんどでは、強いトークンのサブテーマが存在していることにも気づけるだろう。

 さて、《獣性の脅威》。8年前に言った基本的なルールをここで破ることが出来た理由は何なのか。その答えは1つだけではない。

#1. トークン・カードがブースター・パックに入るようになり、トークン・クリーチャーとしてそれを使うことができるようになった。これによって、8年前にあった混乱は幾分軽減されている。

#2 ルールは破るものだ。しばしば、我々はそれまでしなかったことをすることでプレイヤーの想像を超えた刺激を与えてきた。もちろん、ルールを破るのには理由がある。例外を作ることに価値があると感じたときにのみ、ルールを破るのだ。このカードにおける理由は? なぜ今《獣性の脅威》を作ったのか? 正直なところ、それは分からない。ブロック内の他のカードとのコンボがよさげだった、開発部のメンバーが入れ替わり、前の議論の時にはいなかったメンバーが面白いと判断してGOを出した、そう、このカードは面白いと信じて、我々はルールを破ったのだ。

最後に:私の長年暖めてきたカードは、私がリーダーを務めていないセットで世に出ることが多い。《獣性の脅威》がファイルに入れられたのも私の手によってではなく、このカードを、これまで7年間私がチャンスを見計らっていたことを知らずにデザインしたケリー・ディグスの手によってだった(マジックのデザインにおいてこういう偶然はよくあることだ)。私はファイルを見てケリーが「クリーチャー放射」をセットに入れようとしたと思ったのだが、ケリーはその話を知りすらしなかったのだ。

 入れ替えカメだ。このカードは私の想像以上の遍歴を経てリリースに至ったという。しばしば、私は記事の中でリリースされていないカードについて触れることがあるけれども、このカードの反響は予想以上だった。そうなってしまうと不安なのは、はたしてこのカードがその期待に応えてくれるのかどうかということである。

 このカードのどこが私をくすぐるのかといえば、まずは名前だ。私は何年にも渡る経験から、評判のいいプレイテスト名の傾向を理解している。《方解石のカミツキガメ》の名前の由来は、デザイン名だった。デザインから生まれ、デベロップで抹消され、多元宇宙(マジックのデータベース)のくずになる代わりに次のセットに移動したのだ。

 もう一つの理由は、パワーとタフネスを入れ替えるという私のお気に入りのカードだと言うことだ。他の開発部のメンバーの中には、これを好むモノはほとんどいない。誰かがセットに入れると、多元宇宙でつけられるコメントはいつでも「マロ用」だ。

 《方解石のカミツキガメ》は最初、{2}{U}で1/4の、上陸でパワーとタフネスを入れ替えるというものだった。パワーとタフネスを入れ替えるということに関する最大の問題点は、他のパワー・タフネス変更効果との関連で混乱を招くんじゃないかということだった。それを防ぎ、このカードを強化するために、マイク・チュリアン(ワールドウェイクのデベロップ・チームのリーダー)が被覆をつけ(そしてコストを{1}{U}{U}に引き上げ)た。このシンプルな変更を経て、入れ替えカメは安住の地を得、カメとして印刷に至ったのだった。

 ああ、《方解石のカミツキガメ》がこれからも愛されんことを。

 このカードはもともとゼンディカーのデザインに存在しており、ゼンディカーのデザインとして手渡されたものだ。カードが気に入らなかったわけではないにも関わらずデベロップによって削除され、ワールドウェイクで再び投入されることになった。第2セット、第3セットの役目の1つには、前のセットで落とし穴に引っかかってしまったいいカードをすくい上げることもあるのだ。

 私は、銀枠世界から「真の」マジックこと黒枠世界への移行組のカードを数えている。《彗星の嵐》によって、その数は1増えることになった。諸君は《 The Ultimate Nightmare of Wizards of the Coast® Customer Service》というカードを覚えているだろうか?

 ルールに詳しい読者は、それは同一ではないと主張するだろうが、しかしほぼ同じと言っていい。少なくとも私にとっては同じようなモノだ。

 無色のエルドラージ呪文? なんだそれ?

 このカードは、開発部がこういう兆候を見せることを好むが故に存在している。もちろん、私も大好きだ。《スパイクの徒食者》をテンペストに入れてみたり、 カルドラ・サイクルをミラディン・ブロックにばらけさせてみたり(もちろん、ミラディンのデザイン・チーム全体でやったことだ)。

 このカードの意味は? 内緒だ。でもまあ、いずれ来るセットで明らかになることだろうとだけ答えておこう。

 長い期間にわたり、このカードの「戦場に出たとき」の能力は「プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーのライブラリーの上から3枚をそのプレイヤーの墓地に置く」だった。私はその能力がお気に入りで、《面晶体のカニ》と組み合わせて使っていたものだ。だが、不幸にして、その能力はデベロップの途中で消されてしまった。強すぎたんだ。デベロップが石臼能力を消すことは滅多にないことなので、そうするにはそれなりの理由があるものだ。

 プレインズウォーカーに4つ能力を持たせようと考えたのはいつだったかというと、ほとんどのプレインズウォーカーが3つの能力を持っている、と気づいたときだ。最初にプレインズウォーカーのカードの枠を試したとき、4つの能力を持つプレインズウォーカー用のものも作ってもらっていた。いつか必要になることは間違いないだろうし、そのときに同系のレイアウトが使えるようにしたかったのだ。

 最大の障害は、4つにすることではなく、4つにしないことだった。そこにはデザインの問題があった。プレインズウォーカーは我々も、そして諸君もみんなが大好きだ。我々の物語の、また他のメディア(XBox LIVE Arcadeでも大人気のDuels of the Planeswalkerdsのようなビデオゲームなど)や大きな市場への進出の核でもある。プレインズウォーカーのデザインについてのコラム「Planeswalk on the Wild Side(英語)」 (Part IPart II)で書いたとおり、我々はプレインズウォーカーというカード・タイプを作ってまでその重要性を示した。プレインズウォーカーは戦場に出なければならない、という制限の元ではそうするしかなかったのだ。

 プレインズウォーカーのデザインには非常に満足しているが、デザイン上の問題がなかったわけではない。プレインズウォーカーのデザインを広げる余地は、マジックの他の色々なデザインの余地に比べて小さかったのだ。つまり、すぐに使い尽くしてしまう危険性をはらんでいたと言っていい。そこで、私はプレインズウォーカーの進化を遅める必要があるという立場に立った。プレインズウォーカーでできること、やりたいことのアイデアは大量にあったが、短期間にそれらを投入するとプレインズウォーカーというものを燃やし尽くしてしまう危険があったのだ。これが、4つにするのに3年の年月をかけた理由だ。他の進化もまた準備されているが、表に出てくるのはゆっくりとしたものになるだろう。また、4つの能力を持ったプレインズウォーカーを再び出すことはあるだろうが、基本的には3つであることにもご注目いただきたい。能力が4つあるというのは特別なことなのだ。

 ゼンディカーで同盟者をデザインしたとき、これを変動させられるいくつかのことに気がついていた。まず、瞬速持ちの同盟者。そしてもう一つは同時に複数の同盟者を戦場に出すカードだ。もともと、これらは2つの別々のカードだった。デザイン版の《兵員への参加》は{1}{W}のソーサリーだった。私は《急報》を、インスタントだったのをソーサリーにして弱体化し、代わりに兵士を同盟者にして強化しているだけじゃないか、とクレームをつけた。デベロップのプレイテストにより、このカードはそれよりも少し強いという評価がされたので、コストを上げることになった。コストが高くなったので、それに見合うようにインスタントになったのだ。

 上陸インスタントについては前回のコラムでも触れたとおりだが、そのデザインについて言い忘れていたことがあった。デザインは新しいメカニズムを作ることに秀でていなければならないが、同時に、既存のメカニズムを再活用することも重要な能力である。私はこれを「ストレッチ」と呼んでいる。メカニズムを取り上げ、それを拡張できるところを探し出す能力のことだ。各メカニズムがどうストレッチできるか、そしてそれをどう組み合わせるかを見積もることは、ブロックの構成の一部なのだ。

 メカニズムをストレッチするときには、いくつかの小技がある。このサイクルはその小技の一つから生まれている(ストレッチは将来のコラムでもいいテーマになるだろう。誰か、そのときに言ってくれ)。たいてい、メカニズムはある1つのカード・タイプにだけ導入される。クリーチャーであることが多いだろう。メカニズムをストレッチする一つの方法は、他のカード・タイプに持たせてみることだ。

 上陸はパーマネントの能力として産声を上げた。ここで当然出てくるのは、上陸をインスタントやソーサリーにつけることができるのか、ということだ。ゼンディカーの上陸は土地があなたのコントロール下で戦場に出たときに誘発したので、そのままではインスタントやソーサリーに入れることはできない。つまり、上陸を使うなら別の文脈が必要になる。

 これについて考えているうちに、時のらせんの時に作ったサイクルが思い出されてきた。

 このサイクルは、自分のメイン・フェイズの間にプレイしたら強化されるというインスタントだ。これについて考えてみた私は、そのターンに土地を戦場に出していたら強化されるという呪文はどうだろう、という発想に行きあたった。起こることを待つのではなく、起こったことを見るのだ。上陸は能力語なので、変更することに問題はない(キーワードだったら変更するのは大変な労力を要する)。こうしてできあがったのが、上陸呪文だ。

 このカードは、敵対色罠サイクルが出来る前に作られたカードだ。私は、いかにも魔法の罠というイメージの、呪文を向け直す罠という発想が気に入っていた。私は、対戦相手が複数の呪文を唱えていた場合、あなたのターンに呪文を唱えていた場合、あなたの呪文を対象としていた場合、などなどの罠条件を試してみた。結局、ケンがこれを敵対色罠のサイクルに組み入れることを決めたことで「青の呪文を唱えた」という条件になったのだった。

 もう一つ私のお気に入りなのが、ちらつき(何かを追放し、そのターンのうちに戻すこと)だ(なんでこんなにお気に入りのメカニズムが多いんだって? それはもちろん、私が大量のマジックのカードをデザインしたからだ)。「土地テーマ」とちらつきをどう組み合わせることができるのか、といえば、もちろん、土地をちらつかせることに他ならない。単にちらつかせるだけじゃなく、即ちらつき――つまり追放した直後に戦場に戻す――ならどうだろう? 私はこれをクリーチャーの起動型能力にした。土地1つを1回だけちらつかせられる、っていうんじゃあまりにつまらなかったからだ。

 私は、他の誰も理解してくれないお気に入りのカードについて語ることがある。《廃墟の幽霊》はワールドウェイクでのその種のカードだ。何らかの理由で、このカードは私以外の人にはあまり好かれていない。開発部のメンバーの一人マーク・グローブスは例外的にこのカードを愛してくれている仲間だ。我々は協力してこのカードをセットの中に死守しぬくことに成功したのだ。このカードがレアに押し上げられそうになったときも、我々は抵抗した。リミテッドでの価値を語り、そしてアンコモンに引き戻すことに成功したのだ。

 クールなカードを作るために温故知新だけが必要なこともある。このカードはテンペストの《マナ切り離し》からの翻案だ。

 通常、充分な土地があれば、あとは呪文さえ引ければそれでいい。ゼンディカー・ブロックは土地が忠臣なので、その逆の効果がおもしろいだろう。最初は《マナ切り離し》にあわせて{1}{U}のコストだったが、デベロップは安すぎると判断した。

 このカードは最初、「巨大石弾の罠」と呼ばれていた。私はケンがインディ・ジョーンズの「レイダース・失われたアーク」の岩から逃げるシーンをモデルにして作ったと思う。名前が変更されたが、デザインの根幹は変わらなかった。ケンはこれをゼンディカーのためにデザインしたのだが、多少複雑だったので私はこれをエキスパンション向けの罠だと思った。たぶん、ケンがワールドウェイクのファイルに一番最初に入れたカードはこれだっただろう。

 「土地が攻撃するとき」というテーマを作る上で、土地が攻撃できるようにすることは必要だが、もう一つ、土地で攻撃したくなるようなカードも必要である。この《永遠の土》は攻撃したくなるようなカードだ。

カードを曲げて

 今日のコラムはこれまで。ざっと見てきた旅路が楽しんでいただければ、そして何か得るモノがあれば幸いだ。

 それではまた次回、すべてが動くときにお会いしよう。

 その日まで、立ちのぼるカードの香りがあなたとともにありますように。

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