各セットごとに、私は、そのセットに関する諸君からの質問に答える一問一答記事を書いている。今週と来週で、諸君からの『基本セット2019』に関する質問に答えることにしよう。

 私のツイートは次の通り。

『基本セット2019』に関する一問一答記事を書くので、この最新基本セットに関する質問を1ツイート1問で送ってくれたまえ。よろしく。

 いつもの通り、可能な限り多くの質問に答えようと思うが、以下のような理由によって答えられないこともある。

  • 文章量の都合で、答えられる質問の数には限界がある。
  • すでに同じ質問に答えている場合がある。最初に来た質問に答えるのが通例である。
  • 私が答えを知らない質問もあるし、正しく答える資格がないと思われる質問もある。
  • 将来のセットのネタバレになるなど、さまざまな理由で語ることができない話題もある。

 それでは、質問に入るとしよう。最初に答えるべき質問はもちろんこれだろう。

Q: この質問はたくさん届いていると思いますが、なぜカードとして存在しないウギンを『基本セット2019』のストーリー上の主役にしたんですか?

Q: ウギンを後付設定でニコルの双子にしたのに、ウギンの新カードは、プレインズウォーカーになる前のエルダー・ドラゴンの形としてさえもありません。なぜですか?

Q: ウギンは!?

Q: ウギンのカードがないのはなぜ?

Q: M19の物語という視点から見て、なぜウギンはニコルと一緒にいないんです?

Q: なぜ変身するウギンのカードがないの?

Q: なんでウギンいないの?

Q: なぜウギンの新カードはないの?

Q: 両面にせよそれ以外にせよ、なぜウギンのカードはないんですか? 他のエルダー・ドラゴンはカードになっているのに。

Q: ウギンはなぜいない

 一言で答えると、我々がこのセットを作っていた時点では、ウギンはストーリー上に関わっていなかった。

 詳しく答えるなら、我々がこのセットを作っていた時点では、ストーリーが存在するかどうかも定かではなかった。少なくとも、セットに深く関わるものになるかどうかはわからなかったのだ。最初に基本セットを復活させるという発想が浮かんだとき、最初に出た疑問の1つが「現行のストーリーの一環にするかどうか」だった。

 我々は直前の基本セットにしてストーリー重視だった『マジック・オリジン』を振り返り、そしてそれを前例として用いることにした。『基本セット2019』を現行のストーリーの続きにするのではなく、ストーリーを補完するような過去の穴埋めのために用いることにしたのだ。

 この結論に到ってしまえば、焦点をどうすべきかは明らかだった。現在進行中のストーリーの全体像を理解するために最も重要なのは誰の過去か。その答えはこの上なく明らかだった。ニコル・ボーラスだ。

 イーサン・フライシャー/Ethan Fleischer率いるチームが『基本セット2019』をデザインしたとき、その目標は可能な限りのニコル・ボーラスの背景に触れるようにすることだった。セットに含まれるすべてのプレインズウォーカーは、ボーラスと何らかの関わりがあった者になるようにした。ボーラスの人生における重要な瞬間を表すカードを作るようにした。ボーラスの過去において大きな比重を占める、他のエルダー・ドラゴンたちを登場させた。ボーラスの過去について可能な限り多くの要素を投入し、そして誰かがストーリーを書くならそれらの要素をストーリーの一部として使うことができるようにしようとしたのだ。

 カードの視点から見た問題は、これがセットデザインの後期に行なわれたということだった。(基本セットへの転換がかなり突然だったので、『基本セット2019』のストーリーを書くという発想ができたのも遅い時期だった。そしてそれは通常するようなことではなかったのだ。)プレインズウォーカーはすでに選ばれており、調整も終わっていた。ここでプレインズウォーカーを、しかも無色のものを追加するのは、あらゆる問題を引き起こすことになる。ウギンが双子だとすれば、そのカードも両面カードにすることが強く求められるのは言うまでもない。セット・デザイン・チームはどうすべきか議論したが、きちんと対応するにはすでに工程が進みすぎていて手遅れだという結論になった。ウギンを入れないほうが、意図的に弱く作ったものを下手に詰め込むよりもマシだと判断したのだ。

 これが、このセットにこの上なくふさわしいと思われるウギンがカードにならなかった理由である。


Q: ニコル・ボーラスを中心テーマにすると決めたのはいつの時点ですか? その時点で、その両面カード専用にシートを使うことになりましたか?

 このセットの中心をニコル・ボーラスにするという計画はかなり初期、基本セットの復活について議論してからほんの数週の間に出てきている。ボーラスの両面カードという話に関しては、イーサンがリードに任ぜられたときすぐからセットに入れたいと言っていて、それがボーラスだったと記憶している。全員からの同意を取り付けるのには1~2週間かかっていたかもしれないが、ボーラスの両面カードは基本的にはこのセットの最初からあったものである。


Q: セットに1枚だけ両面カードを入れることについて、内部での懸念はありましたか?

 もちろんそれについて議論したが、私が覚えている限り複数の両面カードを入れようという計画は存在しなかった。これはニコル・ボーラスのセットであり、その灯の覚醒を表す1枚というのは完璧な枚数だと感じられたのだ。両面カードを1枚だけ入れることの問題は、ほぼ金銭的なものだけだった。通常、両面カードでその種の問題が起こった場合、シートをさまざまなカードで埋めることにするのだが、『マジック・オリジン』が示したとおり、テーマに焦点を当てるほうがいいこともあるのだ。ボーラスをテーマとしたセットで魅力的なボーラスのカードを1枚入れることについて、ウィザーズの人間を説得するのはそれほど難しいことではなかった。


Q: なぜボーラスの変身条件はこんなに単純なんですか? 基本セットの複雑さが引き下げられているせいでしょうか?

 セットデザイン・チームはさまざまなものを試したが、シンプルなものが最もうまく働くこともあるのだ。ボーラスは常に先んじて策を立てる謀略家なので、自分自身の灯を操作できるのがふさわしいと考えた。また、これは基本セットなので、その筆頭となるカードは可能な限りフレイバー的である範囲内で可能な限り直截的にしたかったのだ。


Q: 過去のメカニズムを1つ再録することは、過去の基本セットで一番好かれていた要素の1つでした。なぜこれをM19に採用しないことにしたんですか?

 以前、基本セットの復活について語ったとき、初心者が求めるものと既存プレイヤーが求めるものが対立する局面になったら、ほとんどの場合に初心者の側に立つことにしたという話をした。(すべてのセットで、我々はその反対の誤った判断をしていたのだ。)メカニズムの再録は、深みを与えて懐かしさを感じさせるので既存プレイヤーを喜ばせるものだったが、知らないメカニズムと単語を学ばなければならなくなる初心者にとってはほとんど不利益だったのだ。それが、我々が再録しないことを決めた理由である。


Q: なぜ新しくカードにしたのはオブ・ニクシリスなどの他の黒のプレインズウォーカーではなくリリアナだったんですか? ここ数年でもリリアナは何回もカード化されている気がします。

 『基本セット2019』のプレインズウォーカーとしては、ニコル・ボーラスと深い関わりがあるものが選ばれている。黒の枠では、過去において深く関わっているというだけでなく、現在の物語にも深く関連しているという点でリリアナが圧倒的な選択だったのだ。『ドミナリア』のストーリーを読んでいない諸君のためにネタバレは避けておくが、ニコル・ボーラスとリリアナの関係性は非常に重要な意味を持っているのだ。


Q: モダン向けに作られたレアの多くが、新規プレイヤーにとって魅力的なものではないという批判を目にします。将来の基本セットで、この体験を改善するためにどうすればいいと思いますか?

 目的は、それぞれのレアが誰かにとって魅力的であるようにすることである。しかし、すべてのレアが初心者にとって魅力的である必要はない。確かに、このセットの多くのレアはそれを意図してデザインされているが、我々は既存プレイヤーにもこのセットをプレイしてもらいたいと考えており、そのための方法の1つとして、初心者があまり目にしない高いレアリティにさまざまな古いフォーマットで有用なカードを入れているのだ。基本セットはスタンダードの8個目のセットであり、スタンダードで使える期間が一番短いので、我々は古いフォーマット向けのカードを入れるのに最適な場所だと判断したのである。


Q: なぜはじめての伝説の熊が、熊とシナジーを持っていないんですか?

 そこにはいくつかの理由がある。

 1つ目に、ほとんどの伝説のクリーチャーは、それ自身のクリーチャー・タイプと部族的シナジーを持っていない。確かにシナジーを持つものもあるが、それが少数の例外なのだ。その理由として、a)「伝説の」という特殊タイプはヴォーソスや統率者戦プレイヤー以外にとっては弱点でしかなく、複数枚使うことに価値がある部族カードであれば意図的に伝説のカードでなくするということ。そしてb)その部族が統率者戦でデッキを組むのに充分な枚数存在しないなら、部族の統率者を作らない傾向にあるということがある。例えば、熊というクリーチャー・タイプを持つクリーチャーは20枚しか存在せず(多相は数えていない)、そのうち7枚はバニラ・クリーチャーである。

 2つ目に、このカードはフレイバー的に、2/2よりも大きくストーリー的に他の熊と関わりも指導性も持たない特定のキャラクターを再現しようとしたものである。

 他にも、伝説のクリーチャーに関するメルとヴォーソスの矛盾という問題がある。メルは、カードが可能な限りメカニズム的に有用であってほしいと考えている。一方、ヴォーソスはそのカードが可能な限り単体でフレイバー的にクールであってほしいと考えているのだ。彼らは《カル・シスマの恐怖、殺し爪》を可能な限り殺し爪らしくあってほしいと考えているのであり、可能な限り「熊・部族」であることはそこに含まれないのである。我々がカードを印刷するときは、どうしてもユーザーの一部しか満足させることはできないものである。そして今回は、我々はヴォーソスの方向性を選んだのだ。


Q: 殺し爪が大好きです。将来、2/2で熊らしい伝説の熊が登場することはありえますか?

 今回非常にヴォーソス寄りな伝説の熊を作ったので、もう少しメル寄りなものを作る可能性は高くなった。多くのプレイヤーが《カル・シスマの恐怖、殺し爪》を非常に楽しんでいるが、何か他のものを望んでいる諸君からの声も耳にしている。我々はそれの落とし所を探るべきだが、メカニズム的に熊に関連した伝説の熊の可能性が浮上したときには、もっとお気に召すような伝説の熊を作ることを約束しよう。


Q: M19のコモンやアンコモンには、探したり切り直したりする効果が存在していません。代わりに、「一番上からN枚」の効果が大量に存在します。これはなぜですか?

 これもまた、このセットが初心者寄りの選択をしているということの一例である。長年に渡る集中調査の結果、ほとんどの初心者プレイヤーはデッキを切り直すことができない、ということがわかっている。何年もやってきている諸君は切り直すことに長けているが、この特定の技術を必要とするようになるまで、ほとんどの人間が得意とすることではないのだ。我々は切り直すことが新規プレイヤーにとって大きな障壁になるということを見つけたのである。個人的にも、重点調査中にあまりにも多くの切り直しが求められたことで、複数の新規プレイヤーが諦めるのを目にしている。

 そのため、イーサン率いるデザイン・チームは、切り直しの数を最低限に絞り、さらにコモンから完全に取り除いたのだ。これはマジック全体の変更ではなくこの基本セットでの変更だが、可能なところでは切り直しの数を最少にしようとしているということは明記しておきたい。そして、通常のマジックでも「衝動」(ライブラリー全体ではなく一番上から数枚の中からカードを取ること)が使われることが増えていくことになるだろう。必要であれば、今後も切り直しは使う。


Q: コモンに3枚しかゾンビがない中で、新リリアナはリミテッドでどのような展望があるんですか?

 全ての神話レアがリミテッドを意識してデザインされているわけではない。このカードは、カジュアルな構築デッキの基柱とするプレイヤーのために作られたものである。プレイヤーがリリアナをリミテッドで使って大成功することを想定しているかという問いに答えよう。シールドでは、していない。ドラフトでは、初期にリリアナを引いて、優先してゾンビを取るようにすれば、成立することもありうるかもしれない。それが主たる目標ではないというだけのことである。


Q: このセットのプレインズウォーカーは、過去のプレインズウォーカーのほとんどよりも狭いように感じます。(サルカンやリリアナが専用に作られたデッキでしか使えないように。)これはプレインズウォーカーのデザインにおける方針転換ですか、それとも偶然の結果ですか?

 意図的な決定である。基本セットを復活させることで、スタンダードに存在するプレインズウォーカーの数が増えることになる。それを抑えるため、基本セットのプレインズウォーカーのいくらかを平均的なプレインズウォーカーよりもいくらか狭いものにしている。それらを狭い種類のデッキでだけ使うようににすることで、競技レベルであり続けるようにするという発想に基づいている。

予想をツイート

 本日はここまで。良い質問が非常に多かったので、来週もまたさらなる質問の返事をすることにしよう。いつもの通り、今日の記事や回答の1つ1つ、あるいは『基本セット2019』そのものについて意見があれば、メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、その2でお会いしよう。

 その日まで、『基本セット2019』をたっぷりプレイして浮かんだ新しい質問があなたとともにありますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)