カマキリの道

更新日 Magic Story on 2014年 10月 8日

By Matt Knicl

Matt Knicl walked in off the street one day, sat down at an empty cubicle, and has been telling people he is a junior creative intern for Magic R&D. No one has asked him to leave, though, as he has offered to copy edit "everything." He also enjoys losing frequently playing Commander.

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 多くの次元において、カマキリは小型の生物である。タルキールにおいては、カマキリは雄牛よりも大きく、ジェスカイの支配する山岳地帯に住まう。


 ジェスカイの塔、その赤色の屋根の上。クンドゥという名の僧がカマキリに乗り、谷を見渡していた。冷たい風が彼の肌に吹きつけた。彼は寒さに震えることも、動くこともしなかった。カマキリが彼の下でぴくりと身動きをし、その両腕を絶え間なく動かしながら、見えざる獲物へと頭部を向けた。カマキリの乗り手達は、彼らが自分達に対して何の忠誠も持っていないことを理解している。何年も騎乗してきたカマキリでさえ、一瞬でも集中力を切らした騎乗者を食べてしまう。

カマキリの乗り手》 アート:Johann Bodin

 ジェスカイには様々な型が存在する。「川歩」は流れる水を模写し、「龍拳」は太古のヘルカイトを、そして「飛鶴」は高山の頂きにいる野生のエイヴンを模写している。彼のその型に名前は存在しないが、ジェスカイにおいて数ある重要なものの中から決定した、人生のあり方だった。

 クンドゥはとても小さい頃に乗騎の訓練を始め、生徒として素晴らしい才能を示した。まだ幼く、読み書きを始めたばかりの頃に、複数の要塞と流派の代理人が彼を訪ねた。彼はごく短い時間のみを与えられてそれぞれ異なる型を理解し、最善を尽くすよう言われた。賢者眼の要塞の長は隠密、迅速、狡知を重んじる。ディルガー要塞の長はクンドゥへと、刃の付いた武器を幾つも持ってきて使わせた。あるエイヴンの長はクンドゥの、宙での動きがどれほど熟達しているかを見るために彼に会った。河水環要塞の長はクンドゥが川歩の魔術の一つを行ってのける様を評価し、コーリ山要塞の長は龍拳の扱いを見定めるためにやって来た。要塞を持たない真珠の学院も、その若い少年へと戦いの間に数十の真珠を操らせた。彼は魔術を試され、ジェスカイが好む型を見極めた――魂火、霧炎、沸血――屍炎と生命火を苦もなく避けた。だが長達の当ては全て外れた。彼はそれら全ての流派において、熟達とは行かないまでも有能であったが、クンドゥの内にある技能はカマキリ乗りに必須のものであると彼らは皆知った。

 その日、クンドゥは彼の乗騎と対面した。一体のカマキリが他の乗り手達によって地面に繋がれていた。彼は決して警戒を解かないようにと言い聞かされていた。乗り手の一人が彼自身のカマキリを示してクンドゥへと説明した。彼はそれを何年もの間訓練し、毎日餌を与え、清潔に保ってきたと。乗り手がカマキリの手綱の一本を外すと昆虫は素早く反応し、彼の手を切りつけた。それを見てクンドゥは恐怖を感じたが、乗り手は説明した、何故クンドゥがカマキリ乗りになるべく運命づけられているのかを。

高峰のカマキリ》 アート:Igor Kieryluk

「カマキリを手なずける方法はない」 その乗り手は説明した。「いかにして常に油断なく、君のカマキリを支配するかを学ぶためには、学んだことを総動員しなければならない。時には別の敵と戦いながらもだ。君はあらゆる変化に気を払い、あらゆる結果を予期し、僅か一瞬の間に何なのか、何をすべきかを見定める必要がある。君は最大の脅威である生物に、希薄な支配で乗ることになる」

 クンドゥは誇らしく思っていた。彼は若く、名声の約束に満たされていた。そして訓練を開始すると、彼は自身の進む道がいかに独特かを知った。それぞれのカマキリ乗りが、カマキリに乗るために必要なそれぞれの修行法とともに動いていた。乗騎の上に留まるために、河水環要塞の流儀を多く学ぶことを必要とする者達がいた。ディルガー要塞にて、槍を使用しながら平衡を保ち続ける方法を学ぶ者達もいた。

 彼のカマキリへの騎乗を学ぶために、クンドゥは二十年を要した。彼は立って眼下の谷を見下ろしながら、体重移動に集中し、槍は下げながら、手綱を一本引いた。彼は油断することなく、カマキリが素早くその頭部を動かす、もしくは羽根をざわつかせる様子に反応していた。飛行する際に、その羽はかすかに聞こえる「ブーン」という高音を発する。それらが接近した音が聞こえるだけの静寂を保てるのは、ジェスカイの達人たちだけである。クンドゥは彼のカマキリを十分に理解していた、その羽音の高さと速さの変化が意味するものを知るほどに――彼のカマキリは休むことなく、動きたがっていた。

 クンドゥはカマキリに自由に飛ぶことを許可し、他の生徒たちが授業を受ける塔の窓に近づきすぎた時にのみ手綱を引いた。危険は常にあった。その個体がどれほど訓練されていようと、そのカマキリは乗り手の命令を受け取らないことがある。最初のカマキリ乗りの一人がその乗騎を村に持ち込んだ時、カマキリは怒り狂い、主の命令にもかかわらず何人もを蹂躙し殺害したと言われている。同様の事故を怖れ、カマキリ乗りたちはその乗騎に他者が接近することを決して許さない。

 クンドゥのカマキリは振り返り、山の麓近くでの動きを警告した。それが何かはわからなかったが、隠蔽の魔術によって偽装されていた。やっかいな敵がその魔術によって隠されていると予想できる程には、クンドゥもよく知っていた。ジェスカイは覆い隠しの魔術を不意打ちや正体を偽るために、もしくは他所の土地を偵察する際に用いる。彼らはまた、敵に対する破壊的な待ち伏せの魔術としてそれを用いる。そのためクンドゥは、それが僧院に向かう危険性があるとわかっていた。山腹で球体が燃え続けていた。クンドゥは脚の位置を正し、迎撃するようカマキリへと合図した。

変異 上敷きカード アート:Raymond Swanland

 彼らは琥珀色をしたエネルギーの球へと飛びかかった。彼らが近づくとそれは山を上る道をそれ、だが彼らには向かってこなかった。クンドゥは緊張し、槍を構えた。彼はエネルギーの球を誘導して僧院から離そうと、カマキリへと低く進むよう指示した。彼はあえてそれに接近しすぎも、攻撃もしなかった――中に何があるのかが定かでなかった。カマキリは谷へと急転回し、眼下の湖へと向かった。クンドゥは振り返り、隠れた敵との距離を測ろうとしたが、それは再び山頂へと上ろうとしていた。彼は体重を移動させてカマキリを転回させ、突然の移動に身構えた。そうしなければ地面へと落ちてしまうために。

 彼らは地面近く、速度を上げて動く球の隣を飛んだ。クンドゥはカマキリが反抗し始めたのを感じ、そのため彼は片脚でカマキリの後頭部へと圧力をかけつつ、槍で球体を突いた。僧院の僧達にも聞こえたであろう大きな金切り声があり、そして球が霧と散って消えた。一体のフェニックスが現れ、襲いかかってきた。

灰雲のフェニックス》 アート:Howard Lyon

 それはクンドゥのカマキリと同等の大きさがある巨鳥だった。そして鮮やかに燃えながら、鉤爪で切りつけてきた。フェニックスの翼から炎が液体のように流れ落ち、燃える地面に痕跡を残した。だがフェニックスはその弱点である腹部をさらしていた。クンドゥはカマキリに攻撃をさせると、それはフェニックスを切りつけた。長い鉤爪がフェニックスを裂くと、血と炎がその傷から噴き出した。フェニックスは再び金切り声を上げ、高く飛び上がった。クンドゥはフェニックスが逃げようとしているのだと理解したが、それは僧院の塔へと向かって飛んでいた。おそらくは着地して体力を回復するために。僧院に一羽の鳥がとまることを警告する必要はないだろう――だがその鳥は自然の脅威であり、通り道に炎を残していく。

 クンドゥはフェニックスが最も高い塔へと向かうのを見た。そこには要塞の図書館がある――炎の侵入を最も歓迎しない建物が。もちろん、その図書館の巻物は重要なものではないが、そこに記された情報は守るべきものだった。クンドゥは訓練の間に巻物から学ぶことをさほど必要とはせず、そしてそれらを守るジン達がその中身を読むことは決してないと知っていた。そのため彼はそれらの価値を高く見てはいなかった。だが彼は、ジェスカイの多くの者が巻物の言葉を、スゥルタイにとっての黄金よりも貴重なものとみなしていると知っていた。ならばクンドゥはそれらを守るために人生を捧げるだろう。

 彼は周囲に巻き起こる凍える風を気にせず、カマキリを急かした。傷を受けたフェニックスが飛ぶ速度は遅かった。クンドゥは槍で再び攻撃し、翼の付け根近くを貫いた。フェニックスは反応し、苦痛の金切り声を上げてその身体に炎を点した。クンドゥは炎に打たれたとわかっていたが、彼の身体は冷気にかじかんで痛みを感じなかった。カマキリが落下し始めた。その理由は見ずともわかっていた――羽根が燃えていた。傷のために落下するフェニックスの隣で、彼はカマキリの身体につかまった。フェニックスとカマキリは山腹に激突し、そして勢いよく麓へと滑り落ちていった。

 彼は周囲に巻き起こる凍える風を気にせず、カマキリを急かした。傷を受けたフェニックスが飛ぶ速度は遅かった。クンドゥは槍で再び攻撃し、翼の付け根近くを貫いた。フェニックスは反応し、苦痛の金切り声を上げてその身体に炎を点した。クンドゥは炎に打たれたとわかっていたが、彼の身体は冷気にかじかんで痛みを感じなかった。カマキリが落下し始めた。その理由は見ずともわかっていた――羽根が燃えていた。傷のために落下するフェニックスの隣で、彼はカマキリの身体につかまった。フェニックスとカマキリは山腹に激突し、そして勢いよく麓へと滑り落ちていった。

 下り坂を滑り落ちながらも、クンドゥはしっかりと掴まっていた。だが止まった時には負傷を最小限にするために筋肉の緊張を緩めた。彼のカマキリは燃えており、その両の羽根と甲殻の大部分が失われていた。内蔵が山腹に漏れ出していた。フェニックスは巨岩の隣にひっくり返って、片方の翼が明らかに折れていた。その巨鳥は自身の力で立ち上がることはできなかった。クンドゥはカマキリへと振り返り、倒れて死を待つ二十年来の相棒へと近づいた。だがカマキリは状況を理解できず、あの羽音と頭部の動きでクンドゥに襲い掛かった。目の前の人間を殺し、食らおうと試みた。

 クンドゥはその試みを許さなかった。彼はそうならないように訓練を積んできた。肩に鋭い痛みを感じながらも、彼は槍を手にとった。素早く、正確な動きでクンドゥはカマキリの頭部を貫いた。その苦痛を終わらせてやるために。とはいえその生物の大顎は少しの間、近くの人間の肉を感じて動き続けていた。クンドゥはフェニックスへと振り返った。傷ついてはいても、それは今も僧院にとっての脅威だった。そしてそれを殺したとしても再生し、更に強くしてしまうだけだった。

 そのためクンドゥは知識を総動員した。訓練と何年もの修行に、新たな道を創造し始めるために。彼はそのフェニックスへと近づき、槍を用いて体勢を直す手助けをした。鳥は彼に噛みついたが、彼は槍の柄でフェニックスのくちばしを打った。その鳥は驚きに一瞬固まり、そして怒りにその身へと火を点した。クンドゥは再びくちばしを打った。それは声を上げたが、この時は怒りよりも苦痛によるものだった。クンドゥはカマキリの訓練から多くを知っていたが、それでも彼は一体の、特定のカマキリに乗る訓練をしたに過ぎなかった。彼はフェニックスを手なずける方法など学んだことはなかった。だがわかっていた、時間さえあれば、新たな道を修められるだろうと。例えそれが何年も要するとしても。

(Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)

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