ここ数ヶ月にわたり、コミュニティではマジック:ザ・ギャザリング アリーナ経済について活発な議論がかわされていました。私たちはその議論を見、データを集め、内部で議論をしていたので、コメントはしませんでした。その期間を通して、懸念を表明し、問題を共有し、私たちにその解決を求めるプレイヤーの数は増え続けました。

私たちが沈黙していたことが、問題を複雑化させたのかもしれません。これは難しい問題で、断片的ではなく総体的に取り組むべき問題です。私たちは皆さんの意見を聞いていますし、この話を始める準備が整いました。

これはその第一歩です。コミュニティが提起したすべての問題を今日一日で解決するというわけではありません。MTGアリーナの中核的展望について、そしてそれが今日ある経済にどう影響しているのかについてお話しします。データやコミュニティの意見から見られた問題のいくつかについてお話しします。最後に、フィードバックのいくつかに取り組む、短期的なことのいくつかについてお話しします。

この記事で記載するほかに、Weekly MTGで行なわれたMTGアリーナエグゼクティブ・プロデューサーのクリス・キリッツ/Chris Kiritzとの公開対話の動画アーカイブが公開されています。キリッツはこの記事に書かれていること以外にも、ファンからのリアルタイムの質問に答えています。

私たちは、動画を見ていただいたこと、質問していただいたこと、私たちの見解をお読みいただいたことに感謝するとともに、皆さんの考えをもっとお聞きしたいと思っています。

MTGアリーナの展望

各論やアリーナの経済に関する決定についてお話しする前に、開発上の決定の前提となるMTGアリーナというゲームに関する私たちの展望や理念の本質をお話ししたいと思います。

常々述べていることの繰り返しになりますが、MTGアリーナの目標は、手軽で楽しいマジック体験を、あらゆる人に、あらゆる場所で提供することです。

これは、プレイヤーにとっては、ご自宅でくつろぎながらでも外出時でも、パソコンでもスマホでも、MTGアリーナの提供するすべて、つまり新製品の体験や友人との対戦や最高レベルの競技マジックへの参加に、アクセスできるということです。私たちはマジックの本質を失わずにこのデジタル・プラットフォームを利用した最高の体験を作り上げたいと考えています。

マジックの道具を利用したいとはいえ、独特の需要や制限がある別のプラットフォームだということは認めざるを得ません。MTGアリーナは最初、特にスタンダード構築や直近のドラフトといった私たちが「フロントリスト」と呼んでいる遊び方を無料でプレイヤーに楽しんでもらうために作られました。時とともに、その最初の意図にもとづいて拡張していき、ヒストリックやキューブドラフト、アルケミーなどが含まれるようになりましたが、この拡張によって、このゲームやコミュニティが成長していく上で乗り越えなければならない新たな問題も発生したのです。

MTGアリーナの経済の基礎

ここで「経済」とは具体的にどういう意味でしょうか。

MTGアリーナの経済を発展させるとき――そしてその相対的健全性を評価するとき――私たちはプレイヤーが自分のコレクションを増やしたりゲームをプレイしたりするために、様々なリソースを集め、費やしているあらゆる方法を調査しています。その中にはゴールド、ジェム、各種カード報酬(ICR)、パック、ワイルドカードなどのリソースそのものや、クエスト、イベント報酬、デイリー勝利報酬、ウィークリー勝利報酬、そしてもちろん課金による購入が含まれます。

MTGアリーナの経済の裏にある包括的目標あるいは理念は何でしょうか。

まず第一に、私たちはマジックに初めて触れようというプレイヤーから何十年もプレイしているプレイヤーまで、様々なプレイヤーの需要のバランスを取ろうとしています。ほとんどはその2つのグループの間のどこかに位置するでしょう。

次に、私たちは私たちが考える健全なプレイ行動を促したいと思っています。プレイヤーに、競技環境についていくためには毎日10時間プレイしてすべてのデイリー勝利報酬を取らなければならないと思ってほしくはないのです。クエストはマジックのゲームに勝利することではなくプレイすることにもとづいていて、クエストの1つがプレイヤーの好きなプレイスタイルに合わない場合に体験を調整する1日1回の再設定が可能です。その方向性から、デイリー勝利報酬は簡単に手に入るようになっています。つまり、毎日得られる報酬のほとんどは最初の数勝で手に入ります。

最終的に、私たちはパックの開封は楽しいものであるべきで、コレクションを集めることはやりがいがあることであるべきだと考えています。マジックは常に進化を続けていて、これまでに発行されたカードがいつ新しいカードによって蘇るかは予想もできません。MTGアリーナは主なフォーマット以外にも様々なイベントを用意しており、その中には伝統的なメタゲームでは見られないようなカードを目立たせるようなデッキ作成上の要件や制限があるものも多くあります。コレクションがあれば、プレイヤーはこれらの体験ができ、経済において全般的な順調さをもたらしてくれます。

構築戦で私たちが注目しているのは、セット内のすべてのカードを集める中での繰り返しです。そのため、経済は時を経て特定のデッキを作成し育てることを軸にデザインされています。ほとんどのプレイヤーには、好きなデッキや色やプレイスタイルがあり、私たちはプレイヤーがそれぞれ気になった色のチャレンジから得たデッキを育ててから、自分のデッキを作ったりコミュニティからさらなるデッキのアイデアを探したりすることを想定しています。ただ数日に1回プレイしてクエストをクリアするだけでも、実用的なデッキを作りながらコレクションを育てるのに充分な通貨やパックを手に入れていくことができます。

私たちは、MTGアリーナのプレイヤーとして育ったプレイヤーやそもそもベテランのマジックプレイヤーといった経験を積んだプレイヤーもこの行動を続けると想定しています。ただし、その経験を反映して、何を組みたいのか、どんなカードが必要なのかについての理解は深くなっていることでしょう。私たちは、それらのプレイヤーがパックを開封するという有機的工程を通して作ることに重きを置くことを想定しています。

どちらのシナリオでも、課金したくないプレイヤーは販売シーズンを通してクエストをクリアし、マスタリー・システムのレベルを開放し、イベントに参加し、あるいは単にプレイすることでカードを手に入れてそれらの変更を加えていきます。しかしながら、その工程を早めようと思うなら、それまでの報奨からかストアでの購入か、いずれかの方法でリソースが必要になります。

デッキの反復工程に焦点を当てているので、「完成主義者」のプレイヤー、つまり手に入るカードすべてを手に入れたがるプレイヤー、はセットを集めるのが難しくなっていることに気づくかもしれません。実際のところ、これは比較的小さな部分ですが、サポートしたいところではあり、私たちはセットを揃えたいプレイヤーのためにこの工程を進歩させる方法について議論しています。例えば、まもなく1300ゴールドで発売される「ミシック・ブースターパック」では、レアまたは神話レア枠のカードが必ず神話レアであることが保証されています。(ワイルドカードで置換されていない限り。)これは「レアを揃えた」けれども神話レア・カードが足りていないコレクターの助けになるでしょう。

また、私たちは、現在のシステムでは実験するのが難しいことから、この構造が「デッキ醸造者」あるいはメタゲームに応じて大量のデッキを作ることを好むプレイヤーにとって理想的でないこともわかっています。完成主義者とデッキ醸造者の両方であるプレイヤーもいるかも知れませんが、私たちはすべてのカードを揃えることに全力を傾けなくてもデッキを試すことができる能力を進化させる選択肢についても検討しています。

リミテッド(ドラフト、シールド)の要素はどう関わるでしょうか。 リミテッドの第1の目標は、そのマジックの拡張セットのカードで楽しむことです。その楽しみは、限られたカードでデッキを作ることだったり、ドラフトでパックを読む能力を示すことだったり、単純にパックを開くだけよりもカードに触れる方法でカードを体験するだけだったりします。私たちがコレクションを評価しているので、プレイヤーが開封したカードを手に入れられるようにすることは重要です。(キューブのような特殊な体験を除きます。)しかし、これらのイベントは、プレイ体験だけを望む場合に利益があるようにもデザインされています。これによって、経済上の重みが高まっています。私たちはこれに気づいていますので、構築イベントの構造をリミテッドのそれと投下に近づけるように調整していきます。

プレイヤー・コレクション

構築プレイの経済がデッキの反復工程にあるなら、コレクションを「分解」できないのはなぜでしょうか。

(初心者向けに解説しますと、デジタルTCGにおいて分解とはプレイヤーが自分のコレクションの「不要な」カードを、必要なカードを手に入れるためのリソースに交換することを指します。)

MTGアリーナは、プレイヤーは自分が開封して手に入れたカードを保持するという理念の上に成り立っています。デッキや戦略は常に入れ替わり続けるもので、そのため、セットごと、フォーマットごとにカードの必要性や強さが変動することになります。この多様性はマジックを特別なものにしている一因です。

あとでその壊したカードをもう一度手に入れる必要があると気づいたときにがっかりすることになるので、絶対にプレイヤーには作りたいデッキを作るために自分のコレクションを崩さなければならないと思ってほしくはありません。さらに、分解はゲーム周りの会話の意味を変えてしまいます。「何を組むべきか」ではなく「何を壊すべきか」という会話になり、それは本質的にネガティブなものになります。

しかしながら、必要なカードを手に入れることを願ってパックを開封することはその手に入れるものに非常に重きが置かれることがわかっているので、私たちなりの「分解」が、楽しくてコレクションを強めるMTGアリーナの別の部分、つまりパックを開封することに加えられました。MTGアリーナのストアパックにはカードだけでなくレアや神話レアのワイルドカードが入っていることがあり、いずれ確実にレアや神話レアのワイルドカードを手に入れることができるようになっています。これと、重複時の保護があることで、手順の中でコレクションを溶かす必要なく、カードを集めるために開封する必要があるパックは必ず有限になっています。

ここには宝箱、つまり大量のコモンやアンコモンを集めた人向けの重複保護の特殊型、は含まれていません。経済の大きな部分というわけではありませんが、私たちはこれが現在期間限定ワイルドカードの供給元として働いていることに満足しています。

低レアリティのコモンやアンコモンのワイルドカードをレアや神話レアのものに交換することは可能になるんでしょうか。

現在のところその計画はありません。

わかりました。でも、他のことはともかく、私はこのデッキを完成させるためにレアや神話レアのワイルドカードを買いたいんです。

そのための方法は現在パックの購入しかありませんが、その工程が非効率的だと感じられることには私たちも気づいています。『ニューカペナの街角』の発売とともに、レアのワイルドカード12枚と神話レアのワイルドカード4枚が入ったワイルドカードバンドルが49.99USDで購入可能になります。これは現在のデッキを完成させたり次のデッキの書道を早めたりするために必要なワイルドカードを手に入れる単純な方法になります。

多くの新機能や新製品とともに、この新バンドルも最初6週間の期間限定提供となります。その期間のあとで影響を評価して、そこから始めることになります。

テーブルトップとデジタルプレイ

MTGアリーナは、経済上の判断をする上でテーブルトップとデジタルプレイの両方のためにカードを集めているプレイヤーのことを考慮していますか。

共通しているプレイヤーがいることはわかっていますが、それぞれのプラットフォームにそれぞれ私たちが強調したい長所があります。プレリリース・パックに入っているMTGアリーナのコードのように共通の体験に寄せるものもあれば、それぞれのユーザー向けに製品や体験を分けるものもあります。無料でプレイできるようにしていることで、マジックをプレイする他のあらゆる手段に加えて、私たちは「いつでもどこでもプレイ」体験を望むすべての人がMTGアリーナに飛び込んで楽しむことができるようにしたいと思っています。

なぜ紙の製品でのテーブルトップのプレイでなくMTGアリーナのようなデジタル製品をプレイすべきなのでしょうか。

私たちは、テーブルトップとデジタルプレイにはそれぞれプレイヤーがプレイする形に基づいた利点があると考えており、何をどのようにプレイしたいかにもっとも合った決定をすることはプレイヤーに委ねています。私たちが言えることは、あなたがどちらか一方をプレイするにせよ両方を組み合わせてプレイするにせよ、私たちはテーブルトップとMTGアリーナの両方を今後何年もサポートする計画だということです。

アルケミーはなぜ?なぜパイオニアでも統率者戦でもそれ以外のテーブルトップのフォーマットでもないのでしょうか。

第1に、私たちは常にあらゆる種類のプレイヤー向けの体験を提供しようとしていて、デジタルの諸費速度に合ったペースで成長・変化できるフォーマットを求めているプレイヤーがいました。アルケミーはそれらのプレイヤーに体験を提供します。『神河:輝ける世界』チャンピオンシップで優勝したEli Kassisのオルゾフ探索デッキが示したとおりです。

第2に、ヒストリックはMTGアリーナのローテーションのないフォーマットの基本的な需要を満たすというそれ自身の特徴が示せていました。パイオニアには5年分のセットが存在するという事実と合わせて、私たちはもっと素早く決定できる何かを優先することになりました。

最後に、統率者戦その他のフォーマットには、パイオニアよりさらに多くの努力が必要です。MTGアリーナで多人数戦をする方法を見つけたいとはもいますが、それに意味を持たせられるようにするには技術的なハードルを超えるのが先決です。

とはいえ、アルケミーの導入とアルケミー用カードのヒストリックへの導入が、一部のプレイヤーが気に入らないほどにテーブルトップから離すことになることはわかっています。結果として、私たちはテーブルトップにしか存在しないカードを含むローテーションしないフォーマットを加えることになります。これによってデジタルとテーブルトップのフォーマットに対称性が生まれ、それぞれにローテーションするフォーマットとローテーションしないフォーマットがあるようになります。このフォーマットについては、立ち上げが近づいたらまたお知らせします。