あらゆるコストで

更新日 Making Magic on 2014年 7月 21日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

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 召集特集へようこそ。今週は、『基本セット2015』で再録された『ラヴニカ』のあのメカニズムについて語っていく。召集の初出については既に2度説明してきたので(ここここで)、今回は少しばかり違う話をしようと思う。主席デザイナーの仕事として、特定のデザインにおけるデザイン空間がどれだけ残っているかを計っているという話を時々してきている。その方法について尋ねられることがよくあるので、今回は召集が含まれる、コスト軽減メカニズムを例にとってその方法について説明していこう。

圧倒》 アート:Wayne Reynolds

 実際に始める前に、このほとんどは内部で行われていると強調しておくべきだろう。つまり、マジックに関わってほぼ19年になる私は、今回説明するあらゆることを学び、そしてそれを列記することなく進めているが、それについて説明するにはどうしても長文になるということである。また、この手順においてはあらゆるメカニズムが含まれてくるが、今回は例示としてコスト軽減メカニズムだけを取り上げることにする。

「価格調査が必要だ」

 まず最初に手がけることがある。コスト軽減カードとは一体何なのか、というと、マナ・コストを引き下げる助けになるあらゆるカードのことである。コスト軽減カードは、何らかの条件を満たす必要があるが、そうしたなら通常支払わなければならないコストよりも軽く、大きな効果を得ることができるのだ。

 今回の記事の進め方を説明しよう。全てのありうる空間を検査し、そして、もう使ったものを見付けたら、それを取り上げてこの部分はもう使われているということを示すのだ。この手順を通して、私が日常的におこなっていることを諸君が掴んでくれることを期待している。

 まず最初に、順序立てて解体していこう。マナ・コストを減らすために使うことができるコストを全て列記してみた。

  • 代替マナ
  • ライフ
  • 手札にあるカード
  • 戦場にあるパーマネントを生け贄にすること
  • パーマネントをオーナーの手札に戻すこと
  • 戦場にあるパーマネントをタップすること
  • 墓地にあるカード
  • ライブラリーにあるカード
  • 時間を費やすこと
  • 将来のマナ
  • 将来のカードを引くこと
  • 将来のステップやフェイズ
  • 戦場にあるパーマネントの存在
  • 対戦相手にライフを得させること
  • 対戦相手が特定の行動を取っていること
  • ある特定の状況であること
  • 存在するものに関する処理
  • その他
  • 組み合わせ

 それでは、これを1つずつ検証していこう。

代替マナ

この分類に入るもの

 この1つめの分類には、マナ・コストを持つカードで、他の軽いマナ・コストを支払うことができると書かれているものが含まれる。『フィフス・ドーン』の運び手サイクルがその好例である。これらの5枚のカードは、1色の重いコストを支払うのではなくを支払うことを認めている。色の多いコストを支払うか、色が少ない代わりに量の多いコストを支払うかを選べるわけだ。この分類に入るものには、例えば氷雪マナのような特定の種類のマナを支払うことを認めるというものもある。鍵となるのは、2つめのコストを支払うのは普通のコストを支払うよりも難しいことが多く、その代わりに少ない支払いで多くのものを得ることができるということである。

今後のデザインの可能性

 色の集約はマジックの重要な部分なので、この側面を再検討することは何度も可能である。まだ手つかずのものとしては、他の種類のマナを使うというものがある。これは進んで大量に使いたいというものではないので、空間は残されていても非常に限られていると思われる。

ライフ

この分類に入るもの

 一定量のライフを支払うことで、マナの支払いを減らす(あるいは0にする)ことができるカードが存在する。この分類に入るカードの好例は、『新たなるファイレクシア』のファイレクシア・マナを利用するものである。ファイレクシア・マナは2点のライフでも支払うことができる色マナである。他にも、『メルカディアン・マスクス』の《殺し》や《鼓舞》といったカードが存在し、これらもライフがマナの代わりのコストとなっている(各色に代替コストが存在し、黒はライフの支払いであった)。

今後のデザインの可能性

 ライフはマジックの重要なリソースの1つなので、これもまたしばしば再訪できる部分だと思われる。新しいデザイン空間という話になると、それほどは残されていない。新しいデザインを作らなければならないとするなら、直接の支払いでなく、たとえばダメージのような方法で失われるライフを見ることになるだろう。

手札にあるカード

この分類に入るもの

 手札からカードを棄てることで呪文のコストを減らすことができるカードが存在する。『アライアンス』のピッチスペルが最初にこの空間に手をつけたカードである。これらの呪文では、カードをプレイするための代替コストとして手札にあるカードを追放することができる。『メルカディアン・マスクス』や『コールドスナップ』では、ピッチスペルでできることをさらに掘り下げていき、『コールドスナップ』サイクルではカード2枚の追放が必要な、より効果の大きいものになった。

今後のデザインの可能性

 ピッチスペルはデベロップ的には危険だが、かなり人気があるのでいつか再訪することになるだろう。しかし、呪文空間のかなりの部分は既に掘り下げられている。『メルカディアン・マスクス』ブロックのスペルシェイパーは、効果のコストとして手札を捨てるということを加えたが、この、代替コストとしてカードを捨てるというピッチ起動はそれ以降再現されていない。また、カードを捨てることでコストを全て支払うのではなくマナ・コストを減らすということも掘り下げてはいない。まだ掘り下げることのできる空間は残されているが、そう多いわけではない。

手札にあるカードを公開すること

この分類に入るもの

 この分類には、自分の手札に特定のカードを持っていて、それを公開することで呪文のコストを減らすことができるものが含まれる。『ローウィン』には、特定のクリーチャー・タイプのカードを公開することを必要とする、5体のクリーチャーからなるサイクルが存在した。このコストを、単に秘密を少し減らすというだけだと考えると奇妙なものになる。実際のコストは、その特定のカードを手札に持つことそのものである。一見するとそれほどのコストには思えないが、これらの呪文を常に軽いコストで使おうと思うと、デッキ作成の時点でかなりの制約になるのだ。

今後のデザインの可能性

 これまで述べてきた分類のものと違い、これはかなりの可能性を持つ。マジックにおいて、この類のコストはほんの表面をなぞっただけに過ぎず、どんなカードをコストにするかという選択肢も充分に広いので、将来のデザインに使う余地は充分存在している。

戦場にあるパーマネントを生け贄に捧げること

この分類に入るもの

 この分類は、マナ・コストを下げるために1つまたは複数のパーマネントを生け贄に捧げるものである。例えば『ビジョンズ』の《火炎破》のように土地を生け贄に捧げるものもあれば、『メルカディアン・マスクス』の《デルレイッチ》のようにクリーチャーを生け贄に捧げるものもある。あるいは『アラーラの断片』の《回収するタイタン》のようにアーティファクトを生け贄に捧げるものもある。『メルカディアン・マスクス』の赤の代替コストは、《》を生け贄に捧げることだった。

今後のデザインの可能性

 まず、これまでにエンチャントやプレインズウォーカーを生け贄に捧げるカードは存在していない。加えて、この分類は非常に広いが、まだキーワードは作られていない。従って、この分類もまた将来のデザイン空間を充分に秘めたものだと私は信じている。なお、『アラーラの断片』の貪食のように、パーマネントを生け贄に捧げて呪文をさらに強力なものにするメカニズムは存在する。

パーマネントをオーナーの手札に戻すこと

この分類に入るもの

 この分類は1つ前のものの軽いバージョンである。自分のパーマネントを生け贄に捧げるのではなく、パーマネントを手札に戻してコストを低減するのだ。これは『メルカディアン・マスクス』の青の代替コストであり、《噴出》や《目くらまし》のような人気カードを作り出した。

今後のデザインの可能性

 追加の強制的コストとしてバウンスはよく使われてきたが(例えば『プレーンシフト』には公式名のないメカニズム「開門」が存在していた)、『メルカディアン・マスクス』ブロックの青のピッチスペルを除いて、選択的コストとして選ぶことができるものはメカニズムになっていない。バウンスはコストとして苛烈でもなく、様々な他のメカニズムとコンボになりうるので、この分類には可能性が溢れていると言えるだろう。

戦場にあるパーマネントをタップすること

この分類に入るもの

 いよいよ召集が当てはまる分類にたどり着いた。この分類は生け贄に捧げたり手札に戻したりするのではなく、パーマネントをタップするものだ。召集はもちろんクリーチャーをタップすることを必要とする。クリーチャーをタップすることは、『メルカディアン・マスクス』の白の代替コストでもあった。

今後のデザインの可能性

 召集はかなりのデザイン空間を持ったメカニズムなので、『基本セット2015』で召集を使うのが最後になるということはないだろう。さらなる呪文の余地もあれば、さらに調整の余地もある。時機を見て、アーティファクトの召集というのも想像できる話である。他にも何種類ものデザインの余地があるが、このデザイン空間のかなりの部分を占めているのは召集である。

戦場にあるパーマネントの存在

この分類に入るもの

 この分類は、戦場(あるいは他の領域)に特定のタイプのものが存在することでマナ・コストを低減するものである。プレイヤーがもっとも良く知っているこの分類のものといえば、おそらく親和メカニズムであろう。『ミラディン』ブロックでは、親和(アーティファクト)と、親和(基本土地タイプ)が存在したが、このメカニズムはあらゆるパーマネントの種類を使うことが可能である。

今後のデザインの可能性

 親和(アーティファクト)は強力すぎたが、デベロップ的に適正に管理し、何に対する親和かを慎重に考慮すれば、このメカニズムにはかなりの可能性があると信じている。

墓地にあるカード

この分類に入るもの

 この分類にはメカニズムが存在するが、「公式に」はまだ存在していない。そのメカニズムとは、墓地にあるカードを追放することで呪文のコストを減らすことができる、探査である。このメカニズムは『未来予知』の3枚のミライシフト呪文で使用され、いつか日の目を見ることが約束されている。我々はこのメカニズムを何度もセットに入れようとしてきたが(『イニストラード』が一番の好機だった)、どうにも相応しいと言えるものにはならなかった。また、このメカニズムは『ウェザーライト』の《闇の旋動》などで代替コストとして用いられている。

今後のデザインの可能性

 するかどうかではなく、いつするかだけの問題だと私は信じている。

ライブラリーにあるカード

この分類に入るもの

 この分類は、ここまで見てきた中ではじめてまだ全く手つかずのものである。カードのマナ・コストの一部または全部を支払うためにライブラリーにあるカードを諦める(おそらくは追放する)というものだ。『ミラディン』の《弧炎撒き》は実験的に、ライブラリーからカードを失わせることをコストとした起動型能力を持っているので、この分類に最も近い実在のカードと言える。

今後のデザインの可能性

 まだ手つかずのままなので、当然この分類には将来の可能性がある。「ライブラリー探査」(仮称)の最大の問題点は、非常に強力なカードだったにもかかわらず、《弧炎撒き》がまったく人気がなかったことである。

時間

この分類に入るもの

 この分類は、もしまだ存在していなかったなら説明に苦労していたことだろう。このメカニズムは待機であり、ずっと軽いコストで支払うことができるが、そのカードが実際に唱えられるまで何ターンか待たなければならないというものである。

今後のデザインの可能性

 待機は評判が非常に悪かったので、このデザイン空間を掘り下げるのは難しい。待機から得た教訓は、一見したときに気付くよりも多くのコストがマジックには存在しているということだろう。

将来のマナ

この分類に入るもの

 この分類を深く掘り下げていくと、支払いうるあらゆる種類のコストが存在するということが明らかになるだろう。この分類は、唱える時のコストは軽いが、後で(大抵は次のターンに)支払う必要がある、というものである。最も有名な例は『未来予知』の契約サイクルである。どのカードも、唱えたターンにはコストはかからないが、次のターンにマナを支払わなければゲームに負けるのだ。

今後のデザインの可能性

 契約は人気も高く強力だが、意図しない敗北を生むことも多かった。これはつまり、さらなる掘り下げと調整をしたいと思わせるようなデザイン空間の存在を意味している。

将来のカードを引くこと

この分類に入るもの

 この分類は、将来カードを引く権利を放棄することで呪文のコストを下げるというものになる。いろいろな意味でカードを捨てるのと近いが、手札が空の場合にも可能だという点は違っている。『アルファ版』から存在する《孤島の聖域》は、将来カードを引く権利を放棄することをコストとして使うということがどういうことか示している。

今後のデザインの可能性

 まだ触れていないので、デザイン空間は存在している。ただし、その量はどれだけか、そしてプレイして楽しいかどうかという2つの大きな疑問がある。量は多くも少なくもないと思うが、面白いかどうかは疑問である。

将来のステップ/フェイズ/ターン

この分類に入るもの

 まだ手にしていないものを放棄するということに関して言えば、ステップ、フェイズ、ターンを忘れてはならない。『アルファ版』から存在する《Time Vault》は、未来のターンを代価にすることができると言うことを示している。

今後のデザインの可能性

 可能性はあるが、一部には混乱を招く可能性があるものもある。これは、適正な実装を待っている類のコストである。

対戦相手にライフを得させること

この分類に入るもの

 『メルカディアン・マスクス』の緑の代替コストは、リソースを消費するのではなく、対戦相手にリソース、この場合はライフを与えるものだった。この分類は、コストを支払うのではなくコストを与えるという独自のジャンルを掘り下げているので、新しい領域を切り開いていることになる。

今後のデザインの可能性

 対戦相手に有利を与えるというのは一見するとエキサイティングには思えないが、うまくデザインすればこの種のコストには間違いなく未来が存在すると思われる。

対戦相手が特定の行動を取っていること

この分類に入るもの

 この分類も、コストを支払うものではなく、特定の状況が起こっていることを参照するものである。この分類の好例は、『ゼンディカー』ブロックの罠をサブタイプに持つカードである。これらの呪文は、対戦相手が特定の行動をした場合にはコストが安くなる(あるいは支払わなくてもよくなる)というものである。例えば、《精神壊しの罠》は対戦相手がそのターンに3つ以上の呪文を唱えていた場合にはコストを支払う必要がなくなるのだ。

今後のデザインの可能性

 対戦相手の行動には様々なものがあるので、この分類には充分な可能性がある。罠でそうだったように、唱える呪文と相手の行動に関連があると感じられるようにすることが重要である。

ある特定の状況であること

この分類に入るもの

 この分類は、さきほどのものと同じように特定のイベントを見るものだが、自分から条件を満たすようにできるという点でより柔軟性がある。このデザイン空間に含まれるメカニズムの例は、『アヴァシンの帰還』の奇跡メカニズムと、『トーメント』のマッドネス・メカニズムである。前者は、引いた直後に軽いコストで呪文を唱えられるというものであり、後者は捨てたときに(多くのカードでは)安いコストで唱えられる機会を与えるというものえある。この分類で重要なのは、自分で条件を満たそうとする、ということである。

今後のデザインの可能性

 この分類もデザイン上の可能性を充分に持っているものである。実際、このデザイン空間内には出番を待っているメカニズムがたくさん埋もれていると確信している。

その他

この分類に入るもの

 ここまで述べてきた分類で全てを網羅できているわけではないので、この「その他」の分類がある。例えば、『メルカディアン・マスクス』の《土地譲渡》は土地を持っていないことを対戦相手に見せることがコストである。「持っていないこと」がコストなのだ。このことは、代替コストそのものに多くの可能性があると言うことを示している。なお、この分類は、まだ我々が思いついていないような将来の「コスト」が存在しうると言うことも意味している。

今後のデザインの可能性

 これもいくらでも可能性がある。「持っていない」ことがコストであり得るのなら、他に何があり得るだろうか?

組み合わせ

この分類に入るもの

 この最後の分類は、独立した分類ではなく、上記の2つ以上の分類の組み合わせである。例えば、『アライアンス』の《Force of Will》はライフの支払いとカードの支払いの両方を必要とする。『基本セット2011』の《死の門の悪魔》はライフの支払いとクリーチャーを生け贄に捧げることをコストとしている。どの分類も、他の分類と組み合わせることでより多くのカードを作ることができるのだ。

今後のデザインの可能性

 新しいものを見付けるたび、その組み合わせができるので、可能性はそれこそ無限にあると言える。

脈々と

 今日の記事から、特定のメカニズムのデザイン空間がどれだけ使われているかを考える手法を理解してもらえただろうか。他の効果の中には、コスト軽減よりもずっと狭いものもあれば、ずっと広いものもある。見ての通り、これはマジックのデザインを監督する中で非常に複雑な部分なのだ。

 いつもの通り、今日の記事に関する諸君の感想を楽しみにしている。メール、掲示板、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で意見や感想を聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、トレーディング・カードゲームで物語を紡ぐという挑戦について語る日にお会いしよう。

 その日まで、未踏のデザインの水脈を見付けることの楽しみがあなたとともにありますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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