ゾンビの鍛え方

更新日 Reconstructed on 2014年 8月 26日

By Gavin Verhey

When Gavin Verhey was eleven, he dreamt of a job making Magic cards—and now as a Magic designer, he's living his dream! Gavin has been writing about Magic since 2005.

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「ReConstructed」、低予算構築回へようこそ!

 君たちが何か新しいものを探しに来たとしても、あるいは持っているカードだけで組めるデッキを求めてたどり着いたとしても、ここに正解があるぞ。

 私は低予算構築の回が大好きだ。それがテーマの回は、いつだってユニークなことを考えさせてくれるとともに、挑戦しがいのある楽しい制限をかけてくれる。そう、今週も変わらず私は楽んでいるよ――超面白いデッキをいくつも受け取ったんだ。(それらの多くを記事の最後の「惜しくも選ばれなかったデッキたち」の項に載せておいた)。

屍術士の備蓄品》 アート:Seb McKinnon

 とはいえ、今週も集中して取り組むデッキはひとつだ。そこからレアのカードをいくつか抜いて、構築の難易度をどんどん「安く」していこう。今回のデッキリストはこれだ。

Travis Comstedt's Budget Necromancer's Stockpile

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低予算のルール

 デッキをどう動かすか説明する前に、低予算デッキ構築についての私の実施手法を軽くおさらいしよう。

  • 新しいレアや神話レアをデッキに加えない。むしろデッキに美味なレアを添えた追加料金を設定し、そのレアを調理するか、食べないかのいずれかを選んでもらう。
  • 上記の例外としてマナの安定がある。しっかりしたマナ基盤から得られる恩恵は多く、手に入れた土地は今後のデッキに活かせる不可欠なものだ。せっかくのカードも、唱えることができなければ君たちの力になってくれないだろう!
  • 代用品は用いない。低予算が現在のデッキより悪いバージョンを意味する必要はない――低予算はより容易に入手可能なカード向きのアーキタイプを構築することをまさに意味する。《波使い》や《スフィンクスの啓示》のようなカードを必要とするデッキにおいてそれを単純に代用できるカードは無い。
  • 低予算は弱いデッキではない。私はこの過程において最善ではないと思うデッキを作ろうとはしていない。マジックの歴史上には、大成功を収めた多くの低レアリティ・デッキがあるし、それらの跡を継ぐ方法は確かに存在する。

 各項目のいずれかについて詳細な説明を望むなら、最初の低予算記事の冒頭を確認してほしい。

 さて、このやり方を踏まえつつ、このデッキの戦術調査へと移ろう!

その戦術とは

 今回のデッキには、基本的にふたつの異なる攻撃手段がある。

 ひとつは、アグレッシブなゾンビ・デッキとして攻めること。今回のデッキは優れたクリーチャーを多く擁していて、それらはターンを重ねるたびに攻撃でダメージを稼ぎ出し、強力なクロックとなり対戦相手に迫る。現在のスタンダードで最強のビートダウン・デッキになれるかって? いや、たぶんそれはないだろう――だが、今回のデッキが持つもうひとつの攻撃手段、すなわち《屍術士の備蓄品》の存在により、そう言い切ることもできないだろう。

 《屍術士の備蓄品》は、今回のデッキの動きを劇的に変えてくれる。デッキに大量のゾンビを入れておけば、大抵はで繰り返しゾンビを生み出すことができるのだ。何度もトークンを生み出せるようになれば、ゲームの中心を完全に掌握したも同然だ。《屍術士の備蓄品》は、これ1枚でゲームに勝てるカードなのだ。

 今回のデッキを改善する上で鍵となるのは、《屍術士の備蓄品》を引けない場合を考えることだ。《屍術士の備蓄品》があるゲームはそれだけで最高の形となるため、あまり深く考える必要はない。が、《屍術士の備蓄品》がなくとも確実にデッキをスムーズに機能させることが重要だ。幸い、それを実現するために調整する余地はあるぞ。

 それじゃあ、デッキを通して見ていこう!

デッキ詳細

 今回のデッキのカードを1枚ずつ通して見て、不死の存在として残せるものとそのまま滅びゆくものを確認していこう。

屑肉の刻み獣

 まずはこのカードから話を始めようと思う。なぜなら、唱えるのに緑マナが必要なのはこいつだけだからだ。たしかに、《屑肉の刻み獣》はこの上なく今回のデッキに噛み合っているのだが、こいつ1枚のためにかなりの枠を割かざるを得ないのも事実だ。さらに、「レアリティキツツキ」が、私の頭をつっつきながら、こうささやき続けるんだ。「このカードを抜けば2色土地の束も一緒に抜くことができて、ずっとデッキが組みやすくなるぞ」と。

 「黒緑『備蓄品』」の方向に行きたいなら、プロツアー『マジック2015』にて、コンリー・ウッズ/Conley Woodsが《ゴルガリの死者の王、ジャラド》や《ロッテスのトロール》などを駆使した実に見事なリスト(英語動画)を使っていたぞ。そちらをぜひチェックしてみてくれ。私はそれらのレアを加えるわけにはいかず、また今回のデッキはコンリーのものとは別のものだ。今回は《屑肉の刻み獣》を抜いて、黒単の方向に突き進もう。

アスフォデルの灰色商人

 やあ、我らが商人じゃないか! 彼がゾンビであることはあまり注目されてこなかったけれど、こいつは今回のデッキに欠かせない逸材だ。

 アグレッシブなデッキにおける5マナはやや重い。それでもこいつはマナ・カーブの頂点へ据えるのに最高のカードだ。《アスフォデルの灰色商人》から《アスフォデルの灰色商人》と続けることで、多くのゲームを勝ち取れることだろう。喜んで4枚すべて残そう。

滑り頭

 普段はほとんど見受けられないこのカードだが、今回のデッキにはぴったりだ。1マナ域であるため、必要ならゲーム開幕からこいつを繰り出しダメージを稼ぎ始めることができ、それだけでなく《屍術士の備蓄品》で捨てたのちに何のコストもかからず「活用」ができるのだ。私はこいつをすべて残したい。

 今回のデッキでは1マナ域を十分に確保することが大切であり、できるならパワー2の1マナ域を加えたいところだ。ゾンビではないものの、私は《ラクドスの哄笑者》に興味を引かれている。こういったデッキを組んでいると「ゾンビ・デッキなんだから全部ゾンビにしなきゃ」という罠に陥りやすいところだけれど、どうしても足りないものを補うためなら、ときにはテーマから外れるのも悪いことではないのだ。今回のケースではしっかりとビートダウンを始めることが重要であり、そのためならゾンビでないカードをひとつかふたつ加えても問題ないと私は考える。《ラクドスの哄笑者》を4枚採用しよう!

血の公証人

 このカードは、今回のデッキにおいて信じられないほどの力を発揮する。アグレッシブなデッキにふさわしい2マナ域のクリーチャー? よろしい! 手札を使い切ったときに燃料を補給してくれる? よろしい! ゾンビである? よろしい!《屍術士の備蓄品》によるドローを増やせる? よろしい! 《血の公証人》はまさに今回のデッキにぴったりだ。こいつの枚数を減らすなんてとんでもない。4枚で決まり!

グレイブディガー

 《グレイブディガー》は、今回のデッキにおいてまずまずの仕事を果たしてくれる。ゲーム序盤にクリーチャーが墓地に行った? それならこいつが手札に戻してくれて、それを再び繰り出すことができるだろう――あるいは《屍術士の備蓄品》のエサにできるだろう。また、《アスフォデルの灰色商人》を再利用できるというのは良い能力であり、ドレインを繰り返すことで勝利をものにすることができるはずだ!

 だがしかし、《グレイブディガー》は私の求めるものとは違うと思う。4マナで2/2というサイズは決して頼りになるものではなく、また4マナを費やすなら道を切り開くような強力なものでなくてはならない――《グレイブディガー》がそういうものであるとは思えないのだ。

 この枠には、別のアドバンテージ源を採用することにしよう――ちょうど、《屍術士の備蓄品》を引き込むためにライブラリーを掘り進め、そしてゲームを終わらせるとどめの1発にもなり得るカードがあるんだ。2ターン目に使って良し、ゲーム後半に使っても良しの役立つカード、それが《血の署名》だ。《グレイブディガー》と比べてそのコストは半分。《血の署名》自体はゾンビじゃないけれど、きっとゾンビを引き込めるはずだ。ゲーム序盤の数ターンはクリーチャーの展開に費やしたいから、手札が詰まってしまうのは望ましくない。それでも2枚は《血の署名》を採用したいね。

悪意に満ちた蘇りし者

 2マナのクリーチャーでありながら攻撃するたびに3点のダメージを与えるというのは、それだけで黒いビートダウン・デッキで検討すべきカードだ。さらに「授与」を持ちゾンビであることも加味すれば、こいつをすべて残すのに不安はないだろう。

モーギスの匪賊

 悲しいことに、《モーギスの匪賊》はゾンビじゃない。それでも今回のデッキにおけるこいつは強力だ。デッキを送ってくれたトラヴィスがこいつを採用した理由が、私にははっきりとわかるよ。こいつは対戦相手側に黒いクリーチャーがなければ、どんなに膠着した盤面でも自軍の攻撃を通してくれる。さらに、自身に速攻を付与することで、3マナの速攻クリーチャーとしても使えるのだ。

 今回のものに似通った黒いビートダウン・デッキを使った経験から言うと、実はこういったデッキにおいては《モーギスの匪賊》が最強カードの一角であり、複数引いても嬉しいものだ。私はこいつをすべて残したい。そうするだけの価値はあると考える。

リリアナの肉裂き

 こいつは《世界を喰らう者、ポルクラノス》やその他緑の大型クリーチャーと渡り合うことができ、打点が高く、そしてゾンビである――加えて、マナ・コストに黒マナ・シンボルをふたつ持つ。即対処されなければ、《リリアナの肉裂き》はこれ1枚で軍団を築き上げ、対戦相手のとれる選択肢を狭めながらこちらの勝利を後押しする。こいつもマナ・カーブの頂点に据えたいカードであり、私は喜んで3枚採用したい。

エレボスの鞭

 このカードと《アスフォデルの灰色商人》のシナジーは凄まじい。《アスフォデルの灰色商人》によるドレインを再利用できれば、ゲームを終わらせることができるだろう。さらに、《エレボスの鞭》は《屍術士の備蓄品》で捨てたクリーチャーを戦場に戻す助けになるのだ。

 ところが、《屍術士の備蓄品》があるゲームでは、それだけで今回のデッキが最大出力で稼働しているということであり、《アスフォデルの灰色商人》を戦場に戻すという動きならまだしも、他のクリーチャーはむしろ普通に繰り出したいところだ。加えて、頭をつっついている「レアリティキツツキ」と仲良くやっていくために、私としては《エレボスの鞭》をデッキから抜いてしまいたい。サイドボードの選択肢としては優れているかもしれないけれど、メイン・デッキから採用したいとは思わないね。

屍術士の備蓄品

 こいつは「まさに」今回のデッキのためにあるようなカードであり、必ず1枚は引き込みたい。複数引いたら無駄になるけれど、それでも《思考囲い》や《拘留の宝球》に対する備えにはなるだろう。

 正直に言って、こいつは私が決めた「レアを加えない」というルールを破ってでも4枚目を加えたいカードだ。ここまで他のレアをいくつも抜いてきたから、《屍術士の備蓄品》をもう1枚加えてもいいだろう、と私は感じているよ。君たちの手元には4枚目がなくて、持っている数で済ませているかもしれない――だがたとえ今回のデッキにレアを4枚しか使えないとしても、採用すべきはこの《屍術士の備蓄品》なのだ。私としては、このカードが4枚未満のリストはそれだけで物足りなさを感じるかもしれないね。

 あと他に今回のデッキに加えたいのは、除去呪文だけだ。攻撃を通し続けるには、《クルフィックスの狩猟者》や《世界を喰らう者、ポルクラノス》、《群れネズミ》といった連中に立ち向かえることが肝要なのだ。今回のデッキでは、《究極の価格》3枚と《胆汁病》1枚という風に除去を散らそう。《胆汁病》は《太陽の勇者、エルズペス》のトークンや《群れネズミ》に効果的だけれど、今回のデッキが除去したいクリーチャーの多くに対しては《究極の価格》の方がよく効くのだ。

 ここまでの変更をすべて受けると、以下のようになる。

Gavin Verhey's The Unquiet Dead

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 低予算で戦いたいと考えているなら、このデッキはまさに探し求めていたものだろう! 2色土地は使用せず、使われているレアも極めて手に入りやすいものでできているぞ。たしかに、このバージョンを使用できるのは『タルキール覇王譚』が発売するまでの間だけだね――でも修正を加えればローテーション後も続けて使えることだろう。

 予算に縛られないバージョンも気になるかい? よし、まず何よりも明白に欲しいのは《生命散らしのゾンビ》だ。現在のスタンダードでひと際強力なこのゾンビは、持っているなら絶対に採用したい。そのためなら《リリアナの肉裂き》や《モーギスの匪賊》を抜いていいだろう。

 他にとれる方針としては、コンリー・ウッズの使用したバージョンもいいし、あるいは《殺人王、ティマレット》を用いた赤黒のバージョンもいいだろう。(こちらも《屍術士の備蓄品》と強烈なシナジーを生み出すぞ。) また、《群れネズミ》を試してみるのもいいかもしれないね。

 部族的な要素を強めたいなら、《ウルドのオベリスク》も試してみよう。3ターン目か4ターン目に「ゾンビ」を指定した《ウルドのオベリスク》を繰り出せば多くのデッキが厳しい戦いを強いられるだろうし、ゲーム中盤でも通せるダメージの底上げに役立つだろう。

 ああ、それから、みんな1枚だけ挿された《光輝の泉》が気になっていることだろう。2ターン目すぐに《血の署名》や《胆汁病》を使いたいのに、手札に《》がない場合だけはちょっとヤケドすることになるね。でもそれ以外に危険はないよ。もちろん、予算を気にしないなら、どこでも使われている《変わり谷》に目を向けるかもしれないけれど。

 ともあれ、ゾンビたちと共に楽しんでくれ!

惜しくも選ばれなかったデッキたち

 今週送られてきた現在のスタンダードで使える素晴らしい格安デッキには、他にどんなものがあっただろうか? 見てみよう!

Takuya Saitou's Rogue's Strategy

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Charles Jang's Wall of Eggs

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Yukio Sugiyama's Blue-Red Heroic

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Alex's Blue Engineer

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Van Mamokhan's Boros Burn 2.0

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Zach Ott's Constellation Dredge

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Lucas Lenard's I'm Blue

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Thibaud Ginoux's An Enchanting Token

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Jamila's RUG Infinite Mana

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William Brown's Sligh

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Ross Lobdell's Aggro Enchantments

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Brandon Regis's Charge Rush Kill

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Vos's U/W Rescue

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Henk-Jan van der Kemp's Kaboomist Aggro

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Jonah Comstock's Tar 'Em Out!

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(以下のご案内は、原文・本日(8月26日)掲載分の記事から抜粋・収録しております。 この節の文責・編集 Yoshikawa)

 『タルキール覇王譚』の到来を控えていることもあり、今週のデッキ募集はない。それまで、この記事(または、本当に何でも)に関して考えたことやコメントがあれば、気軽に私まで送ってほしい。ツイートや、私のTumblrでの質問として送っていただければ、必ず目を通すことをお約束しよう。

 今週末、PAX(訳注:北米で開催される大規模なゲームショー。シアトルで8月29日~9月1日に開催)に来てくれるのなら、マジックのブースを、そして皆さんを名高い「Magic PAX Party」へ招き入れる『タルキール覇王譚』のアクティビティをチェックすることをお忘れなく! 各氏族に1つのステーションが用意され、それぞれ独自のチャレンジを乗り越えると、その氏族の恩寵を受けられる。私はスゥルタイのステーションを受け持つ予定だ――もし来てくれるなら、気軽に「Hi!」と声を掛けてほしい。そうできなくても、私をパーティーで見つけられるだろう。そこで皆さんは、その場で公開される『タルキール覇王譚』のカードの光の波に洗われることになる――歴史に残るPAX Partyになることだろう。

 今週末、お会いできる読者の方もいることだろう……そして来週、多くの皆さんには、このセットのプレビューカードから1枚の公開とともにお会いできるだろう。では、またそのときに!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight

(編集からのお知らせ:来週の翻訳記事『ReConstructed』は、通常の8月19日掲載分の翻訳に加えて、『タルキール覇王譚』プレビュー記事となる9月2日掲載分を、日英同時掲載でお届けする予定です。本サイトでは、9月2日夜(8月19日掲載分)と9月3日昼(9月2日掲載分)にそれぞれ掲載いたします。)

(Tr. Tetsuya Yabuki / TSV testing)

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