運命を変える者、アミナトゥ
今日は、マジックの新プレインズウォーカーを紹介させて頂きます! その名はアミナトゥ、我らが最年少の(そして思うに最も怖い)プレインズウォーカーです。
アミナトゥの魔法は運命と逃れえぬ未来を操作するというものです。この子は運命の基質を認識しており、他者の未来を予見できるのです。アミナトゥの「プレインズウォーカーの灯」は非常に幼い頃に点火し、それもどうやら特にきっかけは無かったようなのです。何故そんなことをしたのかと尋ねたなら、こう答えるでしょう。「だって前に予想してたの。それで待つのは嫌だったから」
八歳の子供らしく、アミナトゥは遊び好きで気まぐれです。今は自らの未来も日々の遊び道具の一つです。ある時には、将来の夢は歌手です。またある時には強大な魔術師、もしくは美しい獣の訓練士であったり、征服の女王であったりします。この子は幼く、ですがその力によって一つの生涯に匹敵する知識を有しています。その知識はしばしば子供らしい移り気によって中和されます――凄まじい知識を振るうことと、それを役立たせることは別です。何せ意思決定能力は未だ子供のそれでしかないのですから。
アミナトゥは移り気ですが衝動的ではなく、行き先々に残す混沌とは裏腹に計画的です。今のところは子供らしい論理がその選択を左右しており、この子を知る者はこの先成長することを確信しているため、現在の気まぐれな性質は多少厄介な程度で済んでいます。アミナトゥの自主自立の気性はしばしば良い方向に働きます。この子の両親は謎に包まれています、何せ構って欲しいと思う時にだけそれらは存在するのですから。
アミナトゥの最も印象的な特徴は、その穏やかな物腰です。この子は決して癇癪を起すことはなく(その結果がどうなるかわかっているなら、癇癪を起すなどありうるでしょうか)、何かに驚かされた時には笑うのみです。これは稀なことです。
この子の魔法は実体のない蛾の姿をとって現れます。力の一粒が誰かにとまると、それはアミナトゥが選んだ方向へと運命を刺激します。未来の変化は棘を踏む程度の小さなものから、誰かの命日を変化させるような幅広いものまで様々です。そしてアミナトゥは極めて冷静に、他者の運命を確固として調整します。この子の能力を知る者は、機嫌を取ろうと尽力します。そういった者は文字通り運命を試さない方が良いと心得ているのです。何かの存在を容易く奪えるほどの力を所持していながらも、アミナトゥは大体において自身の必要のためにそれを使用しています、何せまだ八歳なのですから。この子には途方もないことができるのですが、その力は大体において小さな奇跡を起こすことに使用しています――小石を一つ動かしておいて後に誰かをつまずかせる、もしくは生涯の恋人に出会わせる、後で襲われることになると予期した異邦人にナイフを与える、などです。
アミナトゥの故郷の次元は謎です。それについては滅多に語ろうとしません。ありうる未来ほどに過去には興味がないのです。自らの未来については大きく意識していますが、それを今すぐ定めるものではないとわかっています。そのためこの子は今のところ、新たな未来で遊ぶと同時に力を学ぶべく放浪しています。
私もかつては一人の少女でした。そのため確固たる意志でこのような子を登場させてやりたいと思いました――計り知れない難解な力を持つ、遠慮することのない宇宙的存在を。
西洋の一般的な文化には概して、少女というのはこうあるべきだという非常に厳格な定型があります。内気で、感情的で、繊細で、好意的。定型には重要な役割があり、彼女らは聴衆のように先の展開を予想してくれます。ですその決めつけは逆に考えると危険です。時折、定型通りに作るということは脅威となりえてしまいます――義務的な「女の子らしさ」が、同等に危険な決めつけとなって仕返しをしてきます。スカートをはくのが嫌でない、活動的でない、陽気でない女の子は、強くはないのだと。「私は他の子とは違うの!」そばかす顔の子供が、まるで同類をあざけることで自分は報われるように画面上で胸を張る、フィクションのそんな場面をどれほど私達は見てきたでしょうか。アミナトゥのキャラクターを構築する上での第一の目標は、この子はこうするだろうという予想の大半を覆してやることでした。女性らしさはアミナトゥの一部です。可愛い服を着るのが大好きな少女なのです。とはいえこの子は決して繊細でも親切でもありませんし、デザインもまた時代遅れでなく子供扱いもしていません。女性らしさというのはキャラクターの一面であり、個性を支配するものではありません。現代のファンタジー作品、特にゲームでは、クリエイターはしばしば決めつけの罠にかかってしまいます。キャラクターを強くするために、同時に女性らしくあってはいけないのだと。
アミナトゥの故郷の次元については多くを言えません。開発の終了段階でもきちんと定められなかったためです。途方もないアーティストであるセブ・マッキノン/Seb McKinnonへ送られたアート指定では、アミナトゥの次元的所在地については「特に設定なし」と記述されていました。この言葉は基本的に「故郷の次元はまだ決めていません」を意味します。ケリー・ディグス/Kelly Diggesがアート指示を行い(素晴らしい仕事でした!)、この子のカードで見ることのできる印象的な作品が完成しました。アミナトゥがドミナリア次元のザルファー出身でないことは確かであり(ザルファー衣装の美は、アフリカ的な素材にローマ式の裁断とデザインが合わさったものです)、間違いなくヨーロッパ的な衣装が侵食していない、西アフリカ的な次元からのものです。西アフリカ的次元を創造する計画は今のところありませんが、沢山の反響があったなら、まずはアミナトゥの故郷の次元に現実味を持たせる文化コンサルタントを雇うべく奔走することになるでしょうね。
アミナトゥは自らの運命を完全に統制しており、同時に一人の子供でありながらも変化とは生の一部であると認識しています。私達は皆、アミナトゥから学ぶべきものがあったり、人生についての彼女の哲学――未来は決して定まっていない――を取り入れることもできるでしょう。
(Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)