悪逆なるウギン

更新日 Reconstructed on 2015年 2月 24日

By Gavin Verhey

When Gavin Verhey was eleven, he dreamt of a job making Magic cards—and now as a Magic designer, he's living his dream! Gavin has been writing about Magic since 2005.

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「悪役」とは、一体何だろうか?

 私が思うに、悪役は素敵な特権を持っている。圧倒的な力や富、それから手下、秘密基地。そして、飽くなき悪だくみ。たとえその壮大な計画をヒーローが邪魔しに来ても、それはそれで楽しめる!

 さあ、今日はそんな「悪役」を楽しんでみないか?

 本日のスゥルタイ・デッキは、はるばる日本から運ばれてきたものだ。ライブラリーを削って《エレボスの鞭》を用いるいつものスゥルタイ・デッキとはひと味違うぞ。新旧のカードを楽しくまとめあげた、これまでとは大きく異なるものだ。君たちもきっと、《悪逆な富》のおかげで立派な「悪役」になれることだろう!

 早速見てくれ!

フクハラ アスムの「センド・モア・マネー」

スタンダード
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その戦術とは

 この戦略の核となるのは、「マナ加速」だ――だがそのマナ加速プランは、もはや「コンボ」と呼ぶ方が似合うだろう。

 今回のデッキには強力で高コストなカードが多く採用されている。そして、それらの燃料となるのがこのカードなのだ。

 《春の鼓動》の能力は諸刃の剣だ。それはこちらの生み出せるマナを倍にし、同時に対戦相手の生み出せるマナも倍にしてしまう。《ケイラメトラの指図》は瞬速を持っているため多少はこちらが有利に使えるものの、それでも対戦相手が大量のマナで強力極まりない脅威を繰り出せることは変わらない。

 では、《ケイラメトラの指図》のようなカードはどのタイミングで用いるべきなのだろうか? そう、対戦相手ができることより間違いなく強力な動きをこちらができるときに使ってやればいい。

 例えば、こんなやつらを使えるときにね。

 ああ、そうだとも。対戦相手の方が有利になる状況はときどきあるかもしれない。けれど、このデッキは増えたマナを余すところなく常にアドバンテージへ繋ぐことができる。相手のエンド・ステップに《ケイラメトラの指図》を繰り出し、アンタップ後に《悪逆な富》をX=9で打つのはどうだい? それは多くのマッチアップで形勢に大きな影響を与えるはずだ。

 今回のデッキを磨く上で鍵となるのは、他のプランにも力を入れることだ。《ケイラメトラの指図》を用いたコンボは素敵だけれど、それがなくてもマナ加速ができるようにしたい。《精霊龍、ウギン》などのプレイしにくいカードを必要に応じて駆使し、力強くゲームを進めていこう。今の時点でも理想にかなり近い形にはなっている――それでも、この方針をさらに助けるものはまだあるぞ。

デッキ詳細

 我らの悪事に協力させるべきものと、奸謀渦まく計画から外してやるべきものはどれだろう? カードを1枚ずつ通して見て、残すべきものと抜くべきものを確認していこう。

森の女人像》と《クルフィックスの狩猟者

 私たちが目指すのは、マナを加速し、土地を伸ばし、引きを強め、それから時間を稼ぐことだ。つまり、スタンダードのいたるところに姿を見せるこれらのカードは、この上なく頼りになるのだ。こうしたカードを使うなら《命運の核心》が使えなくなるが、それはそれでいい――いずれにしても、《命運の核心》が必須になるとは思わない。この8枚はまったく目新しいものではないけれど、その強さに間違いはなく、今回のようなデッキにはすべてを採用したいくらいにデッキの核となるものなのだ。

春の具象化

 今回のデッキには、さらに軽いマナ加速を追加する必要があると思う。そこで大きな問題になるのは、どのカードを採用するかだ。

 《春の具象化》は第1ターンにプレイできれば最高だ。序盤のダメージを抑え、その後マナ加速も行ってくれる。除去に弱いところはあるものの、対戦相手がこいつを除去するのに2ターン目を使いクリーチャーを展開しないなら、それでいいだろう。

 だがしかし、ゲーム後半ではかなり弱くなるというのは見過ごせない。能力を起動するのに1ターンかかり、さらに持ってきた土地を実際に使うにはもう1ターンかかるのでは――《豊穣の泉》ですら、少なくともすぐに能力を起動して次のターンにはマナが得られる分優れていると言える。

 加えて、《春の具象化》はマナ基盤の組み立てにも影響を与える。《春の具象化》を1ターン目にプレイし、次のターンに即生け贄に捧げるつもりなら、タップ状態で戦場に出る土地はあまり採用したくないだろう。

 そこで、私が興味を惹かれているのは《キオーラの追随者》だ。こいつは土地をアンタップすることでマナ加速を行い(《ケイラメトラの指図》があれば、もう一度2倍のマナが得られる)、必要とあれば戦闘に参加して時間を稼ぐこともできる。コストは1マナ多いものの、《春の具象化》と比べて大きな差があるわけではない。《春の具象化》も、能力の起動には結局2マナかかるのだ。《森の女人像》の仲間に、《キオーラの追随者》を4枚採用しよう。

時を越えた探索

 今回のようなデッキでは、適切なタイミングで適切なカードを引き込み、適切な順番でプレイすることがよく求められる。《ケイラメトラの指図》の後にはゲームを決める強大な脅威をプレイしたいし、対戦相手の脅威にはしっかりと除去を引き込み当てていきたい。《時を越えた探索》は、必要なときに必要なカードを持っていられるよう手助けをしてくれる。今回のデッキは他と比べて「探査」を稼ぐことはできないものの、それでも十分にこのカードをプレイできるはずだ(《ケイラメトラの指図》を戦場に繰り出し、土地を4枚タップするだけでもプレイできるからね)。こいつは3枚採用しよう。

ケイラメトラの指図

 こいつは今回のデッキのキー・パーツだ。《ケイラメトラの指図》から大きな脅威へ繋げば、多くのゲームを勝ち取れるだろう。うん、たしかに危険もあるね――だがそれは、今回のような戦略を用いるなら受け入れられるリスクだ。

 私は《ケイラメトラの指図》を絶対に4枚採用したい。すべてのゲームで1枚は引き込み、デッキをしっかりと機能させたいのだ。

悪逆な富》、《奈落の総ざらい》、《精霊龍、ウギン

 これらは、基本的に勝負を決めるカードだ。《ケイラメトラの指図》を繰り出し、それからアンタップ後にこれらのうちどれかを放ってやろう――理想を言うなら、《悪逆な富》か《精霊龍、ウギン》がいいだろう。

 《奈落の総ざらい》を1枚採用するのは私としても好ましい。早い段階では他のふたつより弱いけれど、長いゲームにおいては《時を越えた探索》で探し出し勝利を確実なものにする手段が大切になるのだ。さて、問題は《悪逆な富》と《精霊龍、ウギン》の枚数だ。

 最適な状況で最適なものを使えるように、どちらも採用するのが望ましいだろう。マッチアップによっては片方が強い場合はあるはずだ。結論を言うなら、私はそれぞれを3枚ずつ採用する形が好きだ。《精霊龍、ウギン》の全体除去能力は侮れない。それでいいと判断したなら、《ケイラメトラの指図》から《精霊龍、ウギン》へと繋ぎ、[-5]で能力を起動して《ケイラメトラの指図》もろとも盤面を流すことだってあり得るのだ――対戦相手の戦場には(理想的には)何も残らず、《ケイラメトラの指図》によるマナ加速もなくなっている。

 よし、《悪逆な富》3枚に《精霊龍、ウギン》3枚、そして《奈落の総ざらい》1枚でいこう!

解消

 確かに、《解消》が活躍する場面はあり得るだろう。《霊気渦竜巻》や《信者の沈黙》、あるいは《ケイラメトラの指図》を構えてマナを残しているときに、《解消》が必要になることがあるかもしれない。

 そのようなことが考えられるにしても、プレイしようとしていた他のカードより《解消》の方が良い、という事態はほとんど無いと考えられる。《解消》を持っていても、《ケイラメトラの指図》をプレイしたい場合の方が多いはずだ。

 《解消》を使うなら、《ケイラメトラの指図》を繰り出した後の防御を任せる方が私としては興味を惹かれるかな。それなら、例えば《精霊龍、ウギン》をプレイしつつ、対戦相手の呪文を《解消》するためにマナを残すのもいいだろう。

 このように、《解消》が活躍する状況は確かにある。《火口の爪》で突然死、なんてのが避けられるなら避けたいところだ。しかしながら、《解消》は守りのカードであり、これが活躍するのは弾薬を撃ち尽くしてすべてが終わった後なのだ。私としては、《ケイラメトラの指図》からのゲーム・プランが動き出す前に機能するカードをもっと採用したい。

 とりわけ私が注目しているのは、《荒ぶる波濤、キオーラ》だ。こいつは《森の女人像》や《キオーラの追随者》(フレーバー的にも最高だね!)から繋げるのにぴったりな4マナ域だ。《荒ぶる波濤、キオーラ》は厄介な脅威から身を守るのに役立ち、またドローを進めて解答を探しつつマナ加速も行ってくれる。こいつは全体を通して今回のデッキにうってつけなカードであり、こいつを採用するなら打ち消し呪文を採用せず、《荒ぶる波濤、キオーラ》を繰り出すのに序盤からマナを使いたい。《荒ぶる波濤、キオーラ》3枚、これでいこう!

 今回のデッキにおける《スゥルタイの魔除け》は、多くの仕事をこなしてくれる――問題は、これが必須になるほどの活躍は必ずしも期待できないことだ。

 クリーチャーを除去できる……しかし今回のデッキにとって厄介なクリーチャーの多くは、《包囲サイ》や《凶暴な拳刃》などの軽い「多色」クリーチャーだ。ライブラリーを掘り進められる……だがこれもそこまで効果的とは言えない。《帰化》の効果は強力だが、いつでも欲しいわけではない。

 今回のデッキで一番気にかかることは、対戦相手の脅威を除去して長く生き残ることだ。すなわち質の高い除去呪文が欲しい。そこで、私は《スゥルタイの魔除け》の代わりに《英雄の破滅》を採用したいと考えている。

 今回のデッキにはプレインズウォーカーを除去する有効な手段がなく、それは大きな問題になる。(《解消》も抜いてしまったので、打ち消しで対処することもできない)。それを解決するのが《英雄の破滅》であり、それは対戦相手が繰り出す脅威のほとんどに対処できるのだ。

 今回は、《英雄の破滅》2枚を採用しよう。

信者の沈黙》と《霊気渦竜巻

 《ケイラメトラの指図》を置いたのに敗北するというケースで一番多いのは、対戦相手がクリーチャーを抱えており、それを一気に展開してビートダウンを始めることだ。

 《信者の沈黙》は、今回のデッキにおいて極めて強い。4マナと《英雄の破滅》より少々コストがかかるものの、ゲーム後半をしっかり固める際に輝くのだ。元々、今回のデッキで2体のクリーチャーを除去するための7マナを用意するのは簡単だが、こいつはとりわけ《ケイラメトラの指図》を繰り出した後により優れたカードとなる。その状況なら、《信者の沈黙》は《疫病風》のようなものに変わる――13マナを注ぎ込むだけで4体ものクリーチャーを追放できるのだ。

 《霊気渦竜巻》もまた、同様の役割を果たしてくれる。5マナで対戦相手のすべての攻撃に対処できるのだ。対処が一時的なものとはいえ、それが問題になることはないだろう。(さらに、《悪逆な富》のために対戦相手のライブラリーを整える機会にもなるぞ)。

 全体的には、ゲーム序盤の時間稼ぎにも使える分《霊気渦竜巻》の方がやや優れている。それでも、《時を越えた探索》を用いるデッキでならゲーム中必要に応じて探し出せるため、どちらも採用したいところだ。《霊気渦竜巻》3枚と《信者の沈黙》1枚、これでいこう!

時間への侵入

 マナを生み出す手段に長けた今回のデッキでは、《時間への侵入》を用いてとても素敵なことができる。1ターン内で《精霊龍、ウギン》から《時間への侵入》を同時にやるのはどうだい? 賛成!

 ところが、こいつが活躍するのは結局、すでに有利な状況でだけだ。大抵は、《ケイラメトラの指図》設置後に対戦相手のゲーム・プランをかき乱す《最悪の恐怖》のようなカードとか、対戦相手の攻勢を阻む強大な脅威やX呪文の方が好ましいだろう。そもそも、今回のデッキはすでに中身が詰まっており、枠に余裕がない。《時間への侵入》は抜くべきだろう。

 ここまでの変更をすべて受けて、デッキは以下のようになった。

ガヴィン・ヴァーヘイの「ケイラメトラの富」

スタンダード
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 ドスーン! どうだい、一風変わったクレイジーなスゥルタイ・デッキは? 《血の暴君、シディシ》や《エレボスの鞭》には目を向けてないぞ。

 今回のようなデッキには、メタゲームに合わせて変更を加えられる部分がいくつかある。例えば《火口の爪》が多く使われているなら、《思考囲い》や《解消》で身を守るべきだろう。同様にビートダウン・デッキを退ける必要があるなら、《英雄の破滅》を増やしたり、あるいは《胆汁病》のようなカードを採用することで、うまくいくだろう。

 このデッキは、序盤からマナを増やし強大な脅威を盤面に繰り出すことのできる楽しいものだ――存分に楽しんでくれ!《悪逆な富》を使うデッキが勝利を決めるカードは、一体何になるだろうね?

惜しくも選ばれなかったデッキたち

 こうしてスゥルタイ特集に送られてきたデッキには、他にどんなものが私の目に止まっただろうか? 見てみよう!

アサダ マサユキの「ダーク・ウォーター」

スタンダード
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ジェイムズ・ハンフリーの「スゥルタイ・スーパーフレンズ」

スタンダード
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マシュー・ジョンソンの「緑単スゥルタイ」

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ハヤカワ コウヘイの「悪逆な霧」

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トップハットの「ソルティ・スゥルタイ・ミッドレンジ」

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シンガイ アトの「ノー・シディシ」

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アイダンの「スゥルタイ・コントロール」

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 それではまた次回お会いしよう!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight

(編集より:今週のデッキ募集はありません。)

(Tr. Tetsuya Yabuki / TSV testing)

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