Translated by Yoshiya Shindo

 神河謀叛のプレビュー第2週へようこそ! 君が私のコラム命名の秘密の暗号を解読できるのなら、今週は神河謀叛の反転カードの話になることがわかるだろう。今回それにあたり、君たちを私のコラムではめったに訪れない場所へと連れて行こうと思う——神河謀叛のリードデザイナー、マイク・エリオットの頭の中だ。

 一言注意をしておくけど、今回のコラムで語るのは、マイクのデザインに関して私が全力で推測をしたものだ。以前にも言ったかもしれないけど、私が自分のデザインに関して話をする最大の理由は、私は自分の創造の過程をよくわかっているからだ。しかし、デザイナーはそれぞれ別々のやり方をしているから、私が他のデザイナーの話をする場合、私は自分のデザイナーとしての本能で、彼だが取り上げられたカードをどうデザインしているかを論理的に推測していかなくちゃいけない (私はデザイナー同士で話をするけど、ほとんどのデザイナーは自分の作業の過程について言葉にしづらいみたいだ)。端的にいって、今回のコラムはあくまで僕の推測だ。

 ところで、今回のコラムにはプレビューカードがある。でも、今回は面白くするためにそいつをコラムの後ろのほうにおいてある。お望みならスクロールしていってもらってもかまわないけど、コラムを一通り見て気分が盛り上がるまで待っていたほうが面白いと思うよ。

反転側で逢いましょう

Nezumi Graverobber
 そんなわけで、マイクは席について神河謀叛のデザインを始めた。最初にすべきことは、神河物語をながめることだ。彼がしなくちゃいけないことは何か? マイクが神河物語のデザインを受け継ぐとしたら、どのメカニズムをいくべきか? さらに言えば、神河物語の中でマイクがその数を増やすことを期待されているのは何なのだろうか? ファイルをざっくり眺めていくと、反転クリーチャーに目が留まった。反転カードは神河物語で新しく導入されたカードタイプだ。こいつはユニークだ。しかもかっこいい。しかもこれはかなりの人気を得ている。一言で言うなら、マイクにはこれを何とかする義務がある。

 しかも、単にその続きを作ればいいわけじゃない。大衆は新しいものを望んでいる。新たなひねり、新たな方法だ。それは神河物語に無かった何かだ。その理由は? それはデザイナーにとって、ブロックのシステムというものに刻まれているものだからだ。ブロックのメカニズムは、ブロックが先に進むにつれて成長し進化していく。プレイヤーがブロックの第二、第三のセットに求めているのは、単なる“同じ物の追加”じゃない。彼らが求めているのは“さらに違う何か”なんだ。

 他のデザイナーの過程について書くことの難しさの一つは、それぞれのデザイナーの創造の仕方が異なることにある。でも、私はマイクが、私がブロックメカニズムを拡張する際にしばしばとっかかりにするところから始めたと思う——それは基本事項だ。まずは我々がこれまでにやったことのおさらいから始めるわけさ (他のやり方もまだまだ大量にあるけど、全部教えることはしないよ)。

  • コストの変化
    こいつはブロックメカニズムの進化の大先祖さまだ。まずはコストつきのメカニズムを作る。最初のセットでは、マナによる起動だけを使う(できるんなら汎用マナがいい)。そして第二と第三のセットでは、他のコストを検討する。バイバック、フラッシュバック、双呪バック……それぞれのメカニズムがこのパターンだ。残念なことに、反転カードはマナによる起動では無いので、このカテゴリーではうまくいかない。
  • 複雑化
     こいつはおそらく二番目に多く使われているものだ。開発部が新しいメカニズムを導入するとき、我々はまず最も簡単なバージョンを最初に持ってくる。そうすれば、以降のエキスパンションで、そのメカニズムに関するもっと複雑なものが持ってこれるだろう。例えば、刻印はミラディンで導入されたけど、そこには最初に出たときに刻印するものしかなかった。ダークスティールでは、他のタイミング(通常は起動型能力)で刻印する刻印カードが登場した。反転カードはもともと複雑なんで、その方法の進化ではあまり余地が残っていない。さらに言えば、文章欄の枠の狭さがデザイン領域を大幅に妨げているね
  • Avalanche Riders
    新たなトリックを加える。
     ブロックメカニズムの進化において、新たなメカニズムをこれまでに長いこと使われているマジックのメカニズムと組み合わせるというものがある。 最も一般的な追加が「場に出たとき」の誘発型能力だ。例えば、エコーではこれを使っている。場に出たときの誘発型能力をウルザズ・レガシーのエコー・クリーチャーに付け加えることで、エコー・コストを支払わなくてもソーサリーとして問題の無いものができ上がったんだ。ただしここでも、文章欄の枠の狭さが醜い鎌首をもたげてくるんだな。
  • 関連するカードを作る
     進化の中には、メカニズム自体を変えるんじゃなくて、そのメカニズムを取り巻く世界を変えるって方法もある。サイクリングを例としよう。我々がオンスロートにサイクリングを戻したとき、我々はサイクリングに誘発するカードを何枚か作った。これはサイクリングを活用するデッキの数を基本から変えてしまった。おそらくマイクが何かのカードを反転することで誘発するカードを考えたのは間違いないだろうけど、それでは問題は真に解決されたとはいえない。プレイヤーが神河物語の反転カードを気に入っているのは、そのレイアウトも一つの理由だ。だから、神河謀叛にそのレイアウトを使わない反転カードを入れても、失敗は目に見えているだろう。
  • ブロックの流れに従う
     たまに、ブロックのメカニズムの進化は、セットにメカニズムをあわせればいいというだけの簡単なものになることもある。一番いい例が分割カードだ。デザイナーにとって、アポカリプスが敵対色のセットになることが決まった時点で、敵対色の分割カードはわかりやすい選択肢だ。マイクにとって不幸だったのは、神河ブロックでは反転カードにとって簡単な回答がなかったということだ。
  • 領域の変更
     何かがある領域で動いているなら、別な領域を試してみるのも手だ。サイクリングではこのトリックを使った。ウルザズ・デスティニーにおいて、我々は「場からのサイクリング」として《ヤヴィマヤの古老/Yavimaya Elder》といったカードを作った。(ところで、このやり方の問題点は、我々がそれをカードで明示しなかったために、おそらく君たちの1%ほどしか進化に気づかなかったことだろう。)しかし、反転クリーチャーは他の領域ではうまくいかない。
  • メカニズムの組み合わせ
     メカニズムの見栄えを良くする興味深い方法は、それらを混じり合わせることだ。後述するけど、この方法は他ほどすぐには却下されなかった。
  • 新たな使い方を見つける
     メカニズムの進化の方法の一つとして、それの違った用途を見つけることだ。例えば、フェイジングは当初はクリーチャーの弱点だった。しかし、デザインが進むにつれ、それを利用するあらゆる方法が見つかってきた。マイクが進めたのはこれのようだ。

ぐるっと回して

神河謀叛の反転カードが異なった反転条件を持つとしたらどうだろうか?

 様々な選択肢を探ってみた結果、マイクは最後の方法に引かれていったようだ。反転カードを使う新しい方法は無いか? その答えとしては、カードのキーになる部分を変更する方法を見つければいい——反転条件だ。神河物語においては、カードはある目的を達成すると反転した。それじゃ、神河謀叛の反転カードが異なった反転条件を持つとしたらどうだろうか? そんなわけで、マイクは新しいタイプの誘発を考え始めた。最終的に、彼が採用したのは時間だった。必要な時間が経過したら反転するカードというのはどうか? そこで、新たなバージョンの反転カードが作られた。これらのカードは毎ターンカウンターを得て、カウンターが3個たまると反転する。そして、これらのカウンターが、反転後のカードにおいて資源として用いられるのだ。

 このカードには二つの問題点があった。第一に、時間のバージョンは能動的じゃない。プレイヤーがこのカードの反転に働きかける方法が無いんだ。第二に、これはセット内の他のカードとシナジーを持たない。そこでマイクは、「他のメカニズムとの組み合わせ」作戦に戻ってみた。セットに使えるメカニズムで、変更を行わせる能力をプレイヤーに与えるものはあるか? その答えはイエスだった。秘儀/スピリット誘発だ。そこでマイクはカードを変更し、毎ターンカウンターを得つつ、秘儀かスピリット呪文のプレイでも誘発するようにした。こうすれば、通常と同様に進化もできるし、速度を意図的に速めることもできるだろう。

 テストプレイの結果、マイク(ともう一人のデザインのメンバーのランディ)には、秘儀/スピリット誘発だけで十分であることが伝えられた。そうすれば、プレイヤーたちはマイクがやりたかった時間の経過も感じられるし、よりセットに有機的に組みあうだろう。そして、新しいバージョンを同じ程度の時間枠で実現するため、必要なカウンター(最終的に“気カウンター”になった)は3個から2個にへらされた。

 そして、最終的に神河謀叛の反転カードのサイクル(そう、これはそれぞれの色にあるんだよ)が完成したんだ。で、ここまでメカニズムの紹介を読ませた上で実際のカードを見せないのは意地悪すぎるだろうから、ここらで《狡猾な山賊/Cunning Bandit》の紹介をしよう。

反転天満の天神さん

 そんなわけで、これが神河謀叛の反転カードができるまでだ。今回の旅もお楽しみいただけただろうか。

 それではまたお会いするときまで。来週はまた開発部の頭の中身を覗きに行こう。

 それまでの間、君の人生の何かを進化させる方法を見つけることを祈念しつつ。

マーク・ローズウォーター