おかしなことがやってきた その1
ミラディンの傷跡のプレビュー第1週にようこそ。諸君、こいつは凄いぞ。このセットは多くの物の頂点で、今まで何年も黙っていなければならなかったことが苦痛で仕方なかった。そして今日こそがそれについて思う存分語れる日なのだ。このセットには多くの側面があり、これから3週間のプレビュー(とそれ以降)を通してその様々な面について語っていこう。まず今日は私がデザイナーとして着手した最大の課題、毒をセットの主たる要素として使えるようにするということについて語るとしよう。この課題には16年(私が最初にセットに投入してからだと14年)かかっているのだ。今回のコラムではその話をしよう。ああ、とりあえず「その1」だ。そして、コラムが終わる前に、感染持ちの神話レア・クリーチャーをご紹介しようではないか。
「もし組むのなら」
話を始める前に、まず、毒セットをともに作る旅路の同行者(つまりデザイン・チームだ)を紹介しよう。チームの人数が普段よりも多いのは、デザインの途中で様々な理由によってチームを組み替えることになったからだ。
マーク・ローズウォーター(リーダー)
私が、ミラディンのデザインでもリーダーだった。私はファイレクシア軍の大ファンで、毒を再びテーマにするセットを作ると聞いて黙ってはいられなかった。メル・ブルックス風に言い換えると、「ヘッド・デザイナーでよかった」。
マーク・グローバス
マークはグレート・デザイナー・サーチの決勝進出者(4位タイ)の中でもっとも知られた人物にしてウィザーズでフルタイムの仕事を得続けている4人の1人だ。マークはマジック開発部のプロデューサーであり、開発部の混沌にいくばくの秩序をもたらすのが仕事である。彼のこのセットへの寄与は計り知れない物がある。
マーク・ゴットリーブ
マークはもはや私の天敵ではない(ルール・マネージャーの職をマット・タバックに譲ったから)ので、私は彼をデザイン・チームに迎えることを嬉しく思うと公言できるようになった。彼は素晴らしいデザイナーなのだ。境界を定義し続けた経験が、彼にその外へと旅立たせる能力を与えたのだ。
ネート・ヘイス
ネートは他のゲーム会社に移籍してしまったが、彼がウィザーズにいた間に彼と働けたのは嬉しかった。彼の腕はデザイン初期の混沌の間に揮われていたので、彼だけが持っている彼の長所(デザイナーとしての素晴らしい利点)を活かすことができたのだ。
アレクシス・ヤンソン
アレクシスはグレート・デザイナー・サーチの優勝者だ。アレクシスが勝ったのは彼女が非常に優れたデザイナーだからであり、このミラディンの傷跡で彼女と働いた経験は彼女のデザイン能力に関する私の評価を裏切らないものだった。
エリック・ラウアー
開発部に、エリック・ラウアーのような考え方をする人はいない。おそらく、地球上にも一人もいない。私はデザイン・チームにデベロッパーの視点を入れることが大好きで、エリックはデザインの前半においてデベロッパーとして働いてくれた。
マット・プレース
そして後半のデベロッパーはマットだ。ネートと同じように、マットも他のゲーム会社に移籍してしまった。これはマットが最後に手がけたチームであり、彼と私が最後に直接話す機会でもあった。マットがどれほど素晴らしかったかを話すために、少しだけ時間を貰いたい。デベロッパーのほとんどは非常に論理的で、問題にシステム的に当たろうとする。マットは感覚的に当たろうとするのだ。そして、より大きい全体像を見るマットの能力はここ数年の間に多くの成果を上げてきた。エルドラージ覚醒はマットがリード・デベロッパーとして関わったセットであり、彼はその全体に関与してきた。マットが社を離れると聞いたとき、私は非常に悲しかったが、彼の洋々たる前途を祈った。成長するためのもっとも確実な道は、最高の相手とともに働くことだと言われる。マットと働いたことは、私をより良いデザイナーに成長させてくれたのだ。
昔々あるところに
さて。それでは、毒セットを作るという探索についての話を始めよう。
この話は、レジェンド・セットが発売されたときから始まった。時は1994年、私はただのマジック・プレイヤーだった。正確に言えば、そのころ私はマジックのパズルを作っていたが、まだデュエリストでのフリーライターの仕事も始めていなかった。(その夏、ジェンコンの時が最初だった。それについてはこのコラム(英語)の「life lesson #5」で読める) 私はマジックを仕事にして長いが、最初は諸君らと同じ一プレイヤーだったのだ。
私は、そのゲームショップの開店前に到着して列に並んだ。当時、マジックのセットを手に入れるためには発売日にいなければならなかったからだ。2箱買って、一旦戻って3箱目、さらに一旦戻って4箱目を買って、しまい込んだ。(後日、私はレジェンド1箱とリバイズド1カートンを交換した。そしてさらに数年後、そのリバイズドは大型テレビに変わった。今もそのテレビは使っている)
で、レジェンドのパックを(当時はドラフトがなかったので)ペリペリ剥いていって、このカードに出会ったのだ。
一目惚れを否定する人がいるが、そういう人は体験したことがないだけに違いない。私は、自分がどれほどジョニーであるかを語ってきた。私はジョニーなデッキを作るのが好きで、毒を見てビビッと来たのだ。
そして、その次のブースターから出たのがこれだった。
諸君が、夢に見た少女が廊下を歩いているのに気がついたとしてみよう。そして彼女は諸君の視線に気づき、近づいてきて言うのだ。「あなたはマジックをしているの? 私はマジックが大好きよ」 私は彼女にすっかり惚れ込んでしまい――惚れ込んだでは足りないか、うん、愛と最高の喜びが入り交じってアイスクリームと一緒に出てくるようなこの感覚をどう言い表せばいいか――。私はマジックに既に強く惚れ込んでいた。毒は、その繋がりをさらに高いレベルへと持ち上げてくれただけだ。
私は次々とレジェンドのパックを剥いていった。毒。もっと毒を。悲しいかな、《地獄の蠍》と《毒蛇製造器》だけしか私は得ることができなかったのだ。レジェンドの毒は、この2枚にしか存在しない。そう、私はジョニーだ。私は挑戦する。そして私はデッキを作り上げた。勝率こそ悪かったが、私は対戦相手を毒殺する喜びを知ったのだ。
そして、その次のエキスパンション、ザ・ダークにはこのカードがあった。
毒を持ったクリーチャーが2つ以上の毒カウンターを与えられる? いいじゃないか。《マーシュ・バイパー》の強さは、《地獄の蠍》や《毒蛇製造器》とどっこいどっこいで、けっして強いものじゃない。しかし私はジョニーで、弱いからといって怖じ気づきはしないのだ。
毒は、残念なことにフォールン・エンパイアやアイスエイジでは見かけられなかった。そしてホームランド。ホームランドには否定すべきことがたくさんある。私はマジックの17年の歴史の中で、ホームランドこそが最大のデザイン上の誤りだったと何度も何度も書いてきた。その理由の一つが、このカードだ。
このカードは全ての毒愛好家の顔に平手打ちをかました。私が毒を愛する理由の一つに、ライフと違って回復できないということがある。毒を帯びてしまったら、その毒はずっとそこにあり続けるのだ。加えて、毒の弱さ故に、毒で勝つことは困難だ。本当にこの哀れな危険に対処する必要があったというのだろうか?
私が《Leeches》を嫌っているのは、一つ重要なことだ。私の中で毒の重要性は、それがもう一つのライフではない、というところにある(これはミラディンの傷跡のデザインにおいて非常に重要になる)。従って、ミラディンの傷跡ブロックを通して、毒を取り除くカードは1枚たりとも存在しない。あり得ない。そこには答えがある。毒を取り扱う方法は存在するが、癒すことはそこには含まれない。毒カウンターを取り除く方法はただ一つ、《Leeches》だけだ。
さて、ここからが私の難問の話になる。既に見ての通り、私は、毒セットが果たすべき目標のいくつかは判っていた。私が夢を現実にしていくために辿った足跡を紹介していこう。
毒の探索 第1話:マジック開発部に雇われる
多くの人にとって、これは探索のゴールだ。私にとっては、これは始まりに過ぎなかった。私は、マジックが毒セットを作ることがあるとしたら、それは私の手でしなければならないということを知っていたのだ。
ところで、マジック開発部に入って自分のゴールに向かいたい諸君のために添えておこう。前回のコラムでも書いたが、まもなく第2回グレート・デザイナー・サーチが行なわれ、その勝者はマジック開発部での6ヶ月のデザイン・インターンシップを得る。詳しくは前回のコラムを参照して貰いたいが、これについての詳細が9月29日に発表されるということは覚えておいてくれたまえ。
さておき。毒セットを作るために、私は開発部での仕事を得る必要があったわけだ。これは比較的簡単なことなので、これについて細かく説明する必要はないだろう(もし諸君が私のコラムをきちんと読んでいれば、それについては今まで何度か書いてきていることを知っているはずだ)。私が最初に入ったのは、アライアンスのデベロップ・チームだった。このチームには、確か、13人のメンバーが所属していた。基本的に、開発部で椅子に座れる人間は全員がこのチームにいたのだ。その裏には、アライアンスの発売がマジック史上の大ターニングポイントとなる壮大な物語がある、が、それはまた別のコラムの話だ。
デベロップの間に、私はこのカードを目に止めた。
私が新しい毒カードそれぞれに愛情を感じるのは、その潜在的な可能性だ。例えばこの《沼地の蚊》にはパワーがない。通常、パワーが0のクリーチャーでゲームに勝つことはできないが、《沼地の蚊》なら可能なのだ。
その次のセットはミラージュだった。私は今回もデベロップ・チームに所属していた。私は、確か、デベロッパーとして雇われたのだ。私がデザイナーであると証明する機会は間もなく訪れるのだが、まだもう少し先の話だ。ミラージュのデザイン・チーム(ビル・ローズ、ジョエル・ミック、チャーリー・カティノ、ドン・フェリス、ハワード・カーレンバーグ、エリオット・セガール)が毒カードを2枚作ったのか、それとも私がそれをデベロップ中に入れたのかは覚えていない。覚えているのは、ミラージュに毒を入れようと私が強く主張したということだけだ。その結果、この2枚のカードが出来たのだ。
|
|
いつも通り、カードは弱く、そして《墓所のコブラ》は毒より前にダメージでプレイヤーを殺してしまうものだった(傷跡で解決すべき問題となった)が、私は方向性は間違っていないと感じていた。私は次のビジョンズでもデベロップ・チームに入り、このカードを世に出した。
これはあまりにも遠い昔のことで、私がこのカードをデザインしたのか、それとも単に畏怖をつけたのかは覚えていないが、毒デッキを作る人のために毒カードを入れようと決定したのは確かだ。いつも通り、コストが軽いとは言えないものだが、ついに毒クリーチャーが回避能力を持ったのだ(ああ、《沼地の蚊》は飛行を持っていたとも)。私はこれが気に入った。それから、次に毒クリーチャーがマジック界に現れるまで10年の月日が流れたのだから! まあ、私が入れようと言わなかったからではないが。
毒の探索 第2話:マジックのデザイナーになる
このことについては以前にも話しているが、ここで概要を話そう。デベロッパーとして雇われた私だったが、本当にやりたいことはディレクション、用語で言うならデザインだった。その目的のため、私は当時のヘッド・デザイナー&デベロッパー(その頃は兼職だったのだ)のジョエル・ミックを説得し、セットをデザインする機会をもらえるよう説得せねばならなかった。私は(当時何年もマジックのデザインから離れていた)リチャード・ガーフィールドを口説き落として自分のデザイン・チームに迎え入れ、ほぼ完成させることができた。私が自分の能力を証明したセットは、テンペストであった。
テンペストのデザイン・チームは、リチャード、チャーリー・カティノ、私、それに開発部の新人マイク・エリオットだった。私と同じように、マイクはマジック・デザイナーとしての能力を証明したいと思っていたのだ。(マイクはマジック史上で私に次ぐ数のセットでリード・デザイナーを務めることになる。いつかティンスマンが追いつくだろうけれども。) 初期に、私はチームに向かって毒をデザインの主軸にしたセットが作りたいという希望を語った。彼らは私の情熱を組み、議題にしてくれたのだ。
テンペストの開発コードネームはBogavhati(《ヴァティ・イル=ダル》の名前は実はコードネームから取っているのだ)だった。(実際の綴りはBhogavatiだが、我々は完全にこの綴りだと思っていた)は、毒を持った蛇たちがいるインド神話の土地だ。コードネームは、強く毒を押すことを意味してつけられたのだ。330枚のカードのうちで実に58枚のカードは、デザイン上毒に関連したものだった。
それから? 最初のデベロップで、枚数が削られた。58枚から22枚、21枚、16枚、8枚、4枚、2枚、そして1枚。その後、週例ミーティングでこの問題が話題になった。毒を入れるべきかどうか、だ。毒は、数字を記録する必要のある、中心から外れたテーマだった。開発部の大多数は、毒の居場所はマジックにはないと考えていた。毒はもはやマジックで使うものではない、と。
正直に言って、これは後退だった。しかし、困難がなければ探索ではないのだ。私は開発部がゲームからそのメカニズムを取り除いたといって、毒セットを作ることを諦めはしなかった。新しい手を考えなければならなかっただけだ。
毒の探索 第3話:箱の外から考える
毒を取り除かれたものの、テンペストのデザインは成功だったと評価されて、私は正式にマジック・デザイナーになった。次に私がリード・デザイナーを務めたセットは、アングルードだった。奇妙で型破りで、マジックが決してしないだろうことを詰め込んだセットだった。「決してしないだろう」? いや、そうじゃない。したのだから。不幸にして、開発部が毒をゲームから追い出した時点ではもうアングルードは完成に近づいていた。もしもっと早く判っていたら、アングルードは毒の天国になっていたに違いない。
アングルードへの最初の反響はすごいものだった。あまりの反響に、翌年に続編を作る決定がなされたほどだった。内部では「アングルード2:続けなきゃ大損」と呼ばれたセットが私に委ねられた。私が「現実の」マジックに毒を入れることが認められていなければ、私はそれを銀枠世界で実現しようとしていただろう。
アングルードのテーマはチキンだった。アングルード2にも同じような馬鹿げたテーマが欲しいと思った。デザインの中心には毒クリーチャーを据えたいとも思っていた。セット全体を通してのテーマと、毒クリーチャーにするものとを繋ぐことを考えた。思いついたのは、動く野菜だった。私の考えたキャッチコピーは「野菜は身体にいいとはかぎらない」だった。
ちなみに、野菜テーマのために、アーティストには必ずどこかに野菜を隠して欲しいと依頼していた。アングルード2用に描いてもらったイラストの中には、アンヒンジドで利用された物もある。これが、アンヒンジドのカードの一部に野菜が隠されている理由なのだ。
このとき、毒をダメにしたのは経済的事情だった。アングルードは初期の反響こそ良かったものの、刷りすぎて市場にだぶついていた。代理店はアンセットにいい顔をしなくなり、マジック・ブランド・チームはアングルード2を二度と帰らぬ闇に葬り去ることにしたのだ(アングルード2のカードやイラストの多くは時を経てアンヒンジドで帰ってくることができた)。
これは、もちろん公式な話だ。「誰か」が毒を消し去ろうとしていたと信じている。
毒の探索 第4話:我慢する
多くの問題に対する究極の回答、それは時間だ。当時の開発部が毒セットを作れる環境でなかったので、私は毒を抱えたまま、いつか開発部の環境が変わってもう一度挑戦できるようになる日を待った。毒をネタとして出して反応を見るということを繰り返しているうちに、私は、開発部の空気が変わって、まじめに取り組める時期が来たことに気がついた。
毒の探索 第5話:ヘッド・デザイナーになる
私の、毒セットを作るという一心不乱の探索は私のキャリアに良い影響を与えたようだ。ヘッド・デザイナーになった理由の重要な物に、ヘッド・デザイナーは各ブロックの全体像に責任を持つ役職であるということがあげられる。私が毒の復活を望んでいたから、私はより大きなことを考える必要があった。毒が不自然でない環境、そして、毒がなければ不自然な環境を作る必要があったのだ。
そして、未来予知が訪れた。このセットは未来を垣間見せるものだったが、実際の未来だけではなくそうなる可能性のある未来を見せるものだった。実際の未来を隠すために、様々な未来が必要だった。実際に作る予定のものを隠すために、実際には作る予定のないものを混ぜる必要があった。毒を混ぜるのにもってこいだったのだ。私の中ではそれは実際の未来だったのだが、そのセットには偽りの未来も詰まっていた。開発部の、毒が戻ってくると思っていなかった連中はそれをただの偽りの未来だと思ったに違いない。
未来予知のコンセプトを決めたのも私なら、そのリード・デザイナーも私だった。私が再び毒を戻してくるためにわざわざそういう場所を作ったに違いないと思うかも知れないが......なんともはやだ。私はそこまでひねくれてはいない。毒がぴったりはまると気がついたのは、未来をのぞき見るセットというアイデアが閃いたよりも後なのだ。
それをセットにはめ込むために、毒を発展させる方法を考えなければならなかった。未来から来たというからには、過去にはなかったものでなければならない。そしてその答えは、キーワード能力にすることだった。「有毒」はそうするのがもっとも率直な方法だと思われたために作られたのだ。数字を着けたのは、パワーと毒の比率によって有毒クリーチャーがダメージでなく毒でプレイヤーを殺せるようにするためである。
未来予知に馴染みのある諸君は、このカードを見たことがあるだろう。
|
|
諸君が知らないであろうこと(アーロンの記事で書かれていたかも知れない)を言うなら、私はデザイン時にもう1枚毒カードを入れていたのだ。
『毒の都』
土地
Tap, 毒カウンターを1個受ける:あなたのマナ・プールに{W}か{U}を加える。
このカードはデベロップ中に、強すぎるという理由で削除された。このサイクルを傷跡に入れようとしたが、デベロップはこれをサイクル全体で入れるのは良くないとハッキリ示してくれた。毒が主流でないあらゆる環境において、これらのカードはアルファの二重土地と同じように強くなり、今日求められる多色土地としては強すぎるのだ。
開発部は、毒は未来予知に相応しいと考えた。そして10年後、毒はゲームに帰ってきた。毒が帰ってきたこと(そして毒がプロツアーを制したこと!)は私にとって喜びだったが、たった数枚のカードでは私は満足しなかった。毒が中核に据えられたセットが欲しい。そうするためには、毒が使えるセットというだけでなく、毒が必要なセットが必要だったのだ。
毒の探索 第6話:毒が必要なセットを作る
先週、私はミラディンがデザインされた時からミラディンがファイレクシア軍の侵攻にさらされていたということについて話したが、その鍵はその侵攻がゆっくりと密やかなものだったことである。ファイレクシア軍(より正確に言うならファイレクシアの軍勢......油を運ぶもののことをなんと呼んでもいいが、とにかくそれ)はミラディンを、ゆっくりと自軍に変えていくといういつもの方法で、占領しようとしていたのだ。
プレーヤーに毒カウンターの形でダメージを与える。)
それこそがファイレクシア軍の気味悪さだ。奴らは諸君を自分たちにしていくのだ。諸君のクリーチャーが相手の物になったとき、そこからは1体減っているのだ(これが「感染」というのがファイレクシアのメカニズムの名前に相応しい理由だ)。元々ミラディンに住んでいた存在をミラディン人と呼ぶが、実際、このミラディンの傷跡ではミラディン人はファイレクシア軍の存在に気づいてすらいない。ミラディン包囲戦という名前がなかったとしても、彼らはそれに気づくことになる。ミラディンでは、このファイレクシア軍による転換の始まりが見かけられた。ミラディンの傷跡では、それがゆっくりと進んでいたことを見ることになる。
ミラディンに戻るということは、最終的にはファイレクシア軍と対峙するということになる。ストーリー上だけでなく、メカニズム的にもだ。つまり、止めることの出来ない毒の軍隊で、触れた物全てをゆっくりと汚染していくというファイレクシア軍を示すメカニズムを配置しなければならない。さて、そんな邪悪で毒々しくて汚染的な力を表すメカニズムは何だろう......?
こうして、私は毒を入れたセットを手に入れたのだ。後は、開発部がマジックに毒の居場所がないと信じていることだけが問題だった。デベロッパーの中には、問題を解決せずに取り上げたという意見もあった。また、我々が解決できなかった小さな問題もそのメカニズムには潜んでいたのだ。加えて、そのメカニズムに関する私の記録は確信をもたらすものではなかったのだった。
一方、私は本当に頑固なのだ。
ではまた来週、ミラディンの傷跡のデザインを取り上げる日にお会いしよう。
その日まで......
っと。その前に、感染持ちの神話レア・クリーチャーを紹介するのを忘れるところだった。
このカードこそ「伝説のクリーチャー ― ドラゴン・スケルトン」に相応しいカードだ。
ではまた来週、このようなものがいかにして印刷に至ったかについてお話ししよう。
その日まで、必要なときにあなたが頑固でいられますように。