カードの義務 その2

更新日 Making Magic on 2014年 7月 14日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

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 先週、『基本セット2015』のカード個別のデザインに関する話を始めた。頭文字「H」までしか進めなかったので、今回はその続き「その2」ということになる。この2本の記事の中で、『基本セット2015』に投入された15枚の外部デザイナー・カードの話をしようと思う。外部デザイナー・カードを取り上げるときは、そう明記する。

 プレイヤーがガラクを怖がるようにしたかった。我々は《頂点捕食者、ガラク》を作ったが(先週の記事を参照のこと)、それだけでは充分とは言えなかった。対戦相手を踏みにじるような呪文を作りたいと考えた。まず、黒ならクリーチャーでもプレインズウォーカーでも殺すことができる。その上、限界を超えたならどんなものができるだろう? ガラクが全てのクリーチャーと全てのプレインズウォーカーを殺すとどうなる? 対戦相手のクリーチャーやプレインズウォーカーだけを殺すとしたら? 賢い奴なら、ガラクの前から身を隠すだろう。

 これは8枚目の外部デザイナー・カードである。デザイナーはデイブ・ジルリン/Dave Sirlin、「Super Street Figher II Turbo HD Remix」(訳注:スーパーストリートファイターII Xの高解像度版リミックス。PSN、Xbox Liveで配信されている。日本には配信されていない。)と「Yomi」(チェスの変種)のデザイナーだ。デイブのデザインは、ブラフを主題にしたカードだ。ブラフを主題にしたカードとは、つまり、何かを決定するが、その効果は相手がこちらの考えを読み切れるかどうかによって左右されるというものだ。デイブ・ジルリンはゲーム・バランスに定評がある通り、彼は非常にスマートにやりとげた。加重選択を作ったのだ。

 つまり、このカードを使えば、呪文1つを手札からタダで唱えることができる。対戦相手は、その呪文のコストが4以下か、それとも5以上かを読み切らなければならない。その読みが当たっていれば、その呪文を止めることができる。ところで、コストが5以上の呪文はより強い呪文になるものだ。それなら、対戦相手は必ず5以上を選べば、強力な呪文を止められる? もちろん、止められる。しかし、そう判っていれば軽い呪文をタダで使うためにこのカードを使えばいいだけのことだ。

 平均的なデッキは5マナ以上の呪文よりも4マナ以下の呪文をずっと多く入れている。つまり、呪文のほとんどはより軽いのだ。対戦相手が「4以下」を選べば、より多くの呪文を止めることができる可能性が高いことになる。それなら常に4以下を選んで、手札の呪文のほとんどを止めてしまえばいい? もちろん、それでもいい。しかし、もしより重い呪文が手札にあったらどうなるだろう?

 見ての通り、デイブは、各プレイヤーが様々な因子を考えて数字を決めるという非常に躍動的な状況を準備してくれた。単なるコイン投げとは違い、このカードをとても面白いものにしてくれたのだ。

 新しいカードをデザインするための楽しい方法の1つに、普通は関連しない条件に紐付けたボーナスを与える、というものがある。例えば、青はカードを引く色だが、クリーチャーで攻撃することが少ない色でもある。《軍事情報》はこの対照を取り上げ、そこに踏み込んだカードを作ったものだ。おい青使い、カード引きたいか? 引きたいだろう。じゃあクリーチャーで攻撃しろよ。

 この類のデザインがクールなのは、プレイヤーに新しい視点からデッキを考えさせるからである。デザインを新しい視点から始めようとする、ということについては今まで何度も語ってきた。何に対しても、それまでなかった角度から考えるということだ。そうすれば、それまで思いつきもしなかった何かを見付けることができる。カード・デザインにもそれができる場合があるのだ。

 ニッサはもともと、最初の『デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』の表紙のキャラクターとして登場した。

 その時から、いずれニッサがプレインズウォーカーとしてカード化されるのは明らかだった。そして、『ゼンディカー』で実際に登場したのだ。

 《ニッサ・レヴェイン》では、新しいことに挑戦した。《ニッサ・レヴェイン》は他のカードを参照しており、最大限に活用しようと思ったら《ニッサに選ばれし者》をデッキに入れる必要があったのだ。そのため、このカードは非常にニッチなものになった。そう、《ニッサ・レヴェイン》はエルフ・デッキでは強力だったが、他のデッキでは使い物にならなかったのだ。そのため、《ニッサ・レヴェイン》はゴッドブック研究でもいい評価は得られなかった。ただし、キャラクターは興味深いもので、この反応はキャラクターではなくカードそのものに対するものだということはわかっていた(公正を期するために触れておこう、キャラクター的な意味で、《ニッサ・レヴェイン》はエリート志向だった)

 『基本セット2015』で新しいプレインズウォーカー・カードを作る機会が訪れたとき、我々はニッサのキャラクターを保ったままでもう少し一般的に使える能力を持たせたいと考えた。デザイン・チーム、デベロップ・チームは土地との繋がりを重視し、その能力を自然の精霊を作り出すものにした。具体的には、土地を4/4のエレメンタルにする能力である。

 ニッサが物語に戻ってきたので、私は彼女の新しいファンが増えるようなカードに出来たことを嬉しく思っている。

 これは9枚目の外部デザイナー・カードだ。デザイナーはブラッド・ミューア/Brad Muir、Double Fine Productionsのゲーム・デザイナーで「Massive Chalice」「Iron Brigade」のプロジェクト・リーダーだった。このカードのデザインの背後にある話は非常に面白いものだ。ブラッドはオブ・ニクシリス(ゼンディカーで登場した、大修復の際に灯を失った悪魔のプレインズウォーカー)を作る予定ではなく、ただ面白い悪魔・カードを作っただけだったのだ。その後で、彼が仕上げたものが、良いオブ・ニクシリスになっていたというわけである。元のオブ・ニクシリスと同様、このデザインでも他の誰かが悲劇に陥れば彼は強くなるというテーマを表している。我々はブラッドと話し合い、このデザインをストーリー上のキャラクターにしてもいいか(必然的に伝説のクリーチャーになる)と尋ねたところ、ブラッドは同意してくれたのだ。

 デザイン面から見て、このカードは素敵なことをしている。このカードが何かを禁止するのではなく、このカードがあると破滅的な不利益が着いてくるようにしているのだ。ライブラリーを探す? いいよいいよ、探せよ、でも探すならライフ10点とクリーチャー1体払えよ。(げげっ!) そして、クリーチャーが時とともにゆっくり成長していくということは、いきなり巨大な飛行・トランプル持ちクリーチャーが出てくるわけではないので、デベロップは少しコストに関して冒険することができた。+1/+1というメカニズムとトランプルは、同時に《解き放たれし者、オブ・ニクシリス》にチャンプ・ブロックを有効ではなくしている。

 私が会議に参加していなかったことに関する記事を書く上で楽しいのは、どうしてこうなったかを想像することである。模範サイクルに関して言うと、おそらくこうだろうという推測がある。色のロード(特定色の自分のクリーチャー全てを強化するカード)は人気があるが、自分の色を強化する色といえば白なので、全ての色について作る機会はそれほど多くない。今回のように効果を混ぜることは、サイクルを作るためのデザイン上のテクニックである。

 クリーチャーを強化することはどの色でもいつでもできるような一般的なものだ。それをサイクルにすることで、白以外の特定色がいつもそうしているとプレイヤーに思われない形で作ることができる。デザイン・チームは明瞭なサイクルを作った。つまり、全てのクリーチャーが同じコスト、同じパワー/タフネスを持ち(3Cで2/2)、色を強化する能力を持っている。違いは、それぞれが2つめの能力として持つ、タップを必要とする起動型能力が、各色のフレイバーにあったキーワードを与えるという点である。キーワードはパワー/タフネスの強化に関連したものが選ばれている。

 これは10枚目の外部デザイナー・カードである。デザイナーはリチャード・ギャリオット/Richard Garriot、ウルティマ・シリーズの作者「ロード・ブリティッシュ/Lord British」として知られている。このデザインは、デザインにおいて「《ケルドの大将軍》能力」と我々が呼んでいるものを弄ったものになっている。

 この能力は『アルファ版』の赤のカード、《ケルドの大将軍》で登場している。パワーとタフネスがそれぞれ自分のクリーチャーの数(ああ、うん、「壁でない」クリーチャー、だな)に等しいというものだ。我々はこの能力が気に入っていた。プレイヤーの人気も高く、プレイしても楽しい。ただ問題は、色が正しくないと感じていた。以前は、緑が「クリーチャーの色」であり、また小さなトークン・クリーチャーを生み出せる色だった上に、緑はパワーやタフネスが変動して時とともに大きくなっていくクリーチャーの色、すなわち成長の色なので、これを緑にしていた。

 やがて、緑と白の間により明確な区分けを作る必要があるということになり、緑は「高い」、白が「広い」色ということになった。つまり、白は小型クリーチャーを大量に集めて軍勢を作り上げる色であり、緑はマナ加速を使って少数の巨大クリーチャーを出す色である、ということだ。この区分では、どちらの色が《ケルドの大将軍》能力を持つのかは明確にならなかった。

 白は軍勢の色であり大量のクリーチャーを出すのでシナジーが存在するが、緑は大型の強化されるクリーチャーの色であり、《ケルドの大将軍》の能力はその一環である。両方に熱烈な支持者がいたので、カード技術会議では白熱した議論が重ねられた。最終的に、白の必要性の方が高かったので、この能力は白のものになった。

 ……というのは、リチャードのデザインの前振りである。それまで、この能力は攻撃側で使われていたが、リチャードはこれを防御側で使うという決定をした。トップダウンで「盾」を描いたのだ。軍勢が大きくなればなるほど、この魔法の盾の防御力が上がるのだ。これまでに何度も使われてきたこの能力を、まったく違う文脈で、フレイバーを高めるために使っているのが気に入った。

 『基本セット2014』に関して一番多く受けた苦情は、スリヴァーに関するものだった。しかしその内容は諸君が想像するものとは少しばかり違っていて、「なぜ5色の伝説のスリヴァーがいないのか?」というものだった。

 スリヴァーの初登場は『テンペスト』ブロックだった。そこには《スリヴァーの女王》がいた。次に登場したのは『オンスロート』ブロックだった。そこには《スリヴァーの首領》がいた。その痕で登場したのは『時のらせん』ブロックだった。《スリヴァー軍団》がいた。スリヴァーはこれまで3回登場していたが、その3回とものブロックに5色の伝説のスリヴァーがいたのだ。では、『基本セット2014』ではどうだったか?

 入れなかった理由はいくつもあった。基本セットに多色カードは入れないのが通例だし、伝説のクリーチャーもそう大量に入れないものだ。最終的には、その判断が間違いだったときがついた。顧客の多くが期待しているものを入れなければ(それがゲームを壊すものでない限り)、誤りなのだ。《巣主スリヴァー》は、過ちを正す試みである。このセットにもスリヴァーのサイクルが入っており、スリヴァー・デッキをもう少しだけ強化することができるだろう。

 楽しんでくれたまえ!

 基本セットがいつも意識しなければならないことの1つが、その年の『デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』(ゲーム機、PC、タブレット向けに発売されている、入門レベルのコンピューター・ゲーム)との関わりである。魂サイクルは『デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』の舞台となっている次元との関連を示している。デザイン・チームがこれらの6つの次元を体現したクリーチャーのサイクルを作るならどうなるのか?

 そのため、各次元をサイクル内の各色と紐付けることになった。最初は、このサイクルには5枚だけが存在し、シャンダラー(『デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』の基本的な舞台となっている次元)は存在しなかったのだが、新たなるファイレクシアを体現する魂をアーティファクト・クリーチャーにすることができると気がついたので、シャンダラーも作られることになったのだ。関連性を描くのが簡単なものもあった。イニストラードは黒側の次元なので、サイクルの黒を担うのは当然だった。同じく、ゼンディカーは緑。残りの3色の中で、白はテーロス(もう1つの候補は緑だが、これはもう埋まっていた)。ラヴニカはどちらかといえば青、ということで残った赤がシャンダラー。シャンダラーは最も基本的な世界なので、どの色にでも割り当てることができた。

 その後、チームはそれぞれの魂が持つ、それぞれの世界とそれぞれの色にあった能力を探すことになった。それぞれに墓地能力を与えたのは、もう少し魅力的にするため、そして殺された後でも使えるようにするためだった。クリーチャー・キーワードを持たせたのは、色ごとの差をより際立たせるためだ。

 私はデザイン・チームにもデベロップ・チームにも関わっていないが、このサイクルが何度も何度も何度も作り直されているのは知っている。これは非常に重要視されていて、アーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheがこのサイクル、これらのカードを魅力的でエキサイティングなものにしたいと思っているのはわかった。

 これは11枚目の外部デザイナー・カードである。デザイナーはジャスティン・ゲイリー/Justin Gary、「Ascension: Chronicle of the Godslayer」や「SolForge」のデザイナーだ。ジャスティンは、トップ・プロプレイヤーとしても知られている。プロツアー(プロツアー・ヒューストン2002)、グランプリ(チーム戦のGPピッツバーグ2003)、アメリカ国内選手権(1997)、世界選手権チーム戦(2003)で優勝した経験を持つ。ジャスティンはまだ殿堂入りを果たしていないが、いつも話題にはのぼる人物だ(私は彼に何度も投票しているし、殿堂入りの資格はあると信じている)。ジャスティンは15人の外部デザイナーの中で私が一番よく知っている人物であり、長きに渡るいい友人だと思っている。

 彼のデザインの中で、ジャスティンは私のお気に入りのこと、つまりトークン作成を手がけている。しかも、非常に賢い方法で。クリーチャーが戦場に出るときに、それぞれスピリットに先導されてくるのだ。もちろん、スピリットがスピリットを作ると無限のトークン・クリーチャーを生み出し、ゲームが引き分けになってしまうので、トークンでないクリーチャーだけがスピリットを作るようになっている。そして、ゲーム中に、スピリットでないクリーチャーを救うため、そのスピリットを生け贄に捧げることができるのだ。

 私は、クリーチャーが自分を護るスピリットを連れて現れるというこのカードのフレイバーが好きだが、メカニズム的に縛られては以内ので、スピリットすべてを使って大切なクリーチャー1体を守ることができる。そして、ジョニーとして、私はこのカードでできる様々ないたずらが大好きだ。大量のクリーチャーを作ったなら、できることは色々とあるだろう。

 デザイナーが楽しむゲームの1つに、古典的なカードを取り上げてそれを微調整できるか考えるというものがある。《下生えのゴミあさり》はまさにそれだ。このカードの元になった古典的カードが何か判るかね?

 推測できたなら、ここをクリックしたまえ。

 そう、《ルアゴイフ》だ。落ち着け、ハンス。大丈夫だ。こいつはおとなしい《ルアゴイフ》だから。《下生えのゴミあさり》には2つの変更が施されている。

 まず、パワーとタフネスは*/*+1ではなく*/*になった。特にゲームごとに異なるパワー/タフネスを持つクリーチャーにおいては、パワーとタフネスを同じ値にすることでわかりやすくなる。一言で言うと、私は*/*+1が大嫌いだ。大したメリットもないのに不格好すぎる。

 2つめの大変更、本当に大きな変更が、このクリーチャーがチェックするのはプレイした一度限りで、その後は+1/+1カウンターを使って固定されるということである。《ルアゴイフ》が時とともに巨大化していくというのは確かにクールだが、常時確認するのは面倒くさい。このバージョンなら、《ルアゴイフ》と違い、コモンに入れることもでき、リミテッドでずっと多くのプレイヤーが手にすることができるのだ。ただし、二度と《ルアゴイフ》型のクリーチャーを作らないということではない。しかし、これなら新世界秩序の元でより低いレアリティで使うことができるのだ。

 これは12枚目の外部デザイナー・カードである。デザイナーはイザヤ・カートライト/Isaiah Cartwright、「ギルドウォーズ2/Guild Wars 2」のリード・デザイナーだ。このデザインの面白いところは、我々がほとんど意識してこなかった、追放領域にあるものを参照しているという点である。追放領域に触れるカードに関する私の態度的にこのカードに問題があると私が考えていると思っている諸君もいるだろうが、それは間違いである。私が好まないのは、(追放領域を一時的な置き場として使っているカードを除いて)追放領域にあるカードを戻すことである。追放領域にあるものを参照することには問題はなく、むしろクールなアイデアだと言える。

 《彼方の管理人》を使うためには、1つ簡単な問題がある。どうやって対戦相手のカードを追放領域に送るのか、である。それさえクリアすれば、警戒持ちの4/4クリーチャーをたったの3マナで手に入れられるのだ。このデザインで私が気に入っているのは、その単純さである。たった1つのことだけを参照していて、その理由もある。目立つカードを作るのは楽しいが、こういったデザインの上品さは本当に大好きなのだ。

 これは13枚目の外部デザイナー・カードである。これのデザイナーは、諸君だ。そう、諸君だ。ただし諸君が、「You Make the Card(リンク先は英語)」企画に参加していたなら、という話だが。まず最初に、私は「You Make the Card」という企画には常に懐疑的だということを述べておこう。大人数の合議でカードを作るときには様々な落とし穴があるからである。ただし、この《無駄省き》は飛び抜けた成功だと信じている。

 このカードには明らかな目的があり、それを明確でクールな形で実現している。また、このカードはプレイヤーを常に異なる方向へと推す力があり、退屈させない多様性を持っているという点も気に入ったところだ。さらに、カードのコンセプトからイラスト、メカニズムまで一貫したフレイバーも美しい。本当に魅力的なデザインだ。よくできました。

 これは14枚目の外部デザイナー・カードである。デザイナーはロブ・パルド/Rob Pardo、Blizzard社の主任クリエイティブ・オフィサー兼「ワールド・オブ・ウォークラフト/World of Warcraft」のリード・デザイナーだ。このカードはフレイバーに富み、また現在存在する問題を解決してくれている。その問題とは、呪禁だ。呪禁の要点は、カードに魔法への耐性を持たせることで、呪文によって殺すことを難しくし、戦闘で戦うしかなくするということである。問題は、呪禁が少しばかり苛立たしいものだということだ。

 《ザスリッドの隠し刃》は、クールなフレイバーでこれを解決してくれた。《ザスリッドの隠し刃》は暗殺者である。影に潜めば誰にも見えず、従って対象になることもない。攻撃するときには、隙を見せることになる。それならなぜ攻撃するのか? 先制攻撃と接死を持っているので、影から出てくれば一撃で敵を仕留められるからである。この組み合わせは非常に強力なので、これら2つの能力を同じクリーチャーに持たせることはほとんどない。しかし、フレイバーがあまりにも魅力的な素晴らしいカードだったので、この2つの能力を同時に持たせることになったのだった。

 これが15枚目、最後の外部デザイナー・カードである。デザイナーはブライアン・ファーゴ/Brian Fargo、inXile Entertainmentの創設者兼CEO、「バーズテイル/Bard's Tale」「ウェイストランド/Wasteland」ディレクター、「フォールアウト/Fallout」エグゼクティブ・プロデューサーだ。私は『基本セット2015』に関与していないので、このデザインの過程については想像するしかないが、おそらくブライアンはトップダウンで吟遊詩人を作ったのだろう。マジックに吟遊詩人は数種類存在するが、どれも派手だと言えるものではなかった。《放浪の吟遊詩人、イーサーン》はその流れを変えようとしたのだ。

 《放浪の吟遊詩人、イーサーン》は曲を奏で、レパートリーを積み重ねていくにつれて巨大なクリーチャーを呼び出すことができるようになる。ブライアンが伝説のクリーチャーにしたのか、それともデベロップの間にそうなったのかは知らないが、このデザインは間違いなくクールな物語上の存在を描いたものだ。私は、ただ召喚の準備として《放浪の吟遊詩人、イーサーン》の能力を起動するのではなく、起動するたびに毎回クリーチャーを呼び出すという選択が気に入った。そうすることで、デッキに様々なマナ・コストを散して毎回何かを出せるようにするというデッキ作成上の難関が現れたのだ。「以下」とは書いていないところがポイントであり、毎回、ちょうどその値に等しい点数で見たマナ・コストのものを探すことになるのだ。これが、プレイヤーの自由度を減らすことで寄り楽しいカードを作ることができるという一例である。ゲームのプレイというものは障壁を乗り越えることそのものであり、デザイナーはカード・デザインの中で障壁を作ることを恐れてはならないのだ。

そしてZへ

 ふう、アルファベットの最後までたどり着いた(これはいいことだ。来週はテーマ週なのだから)。いつものとおり、私は諸君からの感想を楽しみにしている。メール、掲示板、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で意見や感想を聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、タップすべきクリーチャーを並べる日にお会いしよう。

 その日まで、あなたが自分のマジック・デザインの印刷される日を夢見ますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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