濫用すべき「濫用」を濫用せよ

更新日 Reconstructed on 2015年 5月 7日

By Gavin Verhey

When Gavin Verhey was eleven, he dreamt of a job making Magic cards—and now as a Magic designer, he's living his dream! Gavin has been writing about Magic since 2005.

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「濫用」特集へようこそ!

 今週は、「濫用」を存分に濫用していくぞ! メカニズムとしての「濫用」を使うだけでなく、「濫用」を持つカードを用いたとんでもないコンボも濫用してやる!

 今日の記事の「濫用」の濫用ぶりにらんよ……乱心せずついて来られるなら、ぜひこのまま読み進めてくれ。これからご紹介するデッキは、ちょっと……頭の体操が必要になる。日本からはるばる私のメール受信ボックスまで届いたそれは、ここ最近のスタンダードで目にするようなものとは一線を画したコンボ・デッキだ。

 さあ「先人」を濫用する準備をしよう。

 うーん……ちょっとしっくりこないかな。やっぱり、元のデッキリストの言い回しをそのまま使うことにしよう――濫用するのは「先祖」だ。

 うん、いいね。

 さっそく見てみよう。

ホンダ マサヤの「先祖」

スタンダード
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その戦術とは

 今日のデッキはいつもとひと味違うぞ。覚悟してくれ。

 とはいえ、いくつかのカードは見慣れたものだ。《森の女人像》や《包囲サイ》なんかはそうだ。《サテュロスの道探し》もそれなりに見る。

 だが一方で、妙に目立つカードもある。《死者を冒涜するもの》?《鍛冶の神、パーフォロス》?《シディシの信者》? こりゃ一体どういうことだ?!?

 うん、それらはすべて、あるカードによって結びつく。それは《先祖の結集》だ。

 今回のデッキは、《包囲サイ》を繰り出して攻撃する正統派のミッドレンジとしても機能する。ところが、引きによってはまったく異なる動きを見せてくれるのだ。

 《サテュロスの道探し》のようなカードを用いてライブラリーから墓地へ送ったクリーチャーや、あるいは単純に死亡したクリーチャーは墓地に溜まっていく。そこで《先祖の結集》をX=5で唱えてやる。

 すると、墓地のクリーチャーたちが一気に戻ってくる。《サテュロスの道探し》や《血の暴君、シディシ》の能力が誘発し、さらにライブラリーが墓地へ。数々の「濫用」能力もスタックに積まれ、おまけにゾンビ・トークンも何体か手に入るだろう。もはや、何が何だか分からなくなるほどだ。

 そしてなんと、《アンデッドの大臣、シディシ》の能力により2枚目の《先祖の結集》を持ってきて、次のターンにも同じことを起こせる。

 その結果、《血の暴君、シディシ》による大量のゾンビ・トークンや《包囲サイ》による大量のドレインなどが実現し、手札には新たな《先祖の結集》が加わる。

 さらに、数々の「濫用」能力によってクリーチャーのほとんどが墓地や手札に戻っていくため(ありがとう、《シディシの信者》!)、それらは次のアップキープに《先祖の結集》の効果で追放されることなく再利用できるのだ。

 さて、この動きは最終的にどこへ向かうのか? 確かに、《包囲サイ》のドレインやゾンビ・トークンの攻撃だけでも対戦相手を倒すことはできるだろう。だがそれがうまくいかない場合は、《アンデッドの大臣、シディシ》で《鍛冶の神、パーフォロス》を持ってくるのだ。

 《森の女人像》を利用して《鍛冶の神、パーフォロス》を手札から唱えても、あるいは何らかの手段で手札から捨ててもいい。《鍛冶の神、パーフォロス》があれば、対戦相手は死んだも同然だ。このテーロスの神は、《先祖の結集》によって同時に戦場に戻ってくるクリーチャーたちをすべてきちんと数えていて、そうして戻ってきたクリーチャー1体につき2点のダメージを相手に与えてくれる。

 それはもう、膨大なダメージになるだろうね。

 今回のデッキは、状況によってガラリと動きが変わる本当にユニークなコンボ・デッキだ。そしてそのコンボ自体も、達成するたびに少しずつ違った動きになる。そのため、その点をしっかり踏まえて適切に構築を進めることが重要になるだろう。

 それじゃあ、今回のデッキリストをより深く見ていこうか?


デッキ詳細

「濫用」しがいのあるものと、デッキから抜くべきものはどれだろう? カードを1枚ずつ通して見て、確認しよう!


 マナ加速を担うこれらのクリーチャーは、今回のデッキに欠かせない複数の役割を持っている。ひとつは、4マナ域に素早く到達する(それから《先祖の結集》のXの値を大きくする)助けをすること。さらに、これらを採用することで土地の枚数が減り、《血の暴君、シディシ》の効果を高めることにもなる。そしてもうひとつ、これが極めて大事なことだが、これらは「濫用」の生け贄にぴったりで、さらに《先祖の結集》で戦場に戻すクリーチャーの頭数も増えるのだ。

 今回のデッキでは1ターン目は「タップ状態で戦場に出る」土地をプレイすることが多く、《エルフの神秘家》を1ターン目から唱えることはないかもしれない。だがそれでもいい――今回の鍵となるのは、2ターン目にマナ加速をして4マナまで届かせることだ。そのため、《エルフの神秘家》をプレイするのが2ターン目になってもまったく問題ないのだ。今回のデッキが要求する色を鑑みると《エルフの神秘家》を採用しない形もあり得るとは思うけれど、まずは使ってみることにしよう。


 こいつもまた、今回のデッキの鍵となる要素だ。こいつは土地を確保する助けとなるだけでなく、そして自身が「濫用」の生け贄に役立つだけでなく、コンボが成立すればこいつが墓地に落としたカードたちも大活躍する――おまけに、コンボに頼らなくとも《血の暴君、シディシ》と手を組んで貢献してくれる。《サテュロスの道探し》は4枚すべて残そう。


 こいつがスタンダード特有で最も使われているカードだと断言するようなことはしないけれど、このデッキの《包囲サイ》は、普段とは違う、やや奇抜な使い方をしている。今回は《先祖の結集》で何度も使い回し、対戦相手のライフを奪う手段となっているのだ。とはいえもちろん、必要とあればミッドレンジ戦略の優秀なアタッカーにもなれるぞ。4枚採用でよろしく!


 君たちも、まさかこんなところでこいつと会うことになるとは思っていなかったかもしれない。だが実は、この《シディシの信者》は多くの活躍を見せてくれるのだ。コンボが成立したとき、こいつは《先祖の結集》によって戦場に戻ったクリーチャーを「濫用」することで墓地に送り、同時に別のクリーチャーを1体手札に戻して再利用できるようにしてくれる。もしミッドレンジ・デッキとして戦うことになっても、テンポを稼ぐのに一役買ってくれるし、さらに赤単系のデッキを相手にした場合は0/4のブロッカーとしても使えるのだ! こいつはすべて残したい。

 そして、《シディシの信者》の能力は(驚くほど)強力なため、私はさらに似た能力を持つカードを加えたい――それは《ジェスカイのバリケード》だ。「濫用」でクリーチャーを墓地に送ることができず、また対戦相手のクリーチャーをバウンスすることもできないため《シディシの信者》ほどの強さはないものの、それでもよく似た働きができるのは頼りになる。《シディシの信者》に加えて、《ジェスカイのバリケード》を2枚採用しよう。


 《血の暴君、シディシ》はミッドレンジ戦略で有力なカードであると同時に、コンボ成立時にもライブラリーを削って次の《先祖の結集》の威力を上げてくれる。単体の脅威として運用し、ゾンビで盤面を埋め尽くして攻め込むもよし。あるいは墓地に次々とカードを送るだけでもよし。どちらにしても、《血の暴君、シディシ》はうまく機能してくれるだろう。4枚すべて残そう。


 シディシの今回のデッキへの献身は時を越えて続き、死後もこうしてその姿を見せている。そして、この《アンデッドの大臣、シディシ》はまさに我々が必要とするカードだ! 2枚目の《先祖の結集》を持ってくる役目はこの上なく大きく、それと同時にクリーチャー(恐らく自分自身)を墓地へ送り再利用する動きは絶対に欠かせないのだ。

 ややコストが重いという点はあるけれど、それでも彼女がもたらす利益は極めて大きい。私は《アンデッドの大臣、シディシ》を3枚に増やしたい。


 この恐るべきシルムガルは、今回のデッキのマナ・カーブの頂点に据えてやれば十分に強力なカードだ。ミッドレンジ戦略における脅威としては一級品であり、とりわけ対戦相手がミッドレンジの場合はクリーチャーを奪いつつ自身も大きな壁として立ちはだかり、相手の動きをぴたりと止めてくれるだろう。

 だが《龍王シルムガル》の今回のデッキへの採用には、大きな疑問が残る。そもそも、今回のデッキがミッドレンジ戦略をとる機会はどれくらいあるのだろうか? 今回のデッキは、ミッドレンジ・プランもある「《先祖の結集》デッキ」なのか、それとも《先祖の結集》という決め手もある「ミッドレンジ・デッキ」なのか?《龍王シルムガル》は、今回のデッキの戦略にどれだけ噛み合っているのだろうか?

 ミッドレンジ・デッキの方を主眼にするなら、《龍王シルムガル》は良い選択と言えるだろう。しかしながら、今回のデッキと強力に噛み合うとは言い難い。こいつはコストが重く、《先祖の結集》をX=5で放っても墓地から戻ってこないのだ。《龍王シルムガル》はデッキから抜くべきだろう。


 《不気味な腸卜師》は多くをもたらしてくれる。こいつの能力によって「濫用」が行われるたびにカードがもたらされるため、コンボが始まればまとまった量のカードを引けるだろう。

 だがしかし、一歩引いて客観的に見直してみてほしい。今回のデッキで《先祖の結集》を唱え、「濫用」能力がいくつも誘発しているなら、もうそれだけで優位は築けているはずだ――それこそ《不気味な腸卜師》が必要ないくらいに。勝利をより確実なものにする役目のカードとしてはとても興味深いけれど、今回のデッキの戦略に《不気味な腸卜師》が必須だとは私は思わない。


 これら2枚は同じ役割を持っている――ゲームの決め手だ。《先祖の結集》のXの値が大きくなれば、《鍛冶の神、パーフォロス》は一気にゲームを終わらせてくれる。《死者を冒涜するもの》は、《先祖の結集》を唱えるたびに《アンデッドの大臣、シディシ》を「濫用」してやれば、対戦相手の持つタフネス5以下のクリーチャーをすべてバウンスし、相手はクリーチャーを用いた戦い方ができなくなるのだ。

 私としては、対戦相手を直接倒せる分《鍛冶の神、パーフォロス》の方に軍配が上がると思う。《死者を冒涜するもの》はある問題を抱えている。対戦相手の動きを阻害するのは確かに魅力的だし、《アンデッドの大臣、シディシ》で持ってくるカードとしても優秀だけれど、私はもっと相手を倒すことに直結するものを採用したいのだ。

 《鍛冶の神、パーフォロス》を2枚採用してもいいけれど、やはりゲームの決め手となるものはふたつに分けて持っておきたい。どちらも決め手となるものでありながら、それぞれにより強い状況がある、というのが理想だ。私がぜひ今回のデッキに欲しいもの、それは《モーギスの匪賊》だ。

 《モーギスの匪賊》には特別な力がある。こいつは、クリーチャーの大群に速攻を付与できるのだ。《先祖の結集》は、たとえ対戦相手のターンに唱えてもアップキープを迎えれば墓地から戦場に戻したクリーチャーたちが追放されてしまうため、普通は攻撃的に使うことはない。ところが《モーギスの匪賊》があれば、これが一気に対戦相手を倒す手段に化けるのだ。墓地のクリーチャーを戦場に戻し、その大群に速攻と「威嚇」を与える。そして全軍で攻撃し勝利を掴み取れ!


 こいつはもちろん4枚すべて必要だ。ゲーム序盤にはあまり歓迎したくないが、後半にはできるだけ多くの枚数を引き込み、霊の軍勢を作り上げたい。それから、ライブラリーを削っていく過程で、《先祖の結集》も何枚か墓地に落ちてしまうだろう。とにかくコンボを決めることが重要になる今回のデッキでは、《先祖の結集》をすべて失うことのないように枚数を確保すべきなのだ。(とはいえ、もしものときのバックアップ・プランはきちんと用意しておくけどね――このまま読み進めてくれ)。


 ライブラリーを墓地に送る手段をもう少し増やすということには、私も大賛成だ。ところが、《神々との融和》でテンポを失ってまで得るのは、クリーチャーだ――今回のデッキでは、多くの場面でクリーチャー以外の呪文が欲しいのだ。またこのカード自身もクリーチャーでないため、《血の暴君、シディシ》の能力と噛み合わない。

 さて、私は幸運にも、ここで活躍する小さなクモを知っている。《ニクスの織り手》だ。

 このクモは決してちっぽけなものではなく、いくつか鍵となる役目をこなしてくれる。まず、戦場に残る限り毎ターン墓地にカードを送ってくれる。そしてもうひとつ、《先祖の結集》を確実に手に入れる助けとなるのだ! 《ニクスの織り手》自身は追放されてしまうものの、その恩恵は極めて大きい。

 ライブラリーを削っていたら《先祖の結集》が墓地に落ちてしまった? しかも全部? 大丈夫! きっと《ニクスの織り手》が巣を張って、拾ってくれるだろう。

 それから、《ニクスの織り手》自身が墓地にいってしまった場合に《先祖の結集》を唱えると? そう、《ニクスの織り手》は戦場に戻ってくる――まさに、君たちのために「結集」するのだ!

 おまけに、到達を持った2/3というサイズも悪くない。《ニクスの織り手》を3枚採用しよう!


 ここまでの変更をすべて受けて、デッキは以下のようになった。

ガヴィン・ヴァーヘイの「ミッドレンジ・アンセストリー」

スタンダード
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 これは、私がここ最近手がけたものにはない斬新なデッキだ。このミッドレンジ・コンボ・デッキには、様々な勝ち手段がある――うまく使いこなすためには、デッキの動きに細心の注意を払う必要があるだろう。

 そしてもちろん、最高に面白いデッキに違いない!

 スタンダードで使える面白いデッキをお探しなら、ぜひ試してみてくれ。こちらがユニークで心躍るようなシナジーの数々を「濫用」する間、きっと対戦相手はその動きのゆくえに注目することだろう。楽しんでくれ!


今週のマッカーター選

「今週のマッカーター選」では毎回、その週に送られてきた素晴らしいデッキの数々を見ていくことになる。今週は本当に様々な「濫用」の使い方があった――そのいくつかをご紹介しよう!

ワタナベ タカシの「大臣が執政官を差し向ける」

スタンダード
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マツカサの「アリーシャの濫用」

スタンダード
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ブランドン・ハウスマンの「イカ墨の濫用」

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マシュー・スピヴィーの「死後の褒章」

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マグネットクロコダイルの「嘲る濫用」

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ヒラマツ タクヤの「シルムガルの贄」

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スチュアート・クロフォードの「グリクシス濫用」

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ニコラス・コンドンの「エレボス・スゥルタイ」

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テルイ ユウイチロウの「シディシ・ブラック」

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ミリーの「神々は友を決して見捨てない」

スタンダード
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 今日はちょっとクレイジーなものを見てきたが、楽しんでくれていれば幸いだ。そして試す価値ももちろんあるぞ。これはとてもユニークなデッキで、モダンで見られるようなデッキを私に思い起こさせてくれる。

 そして本当に驚くべき時節の一致がある。これから『モダンマスターズ 2015年版』のプレビューが掲載されるのだ!(編訳注:5月5日掲載分の「ReConstructed」は、『モダンマスターズ 2015年版』プレビューの特別版として、5月6日(水)に翻訳を掲載いたします。)

 この記事についての感想やフィードバックがあれば、ぜひ聞いてみたい! 気軽に私へツイートや、Tumblrで質問を送ってほしい。

 また次回お会いしよう!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight

(Tr. Tetsuya Yabuki / TSV testing)

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