他ならぬ『相克』 その3
ここ2週間、『イクサランの相克』のカードについての話をしてきた。まだ終わっていないので、これからもう少し話を続けよう。アルファベットの終わりが近づいており、おそらく今回で最終回になるだろう。
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『イクサランの相克』の両面カードには、冒険的探索というテーマがある。《
素早さというコンセプトをどうトップダウンのデザインにしたのか。速度に関わる常磐木キーワードを参照したのだ。
先制攻撃や二段攻撃を持つクリーチャーが先に打撃を与えられるのはなぜか。素早いからである。
警戒を持つクリーチャーが攻撃した後にもブロックできるのはなぜか。素早いからである。
速攻を持つクリーチャーが唱えた直後に相手を攻撃できるのはなぜか。素早いからである。
そこで、《
その後、《
こうして、罠と破壊に満ちた塔が出来上がったのだ。
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相手のクリーチャーを殺して手下として呼び戻すほうが、自分のクリーチャーを殺すよりも楽しそうに思える。この呪文を、クリーチャーが死亡するのをただ見るだけのものにすることができるだろうか。可能だったが、それは積極的なものだとは感じられなかった。マナを支払って、直接クリーチャーを殺せるとしたらどうだろうか。フレイバー豊かな感じだ。また、どのクリーチャーでもリアニメイトできるというのは非常に強力だった。戻せるクリーチャーを制限する方法はあるだろうか。効果によってクリーチャーを殺すのではなく、追放して、それらだけをリアニメイトできるようにしたらどうだろうか。おおよそ良さそうに感じられた。あとの問題は、このカードを変身させるために追放しなければならないクリーチャーの数を何体にするかだった。
メカニズムが出来上がってから、フレイバーが加えられた。この土地が、死体でいっぱいの墓所で、入り口は教区民が他の人々を生け贄にした闇の教会というのはどうだろうか。これは邪悪な何かを信奉する宗教の罠を使った、非常に白黒的なものだ。
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毎年同じゲームを作り続けるうえでの挑戦の1つが、同じフレイバーにメカニズム的な多様性を見つけることである。フェニックスを例に取ろう。フェニックスは必ず赤の飛行クリーチャーで、火からできていて、生まれ変わり(墓地から、大抵は戦場に、戻ること)の能力を持つ。一見すると、これは非常に狭く見えるが、実際はすでにさまざまな方法でメカニズム的に表現されてきている。
よくある手法は、戻ってくる条件を変えることだ。可能なら、その条件をそのセットのメカニズム的テーマの1つと関連付けるのだ。(例えば、『戦乱のゼンディカー』の《
フレイバー的には、これは、フェニックスが死んで、生まれ変わりを待つための状態になるということを表している。メカニズム的観点からは、これまでのフェニックスとは異なったゲームプレイを生み出すことになる。 フェニックスが戻ってくるのを防ぎたければ、エレメンタル状態の間に殺す必要があるのだ。不活性状態のフェニックスに干渉できるということは、これまでとは異なっている。そのため、プレイヤーがこれまでのフェニックスと全く異なるゲームプレイから想像するフレイバーである、非常にクールなデザインの25年間をゲームに導入することができたのだ。
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これは、4枚しかないということに加えて3枚はクリーチャーで1枚はソーサリーだという、非常に奇妙なサイクルである。これは、一体どのようにしてできたのだろうか。
ベン/Ben率いるデザイン・チームは、このセットの部族らしさをいくらか強めたいと考えた。そのための方法の1つが、4つの部族に意味を持たせる方法を増やすことだった。一度使ったテーマを再訪するときによくあるように、ベン率いるチームは過去の部族ブロック(『オンスロート』『ローウィン』『イニストラード』『イニストラードを覆う影』)に立ち返ることにした。
『ローウィン』が扱ったものの1つが、手札にあるカードをコストとして公開する(特定の部族を手札に持っているかどうかを参照する)ことだった。これの最もよく分かる使い方が、特定の部族のカードをもう1枚公開しなければ追加で3マナ支払う必要があるというアンコモンのサイクル(《
ベンはこれに似たことをやろうと考えたが、カードを持っているか持っていないかの差はそれほど高いものである必要はなかった。陣営が4つ存在するので、このサイクルは4枚だけである。《
チームは緑を選んだが、もう1つ風変わりなことをした。この能力をクリーチャーに持たせるのではなく、ソーサリーに持たせることにしたのだ。開発部は最近《
プレイテストの結果、これらの呪文全てに同じコスト低減を持たせることはできないことがわかった。《
『イクサラン』ブロックで、第2面が土地の両面カードを使うというアイデアが浮かんだとき、我々はどんなクールな土地を作れるかと考え始めた。即座に思いついたのか、過去の名高い土地のことだった。マジック史上最も有名で、おそらく最も壊れている土地といえば、『ウルザズ・サーガ』の《
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私は他に2枚の土地が色をテーマにしているように見えるので、この5枚の土地に色を割り当てることができると気づいたのだ。例えば《
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『イクサランの相克』には、敵対色の両面カードの土地というサイクルが存在していた。アーティファクトと肯定的な関わりを持つことが最も多い色は青と赤なので、青赤がふさわしいと思われた。(白は装備品と相性がよく、アーティファクトと3番目に相性がいい色である。)第2面は大量のアーティファクトを必要とするので、第1面でそうなるようにすることに筋が通る。
デザイン・チームはそのためのさまざまな方法を模索した。まずは他のアーティファクト・カードと相互作用するさまざまな方法を調べた。最終的には、このブロックの要素である宝物・トークンが、このカード自体でアーティファクトを生み出す方法だということに気がついたのだ。そして彼らは、攻撃的になることを推奨すべく、戦闘ダメージを宝物・トークンを得るための誘発イベントにすることにした。そして最後に、《
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長年マジックのデザインに関わってきた結果、私は新しいカードをそのデザインに影響を与えたカードという観点で見るようになっている。私が《
このカードをデザインしたのは私だったと思うが、もしかしたらマイク・エリオット/Mike Elliottだったかもしれない。これは単純なトップダウンのデザインだった。賞金稼ぎだ。これをプレイしたら、《
これは間違いなく私がデザインしたカードだ。元になったのは、黒枠セットでのカードのためにロン・スペンサー/Ron Spencerが提出した、ユーモラスなスケッチだった。アーティストは、実際にアートを描く前にスケッチを提出することになっている。そしてロンはそこでふざけたわけだ。誰もが大爆笑した。そして、ロンは翌日に真面目なスケッチを提出してきたのだった。『Unglued』を手がけていたとき、私はロンにあのスケッチをアートにしてもらうことができるか聞いた。ロンは乗り気になって、できると答えたのだ。
デザイン的には、これはアートの無垢さに反した悪の中の悪にすべきだとわかっていた。確か、《
そして何年も過ぎた。ベン率いるチームは、魅力的な黒のエルダー・恐竜を作ろうとしていた。《
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エルダー・恐竜を5体だけに縛る必要などない。『イクサラン』には《
最初に決まったのは、恐竜の部族デッキでだけ使えるものでなく、一般的に使えるクリーチャーを作るということだった。《
赤の起動型能力が、フレイバーに富んで実用的な直接火力なのは当然である。緑は、恐竜の持つ破壊的な性質から、最終的に《
戦場に出たときの効果は『ウルザズ・サーガ』に遡る「フリー・メカニズム」と呼ばれるメカニズムが採用された。充分なマナがあれば、ただで呪文を唱えることができるというものだ。この能力は、《
最後に、《
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白のエルダー・恐竜は、開発部語でいう「流し台型デザイン」だ。大量のキーワードを持つだけのクリーチャーなのだ。何年も前、我々が作った最も人気のある伝説のクリーチャーといえば『レギオン』の《
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- 接死 ― これは白の能力ではないので選択肢には入らない。
- 防衛 ― 白で使えるが、これは不利になる能力で、しかも巨大恐竜にはふさわしくない。
- 二段攻撃 ― これは白が1種色で、魅力的な能力だ。採用。
- 先制攻撃 ― 《
原初の夜明け、ゼタルパ 》は二段攻撃を持つので、その弱い版を入れる理由はない。 - 瞬速 ― 白は瞬速の3種色で、対応して使うような(白のインスタントになるような)戦場に出たときの効果を持つクリーチャーだけが持つのが普通である。選択肢には入らない。
- 飛行 ― 白は飛行の1種色で、この能力は非常に有用なので、鉄板だ。
- 速攻 ― 《
怒りの天使アクローマ 》が速攻を持つのは有名だが、白の能力ではない。 - 呪禁 ― 白は呪禁の3種色で、《
原初の夜明け、ゼタルパ 》は破壊不能を持つので、単に冗長に感じられる。 - 破壊不能 ― 白は破壊不能の2種色なので、いい線だろう。
- 絆魂 ― 白が1種色であり、これを持っていないのは多くのプレイヤーが驚くことだろう。一時期は《
原初の夜明け、ゼタルパ 》についていたが、プレイテストで強すぎるとわかったのだ。 - 威迫 ― これは白の能力ではないので選択肢には入らない。
- 果敢 ― 白はこれの3種色なので、可能性はある。しかし、他の選択肢に比べてふさわしいとは思われなかった。
- 到達 ― 白はこれの3種色だが、すでに飛行があるので、これを持たせても何も得るものはない。
- トランプル ― 白はトランプルの3種色である。いつでも使うわけではないが、《
原初の夜明け、ゼタルパ 》のような大型クリーチャーでは採用できる。 - 警戒 ― 白はこれの1種色であり、大型飛行クリーチャーには優秀な能力だ。
開発部は可能な能力を5つ見つけた。5つあれば充分だと感じられたので、それらをこのカードに持たせることにしたのだ。
「我らは常に相克たるべし」
Zまでたどり着いたので、今日はここまでにしよう。これらの話を楽しんでもらえたなら幸いである。いつもの通り、この記事やカード、『イクサランの相克』そのものについての感想を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Google+、Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、このセットに関する諸君からの質問に答える日にお会いしよう。
その日まで、相克が相生たりますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)