Commander's Arsenalの統率で
さて本日お話しするのはこの私です。死と再生のお話、失敗と償いのお話、私たち全てのお話をしましょう。それこそが、Commander's Arsenalのお話なのです。
一番最初のお馬鹿な話
数ヶ月前、副社長とウィザーズ社上級超能力工作部門主任脳造影技師が私の席に姿を見せました。地下2階の隔離施設Fに訪れた人など実験部門の人間以外には誰もいなかったので、これは特別なことだったのです。「検体327-9号よ。マヤ文明の予言によると、今こそ忠勇なる統率者戦プレイヤーのために新しいプレミアムな商品を作るべき時である。それこそが彼らの喜びであろう。それこそが彼らの望みであろう。それこそが彼らが朋友を統率者戦の楽しみへと導く道であろう」と彼らは言ったのです。
私は神妙に頷きました。正確に言うなら、頭は動かせなかったので、目だけで頷きました。そして、私はこのプロジェクトへと解き放たれました。
何をすべきかは完全にわかっていました。私はすぐにマジック:ザ・ギャザリング・クルー……クルー:マジック:ザ・ギャザリング……いえ、そうです。マジック:ザ・クルーをデザインする準備を始めたのです。
私はクルーが好きです。私はマジックが好きです。この2つを組み合わせるのには何も問題はありませんでした。プレイヤーはプレインズウォーカーです。アジャニが白のコマ、チャンドラが赤のコマ、ガラクが緑のコマ、ジェイス・ピーコックが青のコマ、マスタード・ボラスが金のコマ、リリアナ・プラムが紫のコマです。部屋はそれぞれ別の次元で、その間にある空間は久遠の闇。武器は《火の玉》や《剣を鍬に》、《ネビニラルの円盤》など。そして、マジック・ファンはその知力を尽くして誰がウルザを殺したかを決めるのです。
このゲームがデベロップに回ると、いくつかの問題があらわになりました。例えば、ジェイスはただプレインズウォークして去って行くだけでした。突然現れたエルドラージがゲーム板を食べてしまうこともありました。最大の問題は、犯人や武器、犯行場所を決めるカードで何を引いたかに関係なく、「ニコル・ボーラス」が「《殺害》」で「好きな場所」でウルザを殺した、になってしまうことでした。これでは面白くありません。そこで、私達はこのアイデアを棚上げにして、統率者向きのいいものを詰め込んだ箱を作ることにしたのです。
代わりの、統率者向けのいいもの
ついさっき私から聞いた、「いいもの」とは何でしょうか? この質問をできるのは喜ばしいことです。2011年に発売した統率者デッキは非常に好評でした。そこで、毎年統率者戦の商品を出すことにしたのです。しかし、その決定は2012年に間に合わせるには遅すぎました。新しいデッキが登場するのは2013年になります。皆さんにとって良い知らせなのは、そのデザイン・チームのリーダーとして指名されたのはもっとも狂気に満ち、もっとも才気に溢れ、最もゴットリーブなデザイナーだということです。ですが、残念なことに、それは2012年の助けにはなりません。今年の穴埋めのために、そして統率者戦のサポートに本気だということを示すために、私たちは統率者戦用のイカしたカードと小道具を詰め込んだセットを発売することにしたのです。
Commander's Arsenal には、以下のものが入っています:
- 統率者戦プレイヤー向けに特にあつらえられた特製フォイルのプレミアム版カード 18枚
- これまで大判カードになったことのないプレミアム版大判の伝説のクリーチャー 10枚
- 大判カードにした伝説のクリーチャーに関する楽しいインサート
- 99点まで表示できる、特製のライフトラッカー
- +1/+1、−1/−1のカウンターとして使える両面のバトルマーク
- 特別デザインのウルトラプロ製カード・スリーブ 120枚
「わぁ。これじゃ中身がわからないよ。もっと内容について詳しく知りたいな」ですか?
わかりました。今日はいい日ですから、詳細もお披露目しましょう。
詳細、詳細……カードの詳細!
どのカードを箱に入れるかについての責任者は私でしたが、もちろん1人でその選択をしたわけではありません。開発部の全員、そして社内の統率者戦プレイヤー、さらには超能力工作部門と相談を重ねました。第一の判定基準は、各カードが統率者戦で魅力的であることでした。当たり前のことに思えますが、これはこの商品の最重要ポイントです。統率者戦プレイヤーが本当に望むカードの詰め合わせを作りたかったのです。
この箱をできるだけ特別なものにするために、これまでプレミアム版になったことのないカードを中心に選びました。実際、18枚中12枚がこの条件を満たしています。これらのカードのフォイル版を手に入れる手段は、この地上を見渡してもこのCommander's Arsenalだけなのです。それだけではなく、この中の5枚は新枠になったことがなかったカードです。そして、新イラストも満載です! この箱の中のカードは、フォイルになったことがないか、新枠になったことがないか、専用の新イラストか、あるいはその複数の条件を満たしているものばかりです。
統率者戦用ですから、カードの3分の1は伝説のクリーチャーで、そのどれもプレミアム版になったことはありません。《擬態の原形質》《巨大なるカーリア》《トレストの密偵の統率者、エドリック》は昨年発売した統率者戦デッキから。《大渦の放浪者》と《夜まといのヴェラ》は今年発売したプレインチェイス2012から。そして《籠絡の美女貂蝉》はポータル三国志からの再録となっています。今まで、私自身も含むいろんな人と話して来ましたが(自問自答するのは珍しいことじゃないんです、ふふっ)、誰も想像していなかったこの掘り出し物がお気に入りです。カードを読んだ人が目を見開き、その多人数戦に向いた性質に引き寄せられるのを見るのは本当に楽しいです。2つめの対象を選ぶのは、1つめの対象のコントローラーだ――とはどこにも書かれていないのです! 例えば、私とマーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterとアーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheが対戦していたとします。私はアーロンのクリーチャーを対象にし、マローに2つめの対象を選ばせることができるのです。マローはアーロンのクリーチャーを選ぶことができます! もちろん、マローが私のクリーチャーを選ぶかも知れませんし、《籠絡の美女貂蝉》そのものを選ぶかも知れませんから(《籠絡の美女貂蝉》が危険だと思ったらそうするでしょう)、これは賭けです。なんて多人数戦向けのカードなのでしょう!
その他にも、初めてプレミアム版カードになる古の人気カード、《巻物棚》《森の知恵》《奪取》。そして最近の人気カード《混沌のねじれ》《ドラゴンの巣の蜘蛛》。ポータル三国志から(統率者の最高の仲間)《忠臣》が再録されました。
他の6枚のカードはプレミアム版が存在しますが、なかなか手に入らないものがあります(例えば《統率の塔》のプレミアム版は、商品ではなく今年度のジャッジ・プロモとして配られたものです)。《リスティックの研究》《映し身人形》《苦痛の命令》《ミラーリの目覚め》《精神の眼》も、《リスティックの研究》以外のカードを彩る新イラスト(や貴重なイラスト)とともに皆さんを興奮させてくれることでしょう。
このあたりで、カードを選んだ理由についてのイカした裏話をしましょう。その話をさせるために、トリック/Trickは私にこの記事を書かせたのです。不幸にして、それをしたのは私ではありません。なぜなら、もうなかったからです。それらのカードは、すごいからというだけの理由で選ばれました。見て下さい、これがすごいカードです!(この商品のデザイナーにも記念に1セットもらえますよね、マジック開発部ディレクター、アーロン・フォーサイス殿?) 色のバランスを考え、様々なカード・タイプを含め、さらに同僚からのアドバイスに耳を傾けました。例えば、組織化プレイ・プログラムのディレクター、スコット・ララビー/Scott Larabeeは《忠臣》と《奪取》を薦めてくれましたし、ジャッジ・コミュニティのコーディネーターを務めるエリック・ソーレンセン/Eric Sorensenは《苦痛の命令》を推しました。……まあ、でもそれほど面白い話があるわけじゃありません。ごめんねトリック!
カード名 | 前回収録 | 色 | 初プレミアム版? | 初新枠? | イラスト |
伝説のクリーチャー | |||||
《巨大なるカーリア》 | 統率者 | 白黒赤 | 初プレミアム | ||
《擬態の原形質》 | 統率者 | 緑青黒 | 初プレミアム | ||
《トレストの密偵の統率者、エドリック》 | 統率者 | 緑青 | 初プレミアム | ||
《大渦の放浪者》 | プレインチェイス2012 | 青赤緑 | 初プレミアム | ||
《夜まといのヴェラ》 | プレインチェイス2012 | 青黒 | 初プレミアム | ||
《籠絡の美女貂蝉》 | ポータル三国志 | 赤 | 初プレミアム | 初新枠 | |
その他のクリーチャー | |||||
《忠臣》 | ポータル三国志 | 白 | 初プレミアム | 初新枠 | |
《映し身人形》 | ミラディン アーチエネミー | 新イラスト | |||
《ドラゴンの巣の蜘蛛》 | プレインチェイス2012 | 赤緑 | 初プレミアム | ||
ソーサリー | |||||
《苦痛の命令》 | スカージ | 黒 | 新イラスト | ||
《混沌のねじれ》 | 統率者 | 赤 | 初プレミアム | ||
インスタント | |||||
《奪取》 | ビジョンズ 第6版 | 青 | 初プレミアム | 初新枠 | |
エンチャント | |||||
《ミラーリの目覚め》 | ジャッジメント | 緑白 | 2008年プロツアー・プロモカードでのみ使われたイラスト | ||
《森の知恵》 | レジェンド 第4版 第5版 | 緑 | 初プレミアム | マジックオンラインでのみ使われたイラスト | |
《リスティックの研究》 | プロフェシー | 青 | 初新枠 | ||
アーティファクト | |||||
《巻物棚》 | テンペスト | 初プレミアム | 初新枠 | ||
《精神の眼》 | ミラディン | 新イラスト | |||
土地 | |||||
《統率の塔》 | 統率者 | 新イラスト |
詳細、詳細……大判カードの詳細!
統率者戦用セットにプレミアム版大判カードで入る伝説のクリーチャーは大人気です。テーブルに文字通り大きな《二つ反射のリクー》を置いて席巻したいと思わない人がいるでしょうか? ということで、今回も入れるのは考えるまでもなく決まりました。何を入れるかというところには少し知恵が必要でした。私は今回もバランス取りに走り、色や色数を調整してもっとも人気のある統率者のリストを調べたのです。
これに関する一番の話を挙げると、大判カードは決してその本来のカードと「機能的に同じ」などではなく、イベントでも使用できないので――再録禁止リストの例外になるのです。そのおかげで、《スリヴァーの女王》や《銀のゴーレム、カーン》を招くことができました。
残りのカードは代表的なカードを詰めましたが、(あらゆる伝説のクリーチャーの中で!)たったの10枚だけですので、皆さんの個人的なお気に入りが入れられなかったことを残念に思います。私もそうなんです。私が一番良くプレイしている統率者デッキと言えば《オルゾヴァの幽霊議員》デッキなので、この古の偉大なる幽霊が入っていれば嬉しかったと思います。ですが、2色カードが多すぎたため、色のバランスを取る時に弾かれてしまいました。客観的に見ると、《死体生まれのグリムグリン》《裏切り者グリッサ》《豪腕のブライオン》のほうがいい組み合わせです。客観性なんてどうでもいいです。さておき、ここに皆さんのお気に入りのカードがあるか、ここにあるカードを見て新しいデッキを組もうと思っていただければいいなと思います。どれも一線級の品ですから。
カード名 | 前回収録 | 色 |
《スリヴァーの女王》 | ストロングホールド | 白青黒赤緑 |
《ジャンドの暴君、カーサス》 | アラーラ再誕 | 黒赤緑 |
《アニマのメイエル》 | アラーラの断片 | 赤緑白 |
《結界師ズアー》 | コールドスナップ | 白青黒 |
《死体生まれのグリムグリン》 | イニストラード | 青黒 |
《豪腕のブライオン》 | ローウィン 統率者 | 赤白 |
《裏切り者グリッサ》 | ミラディン包囲戦 | 黒緑 |
《山賊の頭、伍堂》 | 神河物語 | 赤 |
《迷える探求者、梓》 | 神河物語 | 緑 |
《銀のゴーレム、カーン》 | ウルザズ・サーガ From the Vault: Relics |
詳細、詳細……インサートの詳細!
こういった箱に入っているインサートを読んだことなんてない? ええ、まあ、そうでしょうね。折りたたんだまま? あり得ない! いつでもうろうろ落ち着きがないんですか? 読む時間はもちろん、開く時間もない! そうですか。残念ですが、わかりました。
それでも……。
もし、興味があるなら……。
今回のインサートでは、編集者にしてカジュアル・プレイヤーの非凡なるケリー・ディグス/Kelly Diggesのまとめた、実際にこれら10枚の大判カードを使った統率者戦デッキを持っている、ウィザーズ社員(実際の社員に聞いたのです)の談話を見ることができます。第1回グレート・デザイナー・サーチのアレクシス・ヤンソン/Alexis Jansonは《迷える探求者、梓》デッキの能力と魅力を語っていますし、独特無比のケン・ネーグル/Ken Nagleは《山賊の頭、伍堂》デッキのすべてを教えてくれますし、アーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheは《スリヴァーの女王》の無限コンボを指南してくれます。
そう、私たちは余暇にマジックを本当に楽しんでいるんです。
詳細、詳細……ライフカウンター、カードスリーブ、バトルマークの詳細!
この部分に関しては、私はただのチアリーダーです。データベースからカードを選ぶことはできますが、小物のグラフィック・デザインは門外漢です! ライフカウンターやバトルマーク、カードスリーブ、それに外箱については、アート・ディレクターのリサ・ハンソン/Lisa Hanson、上級グラフィック・デザイナーのジノ・チョイ/Jino Choi、パッケージと商品のデザイナーであるヴェロニカ・ヴェール・ルーゲンバーグ/Veronica Vail Ruggenbergとクリスティーン・J・リー/Christine J. Lee、商品エンジニアリングのマネージャーであるデビッド・スティーブンス/David Stevensたち才能溢れるチームの手によるものです。出来映えは本当に最高です。
このライフカウンターに至るには、数枚のスケッチとプロトタイプを経ています。それらは海王星の時計のようなものから――いや、まあ、海王星の時計のようなものとしておきましょう。最終的には、比較的単純で実に実用的、そしてとても使い心地の良いものになりました。このライフカウンターは0から99まで示すことができ、簡単に操作でき、誰でも見られる大きな数字が表示されます。さらに(ここについては信じてもらうしかないのですが)、数字を変えるときの手応えはとても心地よいものです。
カウンターは上品にして目立つもので、片方の面には大きな「+」が、もう一方の面には大きな「−」が印字されています。見た目は非常に重要です。私たちの目的は、Commander's Arsenalを手にしているプレイヤーが卓上でもっともイカしたプレイヤーになるようにすることですから。
同様に、カードスリーブのデザインも魅力的で、これを手に入れられるのはこの商品限定となっています。各箱に入っているスリーブが120枚ということにも注目して下さい。一部が破れたりなくなったりしても対応できるわけです。100枚ちょうどしか入れなければ、1枚でも破れたら――いや、1枚なら統率者のスリーブを変えれば済みます。でも2枚目が破れたら、残りの98枚は役立たずになってしまいます。120枚あれば、そんなことにはなりません。
私の話は以上です。マジック:ザ・クルーに関する冗談めかした(でも本当は真面目に喋ってますしあなたが読んでくれたのが本当に嬉しいのです)文章を、私がCommander's Arsenalを揃えるときに楽しんでいたのと同じぐらい楽しんでくれることを期待しています。楽しんで下さい!
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)