何年も前に、私のブログ(TumblrのBlogatog)で、俗にストーム値と呼ばれる指標を作った。これは、メカニズムごとにスタンダードで使用できるセットに再録される可能性がどれぐらいあると私が考えているかを示すもので、かなり可能性が高いのが1、かなり可能性が低いのが10だった。これがストーム値と呼ばれたのは、ストームというメカニズムの値が10だったからである。この指標があることで、私はメカニズムの再録の可能性をどう考えているかという質問に答えることができた。

 後に、私はストーム値を紹介し説明する記事を書き、諸君皆に『タルキール覇王譚』ブロックのメカニズムの再録の可能性について語った。

 ストーム値の記事2本目は、『ラヴニカ』と『ラヴニカへの回帰』両ブロックのメカニズムについてのものだった。

 ストーム値の記事3本目は、『ゼンディカー』と『戦乱のゼンディカー』両ブロックのメカニズムについてのものだった。

 ストーム値の記事4本目は、『イニストラード』と『イニストラードを覆う影』両ブロックのメカニズムについてのものだった。

 ストーム値の記事5本目は、『ミラディン』と『ミラディンの傷跡』両ブロックのメカニズムについてのものだった。

 ストーム値は私のブログで評判が良く、さまざまな他の指標を生み出した。今週と再来週の記事は、それらの指標の1つ、ラバイア値についてのものである。ラバイア値とは、スタンダードで使えるセットで、ある次元を再訪する可能性についてのものだ。ラバイア値という名前は、『アラビアン・ナイト』の舞台のラバイアから取られているが、これはラバイアがこの指標で10である(つまり、再訪の可能性は非常に低い)ことからである。今日の記事では、世界を再訪するかどうかを予測するためのさまざまな因子について説明し、それからそれぞれの世界をこの指標で評価していこう。1は可能性が非常に高いこと、10は非常に低いことを意味する。

 私が使う評価基準は以下の通り。

人気

 この評価基準はストーム値と非常に近い。基本的には、ユーザーがそれを好きかどうかだ。諸君全てが特定の世界を好きであればあるほど、再訪の可能性は高くなる。手に入るのであればデータを使用するが、初期の世界のいくつかについては市場調査を行っていなかったので、サンプリングによる証拠を用いることにする。

  • 大好評 ― 市場調査で、史上すべての中で上位25%に含まれている世界。なお、これらの評価は現在の世界と既存のすべての世界との比較になる(市場調査はずっと以前から始めていたのだ)。従って、上位に入るのは難しい。
  • 好評 ― 市場調査で、平均以上で上位25%には至らなかったもの
  • 普通 ― 市場調査で、平均以下で下位25%には至らなかったもの。ただし平均としてかなり好かれるようにしているものなので、平均以下といってもプレイヤーの多くが嫌っているわけではなく、それ以上に好かれているものがあるというだけである。この分類に入ったからといって再録の可能性が下がるわけではない。
  • 不評 ― 市場調査で、下位25%のもの。この区分に入ったものは、再録の可能性は低くなる。

メカニズム的特徴

 この評価基準では、その世界がメカニズム的関連性を持っているかどうかを評価する。メカニズム的にデザインの基軸となるものが存在するかどうか。ユーザーがこの世界に関連付けていて、再録した時に興奮をもたらすような要素が存在するかどうか。

  • 強力 ― この世界は1つ以上のメカニズム的要素と強く関連付けられている。それによってデザインは簡単になり、プレイヤーを興奮させやすくなり、そして再訪の可能性は高くなる。
  • 平均 ― この世界にはいくらかのメカニズム的関連付けはあるが、可能な限り強いものである、とは言えない。
  • 貧弱 ― この世界にはあまり、あるいはまったく、メカニズム的関連付けは存在しない。再訪の可能性は低くなる。

クリエイティブ的特徴

 これはメカニズム的特徴という評価基準と対になるものである。ただしこの評価基準では、メカニズムではなく、クリエイティブ的要素、つまり宇宙論、外観と雰囲気、住人、場所に注目する。それらすべてが強い結びつきを持ち、世界を1つのまとまった世界だと感じさせるようになっているかどうか。世界のクリエイティブ的なつながりが強ければ、再訪の可能性は高くなり、再訪を知ったプレイヤーを興奮させることになる。

  • 強力 ― この世界は非常に明確な特徴を持つ。例えば、ランダムに選んだカード1枚を見たとき、この世界から来たものだということがすぐにわかることになる。
  • 平均 ― この世界には特徴があるが、明瞭でくっきりしたものではない。
  • 貧弱 ― この世界の特徴は、世界に求められるようなまとまりがあるものではない。

拡張の余地

 この評価基準では、その世界に新しいものを作る空間があるかどうかを評価する。セットでは、再訪であっても、新しい題材を導入する必要がある。その世界は新しい掘り下げができるようになっているか。この評価基準の大部分は、過去の訪問でその世界の他の一面をどの程度ほのめかしていたかである。拡張の余地があればあるほど、再訪の可能性は高くなる。

  • 広大 ― その世界には、再訪時に掘り下げられる多くの新しいものが存在する。
  • 中等 ― その世界には、再訪時に掘り下げられる新しいものがいくらか存在する。
  • 最小 ― その世界で新しく掘り下げるものを探すには苦労が必要である。

物語の継続性

 この評価基準では、前回訪問時にどんな物語の流れが残っていたかについて語る。言い換えると、その世界への再訪によって、前回訪問時に始めた話を終わらせることができるかどうかである。これはユーザーがその物語をどの程度意識していたかということによって加重される。

  • 重要な物語 ― その世界には、プレイヤーがずっと気にしているような物語が存在する。
  • 小さな物語 ― この世界には、プレイヤーがずっと気にしているような物語が存在するが、重要というほどではない。
  • 最小/不存在 ― この世界に存在する物語は、プレイヤーが気にしていないようなものであるか、あるいはそもそも存在していない。

 これを踏まえて、早速世界について語っていこう。それでは、アルファベット順で紹介していく。


アラーラ

 過去の訪問:『アラーラの断片』『コンフラックス』『アラーラ再誕』『マジック・オリジン』

人気:好評(断片)、普通(アラーラ全体)

 プレイヤーは全体として、この世界よりも断片1つ1つのほうが好きで、その断片それぞれの人気はいくらか幅があり、エスパーが最高でナヤが最低となっている。全てのデータを踏まえると、このセットは下半分の中で一番上あたりに位置している。(ただし個別の断片は上半分に位置している。)

メカニズム的特徴:強力

 アラーラは、メカニズム的に言うと、弧(あるいは断片)の世界である。つまり、1色とその友好色2色をあわせた3色の組み合わせがテーマである。単純に、3色の弧が重要な役割を果たすことなしの再訪はできない。これは呪いでも祝福でもあるのだ。

 良い面は、何を基柱にするか、そしてプレイヤーが何を期待するかということがわかっていることである。悪い面は、3色世界はスタンダードに問題を起こさずに作ることが非常に困難だということである。(3色でプレイできるようにすると、本質的には5色でプレイできるようにすることになり、カラー・パイが安全弁として機能しにくくなる。)さらに、それぞれの断片にはそれぞれのメカニズム的特徴がある。その最大の問題は、お互いに相性良く混じり合ってくれないため、リミテッドのデザインが難しくなることなのだ。

クリエイティブ的特徴:平均

 アラーラは、いろいろな意味で5つの世界があるという奇妙な世界であり、物語の始まりにはそれぞれの断片がそれぞれ関係することなく存在していた。それぞれの断片は、非常に明確なクリエイティブ的特徴を持っている。問題は、最初の訪問時に、断片同士が融合を始め、それによって5つの素敵なジュースが1つの美味しいミックスジュースになったとは言えず、この世界の特徴はいくらか曖昧なものになったことである。

拡張の余地:広大

 アラーラには5つの別々の世界が存在している。問題もあるが、拡張の余地は問題ない。

物語の継続性:最小/不存在

 『アラーラの断片』ブロックの物語は、重要な伏線は残すことなく決着した。物語面からの再訪する最大の理由は、主役級のプレインズウォーカー(アジャニとテゼレット)の出身地であることである。

ラバイア値:5

 アラーラは再訪するにはさまざまな問題がある世界である。強力なメカニズム的特徴はあるが、実装上の問題がある。それぞれの断片には強力なクリエイティブ的特徴があるが、それを混ぜてしまうと特徴は薄れる。物語的にアラーラを再訪する理由はあるが、そうしなければならない理由にはならない。5と評価したのは、再訪する可能性がないわけではないと信じているからであるが、確信しているというには程遠い。

アモンケット

アート:Titus Lunter

 過去の訪問:『アモンケット』『破滅の刻』

人気:好評

 ユーザーはこの世界のビジュアルをかなり楽しんだが、いくらか気の滅入るようなものだということに気がついた。ボーラスが現れる前のこの世界を見ることはできないかという質問がかなり来ている。

メカニズム的特徴:強力

 メカニズムはどれもこの世界やセットで描こうとした雰囲気に密接に関連している。メカニズムの中には、エジプトの影響を重視したものもあれば、ボーラスの影響を重視したものもある。どのように(あるいはいつ)再訪するかによって、どちらのメカニズム的要素を使うかが影響されることになるだろう。

クリエイティブ的特徴:強力

 このセットについて一番称賛されたのは、世界の外見に関してだった。プレイヤーは長年に渡りエジプト風のセットを求めてきて、このセットはその期待に答えるビジュアルを提供した。最大の問題は、上述の通り、この世界の雰囲気に関するものだった。再訪するならそれを緩和しなければならない。(この問題についてはすぐにまた扱う。)

拡張の余地:中等

 このブロックは、衆知の通り、アモンケットを吹き飛ばして終わった。これは再訪を難しくしている。ナクタムン(『アモンケット』ブロックの舞台)の壁の向こうの世界についての話はあるので、アモンケットの別の部分を見せることはありうる。

物語の継続性:小さな物語

 『破滅の刻』は『アモンケット』ブロックの物語を非常にきっぱりと終わらせた。生存者がいるかもしれない(例えばハゾレトは死んだと描写されてはいない)ので、語るべき物語がまだ残っている可能性はある。また、サムトはアモンケット出身のプレインズウォーカーであり、彼女の帰還に関する物語もありうる。

ラバイア値:5

 いい面としては、プレイヤーは全体としてこの世界を気に入っており、再訪時に使えるメカニズム的要素やクリエイティブ的要素も多いことがある。悪い面としては、吹き飛ばされたので、多くの他の世界よりも再訪が難しいことがある。

ドミナリア

アート:Tyler Jacobson

 過去の訪問:『アルファ版』『アンティキティー』『レジェンド』『ザ・ダーク』『フォールン・エンパイア』『アイスエイジ』『アライアンス』『ミラージュ』『ビジョンズ』『ウェザーライト』『ウルザズ・サーガ』『ウルザズ・レガシー』『ウルザズ・デスティニー』『プロフェシー』『インベイジョン』『プレーンシフト』『アポカリプス』『オデッセイ』『トーメント』『ジャッジメント』『オンスロート』『レジオン』『スカージ』『コールドスナップ』『時のらせん』『次元の混乱』『未来予知』『マジック・オリジン』『ドミナリア』

人気:大好評

 ドミナリアはマジックの始まりの地であり、他の次元に大差をつけた20以上のセットの舞台である。非常に愛されている。

メカニズム的特徴:平均

 多くのセットの舞台になっていることの欠点は、あまりにも多くのものを扱ってきたことでメカニズム的特徴をもたせるのが難しくなっていることである。『ドミナリア』の前であれば、私は貧弱と評価していただろうが、『ドミナリア』で世界の大掛かりな見直しが行われ、歴史の次元となった。将来の再訪でもこのテーマを扱うとすれば、ドミナリアを強いメカニズム的特徴を持った世界として作ることができることだろう。

クリエイティブ的特徴:平均

 メカニズム的特徴と同じように、クリエイティブ的特徴も世界を何度も扱ってきたために難しいものになっている。しかし『ドミナリア』ではこの世界のクリエイティブ的特徴を定義する助けとなる多くのことをしており、将来の再訪においてはこの評価基準も「強力」へと上げることができると信じている。

拡張の余地:広大

 ドミナリアには多くの問題があるが、再訪時に掘り下げることのできる空間には問題がない。再訪のたびに異なる大陸を舞台にすることができ、無限のコンテンツが存在するといえる。

物語の継続性:重要な物語

 『ドミナリア』は多数の新しいキャラクターと、それ以外の多くのキャラクターを登場させた。このセットでいくつかの問題は解消されたが、再訪時に取り上げるべきものはまだ多く残されている。

ラバイア値:1

 マジックにおいて絶対と言えることはほとんど存在しないが、ドミナリアにいずれ再訪することについては絶対と言ってもいいだろう。『ドミナリア』は大成功を収めており、我々はほぼ間違いなくいずれ再訪することになる。

フィオーラ

 過去の訪問:『コンスピラシー』『コンスピラシー:王位争奪』

人気:普通

 フィオーラに関する最大の問題は、ドラフトと多人数戦の両方に興味があるプレイヤー向けのサプリメント・セットにしか存在していないことによる知名度の問題である。

メカニズム的特徴:強力

 フィオーラは『コンスピラシー』セットと深く関連しており、ドラフトと多人数戦に関連した世界だと思われている。そのため、これをスタンダードで使用できるセットで使うことは新しいメカニズム的特徴を掘り出す必要があるので難しい。

クリエイティブ的特徴:強力

 フィオーラには非常に明確な外見と雰囲気がある。これのメカニズム的特徴はスタンダードに持ち込みにくいものだが、クリエイティブ的特徴はそうではない。

拡張の余地:中等

 サプリメント・セットに関する世界構築は、スタンダードで使用できるセットのものに比べて網羅的なものではないので、フィオーラはその構築されている部分のほとんどを使い切っている。広げられる新しい地域が存在しているのは明らかだが、既存の世界の中には多くない。

物語の継続性:小さな物語

 『コンスピラシー』の両セットには、ちょっとした物語性がある。再訪で、その中から拾い上げることができる。また、複数のプレインズウォーカー(ダク・フェイデン、ダレッティ、ケイヤ)はここで時を過ごしていた。

ラバイア値:6

 フィオーラはクールな世界だが、スタンダードの舞台にするにはメカニズム的なものなど多くの課題がある。その最大の機会は、これが物語上で重要な役割を果たすかどうかにかかっていることだろう。

イニストラード

アート:Adam Paquette

 過去の訪問:『イニストラード』『闇の隆盛』『アヴァシンの帰還』『マジック・オリジン』『イニストラードを覆う影』『異界月』

人気:大好評

 イニストラードは(ラヴニカ、ドミナリアと並び)マジック史上最も人気のある世界の1つである。プレイヤーは単純にこの世界のゴシックホラーの雰囲気が大好きなのだ。

メカニズム的特徴:強力

 イニストラードは、ゴシックホラーの雰囲気を再現するトップダウンの世界である。墓地、怪物の種族、さまざまな元ネタを扱う個別のカードを使っている。また、変身する両面カードをマジックに導入した世界でもある。イニストラードはその次元としての締まったメカニズム的特徴を持っているのだ。

クリエイティブ的特徴:強力

 イニストラードのクリエイティブ的特徴も、メカニズム的特徴と同じく強力なものである。その2つが密に絡み合っているという事実が、イニストラードを全ての世界の中で最もまとまりのある世界の1つにしているのだ。

拡張の余地:広大

 イニストラードには、全く異なる2つの掘り下げうるものが存在する。1つ目に、その世界構築は非常に豊富であり、ほのめかされてはいるけれども完全に掘り下げられてはいない領域が大量に存在する。2つ目に、ホラーというジャンルにはいくつもの側面があり、世界を拡張するときに使うことができる。全体として、イニストラードには再訪時に扱うことができる空間が大量に存在するのだ。

物語の継続性:重要な物語

 多くの重要な物語がイニストラードで語られており、その中の多くはまだ結末を迎えていない。この世界への再訪には、多くの物語の分岐があるのだ。

ラバイア値:1

 プレイヤーはこの世界を愛している。メカニズム的特徴もクリエイティブ的特徴も非常に締まったもので、お互いに密接に絡み合っている。掘り下げる余地も、取り上げるべき物語も大量に存在する。この世界もまた、再訪するのにふさわしい世界だと言えるだろう。

イクサラン

アート:Tyler Jacobson

 過去の訪問:『イクサラン』『イクサランの相克』

人気:普通

 我々は、セットごとに、複数回の市場調査を行っている。イクサランという世界は最初は好評だったが、次第に評価が落ちていった世界である。おそらく、プレイヤーたちがこの世界の構想は気に入ったものの、実装のいくらか、特にゲームプレイに不満だったということだろうと思う。

メカニズム的特徴:平均

 イクサランは明確に部族の世界であり、4つの陣営を基柱にしている。イクサラン世界への再訪は、少なくともそれらの部族が重要な役割を果たすということが前提となる。部族テーマ以外では、このセットにはメカニズム的なまとまりはやや弱く、再訪するにあたっては強いメカニズム的まとまりを作るようにする必要があるかもしれない。

クリエイティブ的特徴:強力

 これは、メカニズムが強いクリエイティブを引き下げた世界の好例である。陣営はどれもとてもフレイバーに富んでおり、メカニズム的実装と離れて単体では好まれていたと思う。一言で言うと、プレイヤーは、このセットで可能だった以上に恐竜や海賊(そして小規模な吸血鬼やマーフォーク)を好きになりたかったのだろう。

拡張の余地:広大

 まず、話題には出ていたが一切描写されていなかった他の大陸(吸血鬼が来た元)が存在する。さらに加えて、イクサランでは現在の大陸のさまざまな側面をほのめかしており、これも再訪に際して公開できる。

物語の継続性:多少の物語

 アングラス、ファートリ、アゾール、ヴラスカ、ジェイスがイクサランとの関わりを持っており、その誰もが今後の物語で役割を持つ可能性がある。

ラバイア値:4

 イクサランは、最適とは言えないメカニズム的実装によって傷つけられた良い世界の一例である。(そしてこれを言っている私自身が、色の組み合わせと部族セットにするということを選んだ張本人である。)私は、いつの日か、おそらくはかなり異なるメカニズム的手法を用いて(しかし部族要素が減ったとしてもすべての部族を用いて)、もう一度この世界を試すことになると思っている。

カラデシュ

アート:Adam Paquette

 過去の訪問:『マジック・オリジン』『カラデシュ』『霊気紛争』

人気:普通

 カラデシュはおそらく、私の予想とプレイヤーの反応がもっとも違っていた世界であろう。この世界には間違いなくファンがいるが、全体としての反応は下半分に位置している。

メカニズム的特徴:強力

 カラデシュは発明家の世界であり、本質的にアーティファクトやエネルギーと関連している。また、強いジョニー/ジェニー性を持っている。この世界のパワーレベルを間違えたこと、そしてスタンダードにかなりの歪みを起こしたこと(多数の禁止を生み出したこと)は、再訪を助けるものではない。エネルギーなしでの再訪はありえないと思うが、エネルギーには多くのデザイン上の(特にプレイ・デザイン上の)課題が内包されている。

クリエイティブ的特徴:強力

 その世界を描いたアート1枚を見て世界を当てることができるかどうかというテストがあれば、カラデシュは大成功を収める。完全に差別化できている世界であり、雰囲気や外見も完全に他と異なるものである。世界についての反響を掘り下げてみると、2つの返事が帰ってくる。ファンタジーから離れてSFに寄りすぎているという意見と、インド風要素がこの世界に充分深く関わっているとは言えないという意見である。

拡張の余地:広大

 『カラデシュ』ブロックは、主に1つの都市に焦点を当てていた。この世界にはまだ掘り下げることのできる部分が大量に存在している。

物語の継続性:小さな物語

 カラデシュでの主な物語のほとんどは結末を迎えた。掘り下げられる領域は残っているが、それはより広い物語に関わったものではない。カラデシュはチャンドラの出身世界であり、彼女の母親が生きているところであるというのが、物語上では再録を促す最大の要素だと言えるだろう。

ラバイア値:5

 再訪には、さまざまなメカニズム的、クリエイティブ的な課題が存在するが、この世界には強力な特徴があり、そしてチャンドラの出身次元でもあるので、再訪の可能性がないわけではないと直感している。

神河

竹沼》 アート:Cliff Childs

 過去の訪問:『神河物語』『神河謀叛』『神河救済』

人気:不評

 すべての投票の中で、これが最も評価の低かった世界である。近年になって昔の世界について尋ねたときでさえ、神河は最低かその付近に位置する。つまり、神河には少数だが非常に情熱的で主張の強いファンが存在するので、私のブログやソーシャルメディアではよく話題になることがある。

メカニズム的特徴:貧弱

 『神河』ブロックは、強いメカニズム的特徴を作る上で素晴らしい働きはしなかった。このセットはトップダウンにデザインされたものだが、『イニストラード』のようなメカニズム的まとまりはなかった。神(スピリット)まわりに最も明確な要素があったが、それはブロックの鍵となる対立である戦争を扱うものであり、再訪時には重要な役割は果たさないだろう。

クリエイティブ的特徴:平均

 神河はその元ネタに非常に忠実だったが、ユーザーの多数にとって芳醇だとは言えない空間を多く扱っていて、セットをまとまったものというよりも「奇妙な」ものに感じさせていた。もちろん独自の外見を持っていたが、それは市場調査でいい評価を受けるものではなかった。時が流れて、統率者戦ができたことで、いくらかの新しいファンがつくようになっている。

拡張の余地:中等

 『神河』ブロックは物語的には千年以上前の話であり、再訪時には多くのことを変化させることができる。最大の問題は、どんな新しいものが入れられるかではなく、どんな古いものが期待されているかである。再訪時に何が望まれているのか、時間をかけてソーシャルメディアで情報を集めたが、その返事は非常に広範なものだった。最も望まれていたのは、それぞれに問題があるさまざまなクリーチャー・タイプの再録だった。

物語の継続性:小さな物語

 『神河』の物語はほとんど終わりを迎えているが、拾うことができる伏線はいくつか残っている。ただしどれも現在の物語にそれほど関わるものではない。物語的に最大の可能性があるのは、神河出身のプレインズウォーカー、タミヨウの周辺である。現在の物語において神河の話が出てくるのはほとんどがタミヨウを通してなので、再訪はおそらく彼女に焦点を当てる必要があるだろう。

ラバイア値:8

 ソーシャルメディアで何度も表明したとおり、この再訪は最初の訪問がどれだけ悲惨なものだったかということが内部的な障壁になっている。再訪を妨げる最大の要素は、どれだけのものを変えて、それでいて神河であり続けるようにすることができるかである。このセットで再録したいメカニズム空間は限りなく小さく、元ネタから始めるのであればクリエイティブ的選択も多くが違うものになるだろう。再訪の機会がまったくないとは言わないが、大きいものではない。

ローウィン/シャドウムーア

大オーロラ》 アート:Sam Burley

 過去の訪問:『ローウィン』『モーニングタイド』『シャドウムーア』『イーブンタイド』『マジック・オリジン』

人気:不評

 我々が市場調査を始めて以来、ローウィンは下から2番目であった。(下は神河だけである。)シャドウムーアは少しマシだが、それでも良いものではなかった。

メカニズム的特徴:強力

 『ローウィン』は部族ブロックであり、『シャドウムーア』は混成ブロックであった。その主張は非常に強く明瞭だった。再訪にあたっての最大の問題は、そのどちらの実装も満足行くものではなかったことである。『ローウィン』は部族ブロックとしてはあまりにも自己中心的で(それぞれのクリーチャー・タイプは組み合わせてもうまく作用しなかった)、『シャドウムーア』は混成ブロックとしてはあまりにも煮詰まった(全部の枠を埋められるほどの混成らしいデザインを作ることはできていなかった)ものだった。つまり、どちらに再訪するにしても、対処しなければならないデザイン上の問題が存在することになる。

クリエイティブ的特徴:平均

 ローウィンには、実際、非常に明白なクリエイティブ的特徴が存在したが、プレイヤーの多くにとって芳醇なものではなかった。そのため、再訪にあたってはかなりの調整が必要となる。シャドウムーアは、『シャドウムーア』と『イーブンタイド』の間でクリーチャー・タイプが急転換しており、いくらか混乱していた。再訪にあたっては、この問題を調整するためにかなりのクリエイティブ的作業が必要になるだろう。

拡張の余地:中等

 ローウィンの最初の訪問での不人気を引き起こした問題に関わっていない拡張できる部分を探すのは難しいだろう。

物語の継続性:小さな物語

 『ローウィン』が発売されたときにプレインズウォーカー・カードが初登場したが、当時はプレインズウォーカーの物語は存在しなかった。その後、ニッサの灯が初めて点った時にローウィンにプレインズウォークしたことがわかったが、それ以外には現在の物語にはローウィンに関わる要素はあまり存在しない。

ラバイア値:7

 『ローウィン』に再訪するには、乗り越えるべき課題がいくつも存在する。この世界が持つ最高の要素は、2つの状態を転移する次元という概念が物語を語る上で実入りの多い要素だということである。また、マジックが成長してユーザーが増えたことで、最初の訪問当時はネガティブに受け取られた「優しさ」がいいように受け取られるようになっている可能性もある。

世界を見る

 本日はここまで。残りの次元については、再来週に譲ることにしよう。いつもの通り、諸君がこの記事を楽しんでくれていれば幸いである。この記事だけでなく、この指標や私からの評価について、諸君からの感想を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた2週後、他の有名な次元を評価する日にお会いしよう。

 その日まで、あなたの大好きな次元へ再訪しますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)