今週はセレズニア特集だ。細かいことを気にする諸君のために添えるなら、これは2回目のセレズニア特集ということになる。旧ラヴニカ・ブロックのときにも10のギルドそれぞれの特集週をやったが、このラヴニカへの回帰・ブロックでももう一度やることにしよう。あるテーマの特集を2回やるというのは、思いつくようなことは一度目のコラムで書いてしまっているので、一種のチャレンジになる。チャレンジとなれば私の好物だ。私のギルド特集のコラムは、色の哲学に関するコラム群(リンク先は英語)と一緒に見ることができる(前回のギルド特集の記事は、当該2色の色の哲学、ならびにそのギルド自体の哲学に関するものだったのだ)。

 前回のギルド特集では色の哲学を取り上げたので、今回はギルドのデザインを取り上げることにしようと思う。例えば今日のコラムでは、純粋に緑白のデザインはどうあるべきか、そしてセレズニアではどうあるべきか、という話になる。また、ギルド・メカニズム2つ(旧ラヴニカ・ブロックのものとラヴニカへの回帰・ブロックのもの)を取り上げ、それらがどうデザインされたか、そしてそのメカニズムに必要だった条件は何かについて語ろう。諸君に楽しんでもらえれば幸いである。

 内容を均質にするため(合計10週間やるつもりだ)、このコラムでは各ギルド・色の組み合わせについて同じ質問をすることにしよう。

セレズニアのギルド門》 アート:Howard Lyon

この色の組み合わせにとって最も簡単なことは何か?

 緑白では、この答えは色の混合が簡単だということになる。マジックのあらゆる色の中で、緑白が一番近いのだ。緑と白は、クリーチャー中心の色2つだ。つまり、これはクリーチャーをどの色に入れるかという点で最優先とその次(順に白と緑)ということを意味する。また、この2色はどちらもライフを得るし、クリーチャーを強化するし、エンチャントを(緑はもちろん白も少しだけアーティファクトも)除去するし、警戒を持つし、ダメージ軽減(緑にも《濃霧》がある)もするし、+1/+1カウンターを載せるし、クリーチャーをアンタップするし、その他にも共通の効果がある。

 緑と白はメカニズム的に近いだけではなく、理念的にも近いと言える。例えば、セレズニアはこの2色が最も共同体の色であるという事実を踏まえている。どちらもクリーチャーの大群を作り、それで敵を蹴散らすのが好きだ。白が小さなクリーチャーを集めて戦う軍勢の色、緑はマナを貯めて大型クリーチャーの群れを戦場に呼び出す色だという違いはあるが、どちらも似たようなものである。

 また、今後の記事では色の組み合わせについてどういう部分が近くてどういう部分が遠いかという話をするが、緑と白については、どのカード・タイプを見てもお互いに似通っているのだ。

この色の組み合わせにとって最も難しいことは何か?

 私のお気に入りの言い回しだが、「最大の欠点は最大の長所を押しすぎることである」。緑と白が似通っているということは、シナジーを見付ける上では有利だが、単に緑っぽい、あるいは白っぽいのではなく、緑っぽくかつ白っぽいという多色カードを見付けるのが難しくなるという欠点を生み出す。言い換えると、緑白は重なりを見付ける意味では混成デザインの王だが、その違いを混ぜ合わせたというインパクトを作り出すのは難しいのだ。

 開発部は緑の持つものと白の持つものとの違いを際立たせようとかなりの時間を費やしてきた。例えば、白は比較的効果の小さなクリーチャー強化(+2/+2以下)、緑は比較的効果の大きなクリーチャー強化(+3/+3以上)。この2色の間の線をはっきりさせるのにそれだけ時間を費やしていると言うことは、すなわち、この2色に明確な色の特徴を持たせるのが難しいということである。例えば、緑白カードの白の効果として+2/+2強化をつけることはできない。なぜなら、確かにそれは白のメカニズムだが、緑と言われても違和感なく受け入れられてしまうからである。

ヴィトゥ=ガジーのギルド魔道士》 アート:Jason Chan

この色の組み合わせにとってメカニズム的中心は何か?

 この質問に答えるにあたって、まず単語の定義をしておこう。メカニズム的中心とは、デザインの中心にあるものだ。その周りに作るものを定義づけるものだ。例えば、旧ラヴニカのデザインにおけるメカニズム的中心は、ギルドであった。あらゆる点で、我々はギルドを強調することでデザインの枠組みを作ったのだ。それに基づいて色の使い方が決まった。それに基づいてキーワードが定義された。それに基づいてデザインのあらゆる鍵が定められたのだ。

 さて、色の組み合わせのメカニズム的デザインという話になると、その2色の関わり合いをもっとも定義づけているメカニズム的要素を取り上げることになる。緑白であれば、それはクリーチャーである。両色ともにクリーチャーに焦点を当てており、両色ともにその理念、メカニズムはクリーチャー補助を中心としているのだ。

 クリーチャーがメカニズム的中心となれば、緑白(そしてセレズニア)の定義はクリーチャーとなる。言い換えると、ギルド・メカニズム的イメージを決定づけることになるそのギルドのキーワードはクリーチャーに基づき、クリーチャーに関するものでなければならない。

この色の組み合わせの焦点は何か?

 メカニズム的中心は、その周りにデザインを組み上げる成分であり、緑白では、それはクリーチャーである。焦点とは、その中でも、その色の組み合わせが勝つために必要とするものである。そう、緑白の焦点はクリーチャーだ。そうだとも。では緑白はクリーチャーをどう使って勝つのだろうか?

 答えは上にある。緑白はどちらもクリーチャーで相手を圧倒する色だ。白は緑より素早く動くが、どちらも同じようなプレイスタイルである。つまり、緑白の焦点はクリーチャーの数を活かして殴る戦略である。焦点はまた、ギルドのキーワードに活かされなければならない。緑白がクリーチャーで殴るのなら、緑白のギルドはその目標を助けるものでなければならない。

召集

 まずはセレズニアの最初のギルド・メカニズム、召集の話をしよう。召集はリチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldが、興味深いことに、ボロスのためにデザインしたものだ。リチャードは召集を、軍勢が協力して強化していくというイメージで作ったのだ。リチャードはこれを「仲間を呼ぶ」と呼んでいた。私は「仲間を呼ぶ」を楽しんだが、リチャードに他にふさわしいギルドがあると伝えた。セレズニアに入れるクリーチャーを中心にしたメカニズムを探していたので「仲間を呼ぶ」がまさにふさわしかったのだ。

 召集は、クリーチャーを必要とするメカニズムだが、クリーチャーだけが持つものではなかった。加えて、クリーチャーを大量に並べるプレイヤーにとって非常に有利になるものだった。これはいかにもセレズニアに必要な特徴だった。さらに、緑と白の組み合わせは協力の価値を讃えるものなので、ギルドの理念とぴったりそぐうものだった。物語上のセレズニアの強さは、ギルドの無私性にある。ギルドのメンバーはお互いを同じものだと思い、そして協力することを好んでいるのだ。

 召集はクリーチャーの近しさを示すのに素晴らしい役割を果たした。協力して呪文を唱えるのだ。そして、緑白が大型クリーチャーを素早く出し、勝利への道を繋ぐことにも貢献した。コスト低減はただ大型クリーチャーを出すだけではないということを考えてもらいたい。セレズニアのプレイヤーはマナを使わずに呪文を唱えることもできたのだ。そういう呪文は「ただ」で使える回数が増えるよう、軽く仕立てられていた。

 計画がいくら巧く行っても、どこかの段階では実際にそのメカニズムを持ったカードを作らなければならない。このとき、そのメカニズムの可能性、デザイン空間の広さを探ることになる。ここで、どのようなものを探るかについて簡単に触れておこう。

1. そのメカニズムを持てるカード・タイプは何種類あるか?

 そのメカニズムを使えるカード・タイプが多いほど、デザイン空間も広くなる。

2. そのメカニズムはなんらかの制限が必要か?

 デザイン空間を制約する最大のものは、そのメカニズム自体の制限である。そのメカニズムは対象を必要とするか? そのメカニズムは変数を必要とするか? そのメカニズムは変更すべき能力を必要とするか? 多くのメカニズムは、カードのメカニズム的制限を満たすものが少ないためにダメになっている。

3. そのメカニズム自身の空間を食い合うか?

 もう一つの大きな問題は、そのメカニズムが同じメカニズムを持つ他のカードとぶつかることである。例えば、我々はずっと未来予知の探査を入れるところを探している。探査の最大の問題の1つに、デッキに入れすぎると墓地のカードが足りなくなって探査が使えなくなってしまうということが上げられる。これが起こると、デザイナーはそのメカニズムを使うカードの枚数を減らさなければならない。

 召集の最大の長所の一つは、こういった問題を起こさないことである。あらゆるカード・タイプにつけられるし、制限といえるような制限は存在しないし、自分で食い合うこともない。実際、最後の項目に関しては完全に逆である。召集を強化するカードはすべての召集カードと巧く働き、場合によってはさらに多くの召集カードを入れたくするものだ。

 旧ラヴニカの10個のギルド・メカニズムの中で、召集が一番将来の可能性を秘めたデザインだったと私は信じている。

狩猟者の協定》 アート:Nils Hamm

居住

 ラヴニカへの回帰の新しいギルド・キーワードで我々が挑んだのは、以前のギルド・メカニズムの焼き直しでない新しいキーワードを作るということだった。召集は素晴らしいものだったが、我々は別の方法でその問題に挑むことになった。当然、そのメカニズムはクリーチャーを軸にしたものでなければならなかったが、それ以外の条件なしでデザイン空間を探ることができた。

 私は、ラヴニカにおいて、セレズニアはクリーチャーが助け合うという感覚を作り出したと感じている。そして私は緑白のクリーチャーが持つ増えていくという性質に注目したいと思った。セレズニアの勝ち方は対戦相手をクリーチャーで圧倒するというものだ。新しいセレズニアのギルド・メカニズムはクリーチャーが増えることを助けるものにしたらどうだろうか?

 最初に思い至ったのは、このカードだった。

二重の詠唱
 

 これからメカニズムを切り出すことができるだろうか? 否。これは少しばかり強すぎる。それでは、これを弱体化できるだろうか? それがクリーチャー・トークンの増殖という発想に巡りあった瞬間だった。以前の記事で言った通り、最初のバージョンはほとんどこのままだった。各タイプのトークンのコピーを作るのだ。1/1を2体と2/2を1体、3/3を2体出していたなら、その呪文は1/1を1体、2/2を1体、3/3を1体出すことになる。このバージョンは1度のプレイテストを踏まえて現在のバージョンに変更されたと記憶している。あまりにも強かっただけでなく、デッキ構築において可能な限りの種類のトークンを入れるという奇妙な動機づけをしてしまったのだ。

 居住に関して興味深いことは、デザインの初期の数週間の内に作り出したメカニズムであるにも関わらず、居住はいわば「2段階のメカニズム」とでも言うべきものだったためにかなりの頭痛の種になった。説明しておこう。メカニズムの中には、自立しているものがある。つまり、他のカードとの相互作用が必要ない、あるいは必要なのはマジックに通常存在するものであるメカニズムだ。

 2段階のメカニズムは、そのセットに存在する他の要素を必要とする。居住の場合、それはトークン・クリーチャーである。2段目としては、トークンというのはそれほど悪い物ではない。マジックにはトークンは存在するものだし、緑や白はトークンを作る色だ(大量のトークンを出すのは緑の第1種、白の第2種だったが、白の軍勢の色という性質を強調するために入れ替えた。これによって、白はコモンに最も多くのクリーチャーを持つことになった)。

 通常、2段目は自立しているものであり、そうでなければ寄生的メカニズムということになる(同じセットの他の何かと組み合わせてしか働かないということだ)。セレズニアには多くのトークンが必要となるが、それが単体で巧く行くと、我々は増やしたくなった。このセットを不利な状況にせずにセレズニアのインパクトを強められると感じたのだ(トークン・クリーチャーの天敵であるカードには少しばかり注意する必要があるようになったということも併記しておこう。バウンス呪文、お前のことだ)。

 居住には最終的に2つの問題があった。1つめに、2段階のうちの居住のほうは寄生的である。他方がなければ何の役にも立たない。幸いにして、トークンはマジックの歴史上一定の意味を占めているので、居住が寄生的であっても寄生先はすでに存在する様々なカードということになる。2つめに、コモンの居住カードはトークンなしで居住カードを手にするプレイヤーを困らせる。

 1つめの問題はどうにもならないが、2つめの問題には弄る余地があった。もっとも一般的な手は、居住カード自身にトークンを作る効果をあたえ、居住することができるようにするというものだった。もう一つよく使った手は、居住をオマケにつけるというものだった。この場合、トークンが戦場になくても、カード自体は何らかの役に立つ。

 これらの結果として、居住は召集よりもデザイン空間が狭いものになった。ギルドを使うことの最大の利点の1つに、看板メカニズム(セットで最も注目を集めるメカニズム)にできるほど大きなデザイン空間を持たないメカニズムを使うことができる、というものがあるので、これは悪いことではない。全体としてそう多くない枚数の居住カードしか存在しないので、高レアリティには再利用可能なものを入れるようにした。これによって、ゲーム中に居住の行なわれる回数を増やすことができるだろう。

 居住は、召集よりもデザインが難しく、軸にするのも難しかったが、その出来映えには非常に満足している。セレズニアは居住のおかげで、ラヴニカへの回帰のプレイにおける私のお気に入りのギルドとなった(ブロックではそうじゃない、それは近々お見せしよう)。

共有の絆》 アート:Raymond Swanland

最後に?

 ギルドをデザインすることの楽しみは、ギルドのメッセージの本質を掴むことである。セレズニアのクリーチャー中心という部分を、旧ラヴニカと違う形でラヴニカへの回帰で描けたことには非常に満足している。我々の目標の一つは、ギルドの、独特だけれども昔のものと巧く混じり合う新しい姿を作ることだ、ということはすでに述べたとおりである。

 召集と居住は、違う音を奏でながら同じ目標に向かって協力できる。つまり、旧セレズニアと新セレズニアを混ぜ合わせれば、調和していると言えるコンボを見ることができるだろう。

愛情と慈悲

 セレズニアのデザインはセレズニア自身と同じように喜びに満ち、恐怖から解放されていた。そういう意味で、セレズニアから始められたことを嬉しく思う。これから、これほど簡単ではなかった、2色の共通点がはるかに少ないギルドの話をしていくことになる。ああ、するとも。

 今回のセレズニアの話を楽しんでいただけたなら幸いである。いつも通り、諸君の(メール、掲示板、TwitterTumblrGoogle+などでの)フィードバックを期待している。

 それではまた次回、ラヴニカへの回帰のデザインに関する諸君の質問に答えるときにお会いしよう。

 その日まで、あなたの繁栄を思う人々があなたとともにありますように。

 

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)