艱難汝を玉にす

更新日 Making Magic on 2015年 2月 23日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

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 ティムール特集へようこそ! 今回は第5回、最後となる氏族特集であり、緑青赤の楔について語ることになる。これまでの4つの氏族特集(アブザンジェスカイマルドゥスゥルタイ)でそうしてきた通り、今回も3色を1部屋に集め、いくつか質問して後は彼らの語り合いに任せることにしようと思う。このシリーズの目標は、各色の関わりについてしっかりと把握してもらうとともに、関わり合いを通してそれぞれの色の共通点や相違点を理解してもらうことである。色の理念に関する話に興味がある諸君は、こちらのページ(英語)から、私が長年にわたって書き綴ってきた20本以上に及ぶカラー・パイに関する記事群を一読してみてくれたまえ。

 それでは始めよう。


色の皆さん、ようこそ。今回のインタビューもこれまで同様に始めていきたいと思います。ティムールのマナ・コストで表記されている順番で、自己紹介と、ご自分の目標、そのための手段について一言ずつお願いします。

緑よ。私はティムール氏族の中心色で、受容が目標ね。そのために必要なのは調和よ。

青なのです。青は完成を目指していて、それは知識を得ればできるのです。

赤。自由を探求していて、そのために行動している、でいいかな。

それではまず、皆さんが、皆さんを繋いでいるこの氏族の特質についてどう感じておられるかお話しください。獰猛さについて、どうお考えですか?

あの、そのお話を始める前に、「獰猛さ」という言葉について話したいのです。辞書には、「文化的な人類が普通持っている自制の欠如」とか「複雑な、あるいは進化した文化の欠如」と書かれていて、どちらも文化的な反応の欠如として定義づけられているのです。

何の話だい?

えっと、この単語と青たちの関係について話すのですから、最初にその単語の意味を理解するべきだと思うのです。

「獰猛さ」という言葉の意味を掘り下げることは、獰猛さとは関係ないんじゃないかな。獰猛であるということは、つまり自分の衝動や直観に従うということ、いざというときに生き残るためにする必要があることをするということさ。

でも、定義には意味が隠れているのです。

キミは何でも考えすぎじゃないかな。自分の感じたままのことを口にするのは悪いことかい?

青は、獰猛さは物理的、感情的であるのと同じぐらいに心理的なものだと思うのです。

え?

いえ、でも、だから青たち3人がいるのです。青たちはそれぞれ違う形で獰猛さを持っているのです。

私にとっては、獰猛さというのは内なる力を求め、それを解き放つことね。

それは心理的な強さではないのですか? 筋肉じゃなく、頭脳だと思うのです。

そうね、内なるものね。

はい。

つまり、あなたは外を見る傾向があるということ。

どういうことなのですか?

生命はあなたに全ての答えをくれるわ。そして、それを見付けるために必要なのは内を見ること。私は調和という話をするけれど、それは森羅万象に逆らうのをやめ、そして必要なものはすべて自分の内にあるのだということを理解するということなのよ。

青はそうは思わないのです。生まれたときは何もなくて、ただ無限の可能性があるだけです。でも、その可能性は内じゃなく外にあるものなのです。誰でも何にでもなれます。でも、そのためには知識、経験、道具が必要なのです。

獰猛さは外から来ると言いたいのかい?

いいえ、そうじゃないのです。獰猛さというものは、防御のためにある心理的な壁を乗り越えることだと思うのです。獰猛さのおかげで、普通はできないようなこともできるのです。

つまり、獰猛さは規則を破るようなものだって?

そう考えてもいいと思うのです。

そう。規則を破るのはいいことだね。

私にとっては、獰猛さとは自分の獣性を受容するということ。私たち皆、自身の中に生命の網への繋がりを持っているわ。つまり、私たちには残酷な面があるということ、そして獰猛さはそれに触れるということよ。

獣性を感情と言い換えれば、僕も賛成だね。

青にとっては、獰猛さというのは、目的のために心理的な強さを探すために内省することなのです。

獰猛さの中にはほとんど思考はないわ。私が獰猛さを纏っているとき、頭脳からは遠く離れているもの。獰猛であるとは、頭ではなく躰と語ること。大地と連なる原始の力に身を委ねることよ。

緑の言う通りだね。獰猛さは、プシュケーの最も基礎的な要素、自分のイドに耳を傾けることだよ。そこに思考の入る余地はない。

獰猛さに心理的要素がないというのは、お二人が考えないからなのです。

どういうことかしら?

お二人とも、冷静な考えが前向きの力になるという考えを否定しているのです。お二人ともしっかり考えるということをしないので、青にはお話しするのが難しいのです。

あなたのやりかたでやらないと、私たちが馬鹿だって言うの? 面白いわね。

馬鹿だと言ってるわけじゃなく、考えてないだけなのです。お二人とも考えなしなのです。何かをしようと思ったときに助けになるような知識は世界中にあるのですが、お二人は他の人の経験に頼ることは絶対に駄目だと思っているみたいなのです。

あなたは確かな情報以外に答えを得られる方法があるかもしれない、とは思っていないみたいだけどね。

情報は客観的なものなのです。

生命は客観性だけじゃないわよ。

緑さんのものでもないかもしれないのですよ。

感性の存在しない冷たい世界に生きることを恐れたことはないのかい?

青にどうして欲しいのですか? 赤さんみたいに、いつも気まぐれでいろというのですか? そのとき考えていることを最優先にして、目先の判断をしろというのですか?

僕のあらゆる行動が不合理なものだと考えたいのかい? キミと僕の違いは、その動機だけだよ。僕は僕自身と僕の大切なものに正直であろうとしている。何かのために戦い、僕の生命を有意義なものにしたい。一方、キミは失敗しないことを動機にしている。キミがその、つまらない、熱のない、生命の感じられない、他の誰かと関わりも持たない、本当の幸せも、いや、どんな感情も本当には感じられないような生き方を楽しんでいればいいのだけれどね。

青にも感覚も、感情もあるのです。青はただ、感覚や感情の意味を理解し、振り回されないようにしているだけなのですよ。青たちに知性が与えられているのは、その知性を使って自分たちがどうあるか、どうあるべきかを決めることができるからなのです。死ぬときまでに、お二人がずっと愚かなままでいる間に、青は、青のなり得る最高の自分になるのです。

僕は僕のあり方に満足しているからね。そんなに苦労して変わろうとすることに意味があるかどうか、立ち止まって考えてみたことはあるのかい? キミは今のキミを嫌いなんだね。

今、あなたと私たちの決定的な違いが出たわね。私たちは内なる自分を見て、自分が何であるか、なぜ特別なのかを知るの。他の何かになる方法を求めて、外に答えを探したりはしない。

笑ったことはあるかい? 泣いたことは?

あなたがあなたであるという奇跡を噛みしめたことはあるかしら。日没の美しさや雨音の調べを楽しんだことはある?

お二人は成長しようとは思わないのですか? よりよくしよう、よくなろうとは思わないのですか?

知識を信奉する人にはあることだけれど、あなたは結論を急ぎすぎね。赤も私も、よりよくなるために生きているわ。ただ、あなたとはやり方が違うだけ。

それでは、次の話題に入りましょう。獰猛さの戦略に寄与する皆さんのメカニズム的要素は何ですか?

私たち皆、大型のクリーチャーを出す能力があるわ。特に、コモンでね。

緑と僕はトランプルがあるね。それに、パワーやタフネスを強化する能力もある。僕は火吹き、緑は《ルートワラ》能力がある。それに、強化呪文もあるね。青にも、+1/-1の強化がときどきあるよ。

成長の話でしたら、緑さんと青はカードを引くことができるのです。緑さんはクリーチャーでカードを引くことが多くて、赤さんと私はルーター能力があるのです。あ、でも、青は「引いてから捨てる」、赤さんは「捨ててから引く」なのです。

緑と僕はダメージも特長だね。僕はクリーチャー、プレイヤー、それにまあ、プレインズウォーカーに直接ダメージを与えるよ。緑も僕も、アーティファクトや土地を破壊することができる。緑はエンチャントも破壊できるし、プレインズウォーカーまで破壊できることがあるね。青は破壊はしないけど、クリーチャーを変化させたり、奪ったり、手札に戻させたり、無力化したりするよ。

緑さんと青は瞬速で奇襲ができるのです。赤さんと、時々は緑さんも、速攻があるのです。

それから、時とともに成長するパワー/タフネスも私の持ち味ね。+1/+1カウンターを動かして他のものを継続的に成長させることもできるわ。

緑と僕は、マナも扱えるよ。緑は土地を出したりマナ・クリーチャーを出したりして継続的に、僕は儀式や生け贄に捧げるパーマネントで一時的に、という違いはあるけれどね。

クリーチャー・キーワードを見るなら、青たち皆、戦闘で助けになるクリーチャー・キーワードを持っているのです。青には呪禁があって、誰も青の戦闘を邪魔できないのです。赤さんは先制攻撃や二段攻撃で戦闘を支配しますし、緑さんは接死、警戒、到達で戦闘を有利にするのです。

私たちは必要に応じて強くなるの。それは私たちが戦闘の勝者になるためよ。

青さん、敵対色2色と協力することについて少しお話しいただけますか?

青はいつも、問題には答えがある、と考えているのです。その答えを探すために時間と努力を使うのが大事なのです。例えば、近くの人と何か問題があるとします。意見が違うのです。青は、その近くの人たちの問題が何なのか理解するのに時間を費やすのです。なぜ怒っているのでしょう? 青が何か怒らせるようなことをしたのでしょうか? 状況を是正するために青にできることはあるのでしょうか? 青がこうして次の一手を考えている間に、緑さんは喧嘩を始めるでしょうし、赤さんはお隣の家を燃やしてしまうでしょう。これが大問題なのです。

キミの問題は、僕たちが行動すること? 僕たちが僕たちの問題に対して何かすることが問題だって言うのかい?

いいえ、青にとっての問題は、お二人が行動することじゃないのですよ? お二人が考えなしに行動することなのです。お二人は、どんな時も解決に向けての最短距離を探しているのです。

つまり、最長距離のほうがいいと言いたいのかい。

お二人の作る混沌には気付いていないのですか? 感情は危険、衝動は無謀なのです。火が出たら近くの液体をなんでもかけようとするようなものです。その液体はガソリンかもしれないのですよ?

まず、僕は火を消さないよ。それはともかく、キミは感情が僕たちの本質でないかのように振る舞っているね。感情は誤配線ではないんだ。キミの感情はキミ自身なんだ。キミはキミであることを否定し、自己否定の中で生きているのさ。

感情だけが自分じゃないのです。青が感情を否定しているなら、赤さんは知性を否定しているのです。自分たちを形作っているのは感情ではなく思考なのです。すべての衝動に従っていたら、動物と一緒なのです。

あら。あなたは自然の動物たちの半分しか生命を楽しもうとしていないのね。動物たちは自分が何者なのかなんて悩まずに生きているわ。動物たちは自分を受け入れ、自分自身として生きているのよ。

それが、青たちと動物の違いなのです。動物には知性はないのです。より高い思考を持つこともないのです。青たちは動物ではないのですから、動物のように生きるべきではないのです。もっと上を目指せるのです。それがすべてです。青は、皆に自分の可能性を求めて生きてほしいだけなのです。

あなたは知性が質の目印だと思っているようね。あなたは賢い、けれど他の誰かのほうが速かったり、強かったり、情け深かったりするわ。生き残るためには様々な特質が存在するの。その特質として知性だとか知識だとか、そういう高次の脳機能を選ぶのはすばらしいことよ。でも、他のすべてをその枠で考えるのはおやめなさい。それは失礼なだけでなく、目先の判断というものね。

青が目先の判断をしていると言うのですか? 「先に殴って、それから尋ねる」のは赤のお家芸なのです。

キミのお家芸は「1時間待ってよ、答えるから」だね。

自制して悪いことはないのです。

あるさ。何もしなければ何も起きないと思っているのかい。キミが問題について考え込んで時間を無駄にしている間に、他の人は選択を済ませられるのさ。

そして、考えなしで行動すると、何が起こるかわからないのです。

何が起こるかわかることがそんなに大事かい。

赤さんを見ているかぎり、大事なのです!

あなたは常々完璧でありたいと言うけれど、内省するということを否定していては完璧にはなれないわ。

青は自分についての知識を評価しているのです。成長という中には、自分の長所と弱点を理解するということも入るのです。青は、青の理解を超える力が存在するとは思っていないのです。

あなたは全てを理解していて、「理解を超える力」が存在しないというなら、素晴らしいことね。

知識の色と言うわりには、知らないことが多すぎるね。

論理的議論のできないお二人を相手にするのは不利なのです。一体、何をすればいいのです?

情報を今すぐ欲しいと言う色が、僕たちから何かを学べるとは思えないね。

学ぶことの鍵は、心を開くことよ。

青の話は終わりなのです。次に行ってほしいのです。

赤、緑両氏が青に対して持っている問題はわかりました。今度はお二人の間の対立についてお伺いしたいのですが。

その答えは、お互いの友好色同士の対立を見たらわかるわ。私の白と、赤の黒ね。白と黒の対立は、全体の重要性とここの重要性の対立ね。赤と私はこの議論において反対側に立っているの。私は白ほど文化的ではないけれど、共同体は重要だと思っているわ。生き物は生命の網の中での役割を理解し、その役割を逸脱しないようにすることが重要なの。赤は、ずっと個々に焦点を当てているわ。赤の理念は、個々それぞれがその情熱に従うことから来ているから、当然個々の重要性寄りになるわね。

緑には、破壊と平和の両面性があるんだ。僕はその前者に寄っている。僕は行動することの必要を理解し、破壊をおこなうんだ。平和の側は、僕のやりかたとはかけ離れている。と言っても常に戦わなければいられないというわけじゃないよ。でも、何もしないということはできない。常に何かをしなければならないんだ。

赤は熟考しないし、長時間黙っていることもできない色ね。

緑は何もかもがどう関わっているかを少しばかり考えすぎる色だね。

そろそろお時間です。これまで同様、最後にそれぞれから、なぜティムールを選ぶべきなのか一言ずつお願いします。マナの順でどうぞ。

勝ちたいのなら、最強の戦士に賭けることね。

勝つためには、勝てると信じることが一番大事なのです。

勝ちたいと強く思っている人が勝つのさ。

ありがとうございました。


 これで楔のインタビューは最終回となる。諸君がこのシリーズについてどう思ったか、そして今後同じような記事を読みたいかどうか、メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、『タルキール龍紀伝』のプレビューで、サルカンが再編した変化をお目にかける日にお会いしよう。

 その日まで、力があなたとともにありますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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