ストーム値:『タルキール覇王譚』ブロック
今日の記事では、私のTumblrの読者諸君ならよく知っている、「ストーム値」と呼ばれる道具を紹介しよう。これはメカニズムがスタンダードで使用できるセットに再録される可能性を評価したものだ。その使い方を説明し、それから『タルキール覇王譚』ブロックの全メカニズムについてそれを使って話していこうと思う。楽しんでもらえれば幸いである。
ストーム値前夜
すべては、私のブログ(「Blogatog」、英語)での単純な質問から始まった。読者の1人が、(『スカージ』で登場した)ストームというメカニズムがスタンダードで使えるセットで再録される可能性を知りたがったのだ。私は、可能性は低いと答えた。ストームは、史上最も壊れたと言えるメカニズムの1つである。私は、ストームがスタンダードで使えるセットに再録される可能性があるとは考えていない。これを強調するために、何かが再録される可能性を、ほぼ再録されるものを1、まず再録されないものを10として示す値があれば、ストームは10であると言った。これを見て、他の読者は他のメカニズムをこの「ストーム値」で表すとどうなるか、と尋ねてきた。気がつけば、ストーム値はBlogatogで各メカニズムについて尋ねられる、定番ネタになっていた。
今回、私はこのストーム値を「マジック開発秘話」で使うことにした。これまでブログで説明したよりも詳しく説明し、それからそれを使って『タルキール覇王譚』ブロックのすべてのメカニズムを評価していこう。この中のいくつかは、『イニストラードを覆う影』の登場とともにスタンダードから去ることになる。
まず、ストーム値について詳しく説明する。これはあるメカニズムがスタンダードで使えるブースター・エキスパンションに再録される可能性を示したものである。ただし、再録されるまでの期間を表したものではなく、将来のいつか再録されるかどうかを表したものである。ストーム値の各値が示すものは、以下の通りである。
レベル1:間違いなく再録される。おそらく次のセットにも。
例:飛行、接死、占術
この分類には、マジックの常磐木メカニズム、すなわち(基本的に)全セットで使うものが含まれる。基本的に、というのは、何かと矛盾したり混乱を引き起こしたり、そのブロックのデザインにふさわしくないなどの理由で、常磐木なものをブロックから取り除くことがあるからである。ほとんどの場合、その除かれたメカニズムは次のブロックで再録される。
レベル2:間違いなく再録されるが、すぐにとは限らない。
例:キャントリップ、混成マナ、両面カード
この分類には、私が「美味しい」と呼ぶメカニズムが大量に含まれる。それらはどのセットでも使えるので、デザイナーが必要だと思えば採用できるが、毎セットに登場することが前提となっているものではない。例を見てもわかるとおり、この分類には、非常に頻繁に出てくるキャントリップからあまり出てこない両面カードまで、広い幅がある。
レベル3:再録される可能性が非常に高く、何度も再録される可能性も。
例:サイクリング、フラッシュバック、上陸
この分類には、プレイヤーから非常に人気が高く、再録するのに充分なデザイン空間があるメカニズムが含まれる。
レベル4:再録される可能性は非常に高いが、それを保証できなくなるような問題がある。
例:変異、キッカー、刻印
この分類には、人気が高く、再録したことがあるものも多いが、問題が見つかっているメカニズムが含まれる。たとえば、変異はコモンでは少し複雑すぎる。キッカーは少し広範すぎ、新メカニズムの領域を侵している。刻印はデザイン空間が狭い。これらのメカニズムが再録される可能性はあるが、問題があるのでレベル3のものよりは再録されにくいだろう。
レベル5:再録する場所を必要としていて、私が楽観視している。
例:進化、怪物的、陰鬱
この分類には、過去にプレイヤーがプレイして楽しんだが、戻すにはふさわしい状況が必要なメカニズムが含まれる。私はいずれ再録されるだろうと思っているが、戻すためには適切な環境が必要になることがわかっているので、再録の可能性はあるが保証されているわけではない。
レベル6:再録する場所を必要としているものだが、あまり楽観視してはいない。
例:貪食、忍術、生体武器
この分類には、プレイヤーが好きだったがふさわしい場所を探すのが難しいメカニズムが含まれる。その理由は、たとえば特定のフレイバーに紐付けられていたり、特定のメカニズム的サポートが必要だったりするからなどがある。
レベル7:再録はされないと思われるが、環境が整えばあり得る。
例:氷雪マナ、回顧、刹那
この分類には、人気がそれほどでもないメカニズムが含まれる。再録する大きな理由はないが、これらがまさにふさわしいような環境が訪れたなら検討されることになるだろう。
レベル8:再録はされないと思われるが、もしかしたらあり得る。
例:マッドネス、エコー、待機
この分類には、レベル7と同じようなメカニズムで、さらに問題があるものが含まれる。たとえば、マッドネスはルール的、デベロップ的な問題を抱えている。エコーは不利益になるメカニズムで、多くのプレイヤーが見限った。待機にはテンプレート的にも、また混乱を招くという意味でも大きな問題があった。これらのメカニズムには、最適な環境が必要なだけでなく、この追加の問題を解決できるようにする必要もある。
レベル9:ありえないとは言わないが、ちょっとした奇跡が必要。
例:フェイジング、スレッショルド、激突
この分類には、不人気で、かつ大きな問題があるメカニズムが含まれる。我々はこれらを再録することに乗り気ではないし、再録しようと思ったとしても、これらのメカニズムはまず先に解決しなければならない問題を抱えている。
レベル10:ありえないとは言わないが、かなりの奇跡が必要。
例:ストーム、発掘、親和(アーティファクト)
この分類には、なんらかの形でゲームを壊すことがよくあり、ふさわしいと感じたとしても再録することには問題が伴うメカニズムが含まれる。
ストーム値に関して、もう少し補足しておこう。
ストーム値は私の個人的評価である
開発部の他のメンバーは、私と違うようにメカニズムを評価しているかもしれない。ただし、私はこの点数付けにおいて開発部全体がどう感じているかを考慮している。たとえば、デベロップがそのメカニズムについて懐疑的であるとわかっていれば、それは点数付けに影響する(このため、たとえば感染のストーム値は高くなっている)。
ストーム値は変動する
これは私が常時検討している、現在進行中のことである。実際、この記事を書くことでも今まで明確にしていなかったいくつものことを学んでいる。つまり、この点数は、私がストーム値についてよりよく知ることで変動することがあるということである。また、他にも変動する要素が含まれている(たとえば、あるものを強く嫌う人物が開発部を離れたら、それは再録されやすくなる)。その結果、点数も変動することになる。
ストーム値は将来の知識に基づかない
将来何かが再録されるということを事実として知っていたとしても、それで点数付けを下げたりはしない。私は、この点数付けにおいて、将来に関する既知の情報は無視することにしている。
何でも完璧に合うわけではない
上記の説明は、各分類の具体的な例を示すためのものである。ストーム値を定めるにあたって、比較によって定まった結果その説明に厳密には当てはまらないものも存在する。たとえば、あるメカニズムがレベル3よりは低いがレベル5よりは高いという理由でレベル4になる場合、レベル4に関する上記の説明と完全に一致するとは限らない。
私も間違えることがある
過去の点数付けの多くは、私がソーシャルメディア上で考えたものである。その中には考えが間違っているものもあり、それらについてはその次に点数付けを行う際に訂正している。
ストーム値の前の静けさ
ストーム値についての解説が終わったので、これから『タルキール覇王譚』ブロックのメカニズムについてストーム値を使って見ていくことにしよう。このブロックの過半数(『タルキール覇王譚』と『運命再編』)がまもなくスタンダードから去るこの時期に、ブロックのメカニズムを振り返り、それらの中でどれが再び登場する可能性があり、どれが登場する可能性が低いのかを検討するのはふさわしいと言える。
そのために、各メカニズムを5つのレンズで見ていくことにする。
人気
プレイヤーがこのメカニズムを好きだったかどうか。プレイヤーが好きなものは、再録される可能性が高い。そうでなければ、再録される可能性は低い。これは「楽しかったか」という質問が大きな基準になる。この評価は以下の4段階になる。
- 大好評 ― 市場調査で、史上すべてのメカニズムの中で上位25%に含まれているメカニズム。なお、これらの評価は現在のメカニズムと史上すべてのメカニズムとの比較になる(市場調査はずっと以前から始めていたのだ)。
- 好評 ― 市場調査で、平均以上で上位25%には至らなかったもの
- 普通 ― 市場調査で、平均以下で下位25%には至らなかったもの。ただし平均としてかなり好かれているものなので、平均以下といってもプレイヤーの多くが嫌っているわけではなく、それ以上に好かれているメカニズムがあるというだけである。この分類に入ったからといって再録の可能性が下がるわけではない。
- 不評 ― 市場調査で、下位25%のメカニズム。この区分に入ったものは、再録の可能性は低くなる。
デザイン空間
このメカニズムで作れるカードの枚数にどれぐらい余裕があるか。カードを作れる枚数が限られていれば、どれだけのプレイヤーが好んでいようと、どれだけデベロップしやすかろうと関係ないので、デザイン空間は重要である。この評価は以下の3段階になる。
- 広大 ― このメカニズムには非常に広大なデザイン空間がある。何度でも再録できて、新カードを作る上での問題はない。
- 中等 ― このメカニズムにはいくらかのデザイン空間があり、簡単に再録はできるが何度でもというわけにはいかない。
- 狭小 ― このメカニズムはこのセット内でデザイン空間の限界に来ている。再録したときに充分なカードをつくるのは難しい。
多用途性
このメカニズムと他のメカニズムの相性はどうか。このメカニズムには多くの前提が必要か、それともサポートはほとんどいらないか。言い換えると、このメカニズムのデザインは簡単か難しいか。この評価は以下の3段階になる。
- 柔軟 ― このメカニズムは使用が簡単で、サポートはほとんど必要なく、他のメカニズムと容易に相互作用する。
- 普通 ― このメカニズムは多少使用が難しく、いくらかのサポートが必要で、他のメカニズムと絡むのに問題がある。
- 硬直 ― このメカニズムの使用は難しく、かなりの前提が必要となり、他のメカニズムと混ぜるのには明確な問題がある。
デベロップ
このメカニズムのコスト付けがどの程度難しいか。バランスを取るのは難しいか。このメカニズムを仕上げるのが簡単かどうか。この評価では、メカニズムをデベロップする難易度を見ている。評価は3段階になる。
- 問題なし ― このメカニズムをデベロップする上での問題は存在しない。
- 普通 ― デベロップする上でいくらか問題は存在するが、大問題ではない。
- 問題あり ― このメカニズムをデベロップする上で、かなりの問題が存在する。
プレイアビリティ
このメカニズムの働きや他のメカニズムとの相互作用を、プレイヤーが理解する上で問題があったかどうか。このメカニズムを使う上で物理的な問題はなかったか。この評価はメカニズムをプレイする上での障壁があったかどうかを見るもので、2段階になる。
- 問題なし ― プレイする上で問題はなかった。
- 問題あり ― プレイすることに影響するような問題が存在した。
さて、それでは『タルキール覇王譚』ブロックの13個のメカニズムそれぞれについて、それぞれの評価で見ていき、そしてストーム値を定めることにしよう。
変異(『タルキール覇王譚』)
人気:普通
このメカニズムは史上すべてのメカニズムの中の下半分ではあるが、ぎりぎりである。変異はメカニズムの中でも、好きな人は非常に楽しむが、嫌いな人は本当に嫌う、評価が分かれるメカニズムである。
デザイン空間:中等
変異カードはどれでも3マナ2/2で唱えられる、ということは間違いなくデザイン空間を狭めているが、その範囲の中でも、特に変異誘発を使えば、充分なデザイン空間がある。
多用途性:普通
このメカニズムをセットに入れるには多少扱いにくいところがあり、いくらかの前提が必要となるが、ほかの様々なメカニズムとうまい相互作用を見せる。
デベロップ:問題あり
変異は、構築とリミテッドのそれぞれにおいて問題がある。構築では、3マナ2/2は実用的なクリーチャーとはほど遠いので、使うことに大きなメリットを持たせる必要がある。リミテッドでは、変異は環境の中心になってしまう傾向にあり、タフネス2のクリーチャーを殺すカードが通常よりも強くなることになる。
プレイアビリティ:問題あり
変異は複雑なメカニズムで、あまり使われていない方法でカードの裏面を使う。そのため、経験の浅いプレイヤーは圧倒されることになる。また、カードを裏返すという物理的な行動が必要となるので、場合によっては問題になることがある。
ストーム値:4
すでに上記の例で使っているので、この点数はわかっていたはずである。ここで記した内容を見ると、このメカニズムの点数はもう少し上になるべきだと考えられる。これは、ストーム値が主観的なものだということを表している。変異はマジックの歴史において重要な役割を果たしていて、問題はあるにせよ、間違いなくマジックの象徴的な部分であり、いつかまた再録されると信じている。
強襲『タルキール覇王譚』
人気:好評
強襲は上半分に入っているが、ぎりぎりである。
デザイン空間:中等
強襲はクリーチャーにも呪文にも付けられる。攻撃はマジックの大きな部分なので、ほとんどのデッキで簡単に誘発させられる。広大でなく中等とした理由は、効果が攻撃後に有用なものに限られるので、かなりの量の効果が排除されるからである。
多用途性:柔軟
このメカニズムを使うのは簡単で、前提はそれほど必要としない(攻撃はマジックの鍵なので)。また、他の多くのメカニズムとうまく働く。
デベロップ:問題なし
強襲に関してデベロップ上の問題は存在しない。
プレイアビリティ:問題なし
強襲は単純で理解しやすく、物理的な問題も存在しない。
ストーム値:3
すべての因子が、強襲の再録を肯定している。
長久『タルキール覇王譚』
人気:不評
長久は史上すべてのメカニズムの中で下位25%に含まれている。
デザイン空間:狭小
長久を『運命再編』で使わないことにした理由は、2つ目のセットに充分な枚数のカードを作れるとは思わなかったからである。長久は非常に狭小なメカニズムなのだ。
多用途性:普通
このメカニズムは、理解するのは簡単だが、使うのには多少複雑な戦略が必要となる。+1/+1カウンターに追加の意味を持たせるには、いくらかの前提が必要となる。このセット内の他のメカニズムとは、うまい相互作用を見せていた。
デベロップ:普通
長久は、実際よりもカードの評価が低くなりがちだという問題があり、魅力的だが強くなりすぎない長久カードを作るのは非常に難しい。
プレイアビリティ:問題あり
長久はカウンターを用いるし、カウンターを持つクリーチャーに能力を与えるサポート・カードが存在する。特に対戦相手が使っている場合、このメカニズムについて意識することが多少多くなってしまう。
ストーム値:7
長久が再録されるとは思わないが、これが完璧にふさわしい環境があって検討することになる可能性は想像できる。
果敢(『タルキール覇王譚』と『運命再編』)
人気:好評
果敢は『タルキール覇王譚』と『運命再編』で最も人気が高く、ブロック内でも2番目に人気が高かったメカニズムである(反復が一番だったので、新メカニズムでは果敢が一番ということになる)。
デザイン空間:広大
果敢はクリーチャーにしか付けられないが、非常に柔軟性が高く、非常に多くのクリーチャーを作ることができる。
多用途性:柔軟
このメカニズムは使用が簡単で、それほどの前提は必要ない(クリーチャーでない呪文を唱えることはほとんどのゲームで起こる)。そして他の多くのメカニズムとうまく相互作用する。
デベロップ:問題なし
果敢にはデベロップ上の問題は存在しない。
プレイアビリティ:問題なし
果敢は単純で、理解も簡単で、物理的な問題もない。
ストーム値:1
我々は(そして諸君も)果敢が大好きだったので、常磐木にした。つまり、またすぐ見ることになる。果敢は『戦乱のゼンディカー』ブロックには(《ウマーラの絡め捕り》と《嵐追いの魔道士》を除いて)存在しなかったが、『イニストラードを覆う影』ブロックでは再録される。
探査(『タルキール覇王譚』と『運命再編』)
人気:普通
探査にはファンがいるが、メカニズム全体の中では下半分である。
デザイン空間:中等
探査はあらゆる呪文タイプにつけられるが、コスト軽減を有効に働かせるためには元の呪文が重くなければならない。
多用途性:普通
探査は他のメカニズムともうまく働くが、通常、効果的に使えるようにするにはいくらかのサポートが必要である。
デベロップ:問題あり
探査はコスト軽減メカニズムなので、コスト付けが難しい。構築でもリミテッドでもかなりの制限があり、使いたいと思うような効果と組み合わせると簡単に壊れてしまう。
プレイアビリティ:問題なし
探査を使うのは簡単である。追放することが必要ではあるが、通常、物理的な負荷にはならない。
ストーム値:8
これを再録できるようにするには、ふさわしい場所を見つけるだけでなくデベロップ上の問題の多くを解決しなければならない。
獰猛(『タルキール覇王譚』と『運命再編』)
人気:不評
獰猛は下位25%に含まれている。『タルキール覇王譚』セットの中で最も好かれていないメカニズムかもしれない(ブロック内で最も好かれていないメカニズムについてはこの後触れる)。
デザイン空間:中等
獰猛にはいくらかのデザイン空間があることはわかっているが、パワー4以上のクリーチャーが出たときに有意義なものという条件によっていくらか絞られることになる。
多用途性:柔軟
獰猛を使うのは簡単で、他のメカニズムともうまく相互作用する。使うにはクリーチャーが必要だが、幸い、マジックにおいてクリーチャーは非常に重要な要素である。
デベロップ:問題なし
獰猛にはデベロップ上の問題は存在しない。
プレイアビリティ:問題なし
獰猛はそれほど混乱も起こさないし、物理的な問題もない。
ストーム値:7
獰猛は、再録させる必要を感じないがふさわしいと思える環境が訪れたときには再録される可能性があると思われるメカニズムの代表格である。
予示(『運命再編』)
人気:普通
予示はメカニズム全体の下半分の上半分である。熱心なプレイヤーの中ではもう少し人気が高い。
デザイン空間:中等
予示は一見するとトークン生成メカニズムのように働く。従って、そのセット内で作れるカードの枚数はある程度限られることになる。
多用途性:普通
予示はデザインするのが難しいメカニズムである。いくらかの前提が必要である。幸いにも、他の多くのメカニズムとうまく相互作用する。
デベロップ:普通
予示に関するデベロップ上の最大の問題は、トークン生成とよく似た働きをするので、構築で使えるようにするのが難しいということである。
プレイアビリティ:問題あり
変異は複雑なメカニズムであり、予示はそれよりさらに複雑である。変異が持つ物理的な問題に加え、予示メカニズムを通常持たないものを裏向きにすることまでできてしまうのだ。
ストーム値:6
予示を再録するためには多くの解決すべきものがある。救いとなるのは、非常に新しく、ゲームプレイも良いことだろう。
鼓舞(『運命再編』『タルキール龍紀伝』)
人気:好評
鼓舞はメカニズム全体の上半分だが、ぎりぎりである。
デザイン空間:中等
鼓舞はクリーチャーにも呪文にもつけられる。デザイン的にはかなり開けているが、すべてがかみ合わないと違和感があるので、クールなデザインの可能性は絞られることになる。
多用途性:柔軟
鼓舞のデザインを広げることは簡単で、前提もあまり必要なく、他の多くのメカニズムとうまく相互作用する。
デベロップ:問題なし
鼓舞にはデベロップ上の問題は存在しない。
プレイアビリティ:問題なし
鼓舞は理解するのが簡単で、物理的な問題も存在しない。
ストーム値:5
鼓舞は楽しく、一般に好まれていた。やがてふさわしい場所を見つけるだろうメカニズムだが、中心になるようなものではない。
疾駆(『運命再編』『タルキール龍紀伝』)
人気:好評
疾駆はメカニズム全体の上半分だが、ぎりぎりである。
デザイン空間:中等
疾駆はクリーチャーにしかつけられないが、さまざまな使い方があることが発見されている。
多用途性:柔軟
疾駆のデザインを広げるのは簡単で、ほとんど前提は必要なく、他の多くのメカニズムとうまく相互作用する。
デベロップ:問題なし
疾駆にはデベロップ上の問題は存在しない。
プレイアビリティ:問題なし
疾駆を理解するのは簡単で、物理的な問題も存在しない。
ストーム値:3
疾駆は、帰ってくる時期が問題で、帰ってくるかどうかは問題ではないと思われる。
大変異(『タルキール龍紀伝』)
人気:不評
大変異は史上すべてのメカニズムの中でも最低クラスである。
デザイン空間:中等
大変異は多くのカードを作ることができるが、変異と同様、3マナ2/2というサイズがボトルネックになる。
多用途性:普通
大変異には変異と同じ問題がある。
デベロップ:問題あり
大変異のデベロップ上の問題は、ほとんど変異と同じである。興味深いことに、大変異は+1/+1カウンターがあるのでプレイヤーは裏向きに唱えたいと感じるため、変異よりはデベロップが簡単であるが、それでも構築で使えるようにするのは難しい。
プレイアビリティ:問題あり
大変異には変異の持つすべての問題があり、しかも+1/+1カウンターも使う。
ストーム値:9
このメカニズムの点数付けはもう少し少なくてもいいが、プレイヤーからの評価がひどかったのだ。これを再録する必要があるようになったら、おそらく変異とだけ書いて+1/+1カウンターは文章で書くことにするだろう。おそらく、この「大変異」という名前は永遠に葬り去られることになる(そもそもろくな名前じゃない)。
反復(『タルキール龍紀伝』)
人気:大好評
反復は『タルキール覇王譚』ブロックの中でもっとも人気が高く、史上すべてのメカニズムの中でも上位25%に含まれる。
デザイン空間:中等
反復はインスタントとソーサリーにしか付けられず、2ターン続けて発生してほしいような効果に限られる。
多用途性:柔軟
反復のデザインを広げるのは簡単で、前提もほとんど必要なく、他の多くのメカニズムとうまく相互作用する。
デベロップ:問題なし
反復にはデベロップ上の問題は存在しない。
プレイアビリティ:問題あり
反復に関する問題は、プレイヤーが記憶して、次のターンに思い出して遅延効果を発生させなければならないということである。
ストーム値:3
反復は好評で、楽しいカードをデザインすることができる。反復が、そう、反復してくるのは間違いないだろう。
濫用(『タルキール龍紀伝』)
人気:普通
濫用はかろうじてこの評価に入っている。下位25%にかろうじて入らなかった程度に下の方である。
デザイン空間:中等
濫用はクリーチャーにつけて、本質的には呪文効果を生成させるものである。様々なカードをデザインできるメカニズムではあるが、その中でエレガントなものはかなり限られてくる。
多用途性:普通
濫用のデザインを広げるのは難しく、いくらかの前提が必要となる。一方、他の多くのメカニズムとうまく相互作用する。
デベロップ:普通
濫用に関するデベロップ上の最大の問題は、うまく使えるようにするのはかなり環境を歪める必要があるということである。濫用クリーチャーで自分を生け贄に捧げられるというのは、デベロップ的にはバランスが取りにくいので嫌われている(デザイン的には、ゲームプレイの上で気に入っている)。
プレイアビリティ:問題なし
濫用に関する唯一最大の問題は、経験の浅いプレイヤーは自分のクリーチャーを生け贄に捧げさせられるのを嫌うということである。
ストーム値:6
濫用にはいくつもの問題があるが、いつか問題を解決するための手段となり得るようなメカニズムである。
圧倒(『タルキール龍紀伝』)
人気:不評
圧倒は下位25%に位置する。圧倒よりも下位になるのは、『タルキール覇王譚』ブロックの13のメカニズムの中では大変異だけである。
デザイン空間:狭小
圧倒のデザインに使える空間は広くはない。厳密には、狭小と中等の間ぐらいだろう。
多用途性:普通
圧倒にはクリーチャーの前提がいくらか必要だが、それ以外にはデザインするのは難しくはない。クリーチャーを巨大化させるようなメカニズムとはうまく相互作用する。
デベロップ:普通
圧倒にはデベロップ上の問題は存在しない。
プレイアビリティ:問題なし
圧倒には少しだけ計算が必要となるが、それ以外は理解するのも簡単である。
ストーム値:9
圧倒は、おそらく好かれなかったメカニズムが送られる場所に送られる、つまり二度と見ないことになるだろう。
ストーム値に寄せて
今日はここまで。諸君がストーム値に興味を持ってくれたかどうか、そして将来の「マジック開発秘話」の記事でまた読みたいかどうか教えてほしい。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Google+、Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、諸君の言葉を伝える日にお会いしよう。
その日まで、『タルキール覇王譚』と『運命再編』へのよき別れがあなたとともにありますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)