Translated by Yoshiya Shindo

 ようこそ、神河謀叛プレビュー第1週へ! そして今回、皆さんと神河謀叛のプレビューカードを初めて分かち合う栄誉を担うことになったのが、この私だ。それに、こいつは忍者だ。思うに、こいつは神河謀叛における最初のニュースだと思うね。マジックにも忍者が登場することになったんだから。それじゃ、なぜそれが登場することになったのか? どうして神河物語には入っていなかったのか? その質問には一通り答えていくつもりだけど、まずはとにかくプレビューカードをお見せすることにしよう。冬休みを三週間ほどいただいて、これが明けて最初のコラムになる(コラムを書くのは好きだけど、時には毎週書かなくてもいいことが好きになるのもあるんだよ)ので、ここではぜひとも読者の皆さんをイライラさせたいと思う (今後もそうする時間はたっぷりあるんだけどね)。

 さて、それじゃ今回のコラムの進行を決めておこう。まずはプレビューカードをお見せする。それから、質疑応答をやっていこう。いいかい? オーケー、それじゃプレビューだ。カードの紹介前に言うことは特に無いけど、紹介の文句は「“あれを見ろ! 忍者だ!」でいくんだろうね。

 さて、質疑応答に入ろう。はい、そこのコンピューターの前でダイエットコークと豚皮スナックを食べてる君。

 Q:あっ、はいはい。いつもですと、まずはセットのデザインチームの紹介から入りますよね。これは神河謀叛の最初のコラムですし、神河謀叛のデザインチームに関してちょっとばかり教えてもらえません?

 最初の質問はカードの内容に関するものだと思ったんだけどね。でも、デザインチームの話をするのも悪くないだろう。

マイク・エリオット(リーダー):以前の私のコラム(リンク先は英語)で、私はこれまでで最も多くのエキスパンションに関わってきた開発部のメンバーの話をした。それによると、マイクは第2位で、私が第3位だ (第1位は開発部副部長でマジックデザイナー統括のビル・ローズだよ)。それじゃ、改めて私の頭の中で数えなおしてリストを作ってみよう。公式のデザインと調整のクレジットを基準にしたリストを見る分に、ヘンリー・スターン(第4位)は実に妙な気分になるだろうね。最終的にはビルが第4位まで下がって、マイクとヘンリーと私が1つずつ順位が上がることになるだろう。そうすると、マジックのデザインと調整のチームに関わった記録ではマイクがトップとなる(気になる人のために言うなら、私は彼に二つ遅れているね)。

 マイクはこれまでにも数多くのデザインチームに参加しているから、もう彼について語ることが無くなりつつあるよ。彼はマジックに関わり始めてもう9年になり、他の誰よりもこのゲームに影響を与えていると言えるだろう(まあ、リチャードは別だ)。新人の話はこれまでにもしばしばしてきた。それで言うなら、マイクは旧人だ。マイクの業績を知らないって言うなら、君はこのゲームの歴史においてはもぐりだね (一応紹介しておくと、彼はストロングホールド、エクソダス、ウルザズ・サーガ、ウルザズ・レガシー、メルカディアン・マスクス、ネメシス、プレーンシフト、オンスロート、レギオン、神河謀叛のリードデザイナーをやっている。後一つか二つは忘れてそうだね。それに加えて、彼はミラージュ以降のデザインチームの半分以上に参加している)。

ランディ・ビューラー――ランディはウィザーズ社に入ってすぐ、アポカリプスのデザインチームに入った。それ以降、彼は多くの調整に参加している。そしてある年、彼は再びデザインチームに復活し、フィフス・ドーン、アンヒンジド、神河謀叛のデザインに参加している。デザインチームにおけるランディの価値は、カードのデザインそのものってわけじゃない(もっとも、神河謀叛には彼によるカードも若干あるけどね)。ランディはチーム全体の見通しを立てることに非常に長けていて、デザインの良い点と悪い点を見つけるのが得意だ。

 そして……以上だ。そう、神河謀叛のデザインチームは二人だけなんだ。これは別に初めてってわけじゃない(例えばレギオンのデザインチームは二人だった――そのうち一人はマイクだけどね)けど、一般的とはとても言いがたい。

 さて次、そこの二十代の赤いネクタイの君。

Q:忍者だって? なんで忍者なんか入れることになったんだい?

 神河物語のデザインチームがブロックのデザインを始めたとき、彼らは日本の神話に登場するあらゆるものや、日本に関してマジックのプレイヤーが知っているであろう事をリストにした。彼らはそれを元にアンケートを作成し、ウィザーズ者でマジックをプレイしていると思われる面々に対して実行したんだ。トップに並んだ二つ(間違いなくアンケートに参加した全員がマークしただろうね)は、侍と忍者だった。もう一つ重要だった発見は、落とすべきアイテムがあっというまに見つかったことだ。最終的には、人々は二本の親和について少しだけ理解しているものの、我々が期待していたほどではなかったことが判明した。忍者は間違いなく入るべきものだったね。

 次、Magic Onlineのターンの合間にこのコラムを読んでる君。そこで神河物語のドラフトをやってる君だ。黒シャツの。今「犬を追い出してるんだ」って発言した君だよ。

Q;なぜそれが神河物語に入らなかったんですか? まあ、前の段落を見れば、そう来るだろうね。

 この質問に答えるには、ちょっと引いた観点から見なくちゃいけない。マジックのセットは個別にデザインされているわけじゃない。それらはブロックでまとめてデザインされているんだ。つまり、ブロックの最初のセットでは、ブロックの他のセットのことも考えなくちゃいけないってことだ。で、神河物語のデザインで、我々は忍者がどれだけ面白い要素になるかに気がついていた。それゆえに、とっておくべき価値があったのさ。そこで我々はそこでは侍を導入し、次のセットで――忍者が登場したってことさ!

 次、そこの銀縁の眼鏡っ娘。

Q:えっと、忍者はみんな忍術を持ってるんですか?

 その通り。侍がみんな武士道を持ってるのと同じことだ。ただし、戦闘ダメージにより誘発する内容は、忍者ごとに違っている。だからプレイの仕方もさまざまなものになるだろう。

 次、そこの唇が荒れてる君。

Q:忍者はみんな黒なの?

 いいや。開発部が話し合った結果、忍者の隠密行動は青にもふさわしいということになったんだ。

 次、スタバでノートパソコンを開いてる君。ラテを頼んでる君だ。

Q:ってことは、白とか赤とか緑には忍者はいないんですか?

 いない。

 次、そこの長い三つ編みの髪の……どっちか。手袋をしてる人。

Q:忍術能力はどこから思いついたん?

 面白い話があるんだよ。神河謀叛のデザインチーム(早い話がマイクとランディ)は、忍者を採用する方向で進めていた。それが黒や青になることもはっきりしていた。そして、武士道が侍同士のつながりをはっきりさせているように、忍者同士のつながりとなるキーワード能力が必要なのもわかっていた。それもイメージたっぷりなやつだ。最初の提案は確かリチャード・ガーフィールドから来たはずだ。彼の提案は、それらがみんな場に出たときの能力を持っているのはどうかというものだった。リチャードの主張は、忍者は侍ほど戦士として強くない(それと、ポップカルチャー的観点から言えば、負けるのはいつも忍者の方だ)というものだった。掘り進めるべきは、彼らの隠密性だ。リチャードの考えでは、“場に出たとき”の能力ならそれが擬似的に表現できるだろうというものだった。そこでデザインチームは、リチャードのデザインによるカードを何枚か試してみた。その後、彼らはインスタントとしてプレイできるクリーチャーを実験してみた。次に試したのは、インスタントとしてプレイでき、場に出たときの能力を持っているクリーチャーだった。しかし最終的に、どのバージョンも忍者としては平凡な者だったんだ。

Opportunist
 次に試されたのは、テンペストの《日和見主義者/Opportunist》と若干のつながりのあるものだった。それらのクリーチャーは、対戦相手に何らかのダメージを与えたときにのみ起動できるタップ能力を持っているものだった。 しかし、カードの動きとしてはうまく行ったものの、それは忍者のイメージをうまく捕らえていなかった (例えば、君の忍者は攻撃には行かないだろう)。そしてアーロン・フォーサイスは、シャドーを復活させるアイデアを持ち出してきた。アーロンが言うには、これはイメージ的に完璧だというものだった。そこで我々はカードを何枚か作って試してみたが、シャドーではメカニズム的にうまくは行かなかった。

 次に我々が試したのは、リチャードがオデッセイ時代にデザインしたもので、それ以来居場所を探していたメカニズムだ (それがどんなものかはここでは語らない。いつか居場所が見つかるだろうからね)。そのメカニズムはかなりいい線までいったけど、残念ながら決定までには至らなかった。さて、ここでようやく神河謀叛のデザインに私がちょっと交わることになる(後に色々と紹介することになるけど、ほとんどそんなレベルだ)。私はその問題に、イメージ的な問題からあたることにした。我々は忍者に何をさせたいのか?

 まあ、攻撃をさせたいんだろう。そして、実際にダメージを与えたときに、何か悪いことをさせるのがいいんだろう。それに、奇襲的要素も加えたい。そこで、私は忍者が隠し持っている能力について考え始めた (もちろん、手裏剣は別にしてだ)。そして、ピンときた――偽装だ。忍者が自分を別なクリーチャーに偽装しているとしたらどうなるだろうか? そしてここぞと言うときになって、彼らは覆面を外して「ゴチ!」とか言うのさ(ああ、できればアンヒンジド的には考えて欲しくないな)。

 そんな考えを頭に、私はどうやってそれを現実にするかを考え始めた。私はそれがブロック後の話でなければいけないと考えた。忍び込むことのお楽しみは、あくまで敵の防御を抜けてからの話だからね。そして、私がその考えに至ったとき、答えは明白だったのさ。手札の忍者を攻撃クリーチャーと交換することにしたんだ。私が元のクリーチャーを墓地でなく手札に戻すことにしたのは、墓地に置くんでは忍者がそのクリーチャーを殺しているように見えたからだ。代わりに手札に戻すことで、そこには私が付け加えたかった“ずっと何かに化けていた忍者”のイメージができることになるだろう (ゲーム的にも価値が出てくるしね)。

 イメージはうまくいった。そして、テストプレイを進めていくにつれ、このメカニズムは二次的な効果があることが分かってきた。プレイヤーはあらゆるクリーチャー、特に軽くて小さいやつに対してより強く疑心暗鬼になるようになったんだ。私はこのメカニズムを「隠密(sneak)」と名づけた。私が最初に作ったカードは、偶然にも小型の青クリーチャーで、対戦相手にダメージを与えるたびにカードが引けるやつだったね(これは神河謀叛のコモンカードだ)。

 さて、親愛なる読者諸君も、忍者がとにかく気になってきたことだろう。

 が、今回はどうやら時間となってしまったようだ。今回の記事が、神河謀叛の世界や忍者の出自に関してのイメージになってくれるといいと思う。

 それでは、またお会いできるときまで。

 それまでの間、あなたが忍者で“隠密”の楽しさを知ることを祈念しつつ。

 マーク・ローズウォーター