やり直し

更新日 Making Magic on 2015年 1月 26日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

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 テレビや映画はある意味正しい。タイムマシンの到着前にはエネルギーが青く弾けるものだが、それが物体化するわけではない。ある瞬間には何も存在せず、そしてその次の瞬間にはタイムマシンが存在するのだ。普通は、誰にも到着するところが見られないようにするものだが、今回の場合は、見られることに意義がある。私はドアを開き、リチャードの部屋へと降り立った。

「リチャード? ええと、リチャード・ガーフィールド?」

「ええ。これはタイムマシンですか?」

「はい。今週はあるウェブサイトで時間旅行特集をやっていて、私はそこで長年の願いを果たそうと思ったんです。あなたに告げたいことがあり、あなたがマジックのデザインをほぼ終えているけれど、まだ変更はできるこの時間を割り出し、開発部のタイムマシンを借りて過去に戻ってきました」

「ウェブサイト?」

「未来のものです。気にしないでください」

「私とあなたは知り合いですか? ええと、知り合いになりますか?」

「はい。私のいた時間では、私たちは20年来の友人です」

「つまり、20年以上先からいらっしゃった、と」

「2015年からです。ええ、バック・トゥ・ザ・フューチャー2みたいな話ですが、あの映画はいくつか間違いがありますね」

「マジックは成功していますか?」

「あなたが想像できる以上に。マジックのプレイヤーは何百万人もいて、11の言語で印刷されています。プロツアーのサーキットがあり、何十万という認定イベントが毎年開かれています」

「あなたはそこで何をしているんです?」

「その未来では、私はマジックの主席デザイナーです。私がいつも受ける質問の1つが、もし今マジックを最初からやり直すとしたら何を変えるか、というものでした」

「つまり、その変更ができる瞬間に向けて時間を遡ってきたと? そのためにはかなりの調査が必要だったんじゃないですか?」

「いいえ、あなたに聞いただけですよ」

「つまり私は2015年にも生きているんですか?」

「あ……失礼、これ以上話すのはまずいですね。マジックの話をしましょう」

「もちろん、変えられる点はありますよ」

 私はiPhoneを取り出し、リストを眺めた。リチャードは私のスマホをじっと見つめている。

「……私は未来を隠すのが下手なようです」

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時の逆転》 アート:Howard Lyon

 リチャードは目を離さない。

「これは電話です。電話はこんな風にクールになるんですよ」

「ああ、すみません。それで、私の失敗というのは?」

「まず最初に言っておきたいのは、あなたのやったことのほとんどは正しかったということです。マジックは大成功を収めていますが、その多くはマジックのゲーム・デザインの本質そのものによります。つまり、誤りはわずかなのです」

「たとえば?」

「アンティは大失敗でした」

「えっ? アンティがなければ、デッキはずっと同じものになってしまうと思いますよ」

「ちょっと聞きますが、プレイヤーはどれぐらいマジックを買うと思います?」

「最初はスターター・デッキ1つで、それから続けるならブースターを4~6個ぐらいですかね」

「プレイヤーが何箱もブースターを買う、と聞いたらどうです?」

「え。そうなると強力すぎるカードが大量にありますよ。プレイグループにはレアが各種1枚までしかないのが普通だという前提で作っています。無茶苦茶に売れでもしない限りそんな問題は起こらないと思っていますし、それは嬉しい悲鳴というやつですね。問題が出たら直しますよ」

「実際にそうしました。そのために各種の制限禁止リストというものがあります」

「各種のリスト? つまり、マジックは大成功して、いくつものフォーマットを作るほどになったと?」

「想像も出来ないでしょう」

「他に巧く行かなかったことはあります?」

「デッキを40枚以上で組む、というのは構築デッキに関してはすぐに60枚になりました。あなたの予想通り、ブースター・パックを開いてその場でプレイする『リミテッド』というやり方はとても人気があります。もう一つ、大きく変更されたものがルールとカラー・パイです。あなたはたしか、カラー・ホイールと呼んでいたはずですが」

「どう変わったんです?」

「ルールは、正直なところ、最初はちょっとばかり適当なものでした。一貫したシステムというのは存在しませんでした。もっとも大きな進化は、私たちが『スタック』と呼んでいる、呪文を解決するシステムの創造ですね。全ての呪文は、先入れ後出しになりました。これによって、ダメージをバッチの終了時まで待って処理するようなことをせずに即座に解決できるようになったのです」

「そのシステムでインタラプトはどうなるんです?」

「どうもこうも。スタックを作った時、インタラプトはなくなりました。打ち消し呪文その他インタラプトがやってきたことは先入れ後出しで処理できるのです」

「カラー・ホイールは?」

「理念は非常に良いものでした。基本的には変更しなかったのですが、多少調整を加えたというところです。最大の変更は、各色のできることを狭めたということです。いくつかのことは移動させ、色ごとのパイの大きさをなるべく近づけるようにしました。正直なところ、この変更は今も行われています。カラー・ホイールは各色に弱点を作り、デッキに複数の色を必要にしています。あとはもう少しそれを厳しくするだけです。そして、敵対色と戦えるようにカラー・パイにおいて敵対色のメカニズムを使えるようにしたのは、混乱を招くことになりました」

「他には?」

「パワーレベル面で言うと、呪文とクリーチャーのパワーレベルを間違えていました。呪文を強く、クリーチャーを弱くしすぎたのです。その2つを同じ程度のパワーレベルまで調整するのに15年かかりました」

「面白い。続けて」

「他にも進化はあります。例えばコレクター・ナンバーとレアリティの標記です」

「そんなことをしたら、マジックにどんなカードがあるかすぐにわかるようになってしまう。そこは秘密にしておきたいんだ」

「ええ、そこです。世界は見る間に変わっていき、情報の共有がずっと簡単になるんですよ」

「その……電話のせいで?」

「それも1つです。あなたがマジックに秘密の部分を残して、プレイヤーが他のプレイヤーと対戦していく中でカードを見付けていくようにしたいと思っているのは知っていますが、技術の進化がそれを妨害します。また、デッキ技術の共有もコミュニティが育つ中で重要な部分となりました。もう1つ大きな違いが、カードのプレミアム版の導入です。どのカードにも、フォイル加工を施して見た目を綺麗にした版があるようにしました。また、レア枠のおよそ8分の1で、4つめの『神話レア』というレアリティを導入しました」

「それについては考えていたよ。でもそんなことをすると手に入れにくくなりすぎると思ったのさ。まさかプレイヤーがそんなに多くカードを手にするなんて想像もしてなかったから」

「もう1つ導入したのが、おそらく検討はしたと思うんですが、クリーチャー・タイプに種族と職業を入れました」

「ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズのように、か」

「はい。それが発想の元になりました。ほとんどの人間型クリーチャーは種族をタイプとして持ちます。人間もタイプにしました。そして、その役割を示す職業もタイプにしたのです。つまり、人間・ウィザードとか、ゴブリン・戦士とかですね」

ゴブリンの熟練扇動者》 アート:Svetlin Velinov

「いいね」

「もう一つ、プレインズウォーカーの力を神のようなものではなくしました。大きく弱体化させることで、プレインズウォーカーを主役にした物語を描けるようにしたのです。今は、言ってみれば単に世界観を渡る能力を持っているだけです」

「ドミニア全体を訪れる能力かい?」

「ああ、その名前はあまり考慮されていません。単に多元宇宙とだけ呼んでいます。そう、プレインズウォーカーをカード・タイプにしました。大人気で、主役級のキャラクターをゲームと物語の両方に組み込むという大きな役割を果たしています」

「かなりの変化があったんだな」

「はい。まだ終わっていません。あなたの想像通り、マジックには多くのフォーマットがあります。大きく分けて2つ、構築とリミテッド。構築の一番大きなフォーマットはスタンダードと呼ばれるもので、直近2年のカードだけを使います。近いうちに、ああ、私から見ての近い未来ですが、18ヶ月に変更されることになります」

「つまり、主力のフォーマットは常時変わり続けて、パワーレベルの問題にずっと囚われることはない、と?」

「そうです」

「うまい話だ」

「面白いでしょう。最初は最悪だと言われましたが、やがてマジックの主流のフォーマットになりました。リミテッドでもっとも人気があるのはブースター・ドラフトというフォーマットです。ブースター・パックを開けて、そこから1枚を選び、残りを隣のプレイヤーに渡すのです」

「リミテッドが成功したのは嬉しいね。プレイテスターは楽しんでいたけれど、プレイヤーがリミテッドをプレイするためだけにパックを買ってくれるかどうか自信がなかったんだ」

「プレイヤーが作って人気が出た、カジュアル・フォーマットも色々ありますよ」

「そりゃすごい」

「まだまだ。マジックは20年以上の歴史を重ねています。その間に、多くの能力をキーワード化しました。《セラの天使》の能力は、今は「警戒」と呼ばれています。プレイしたターンに攻撃できる能力は「速攻」。《茂みのバジリスク》の能力は「接死」、ただし壁を例外にはしていません。《大蜘蛛》の能力は「到達」。「威嚇」は《畏怖》みたいな能力ですが、黒かどうかに関わらず色が一致するかどうかを見ます。まだ存在しないカードを元にした能力もいくつかあります。ダメージを与えたらその分ライフを得る「絆魂」、先制攻撃のダメージと普通のダメージ両方を与える「二段攻撃」。「破壊不能」は、文字通り破壊されません」

セラの天使》 アート:Greg Staples

「いろんな単語が使われているね」

「ええ。逆に、使われなくなった単語もあります。バンドは消えました。プロテクションや土地渡り、再生はあまり使われなくなりました。単語と言えば、「場」を「戦場」にしたり、「ゲームから取り除く」を「追放」にしたり、何かをエンチャントするエンチャントを「オーラ」と呼んだりしています。それから、カード・タイプは単に表記されるように変更しました。クリーチャーは「召喚」という書き方をせず、「クリーチャー」。エンチャントは「エンチャント(場)」ではなく単に「エンチャント」。アーティファクトも、「単発型アーティファクト」「連発型アーティファクト」というような区分を消して「アーティファクト」に。ああ、そうだ、「そのカードをタップする」と書くかわりに使うタップ・シンボルも作りました。基本土地の文章欄には文章がなくなり、大きなマナ・シンボルが描かれています」

「それだけ変更して忙しそうだけど、まだあるんだろう?」

「マジックの誕生以後に作られたもののなかには、常磐木になったものもあります。例えば「装備品」がそれです。アーティファクトのサブタイプで、オーラのように扱いますが、唱えたり装備したクリーチャーが死亡したりしたら戦場……場に残ります。そう、そういえば「死亡する」という言葉をまた使うようになりました。長い間使わなくなっていたのですが、また使うようになったのです。キャントリップ、つまり追加の効果でカードを引くカードもあります。これのおかげで、通常1マナより弱いような効果を持つカードを作ることができるようになりました。それから、構想はしているかもしれませんが、多色のカード、つまり複数の色のマナをコストとするカードもあります。2色のどちらでも払える混成マナというものも存在します。多色が「AND」なのに対して、これは「OR」に当たるわけです。それから、分割カード。2枚のカードを縮小して1枚に印刷したもので、そのどちらか半分を選んで唱えることができます。多色、混成、分割カードはどのセットでも使うというわけではありませんが、必要とするセットでは採用されます」

「他に何かアドバイスはない?」

「ありますよ。イラストには注意してください。初期のマジックのカードは、イラストがカードの効果と一致していなかったために混乱を招きました。中でも最大の問題は飛行です。イラストが飛んでいるように見えるのに飛行を持っていないとか、その逆とか」

「なるほど、アートには気をつけるよ」

血の芸術家》 アート:Johannes Voss

「あと、カード枠を変更して、文字を読みやすくしました。特にカード名です。元のフォントやレイアウトでは、カードが読みにくかったのです」

「気付かなかったな」

「ああ、それから、もう1つありました。これから、セットごとにカードの裏面を変更するということを考えるはずですが、これは最悪です。でも変更した方がいいところもあります。裏面から「Deckmaster」というのは消しましょう。意味がなくなります。フォントを青から黄色にしましょう。もうちょっと弄りたいミスもありますね」

「オーケー、わかったよ。変わったのはそれぐらい?」

「そうですね、かなり説明したと思います。あ、そうだ、違う、私の本題はコレじゃなかった」

「え?」

「ここに来た理由は、変化の説明じゃないんです。私が来たのは、我々ができなかった、そして既に手遅れでできない、ことについて語るためなんです。一番最初からやりなおすなら、どうしてもやりたいことがいくつもあるんですよ」

「今なら一番最初だから手遅れではないね。マジックがしなかった、すべきことというのは? マジックの将来について過去形で語るのは気持ち悪いけどね」

「よく聞いてくれました。まず、インスタントをカード・タイプではなく特殊タイプにしたい。そうすれば「インスタントかソーサリー」というような書き方はなくなる。パーマネントでない呪文は全てソーサリーになる。そして、今インスタントと呼ばれている一群はインスタント・ソーサリーになる。パーマネントは瞬速を持つ必要はない――ああ、説明していなかった。瞬速は、インスタントをプレイできるときにプレイできるパーマネントが持つ能力だ。これらは単にインスタントの特殊タイプを持つだけになる。インスタント・クリーチャー、インスタント・アーティファクト、インスタント・エンチャントというわけだ。こうすればキーワードは1つ減らせるし、ルール文章はかなり簡明にできるし、パーマネントでない呪文を1語で表せるようになる」

「それは簡単だね」

「そうとも。私の時代では、「インスタントやソーサリー」を参照するカードがあまりにも多く存在するので、この変更は間違いなく混乱を招く。しかしマジックの最初からそうだったなら……」

「君のところには、何枚ぐらいのカードが存在するんだい? いや、君の時代には、か」

「15000枚以上ある」

「オーケー、なぜそれほど変更が多かったのかを知りたいね」

「次に、カード枠を変更して、区別が付けられるようにしたい。特にパーマネントかパーマネントでないかは重要だ。土地をもっとはっきり区別できるようにもしたい。この違いが、手札でカードを広げたときにわかるようにしたいのだ。『未来予知』というセットがあって、そこでは「未来的」なカード枠を作った。これは出来が良かったので採用したい。マナ・コストを左側に縦に並べることで、広げたときに見ることができるようになっている。それに、左側にしたことで、カード名とマナ・コストを一覧できる。左上の隅にカード・タイプを表すシンボルもあった。これも残したいね」

 そう言って、私はiPhoneを操作し、リチャードに『未来予知』のカード枠を見せた。

「でも、2つ変えたい部分があるんだ。まず、マナ・シンボルの順番を色マナからに。色は最も重要な情報で、プレイヤーがマナ・コストについて求めたところだ。そうすれば、色マナ・シンボルが角に近づくから、広げたときにも見やすくなる。マナ・シンボルについての2つめが、不特定マナの表記だ。1マナごとに1つのマナ・シンボルを使うようにして、複数点の不特定マナを使う場合は複数個の不特定マナ・シンボルを使うのさ。例えば、《丘巨人》のマナ・シンボルは4つで、赤マナ・シンボルを最初に、その後に不特定マナ・シンボルを3つ書く。より多くの無色マナ・コストを示すため、無色マナ5点を示す大きなマナ・シンボルも必要だろう。この変更は、新規プレイヤーにわかりやすくするためだ。マナ1点はマナ・シンボル1つで表すというわけだ」

「面白いね」

「非常に多くの新規プレイヤーにマジックのやり方を教え、非常に多くのグループと話をした経験から、現在のマナ・コストの書き方は最適なものではないと判った。問題は、マジックのカードの重要な要素の1つを、状況によって違う読み方をしなければならないということは全く美しくないということである。我々はこのことを『未来予知』のミライシフト・カードを通して学んだのだ」

「他には?」

「うむ。もし最初からやり直せるなら、アーティファクトとエンチャントのメカニズム的差をより明確にするだろう。全体に影響する効果はエンチャントだけにする。アーティファクトではそういうことができない。その代わりに、ターンに1回使える能力というのはアーティファクトのものだ。タップ・シンボルが存在する――ようになる。そして、ターンに1回使える効果を持つ物品はエンチャントにはしない。ただし、ターンに1回誘発する誘発型能力は問題ない。この変更を『ミラディン』ブロックの際にしようとしたのだが、既にあまりにも多くの人気カードが存在していて取り返しが付かなかったのだ。もし最初からやり直せるなら、プレイヤーにとってそれが当たり前になる。《吠えたける鉱山》はフレイバー的に正しい青のエンチャントになり、そして世の中の人はそれ以外の世界を知らないのだから問題は何もない」

吠えたける鉱山》 アート:Ralph Horsley

「『ミラディン』というのはエキスパンションかい?」

「次元の名前でもある。人工的に作られた機械の次元だ。さておき、マジックはあまりにも長い間ドミナリアに拘りすぎていた。これも修正できるところだろう。また、もしやり直せるなら、クリーチャー・タイプについてももう少し考えたい。クリーチャー・タイプは言ってみれば進化を続けており、一貫性が失われているのだ。種族/職業を意識して始めるべきだし、論理的にどう分類するかを考えるのにも時間を費やすべきだ。特に動物には意識が必要だ。そう、クリーチャー・タイプは「犬」であるべきだ」

「何が犬であるべきだって?」

「いや、なんでもない。ただの犬だ。これは重要だ。クリーチャー・タイプといえば、ファイレクシア人もクリーチャー・タイプにすべきだ。これは間違いだった」

「ふぁいれくしあ……人?」

「ああ、強大な悪の種族だ。近いうちに目にするだろう」

「オーケー」

「カード・タイプ行に関して言うと、フレイバー的な特殊タイプ、例えば「火」とか「水」といったものを掘り下げたい。それがあれば、テーマ的でありながらカード・タイプに縛られないデッキを作ることができる」

「なぜ君の時代にそれをしなかったんだ?」

「それをしないままに時間を過ごしすぎ、そうすることが不自然に見えるようになっている。そして過去――君から見たら未来だが――の様々な人気カードを再録することは難しいのだ。そうそう、特殊タイプと言えば、もう一つ重大なやつがある。『伝説の』の特殊タイプに、メカニズム的意味を持たせないようにしたい」

「『伝説の』?」

「唯一性を持つ人や物や場所を示すものだ。これは非常にフレイバー的なので、非常に注目を集めることになる。伝説のクリーチャーを中心にした人気のカジュアル・フォーマットも存在するほどだ。我々の現在におけるルールの問題は、この『伝説の』がほとんど欠点だということである。私は、ユーザーに愛されたいと思う類のカードに必ず欠点があるというのは望ましくないと思う。この欠点を前提にして長年開発してきたので、このルールを取り除くことは非常に難しいのだ。しかし、もし最初からこの欠点がなければ、マジックはその欠点がないことを前提に形作られていっただろうし、より良い結果になっていたことだろう。他のカードとの問題が出るかもしれないが、私は『伝説の』を欠点ではなく長所にしただろうと信じている」

「なるほど、それについてかなり考えたようだね」

思考閃光》 アート:David Rapoza

「想像できないほどに。私はこの話題についてポッドキャストをしようと常々考えているほどだ」

「ぽっどきゃすと?」

「ネットでの音声配信だ」

「未来で人気なのか」

「驚くほどにね。さて、もう1つあった。『アルファ版』――今君が取り組んでいる最初のセットの初版のことだが、にアーティファクト・クリーチャーがあるだろう? 私は、同じようにクリーチャー・エンチャントも作るだろう。魔法の力で発生したように思えるもの、例えば幻影なんかをクリーチャー・エンチャントにする。メカニズムでなくフレイバーで区別することで、バニラのクリーチャー・エンチャントを作ることができるのだ。マジックをこの方向で始めれば、クリーチャー・エンチャントもマジックの普通の一部になることだろう」

「それは未来に変更できないことなのかい?」

「新しくクリーチャー・エンチャントの種族を導入することはできるかもしれないが、それまで長年普通のクリーチャーとして扱われてきた概念をなかったことにするのは難しい。また、何かを表現する方法を変えたからと言ってそれまでの人気カードを採録するのもまた難しいのだ。それまでそうだったなら、プレイヤーはそれを疑いもしないだろう」

「それで全部かい?」

「ほとんど言った。あと少しだけあるがね。開始フェイズを3つでなく2つのステップに分ける方法を検討している。対象を失った呪文が立ち消えになるというルールは必要ないと思う。プレイヤーが得るはずのカードを削ることを示すために、「手札から捨てる」と同じように「ライブラリーから捨てる」という言い方もありだろう」

「削る?」

「『ライブラリーの一番上にあるカードを墓地に置く』という意味のスラングだ。おそらく、これで全部言っただろう」

「かなりのことを教えてくれたね。それに、いいタイミングで教えてくれた。この変更のほとんどを取り入れることができると思うよ。これでマジックはより良いものになるだろう」

「ちょっと待ってくれたまえ」

 私は記憶消去棒を取り出した。

記憶への消失》 アート:Rebekah Lynn

「それは、できないのだよ」

「え?」

「私は自分が満足したくてここに来たのだが、過去を変えてしまう時間旅行ものの映画は大量に見たことがある。マジックが今日あるのは、君がやったあらゆることがその原因なのだ。そして、それがわずかでも違ってしまえば、マジックが現在のマジックと違う時間線になってしまうだろう。私が変えることが正しい選択であるという保証はないので、今日のこの会話が君の中に残らないように記憶を操作させてもらう。君に会えて良かった、この、今の君に。少なくとも私にとっては最高の思い出だ。話してくれてありがとう。未来に帰って、この話を活かしてスゥルタイ特集に向かうとするよ」

「それがどういうことかはわからないが、記憶を消す前に一言だけ。私にマジックの将来を教えてくれてありがとう。すばらしい未来だ。待ちきれないよ」

「マジックは私の将来にも多大な影響を与えたのだ。そう、作ってくれて、ありがとう」

 そう言うと私は装置を動作させる。強烈な光がリチャードを包み――

 その次の瞬間、私は光とともに消え失せていた。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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