「魔法の軍団」

更新日 Making Magic on 2015年 2月 16日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

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 王、大統領、カン特集へようこそ。今週は様々な種類の指導者について掘り下げていく。マジック史上の指導者を振り返り、それらのカードがどのように作られたのか(作られなかったのか)について掘り下げていくのは面白いに違いない。


Chicken a la King》 アート:Mark Zug

Chicken a la King》》(『Unglued』)

 最初、『Unglued』のデザインには何もメカニズム的テーマは存在しなかった。銀枠で、競技マジックでは使えないということ、そして、フレイバー的に馬鹿馬鹿しく、黒枠ではメカニズム的にできないことを大量にやるということは予定されていたが、全体を通してのテーマは存在していなかったのだ。デザインの途中で、ニワトリというテーマが少し存在することに気付いた。ニワトリであるクリーチャーが数枚あり、そして初期のカード構想の中にもアートにニワトリが登場しているものがあったのだ。よし、『Unglued』にもテーマがあり得る、それはニワトリだ。

 あるとき、私は当時の首席デザイナー、ジョエル・ミック/Joel Mickに廊下で呼び止められ、「ニワトリは面白いかね?」と尋ねられた。そこで私はコメディにおけるニワトリの歴史を、ゴムで作られたニワトリのような例を取り上げて説明する必要があった。そうして、ジョエルは納得して立ち去ったのだ。

 ニワトリをテーマとする、というからには様々なニワトリのサイクルを作らなければならない。その中には、ニワトリ・ロードを作って、ニワトリ・デッキを作れるようにしなければならない(今日作るとしたら、ニワトリをいくつかの色に集中させてニワトリ・デッキを作りやすくすることだろう。しかしまだ歴史の浅かった当時、それに気付いてはいなかったのだ)。ある日、家で、私は当時付き合っていた、後に私の妻になる女性、ローラにニワトリの指導者の必要性について話していた。ローラが《Chicken a la King》という名前を思いつき、そして私は「それだ、カード名はそれにしよう」と言ったのを覚えている。

 その後、このセットの大テーマとしてサイコロ(特に6面体のサイコロ)を振ることが決まり、他のニワトリ4種のうち3種はサイコロを振っていたので、《Chicken a la King》もサイコロを振ることに関係づけようということにした。そうすることで、このカードをニワトリ・デッキ、サイコロ・デッキ、さらには私のお気に入り、ニワトリ・サイコロ・デッキで使うことができるのだ。

 元々、このカードはサイコロで6が出たときに+1/+1カウンターを各ニワトリの上にそれぞれ置くだけだった。しかし、このカード単体でも使えるようにする必要があると気付いたので、私はニワトリをタップしてサイコロを振るという能力をつけることにした。これによって、このカードはこれ1枚だけでも意味を持つようになったのだ。

 このカードのフレイバー・テキストを考えるのにも時間をかけた。《Chicken a la King》は、指導者であると同時にこれ自身もニワトリなのだということを表したかったのだ。最終的なフレイバー・テキストには大満足だ。魅力的な響きとニワトリのバックストーリー、そして読者が気に入るようなジョークを兼ね備えることができた。

 こうして《Chicken a la King》ができたのだった。


King Suleiman》(『アラビアンナイト』)

King Suleiman》 アート:Mark Poole

 『イニストラード』には白を除く各色からなる多くのサイクルが存在し、人間を包囲している怪物たちを表していた。興味深いことに、5色のうち4色のサイクルというのは『イニストラード』が初めてではない。初めて4色サイクルを作ったのは、史上初のマジックのエキスパンションであるところの『アラビアンナイト』だったのだ。『アラビアンナイト』では、リチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldは2つのサイクルを作っている。1つはジンで、1つはイフリートだ。どちらのサイクルも、青、黒、赤、緑の各カードからなっている。そして、このサイクルのバランスを取るため、リチャードはタップでジンやイフリートを破壊できるクリーチャー《King Suleiman》を作った。初期の白は、「邪悪」と見たものを先んじて殺すような色だったのだ。

 《King Suleiman》の元ネタは、聖書に登場するソロモン王だと思われる。物語上、ソロモンは、神話的なジンを従わせることができる、銅と鉄でできた魔法の指輪を授かっている。その後ジンはソロモンの入浴中にその指輪を盗み返すが、最終的にはソロモンは再び指輪を取り戻し、ジンを再び従わせるのだ。ジンはやがて瓶の中に閉じ込められることになる。この出来事は同じく『アラビアンナイト』の別のカード、ジンを呼び出すか5点のダメージを受けるかどちらかの結果が発生する《スレイマンの壺》で描かれている。

 《King Suleiman》の名前そのものは、オスマン帝国で最も在位期間の長かった(在位1520~1566年)第10代スルタン、スレイマン大帝から取っていると思われる。彼の治世に、オスマン帝国は文化的にも黄金期に入ったと考えられている(とWikipediaにあった)。


オリヴィア・ヴォルダーレン》(『イニストラード』)

オリヴィア・ヴォルダーレン》 アート:Eric Deschamps

 このカードのデザインは、私が吸血鬼には指導者がいることが重要だと考えたことから生まれている。あるデザイン会議の冒頭、私はホワイトボードに「ドラキュラ伯爵」と書き、「今日は、吸血鬼の指導者を作ろう」と言ったのだ。

 我々は吸血鬼の指導者がどうあるべきかという議論を重ねた。デザイン・チームはそのクリーチャーが他のクリーチャーを捕食し、殺すか吸血鬼にしてしまうという考えを気に入っていた。ただし難しいところは、それをメカニズム的にどう再現するかというところだった。結局の所、我々は捕食するという行為をダメージを与えるということで表すことにし、〈ドラキュラ伯爵〉はさらに強くなった。この能力に何か追加の要素を加えるとしたら? ダメージの他に、その被害者を吸血鬼にするとしたら?

 こうすれば、クリーチャーを捕食して殺してしまうことも、節制すれば吸血鬼にしてしまうこともできる。次の問題は、なぜそうしたいのか、だった。しばらくは、我々はそのクリーチャーが赤の能力1つと黒の能力1つ、あわせて2つの能力を持つという発想を弄っていた(『イニストラード』の吸血鬼は黒赤だったからである)。伝統的に、捕食と言えば黒である(それは吸血鬼が通常黒だからである)。しかし本質的には直接ダメージなので、この能力を赤の能力とした。そのため、黒の能力は何か黒ができることをする必要があった。

 フレイバーを軸に考えていくと、答えは明白だった。吸血鬼の指導者は他の吸血鬼を自分の側に呼び寄せることができるべきだ。通常、クリーチャーを盗むのは青で、一時的に盗むのなら赤の領分である。しかし、黒にも時折クリーチャーを盗む効果が存在する。これはつまり、目を惹くカードになるということだ。黒が特例としてその能力を持てば、それは特例なのだ。この2つめの能力はフレイバーに富み、そして1つめの能力とのシナジーも非常に高い。これこそ〈ドラキュラ伯爵〉だ。

 話はこれで終わりではなかった。私はこのカードの大ファンだったが、当時はまだルール・マネージャーの任にあった(ルール・マネージャーを辞めたのは『イニストラード』のデベロップの末期だった)マーク・ゴットリーブ/Mark Gottlieb はこの出来映えに不満だった。彼はクリーチャーを吸血鬼にするということに存在する記憶の問題を嫌っており、継続的に盗むのはやり過ぎだと感じていたのだ。彼と私はこれについて延々議論を重ねた。デザイン・ファイルは私の意見が通った形で提出され、デベロップ中にレア投票がおこなわれた。レア投票とは、デベロップが用いる道具の1つで、あるセットのレアや神話レアをウィザーズ社内のマジック・プレイヤーに見せ、第一印象を聞くというものである。〈ドラキュラ伯爵〉はレア投票に勝利し、私の意見が正しかったということを確信させてくれた。

 〈ドラキュラ伯爵〉という名前を付けた時点で、それは仮の名前だということはわかっていた。その名前を使ったのは、誰でも何をイメージしているかわかるようにするためである。その後、クリエイティブ・チームは元ネタの性別を逆にするというクールなことを思いついた。イニストラードの吸血鬼の指導者が女性だったら? こうして《オリヴィア・ヴォルダーレン》が生まれたのだ。


妖精の女王、ウーナ》(『シャドウムーア』)

妖精の女王、ウーナ》 アート:Adam Rex

 混成カードのデザインは難しい。青黒混成カードはその中でも特にデザインするのが難しいのだ。なぜなら、混成カードはその2色のメカニズム的な重なり部分を使うからである。マジックに存在する2色の組み合わせ10種の中で、どの重なり部分が一番小さいかとなると、青赤と青黒である。そのため、このカードのデザインは困難を極めた。

 『ローウィン』の青と黒に存在したフェアリーは、下品で汚らわしい小型クリーチャーだった。その後大オーロラが訪れ、すべてが変わったのだ。ああ、一部は変わっていない。フェアリーは相変わらず黒青で、下品で汚らわしいクリーチャーだった。《妖精の女王、ウーナ》はその女王だった。《妖精の女王、ウーナ》は1年間を通しての物語の登場人物だったので、彼女のカードには注目が集まることになることがわかっていた。

 そこで、我々はフェアリーの女王というフレイバーを再現する必要があり、しかも青黒の混成カードでそうする必要があった。なぜこのカードは混成でなければならなかったのかというと、『シャドウムーア』がその半数のカードが混成カードであるという混成のセットであり、そのため目を惹くカードのほとんど、中でも伝説のクリーチャーは、混成にする必要があったのだ。また、フェアリーは青と黒に存在していたので、その指導者はどちらの色でもプレイできる必要があった。

 我々はまず彼女には飛行が必要だというところから始めた。フェアリーのほとんど大多数は飛んでいるので、フェアリーの女王には飛行が必要だ。飛行は青と黒の両方に存在する。次に決めたのは、《妖精の女王、ウーナ》にはフェアリーを作る能力が必要だということだった。トークン生成はどの色にも存在するので、重なり部分にもなる。生成されるトークンはフェアリー――最終的にはフェアリー・ならず者――なので、飛行を与えた。『シャドウムーア』ブロックは色関連であり、《妖精の女王、ウーナ》は青黒だったので、それらのトークンも青黒になった。

 数少ない青と黒の重なり部分の1つが、「ライブラリー破壊」(ライブラリーから直接墓地にカードを送ること)である。通例では、青はライブラリーの上から、黒はライブラリーの中の特定のカードを扱うが、お互いに相手の色の効果においても第2色に位置する。最初は、トークン生成とライブラリー破壊の2つの能力を持たせることを検討していたが、その2つの能力はあまりにもかけ離れているように感じられた。そこで、この2つの能力を組み合わせることを検討することにしたのだ。

 その結果、対戦相手のライブラリーを破壊し、そして何らかの情報を見てフェアリー・トークンを得るかどうかを決めるという発想にたどり着いた。『シャドウムーア』には「色関連」というテーマがあったので、色を選ぶのは当然に思われた。最終的な決定は、Xを起動コストに含むことで、ゲームが進むにつれて《妖精の女王、ウーナ》のコントローラーはさらに多くのカードをライブラリーから削り、そしてさらに多くのフェアリーを出せるようになった。《妖精の女王、ウーナ》は後に非常に人気のある統率者になったので、私はこのデザイン上のパズルを納得いく形で解けたことを嬉しく思っている。


Sidar Kondo》(『Vanguard』)

 実際に世に出たカードについては常々語ってきたが、世に出なかったものについてはあまり語っていない。シダー・コンドはジャムーラの部族の指導者である。彼の名がもっとも知れているのは、実子1人と養子1人、2人の少年の父親としてかもしれない。彼の実子の名前はヴュエル/Vuelだが、おそらくよく知られているのは彼がラースに渡った後に得た名前、ラースのヴュエル、あるいはヴォルラス/Volrathとしてだろう。ヴォルラスはウェザーライト・サーガの序盤における主な敵であり、『テンペスト』ブロックの主な登場人物の1人である。

 シダー・コンドの養子が、ウェザーライト・サーガの主人公、ジェラード/Gerrardだ。ジェラードは大予言を叶える運命にあり、彼を危険から守るために、幼少時から《Sidar Kondo》の元に送られた。《Sidar Kondo》は主要登場人物ではないが、『Vanguard』をつくることになったときにカードにするに充分な立ち位置であった。この話はこのカードそのものの話ではなく、『時のらせん』の時に私が作った伝説のクリーチャー・カードについての話である。

 『時のらせん』は過去を中心にした時間をテーマにしており、強い郷愁要素があったので、それまでカードになっていなかった登場人物を伝説のクリーチャーにすることにした。『ウェザーライト』の登場人物のほとんどはカードになっていたので、まだカードになっていない人物を探すことになり、シダー・コンドが相応しいように思った。彼は(ウェザーライト・サーガの序盤、最初の3セットだけを舞台にしている)『Vanguard』のカードにしかなっておらず、伝説のクリーチャー・カードにはなっていなかった。

 私は彼をデザインしたが、クリエイティブ・チームは彼をセットに入れないことにした。このセットには《工匠の神童、ミシュラ》や《ザルファーの魔道士、テフェリー》と言った主要な登場人物がおり、《特務魔道士ヤヤ・バラード》のようにファンの多い人物も、《高位の秘儀術師、イス》《ゴブリンの戦術家、半心臓のイッブ》《コロンドールのマンガラ》のようなマイナーな登場人物もいる。このセットではフレイバー・テキスト出身の《サッフィー・エリクスドッター》や《二の足踏みのノリン》も個人的に推していた。シダー・コンドは充分には知られていないと判断されたのだ。彼は『Vanguard』のカードだったのでそう抗弁したが、駄目だった。そういうわけで、シダー・コンドは伝説のクリーチャーにはならなかったのだ。

 ……いつか、きっと……。


スリヴァーの女王》(『ストロングホールド』)

スリヴァーの女王》 アート:Ron Spencer

 《スリヴァーの女王》はマジック史上初の5色カードである(正確に言えば、「初めて印刷されてブースターに入った」5色カードだ。厳密に言えば、それまでにも1996年世界王者・カードを作っているが、これは1枚しか存在していないのだ)。そして、それだけではなく、マジックの中で最も人気のある種族であるスリヴァーの指導者でもある。《スリヴァーの女王》がいかにしてできたのかお話ししよう。

 スリヴァーは最初、マイク・エリオット/Mike Elliottという男の私製セット、「Astral Ways」の中で作られた。マイクは後に開発部の一員となり、最も多作なデザイナーの1人となる(今も、リード・デザイナーを務めたセットの数がマイクよりも多いのは私だけなのだ)。マイクと私はどちらもデベロッパーとして開発部に入ったが、どちらもデザイナーになることを目指していた。

 マイクが雇われている間に、開発部は「Astral Ways」セットをマイクから買い取り、そして彼はその中の多くのカードを『テンペスト』のデザインに投入した。スリヴァーと呼ばれる一連のクリーチャーは、天から地に落ちて無数の欠片に分かれた、ある単一の人格の欠片をそれぞれ表していた(確か、その人格は神の一種だったと思う)。スリヴァーの元々の名前は、それぞれその人格の身体の一部だった。もっとも印象深かったのは、その人格の脳を表したものだった。

〈支配者の精神〉(レア)
WUBRG
レジェンドの召喚

7/7
トランプル
すべてのスリヴァーは+1/+1の修整を受ける。

 メカニズム的には、スリヴァーは『アルファ版』の《疫病ネズミ》を元にしている。マイクはこのカードの動きが気に入り、そして同じような効果を持つクリーチャーの種族をデザインした。違いは、1種類のクリーチャーではなく、1種族のクリーチャーだということである。我々はスリヴァーをプレイし、そしてすぐに惚れ込んだのだ。問題は、マイクが余りにも多くのスリヴァーを作っていたので、我々はそれを分割する必要があるということだった。

 そしてデザインの進行中、私はマイケル・ライアン/Michael Ryanという人物とともにウェザーライト・サーガを組み上げることに忙しかった。マイケルと私は、マジックには大きな物語が足りないと考え、何年にもわたる物語の登場人物とストーリーラインを作っていった。『テンペスト』の物語に取り組んでいる間に、マイケルと私はスリヴァーを物語に登場させる手段を見付けなければならないと気がついたのだ。

 最終的に、我々はスリヴァーを別次元(まだどこだか判っていない。いつか判るかもしれない)からの侵略者的種族にした。そして、物語の敵役であるヴォルラスはスリヴァーを見付け、研究のためにラースへと運んだのだ。ヴォルラス同様、これらのクリーチャーもまた変身能力を持ち、そして意識を共有していた。充分近くにいさえすれば、お互いに思考を共有することができるのだ。例えば、スリヴァーのうち1体が一対の翼を持つものに変化する方法を覚えたなら、その近くにいる全てのスリヴァーはその知識を共有し、そして飛ぶことができるようになるのだ。『テンペスト』の《メタリック・スリヴァー》は、ヴォルラスによる作品で、スリヴァーを探るためのものだった。そのため、《メタリック・スリヴァー》は能力を得るだけで与えないのだ。

 我々は、5色スリヴァーをブロックの第2セット『ストロングホールド』に先送りすると決定していた。マイケルと私は、史上初の5色の伝説のクリーチャーは特別であるべきだとわかっていた。マイクがそれをグループの頭脳にしていたのと同様、マイケルと私はそれを指導者にしなければならないと気付いていた。スリヴァーが集団意識を持っているということから、女王蜂になぞらえて《スリヴァーの女王》を作った。スリヴァーを産んだのは《スリヴァーの女王》なのだ(物語で語られてはいないが、ヴォルラスは《スリヴァーの女王》を捕らえ、そして《スリヴァーの女王》がラースにいる全てのスリヴァーを生み出したのだ)。

 『ストロングホールド』のデザインで登場したカードは次のようなものだった。

〈支配者の意識〉
WUBRG
レジェンドの召喚

7/7
トランプル
スリヴァーとして扱う
3:スリヴァー・トークンを1体場に出す。このクリーチャーを1/1の無色のクリーチャーとして扱う。

 このスリヴァー生成が、マイクがメカニズム的に作った後で物語に反映されたのか、物語からデザインを作ったのかは覚えていない(多分前者だと思う)。しかし最終的には《スリヴァーの女王》はスリヴァー生成能力を持つことになった。

 物語において、ヴォルラスが(部下のグレヴェン・イル=ヴェクの手で)ジェラードがその運命を果たすために必要な魔法の道具群であるレガシーを奪い、そして《スリヴァーの女王》に守らせた。カーンは《スリヴァーの女王》を見つけ、そしてスリヴァーが《スリヴァーの女王》のものであるのと同様にレガシーはカーンのものであると説き(カーンはレガシーの1つであると同時にその守護者でもある)、《スリヴァーの女王》に認められたのだった。

 カードに「スリヴァーの女王はスリヴァーとして扱う」と書かれているのは、当時、クリーチャーはクリーチャー・タイプを1つしか持てず、そして「伝説の」という特殊タイプはまだ存在せず、「レジェンド」というクリーチャー・タイプだったのだ。トランプルはやりすぎだ、また、《スリヴァーの女王》の目標は、それ自身で殴り勝つことではなく無数のスリヴァーを生み出すことだから、と言うことで、デベロップ中に取り除かれることになった。

 《スリヴァーの女王》は大人気となり、以降の5色スリヴァー・ロードの元となった。スリヴァーの歴史に興味がある諸君は、2004年のスリヴァー特集のときの私の記事を読んでみてくれたまえ(英語)。


沼地の王ソルカナー》(『レジェンド』)

沼地の王ソルカナー》 アート:Ron Spencer

 今日の締めくくりに、私のお気に入りのプレイテストの話をしよう。『時のらせん』のプレイテストで、私は元マジック・デベロッパーのデヴィン・ロー/Devin Lowと対戦していた。当時、そのセットには特定のカードを2回タップするというメカニズムがあった。ダブルタップ・シンボルを持つクリーチャーは1ターンに2回タップできるのだ。1回目のタップで90度回転させ、2回目のタップでは本質的に上下逆になるわけだ。アンタップ時にアンタップするのは1回分だけなので、ダブルタップしていた場合、完全にアンタップ状態になるには2ターンかかるわけである。もちろん、このメカニズムは1ターンに2回タップすることにメリットがあるような能力を必要とするのだ。

 その種のカードの1つが、タップして《陰謀団式療法》のするようなことをする黒のクリーチャーだった。土地でないカードのカード名を指定し、対戦相手は手札を公開して、その指定されたカード名を持つカードすべてを捨てるのだ。対戦相手が手札を公開しなければならないので、手札の内容を知っている状態で使える2回目のタップは非常に有効になる。1回目のタップが《陰謀団式療法》、2回目のタップは《強要》。そして同じカードなら何枚でも落とせるのだ。

 ところで。もちろんこのメカニズムはこのセットに入らなかった。奇抜だったが、デザインも難しく、プレイも結局は退屈なものになってしまった。最初のターンに2回タップし、それ以降は毎ターン1回ずつタップするだけになってしまったのだ。

 さて、ゲームは長期戦になり、デヴィンが何か巨大なものを積み上げていることは明らかだった。彼の手札は2枚だけで、そのうち1枚を使ってライブラリーから2枚の土地を探し、そしてそれらをタップ状態で戦場に出した(そのカードでは出せないと思う――プレイテストだからね)。そしてデヴィンは、次のターンに私が酷い目にあうと言ったのだ。

 そこで、私は件の黒のダブルタップ・クリーチャーを出した。速攻を与える方法があったので、即座にタップすることができた。このときが初めてカード名を知るためだけにタップしたときだった。デヴィンは脅威を1枚だけ持っているので、1回目のタップの目的はその手札を見ることで、その後2回目のタップでカード名を言えばいいのだ。

 『時のらせん』に詳しくない諸君のために添えておくと、『時のらせん』は巨大なセットだった。大型セットだというだけではなく、当時の大型セットは今の大型セットよりもなお大きかったのだ。また、『時のらせん』にはタイムシフト・カードと呼ばれるものが存在し、マジック史上の121枚のカードが収録されていた。デザイン・チームにいたアーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheはタイムシフト・カードを選ぶ任にあり、常に変わり続けていたので、プレイテストごとに何が入っているか私も知らなかったのだ。本体も大型セットで、さらに常時変わり続けるタイムシフト・カードがあるので、そのカードが何であるかという選択肢は無数にあった。マジック史上のあらゆるカードのどれでもあり得たのだ。

 幸いにして、ダブルタップのおかげで最初の推測は重要ではなかった。デヴィンが「何だと思う?」と言ったとき、私は冗談を言うことにした。「んー、《沼地の王ソルカナー》」名前が面白いから、そう言ったのだ。その前にタイムシフト・カードの一覧を確認したとき、そのカード名はなかった。しかし、ウケを狙っていただけなのでどうでもよかったのだ。

 デヴィンは驚いた表情を浮かべ、「あたり!」と言って《沼地の王ソルカナー》を捨てた。私はその時、マジックにおけるホールインワンを決めたようなものだと理解し、奈落のまわりでビクトリーランを決めたのだ。

 それ以来、《沼地の王ソルカナー》を見るたびにこのことを思い出すのだ。


大統領とその構成

 今日はここまで。諸君がマジック史上の偉大な指導者たちについての話を楽しんでくれたなら幸いである。いつもの通り、諸君からの反響を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、タルキールの氏族最後の1つ、ティムールの特集でお会いしよう。

 その日まで、あなたにあなたの奈落でビクトリーランを決める理由がありますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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