MTGアリーナ:フォーマット更新情報2024
今年は、MTGアリーナのフォーマット全体を通して多くの変化が起こりました。来年もさらなる変化が起こることは間違いありません。数か月前に、ヒストリックとタイムレスが『モダンホライゾン3』によって刷新され、スタンダードはローテーション間隔が3年になってから初めてのローテーションを迎えました。この1年を締めくくる『ファウンデーションズ』は、長く使えるエキサイティングなカードをスタンダードにもたらします。『パイオニアマスターズ』は、パイオニアの競技シーンをMTGアリーナに用意するというエクスプローラーの旅の終着点となるでしょう。以下に、各フォーマットについての私たちの考えをお伝えし、今後のことも少しお話しします。
概要
以下の図表は、主要6フォーマットのおよそ1か月間におけるプレイ比率を示したものです。『ブルームバロウ』シーズンの終盤から『ダスクモーン:戦慄の館』シーズン開幕までの期間中における、全体的なプレイ状況を表しています。
スタンダードが大差をつけて一番人気のフォーマットです。スタンダード人気はセットのリリースから時間が経つとやや下がり(グラフは『ブルームバロウ』シーズンの半ばから始まっています)、新セットがリリースされると戻ります(最後の方に跳ね上がっているのが『ダスクモーン:戦慄の館』がリリースされたタイミングです)が、常に多くプレイされていることは明白です。続くヒストリックとブロールの人気は非常に拮抗しています。アルケミーが4番目、そしてエクスプローラーとタイムレスはどちらもアルケミーの半分くらいプレイされているということになります。
このデータは昨年のものと非常に似ていますが、いくつか注目すべき変化が見受けられます。スタンダードは昨年より少し人気が高くなっており、ブロールも昨年と比較して多くプレイされるようになっています。タイムレスは今年初めてこの図表に出現しています。
MTGアリーナのフォーマット
この図表で最も明白なのは、MTGアリーナにはさまざまなフォーマットがあるということです。人気の差はあれど、どのフォーマットも多くのプレイヤーが多くのゲームををプレイしており、いずれも誰かのお気に入りのフォーマットになっています。人気の高いフォーマットにより多くの開発リソースが割かれるものの、私たちはすべてのフォーマットをエキサイティングで魅力あふれるものにしたいと心から思っています。
私たちは、すべてのフォーマットがバランスの取れたものであり、多様性と楽しさに満ちたものであることを望んでいます。プレイヤーの皆さんが常にフェアな勝負を楽しみ、ゲーム中の決断が大事だと感じられるよう、バランスは大切です。多様性は、幅広くさまざまな対戦相手と対峙できることを意味します。新鮮さを味わえるだけでなく、自分でも使ってみたくなるようなデッキやアーキタイプが数多く揃っていることも大切です。楽しいことが大切なのはいつものことです。突き詰めるとプレイしているゲームの半分くらいは敗北するため、どのマッチも楽しいものにしたいのです。
バランスに多様性、そして楽しさは、すべてのフォーマットにおいて重要です。しかしながら、それらに対する考え方はフォーマットごとに少し異なり、重要度に順位がついていることもあります。例えばヒストリックでは多様性を鍵としており、使用に耐えると感じられるデッキの幅広さをしっかり確保したいと思っています。一方でブロールのようなカジュアル・フォーマットでは、楽しさが最優先されます。フォーマットはそれぞれ、特定のプレイヤー・タイプを念頭に置いてデザインされています。そうすることで特定の層に向けて開発を進める助けとなり、発展の方向性を正しく選ぶことができるのです。
テーブルトップのフォーマット
MTGアリーナ・プレイヤーの多くは、対面でプレイするマジックと同じ体験を楽しめることを重視しています。そういうプレイヤーはマジックを長く続けている方や、実物のマジックのコレクションを多く持っている方や、あるいは単にテーブルトップのマジックと同じ体験をデジタルで味わいたいという方かもしれません。理由はどうあれ、そういうプレイヤーのために実物のマジックの体験を反映させることは大切だと私たちは認識しています。だからこそエクスプローラーやスタンダードはテーブルトップ準拠の姿勢を続けているのです。
エクスプローラー
テーブルトップ準拠でローテーションなしのフォーマットといえば、エクスプローラーです。このフォーマットは、パイオニアのファンの皆さんやMTGアリーナでも対面でも楽しめるローテーションなしのフォーマットを求める方向けに作られました。
エクスプローラーはパイオニア範囲のカードをすべて擁しているわけではありませんが、非常に近いカードプールになっています。パイオニアの環境上位デッキの多くをそのまま使用でき、BO3のエクスプローラーのメタゲームにはパイオニアと同じく「ラクドス果敢」や「イゼット・フェニックス」、「アゾリウス・コントロール」、「セレズニア天使」の姿が多く見受けられます。そして今年12月の『パイオニアマスターズ』リリースをもって、私たちはこのフォーマットを一気に前へ進めます。
およそ2年前にエクスプローラーの導入を発表したときに、私たちはパイオニアの競技シーンで使われるカードをすべて実装し、また他にも心踊るパイオニアのデッキを組むのに十分な量のカードを実装したいとお伝えしました。
『パイオニアマスターズ』をもって、私たちはその目標を達成すると考えています。私たちはパイオニアで行われたプロツアーや地域チャンピオンシップ予選、Magic Onlineでの状況、その他さまざまな情報を精査し、プレイヤーが使用しているカードを特定していきました。それらすべてが、『パイオニアマスターズ』へ収録されるのです。
最近パイオニアで行われた地域チャンピオンシップは、絶好のテスト機会となりました。ブラジルやアメリカ、日本などで開催されたイベントを調べた結果、メインデッキとサイドボード合わせて1,473種類のカードがデッキリストに登録されていました。『パイオニアマスターズ』のリリース後、MTGアリーナにはそのうち29種類を除いてすべて実装されることになります。デッキリストに登録された総計176,664枚のうち、MTGアリーナにないカードは95枚でした。つまりMTGアリーナには、地域チャンピオンシップで使用されたパイオニアのカードの99.95%が実装されるのです。
私たちは当初より、エクスプローラーは旅の最初の目的地であるとお伝えしていました。プレイヤーの皆さんが求めるパイオニアのデッキがすべて揃ったら、このフォーマット名は廃止するつもりです。私たちとしてはその地点に到達したと考えていますが、その答えを出すためには皆さんの存在が欠かせません。今後数か月にわたり、私たちはパイオニアとエクスプローラーのメタゲームやプレイデータを観察し、プレイヤーの皆さんの声を聞いて、最終決定を下すつもりです。ぜひ皆さんのご意見をお聞かせください。
スタンダード
スタンダードはMTGアリーナで最も長い歴史を持ち、常に他と大差をつけて一番人気のフォーマットであり続けています。このフォーマットは、特にテーブルトップ準拠のマジック体験を楽しみたいプレイヤーに向けて調整していますが、それに限らず幅広い層に人気があるのは驚くことではないでしょう。
スタンダードは今、エキサイティングな変化を迎えようとしています。中でも大きいのは、間もなくやってくる『ファウンデーションズ』の実装でしょう。このセットは少なくとも2029年までスタンダードで使用できるため、あらゆるプレイヤーにとってこのフォーマットの新たな屋台骨となるでしょう。このセットはまた、新規プレイヤーがマジックの魅力である奥深さをたっぷり味わえるように設計されています。
MTGアリーナにとっては、新規プレイヤーへのアプローチ方法を調整する絶好の機会となるでしょう。そこで今後6か月以上にわたり、私たちは新規プレイヤー向けコンテンツを『ファウンデーションズ』を中心にしたものにしていきます。そのためこれからMTGアリーナを始めた新規プレイヤーは、デフォルトのプレイ・モードとしてスタンダードへ向かうことになるでしょう。
スタンダードは最近、久しぶりのローテーションを迎えました。3年間隔になってから初めてのローテーションです。全体的に見て、特にBO3の現在の環境は多様性にあふれた健全なものになっています。しかしながら、私たちは先日、BO1限定で《残響の力線》を禁止するという措置を取りました。これはスタンダードの目標に反することであるため、決して頻繁に行う措置ではありません。スタンダードの目標は、この項のはじめに述べた通りテーブルトップ準拠のマジック体験を楽しみたいプレイヤーのためのフォーマットであることです。今回のような禁止措置は、その体験を損なうものに感じられるかもしれません。
しかしながら、オンラインのプレイヤーはBO1でのプレイを明確に好んでいます。私たちはすべてのフォーマットに同じ選択肢をご用意していますが、どのフォーマットにおいてもほとんどのプレイヤーがBO1を好んでプレイしているというデータが出ています。そのため、ときに歩み寄りが必要になるのです。今回のケースでは、BO1で《残響の力線》を禁止することでBO1モードがBO3のプレイ体験に近づくと私たちは考えています。BO3では今のところ、《残響の力線》の存在感は大きくないのです。
今後も同じような状況に遭遇する可能性はあると私たちは見ています。スタンダードのカードプールが大きくなれば、おそらくこういうことが起こりやすくなるでしょう。いずれにしても、私たちはMTGアリーナのスタンダードを可能な限りテーブルトップ準拠のマジック体験を楽しめるフォーマットとして維持していくつもりです。
デジタル・フォーマット
デジタル・フォーマットのプレイ・パターンは、テーブルトップのパターンとは異なります。一例を挙げるなら、対面で毎週50ゲームもマジックをプレイするプレイヤーは比較的少ないでしょう。それがMTGアリーナではごく当たり前のことなのです。プレイ回数の多さにより、私たちの優先順位も少々変わります。例えばフォーマットの多様性がより重視されるため対戦相手も多彩であり、どのデッキを使うかの選択が大切になるでしょう。
これが、私たちがデジタル・フォーマットのバランスを再調整のようなテーブルトップとは異なる方法で取る理由の1つです。デジタル・フォーマットではカードを1枚禁止するだけで少なくとも1つのデッキが環境から消えるのが常であり、ときには複数のデッキが消え去ってしまいます。その点再調整は、うまくいけばそのカードやアーキタイプを楽しめるまま、適切なパワーレベルに収めることができるのです。
アルケミー
アルケミーはローテーションありのデジタル・フォーマットであり、流動的で多様性に満ちたメタゲームをご提供できるよう作られています。このフォーマットのターゲットは毎週多くのゲームをプレイしているプレイヤーの皆さまであるため、多様性が特に大切です。
全体的に見て、アルケミーの多様性はよく保たれています。この1年、スタンダードの上位デッキはかなり固定されていましたが、アルケミーで一番人気のデッキは3~4か月おきに変わってきました。
現在のアルケミーはスタンダードと同様に「赤単」が強力で、少々強すぎる恐れがあるため近いうちに変更を行うつもりです。その点を除けば、プレイヤーの皆さんが使用しているデッキは多様性にあふれたものになっています。BO1のアルケミーでは、上位3デッキの使用率が12%ほどに収まっています。スタンダードは上位3デッキが24%を占めるため、その半分ほどです。
今年のアルケミーの大きな話題といえば、「強奪」の登場でしょう。私たちのデータでは「強奪」デッキが強すぎると示されていませんが、少々人気を集めすぎているきらいがあります。とはいえ今のところは少し落ち着いており、全体的に見て、私たちは「強奪」の立ち位置に満足しています。「強奪」はテーマ性の高い楽しいデッキを作る面白いメカニズムであり、多くのプレイヤーに楽しんでいただけるものでありながら、勝率は適切な数字を維持しています。まさに、新セットのメカニズムで私たちが目指す状況そのものです。1枚くらいは上方に調整しすぎたカードがあるかもしれませんが、このメカニズム自体はうまく機能していると私たちは考えています。
最後になりますが、『ファウンデーションズ』のリリースにともない新規プレイヤー向けのフォーマットがスタンダードへ移ることを受けて、アルケミーは元々意図していた多様性と変化を愛するデジタル重視のプレイヤーに焦点を当てていくつもりです。「ゲーム更新情報」の記事でもお伝えしている通り、私たちにはまだ、MTGアリーナでできることを広げるために舞台裏でやらなければならない仕事があります。その中でアルケミーの領域に取り組めるチャンスを楽しみにしています。
ヒストリック
ローテーションなしのデジタル・フォーマットの主軸を担うヒストリックでは、可能な限り幅広くデッキのバランスを保ち、プレイヤーの皆さんに楽しい選択肢をご提供することに重点を置いています。他のデジタル・フォーマットと同様に数多くプレイするプレイヤー向けのフォーマットであるため、多様性が重要になります。
7月の『モダンホライゾン3』リリースによりヒストリック環境は激変し、わずかながらバランスと多様性が損なわれました。当初の「ボロス・エネルギー」はこのフォーマットでは明らかに強すぎたため、またたく間に大きな比率を占めるようになりました。いくつかのカードの再調整を経た結果に、私たちは非常に満足しています。再調整後の「ボロス・エネルギー」は、このフォーマットで特に強力で人気を集めるデッキの1つであり続けながらも、環境を支配するのではなく、「緑単エルフ」や「イゼット・ウィザード」、それから「白単」のバリエーションといった他の強力なデッキと肩を並べるようになっています。
そのデッキを使い続けられるだけの強さを残しながらも、適切なレベルに収まっているのは、まさに再調整で私たちが目指す状況そのものです。常にその目標を達成できているわけではありませんが、毎回多くのことを学んでいます。
ヒストリックはMTGアリーナで最も多様性に満ちたフォーマットであり、現在は特に多彩になっています。上位3デッキのメタゲームに占める割合は5%を下回り、プレイヤーの皆さんが実にさまざまなデッキをプレイしていることが示されています。のちに加わる『パイオニアマスターズ』も、大きな混乱を起こさずこのフォーマットに寄与すると私たちは期待してます。
タイムレス
タイムレスは、可能な限り幅広くカードを使えることを優先しているフォーマットであり、MTGアリーナで最も多くのカードを使ってマジックを楽しめます。現在、このフォーマットではMTGアリーナに実装されたすべてのカードを使用でき、制限カードもわずか3枚です。
ヒストリックと同様に、タイムレスも『モダンホライゾン3』の導入により環境が激変しましたが、皆さんの想定とは異なる形になりました。『モダンホライゾン3』のリリース前には、タイムレスが「ラクドス・スキャム」とマナなしで唱えられるエレメンタルに踏み荒らされると誰もが心配していました。しかし蓋を開けてみると、一見無害そうな1マナの猫や「エネルギー」にあふれた仲間たちが、タイムレスで最も人気を集めていた「実物提示教育」の競争相手となったのです。最終的に、タイムレスにおける『モダンホライゾン3』は非常に健全で、幅広く多種多様なメタゲームを牽引しています。ガードレールのほとんどないフォーマットにおいてこれだけデッキの幅が広いというのは、目を瞠るものがあります。
ブロール
MTGアリーナの最年少フォーマットではなくなったブロールですが、いまだにかなりの速度で発展を続けています。プレイ比率の面では、昨年はアルケミーと同程度でしたが現在はヒストリックのすぐ下まで迫っています。各フォーマットのプレイ比率はここしばらく動きがなかったのですが、来年はブロールがヒストリックを追い抜いても驚くことではないでしょう。
ブロールは統率者戦スタイルのカジュアルなフォーマットであり、プレイヤーの皆さんに可能な限り幅広い統率者の選択肢をご用意することが目標です。どの統率者を選んでも公平で面白いマッチを楽しめるようにしたいと私たちは思っています。
どの統率者を選んでも公平なマッチを実現するには、皆さんのデッキを見てその強さを判別し、同じくらいの強さのデッキと素早くマッチングする必要があります。それは非常に困難であり、いくらかの妥協も必要になります。私たちは常に、プロセスの改善に取り組んでいます。特に新たなカードの登場やメタゲームの変化への対応の速さには力を入れています。とはいえ全体的に見て、現行システムの働きに私たちは非常に満足しています。現行システムはどの統率者でもほとんどの場面で公平で楽しいマッチを素早く見つけています。
ブロールは発展を続けているフォーマットであるため、私たちは引き続き、このフォーマットを楽しんでいるプレイヤーの皆さんやこれから始めたいと思っているプレイヤーの皆さんへより良いサポートをお届けできる方法を探求し続けます。構築済みデッキの販売についても、肯定的なデータが出ています。他にもブロール・プレイヤーの皆さんのためのコンテンツを作る機会は多々あると私たちは考えています。
まとめ
MTGアリーナの核となる目標は「誰もがどこでも気軽にマジックを楽しめる」ことです(詳しくは「ゲーム更新情報」記事をご覧ください)。「誰もが」と言っている通り、私たちは本当に多種多様なプレイヤーの皆さんをサポートしたいと思っています。高い目標であることは間違いありません。私たちは可能な限り多くのプレイヤーをサポートするべく、主要フォーマットの拡大に取り組んできました。その一方で、フォーマットやカードの追加を望むプレイヤーが常にいることも把握しています。現在のフォーマットの広がりについては、とりわけ来年やってくる新たなコンテンツを含めれば多様な選択肢をお届けできる状態にあると私たちは考えています。それでも私たちは、より多くの方により多くの場所でマジックを楽しんでいただける方法を探し続けていきます。