更新日 Magic Story on 2014年 6月 27日

By Tom LaPille

Tom LaPille makes things. Some of the things he makes are card sets, like Dark Ascension and Born of the Gods. Sometimes he makes stories, too. Sometimes he makes unexpected things, like 16th-century Japanese clothing. He's probably making something right now.

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 かつて、野生語りのガラクは自然と深く共感する、力のある獣使いであり、緑の魔術の達人だった……屍術師リリアナ・ヴェスが、鎖のヴェールとして知られる危険なアーティファクトを用いて彼に呪いをかけるまでは。黒のマナに浸され、野生の声から切り離され、ガラクはただ一つの目的しか持たない凶暴な殺し屋となった――リリアナを見つけ、彼女に呪いを解かせるという。

 ガラクはイニストラード世界でリリアナを追跡し、二人は再び対峙した。リリアナが勝利を手にし、彼の前から去った。戦いが終わり、ヴェールの呪いによって半ば狂気に駆られながら、ガラクは重大な決断を迫られる……


 俺は意識を取り戻し、目を開けた。大気は死と不死にまみれていた。あの魔女の匂いもそこかしこにあったが薄れてきていた。俺はうつぶせで、半ば水に浸かっていた。腐肉食らいの鳥の鳴き声が耳に響いていた。夕方の狩りだ。

 不愉快な黒い鳥が俺の上に降り立った。俺は両手でそいつを掴み、首を折り、投げ捨てた。その屍は飛沫を立てた。

 俺はカビくさい空気を胸一杯に吸い、身体を起こした。俺は沼の中にいて、時間は夜だった。周りの沼では、鳥どもがあちこちで、かつてアンデッドだったものの小片をついばんでいた。明りはなかったが、俺は暗闇でも見ることができる。

》 アート:Adam Paquette

 あの魔女の下僕の残りが俺を囲んでいた。俺はそいつらを殺した。

 あの女は俺を殺すところだった。

 どこにいる?

 俺の斧はどこだ?

 水面の下、俺のすぐ傍に長く細いものがあった。それに手を伸ばし、木の柄を掴んだ。俺は沼から愛用の斧を引き上げ、倒れた丸太にそれを立てかけた。腐肉食らいの鳥どもが俺の周りから飛び去り、頭上の木々に止まった。

 極度の疲労が再び俺を襲った。最後に、宿の部屋で眠ったのは数週間前になる。倒れた丸太が俺の寝床だが、俺の身体に合う寝床などない。俺は地面に横になり、再びぬかるみに沈んだ。

 俺ほどの背丈と同じほどの幅もある獣が一体、俺に近づいてきた。そして動かない俺の匂いをかいだ。その獣の匂いはおおむね正常だったが、その内には腐敗があった、今俺から現れる全てと同じように。その毛皮の下、その皮膚には黒い筋が走っていた。ちょうど俺のように。

 俺はこいつを、あの魔女との戦いの最中に呼び出したのだった。

アート:Dave Kendall

 俺は顔を上げてそいつを見た。そいつは跳びのき、そして後ろ脚をたじろがせて地面をかいた。

 そいつは不満そうなうなり声を上げ、そして話すと、そいつは恐怖に震える宿屋の主人だった。「あんたは他のお客さんを怖がらせちまうんだ」彼は言った。「もう一晩、あんたをここに泊めることはできない」 そいつが俺を負かせられるかどうかははっきりしないが、そのやけばちの姿勢が、それを試みるであろうことを告げていた。

 そいつは後ずさり、わずかに、そしてほとんど鳴くような甲高い声で言った。「皆が言うには、この近くに狼男の一群れが、そしてその呪いにもかかわらず、良くあろうとしている群れが居るそうな」 彼はただ、俺に去って欲しいのだ。「そいつらを探すといい。条件はただ一つ、強いことだけだ。奴らは弱いものは殺す」

「俺が弱そうに見えるとでも?」 俺は怒鳴った。

「滅相もない」 彼は鼻を鳴らした。そして背を向けると一歩ごとに飛沫を上げながら、のろのろと離れていった。

 今、逆の方向から更なる飛沫の音が聞こえてきた。ゆっくりと、次第に大きく、そして腐った空気の波が俺に押し寄せてきた。俺は再び身体を起こした。出ると、深く群生する木々が小さな都市に縮こまる建物のようだった。先程会話した獣よりもわずかに大きな、むくんだ屍の巨大な塊が、まっすぐ俺へと向かってきていた。

スカーブの大巨人》 アート:Volkan Baga

 鳥達が、騒音を爆発させて飛び立った。「縫い師の攻撃だ!」 そいつらは飛び去りながら叫んだ。「雛を守れ!」 もしあの怪物が鳥達を殺そうというのなら、まず俺が相手になろう。俺は斧に寄りかかって立ち上がった。まだ腕の傷から血が流れ、一部は黒く膿んでいた。まっすぐ立った時に背中が痛んだが、こいつをどうにかする十分な力はあった。

 そしてやらなければ、俺は死ぬだろう。どのみち、俺はここで死んでいたのかもしれない。

 俺は叫び、突撃した。その怪物は人間の死体からなる膨れた塊で、幅は五フィート程、三本の脚と二本の腕それぞれにまた別の屍がくっついていて、頂上の頭らしい所には穴だらけの腐った狼が埋め込まれていた。俺の斧はその肩を、湿った音を立てて切り裂いた。身体から切り離され、狼の脚の一本がどさりと落ちた。そいつは左腕のぎらつく銀の鉤爪で俺をかきむしろうとしたが、俺の斧の衝撃はそいつを六インチ押しやった。それは俺をわずかにひっかいただけだった。俺が斧を引き抜くと、死体の右腕が俺に迫ったが、俺はそいつの腕の内に潜りこんで、人間の脚が二本くっついた上腕に斧を向けた。俺は深く切り、そいつの鉤爪は俺に当たらなかったが、左腕が戻ってきて俺は刺された。

 そいつはびくりと左に身体を動かした。俺の斧は外れ、怪物は大きな飛沫を上げて側面からぬかるみに突っ込んだ。俺の獣がそこにいた、頭を下げ、短い牙は今やぎらつく黒色に覆われていた。俺はずぶ濡れになったが、斧は自由だった。俺はそれを高く上げて怪物の肩へと振り下ろし、頭部にある腐った狼の死体を切り裂いた。怪物の全身が震え、そして動かなくなった。

 この怪物によって、鳥の雛が死ぬことはもうない。

 その獣は俺へとゆっくり顔を上げ、低いうめき声を漏らした。今それはパヴェル、群れを率いる長であり宿屋の主人が話していた狼男だった。「私はパヴェル」 彼は言った。「私達は皆、狼男だ。お前は……何かが違う……だが私達はこれを作った縫い師を狩っている。あの女は強い、そして私達はお前の助けが必要だ。来てくれるか?」

 こいつはあの魔女を探す助けになるという。「何処だ? あの女は何処にいる?」 俺はパヴェルの牙を掴んでその顔へと叫んだ。

 狼男はもたつきながら後ずさった。俺がそのまま動くと、彼はうなった。「お前はこいつよりも、力を制御できると示すさねばならない。でなければ、私達はお前も殺す」 彼の小さな目は少しの同情と、多くの打算にぎらついていた。

 俺は牙から手を離し、痛みに耐えながらできる限り背筋を伸ばして立った。「やってみるがいい」

 彼は座った。もはや脅す様子はなく、そして満足そうに喉を鳴らしたようだった。「その必要がないことを願う。私と来い」 彼は背を向け、沼地の暗闇へと重い足取りで入っていった。

 俺は彼の背後を危なっかしく進んだ。しばらくの間、どちらも黙ったままだった。彼は森の中を曲がり、迂回し、でたらめに進んでいるように思えた。数度、俺達は来た道を横切った。「何処へ行くんだ?」

 彼は低い唸り声を上げた。「私達は文明から遠く離れて生きている。私達のこの身体が、同胞以外を傷つけることがないように。他の者はお前をすぐには受け入れない、お前は信頼を得なければならない」

「だがお前は、縫い師どもを殺すと」

 歩きながらパヴェルは俺に顔を向け、不満そうに言った。「私達はゾンビを殺す。知性のある者は殺さない。ただ手足を潰し、委ねるべき所に委ねる」 彼は前方の道へと頭を向けた。「もしお前が獲物を殺すというなら、私達の中に留まることは許されないだろう」

 俺は近くで鹿の鳴き声を聞いた。胃袋が鳴った。「ここで待て」 俺はパヴェルの声が聞こえなくなるまで離れ、木に十フィート程登って見た。

 それはこちらへ向かってきていた。

 俺は枝の上に立ち、斧を構え、待った。

夜明け歩きの大鹿》 アート:John Avon

 その鹿は俺のすぐ下を歩いてきた。俺は枝から飛び降り、着地と同時に斧の腹をその後頭部に叩きつけた。その屍は横に倒れ、ぬかるみに鈍い飛沫を立てた。

 俺はそれを乾いた盛り土の上に引き上げた。俺とは違い、その匂いは清浄だった。俺はナイフを取り出し、木々の一本から長い蔓を切り取って、鹿を角からぶら下げ、尻から首までを切り開いた。滴り落ちた血は屍の下に集まり、最初は溜まっていたがやがて沼へと吸い込まれた。俺は手を入れ、膀胱を閉じるように掴み、切り取って、水へと投げ捨てた。次に腸を、音を立ててぬかるみに落とした。

 パヴェルが再び俺の所へゆっくりとやって来た。俺が鹿の肝臓を取り出すと、彼は喉を鳴らした。「お前の狩りは、私達にとって実に貴重だ。お前がいなければ私達は飢えていただろう。お前は受け入れられた」

 俺がその肝臓を投げてやると、彼はそれを宙でくわえて受け止めた。

 俺は飢えており、肉の香りは素晴らしかった。だがパヴェルもおそらくは同じく飢えていたのだろう。俺は三本の脚を切り取り、皮をはぎ、その塊を彼へと投げた。「縫い師狩りへはいつ行くんだ?」

「今夜だ」 彼はそう言って、鹿の死体から肉片を噛みちぎった。俺は残りの皮をはいで脚を切り取り、自分用に肉の塊を引き裂いた。味は驚くほど美味かった。

 俺達は気楽に、鹿肉を分けながら食べた。彼は四肢を地面に投げ出し、腹が地面に触れるとその胃袋が音を立てた。俺は仰向けに横になった。俺達は長い時間を共有した。獲物を消化する間、この沼地で安らぎ、休息をとった。

ガラクの群れ率い》 アート:Nils Hamm

 俺は退屈し、身体を起こした。「あの女はどこに?」

 彼はいらつき、不満そうに俺を見た。「正確な場所は知らない。ガツタフ近くの何処か、もしかしたらガヴォニーへ向かう途中だろう」

「あの女を見つける」 俺は立ち上がり、斧を肩にかけた。

「気をつけろ」 彼は言った。「その女の興味を得るほどの縫い師には護衛がいるだろう。一人で相手をするべきではない」 俺は背を向けた。「もし、女を殺せば」 彼はうめいた。「お前は戻ることは許されない。私達は獣ではない」 俺は彼から離れ、森の中を進んだ。

 俺は沼地を彷徨い、何かあの女の兆候がないかと探した。時折俺は地面で匂いをかいだが、自分の匂い以上にあの女を判別することはできなかった。

 枝に何かがついていた。近づくと、紫の絹の切れ端だった。俺はそれを掴み、鼻で匂いをかいだ。あの女のものだ。

 俺はそれをベルトの小袋に入れ、空気の匂いをかいだ。あった。かすかだが、あの女はこの道を通ったに違いない。その先には折れた枝もあった、人間の足で折られれたものだ。小さい、ちょうどあの女くらいに。俺は五歩進んで再び地面の匂いをかいだ。まだいる。もう十五歩、そして再び地面を嗅ぎ、そしてあの女を捕えたことを知った。

 木々を避け、よどんだ池を迂回し、あの女の痕跡を追って俺は沼を通り抜けた。あの女はここを通って行ったのだろうか。俺を打ち負かしたかもしれないが、地面の下に何が潜んでいるかを誰が知る? 何か、沼の生物があの女を食らった可能性はある。俺がその頭蓋骨をぶち壊さなくとも、あの女はどのみち死ぬだろう。

 近づいていると思ったちょうどその時、重い足音がゆっくりと俺に向かってきた。距離はおそらく二百フィート程。俺は大部分が植物に覆われた池に入り、腰を下ろした。頭だけを出したが、それも葉に隠れていた。腐敗した獣が一体、視界に入ってきた。その皮膚全体に黒いものが走り、開いた大口と牙からは新鮮な血が滴り落ちていた。それは死の魔法の悪臭を放っていた。そして息を切らし、荒く重い息をしながら、脚を震わせていた。それはあたりの匂いをかいだが、葉に隠れた俺の姿は目に入らなかった。

 縫い師の護衛。哀れな存在だ。このようなことをした者は誰であろうと、死に値する。

 俺は静かに座ったままでいた。それは俺の方向を見ることすらせず、ふらつきながら去っていった。

 十分後、俺は半ば緑の蔦に覆われて、池からそっと這い出した。俺は蔦を振るい落とし、痕跡を追い続けた。

 更に五分進み、俺は百フィート後方に鈍く重い足音を聞いた。引き返すと、そこに縫い師がいた。あの魔女ではなかった――その巨大な、緑と黒の血管、もしかしたら高さと幅は九フィート、そしてぎらつく黒い牙。少なくとも、俺はもっと小さい、一人の女と対峙するのだと思っていた。だが俺が思うに、屍術師はこのような姿になるということだ。何にせよこの女は死ぬ。

 俺は突撃した。女はただ座り、やってくる俺を見ていた、多分俺を驚かすべく待っているのだろう。俺は近づきながら斧を振り上げ、だが女はまだそこに座っていた。その頭蓋骨に斧が深々と刺さり、両眼が見開かれ、そして女は湿った音を立てて腹から倒れ、悲鳴を上げた。女は僅かに身を悶えさせていたが、死んだ。

「私達は獣ではない」 パヴェルの言葉が再び俺の頭をよぎった。

 お前達は、そうではないかもしれない。

 遥か遠くで白い光がひらめき、地平線を照らし、そして空全体に広がった。俺達は皆、その光がこちらへと向かってくるのを見た。近づくごとに眩しくなりながら、そしてその光は俺達を洗い流した。視界が白く消えた。

 俺は沼の中、死んだ獣の上に立っていた。その匂いはまだ新しかった。その皮膚に浮き出る黒い血管から見て、俺がそれを召喚したに違いなかった。その頭に刺さった斧から見て、俺が殺したに違いなかった。

 それはただの獣だった。宿屋の主人でも、パヴェルでも、縫い師の護衛でも、縫い師ですらなかった。

 俺は暗闇の中で何も見えなかったが、色を見た。そして今、匂いは清浄だった。太陽が昇り始めた。

 俺は右腕を曲げた。黒い筋は消え去っていた、そしてかつてのように俺は健全だった。俺は深呼吸をして、吼えた。それは沼に響いた。鳥たちが飛び去ったが、それらは黙ったままだった。

 俺はイニストラードの、何処かの沼にいる。あの魔女は俺を殺しかけた。

 そしてあの呪いは消え去った。

 あの女は俺に何をした?

 俺はどれほど遠くまで来た?

 圧倒されるような眩暈の波が俺を打ち、俺の視界は再び白黒を行き来した。俺は膝をつき、黒い筋の入った手で倒木の太い枝を掴み、吐いた。むかつきが収まると、食べた鹿の半分を吐いてしまっていた。具合は少し良くなった気がしたが、呪いは戻ってきていた。そして俺はひどく疲れていた。

ヴェールの呪いのガラク》 アート:Eric Deschamps

 俺は空気の匂いをかいだ。半ば消化された鹿の匂いに混じり、あの魔女の匂いもまだあった。そしてその足跡の一つが俺の目の前にあった。

 俺は今や斧につかまりながら追跡を続けた。二十分も追い、俺は道に出た。俺は沼から出て、眩しい朝日に瞬きをした。

 その道は見える限りの遠くへ、両方の方向に伸びていた。眩しい光は今太陽が昇りつつある、右の方向からやって来た。それは俺を癒してくれた、一瞬だけだとしても。それが何だったのかはわからないが、強力だった。

 俺を助けてくれた唯一のものだった。もし近くまで行けば、俺は救われるのだろうか?

 もしその源を見つければ、俺は自由になれるだろう。まっすぐに立ち、まっすぐに歩き、健康な動物を隣に呼び出せる。

 あの女を狩らずとも。

 その代わりに何をする? 俺は長い間あの女を狩ってきた。それ以前は何をしていた?

 俺は左の方向を見た、そして折れた枝があった。俺はかがんで匂いをかぐと、胃袋が唸る音を立てた。あの女だ。

 呪いから癒える機会はもう無いかもしれない。もし光を背に進んだなら、俺は再び自身を見失う前にあの女を殺さなければならないだろう。

 だが、もし光を追えば、俺は女の痕跡を失うだろう。

 俺は再び地面をかいだ。あの女はまだいる、そして匂いはまだ新鮮で、追える。

 俺は左を向いた。眩しい夜明けに背を向け、歩き始めた。

(Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)

アート:Brad Rigney

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