水源、ニヴ=ミゼット

更新日 Feature on 2006年 1月 11日

By Matt Cavotta

Matt has worn many wizard hats in the 18 years he has worked on Magic—art-mage, logomancer, lightning bard, and (of course) Planeswalker.

Translated by Yoshiya Shindo

 スコット・ジョンズが「マジックの味わい」のために割り当てたギルドパクトのカードを見たとき、僕はすぐに興奮すると同時に葛藤に陥った。《火想者ニヴ=ミゼット/ Niv-Mizzet, the Firemind》は思ったとおりの実にかっこいいカードだ――でも、イゼットについて触れすぎないようにしながらこのカードを掘り下げるって、いったいどうすればいいんだろう? そりゃ、このドラゴン率いる軍団のイメージについて洗いざらいしゃべりたいけど、いずれ書くはずのイゼット関連のコラムからあまり引っ張り過ぎないようにもしたい。で、荘厳たるイゼットの流儀にのっとり、注意とかそんなものは投げ捨てて全力で行ってみる事にしたね! イゼットギルドに関するコラムをどうするかは、まあその時に考えることにするよ(イゼットってのは、面白くて派手なことをやるためには責任なんか二の次だってので有名だしね!)。まずはその面白くて派手なやつをお目にかけよう。

 すごいだろう! イラストも素晴らしいし、からかわれているような謎のフレイバー・テキストなんかイメージ重視プレイヤーの大好物だし、巨体のドラゴンは派手好きプレイヤーの愛するところで、イカレたコンボとしての強さを秘めていそうなところは個性派プレイヤーを掴んで離さないし、トーナメントプレイヤーの求める凶悪なカードドローとコントロール要素も持っている。いやもう、その通りだろう。派手好きプレイヤーも個性派プレイヤーもトーナメントプレイヤーも《火想者ニヴ=ミゼット/ Niv-Mizzet, the Firemind》についての意見をこぞって述べたがるだろうね。で、今回はその中から、《火想者ニヴ=ミゼット/ Niv-Mizzet, the Firemind》が我々飢えている数多くのイメージ重視プレイヤーの軍勢に与えてくれるものを見ていこうと思う。

 ところで、君たちの中にはどうして僕が今回のコラムのタイトルに「水源、ニヴ=ミゼット」なんてのを選んだのか不思議に思っている人もいるだろうね。これはかなり気の利いた偶然なんだ。当初は純粋に文字通りの「連綿と続いている物事の始まり。起こり。起源。」とか言う意味で使うつもりだったのさ。ところがそこで、僕はこの“水源”って単語がアイン・ランドの同盟の小説と太いつながりを持っていることに気がついたんだ。気の利いた点ってのは、その小説の主人公が、自分の考えに夢中になっちゃう天才だってことだ――まさしくニヴ=ミゼットそのものじゃないか!

 「で、ニヴ=ミゼットが『連綿と続いている物事の始まり。起こり。起源。』ってどういうこと?」 そりゃ色々さ……どこから始めようか。「起源」から行くかな。ニヴ=ミゼットは、イゼットギルドのパルンズ、すなわち一万年前にギルドパクトに署名をしたギルドの主導者そのものだ。でも、僕が“水源”って言葉を使って言いたかったのはそういうことじゃない。イゼットギルドの主導者に関してちょっと説明した方がいいだろうね。

 ニヴ=ミゼットはラヴニカの次元で最も頭のいい存在だ。言っとくけど、だからって彼がセンター試験で二番手よりも一点多い点数を取ってるってわけじゃないよ。彼はあんまり頭が良すぎて、例えば、もちろんナンバーツーの助けを借りてだけど、彼の頭脳のパターンをコンピューターでスキャンしてプログラムにして回したら、彼だけが完璧で他はゼロって結果になるだろうけど、その瞬間ファンが止まって、オーバーヒートして、コンピューターは火だるまになるのさ。でも、それですら彼にしてみれば試験担当がマニュアルを開くよりも短い時間でやっちゃうだろうね。で、彼は周りを居心地いい状態に変えるために、そこらにいるスエットパンツ姿のヤツを片っ端から焼き尽くして、その上で、試験をもっとうまくやってしまうんだ。馬鹿なやつだね(それと、彼は心を読むことができる――だからスエットなんかはいてる馬鹿どもの考えも理解できる。理解することはできる――しないけど。バーベキューを止める理由なんか無いさ!)。

 そんなわけで、ニヴ=ミゼットはここ一万年の間、だらだらと残りの生き物どもの貧弱な精神と付き合いつつ、愚考と炎で突飛な行動をとっては退屈を紛らせていた。思い付きが実態をなすのは、彼のギルドの中だった。ラヴニカの天才やら頭脳主義者やらが彼の元に集まり、彼を感動させようと必死になっている(少なくとも退屈させないように。そんなことになったら丸焼けだからね)。そして、他の誰よりも高みにいる頭とか肩とか羽とか尻尾とかの持ち主はどうなるんだろうか? そりゃ、あっという間に自己中心的な奴になっちゃうさ。

 で、話が“水源”に戻ってくるんだな。自己中心的で、気まぐれで、うぬぼれが強くて、そんなこんなひっくるめたドラゴンは、自分から生まれた彼のギルドとそれを飾り立てるものが、すべて全知全能の完璧さのための道しるべとなるようにしたんだ。それじゃ、この火を噴く水源からどんなものが噴き出してきたのか見てみることにしよう。

 そもそも、ニヴ=ミゼット的なものの一つは特に注目しなくても目に入ってくるだろう。“イゼット”って名前だ。この名前自身が、ドラゴン本人からのお下がりなんだね。もちろん。ドラゴンは、この名前をつけることで誰がこのギルドを動かしているのかを皆にはっきりさせたかったし、そのためには自分の名前ぐらいぴったりしたものは無いんだ。

 《イゼットの印鑑/ Izzet Signet》のフレイバー・テキストもそれをよく表している。ドラゴンの虚栄心は単語だけに止まらないのさ。

 イゼットの印鑑はしばしばデザインされ直され、その度にニヴ=ミゼットの虚栄に満ちた肖像に近づいていく。

 おっとっと、ひょっとしてプレビューカードを出しすぎちゃった? 面倒なことになりそうだなあ。でも、ここまで来たんだから、止められないよね! 面倒は後で考えることにしよう! こっちを見て欲しい。

 オーケー、僕をクビにするつもりは無いようだ。でもこんな感じで暴露し続けるのはかまわないみたいだね。ここで明かされたのは、ドラゴンの名前を関したカードがもう一枚あるってことだ。《火想者の発動/Invoke the Firemind》だね。僕はこのカードのメカニズムも話をしたかったんだけど、上の階の人間が言うにはそれはやりすぎだそうだ。だからちょっとだけ。このカードのメカニズムも、やっぱりドラゴンから生まれたものだ。これが彼にとって名刺代わりの呪文ってことになるなら、ニヴ=ミゼットが自分の称号を与えたのも謎じゃないよね。

 火想者に合わせられる者にとっては、知識も炎も違いは無い。

 “火想者”という単語は、ニヴ=ミゼットや彼の手下により意識を分け与えられた天才のことも言うんだ。

 これはイゼットの本拠地の土地についても同じことが言える。《火想者の高巣、ニヴィックス/ Aerie of the Firemind》だ。名前もフレイバー・テキストも、すべてはドラゴンのことだ。カードのメカニズム――いやいや、こいつは秘中の秘だ。詳しくはプレリリースまで待って欲しいね(楽しみを後に回すなんてあまりにもイゼットっぽくないけど、止めるとこは止めなきゃ)。

 ニヴィックスはドラゴンのプライドにとって二重の意味がある。そもそも“ニヴィックス”がニヴ=ミゼットから出ているし、さらに“火想者”にも触れてるんだから。驚くべきことじゃないけど、ここは彼が人生のほとんどの場所を過ごし、眠ったり意見を求めに来た馬鹿を火だるまにしたりする場所だ。

 ニヴ=ミゼットの才能と虚栄は、ニヴィックスの鏡の間全体に映りわたっている。

 内装は全て鏡だ。侵入者の目をくらますため? かもしれない。唯一完璧なものを見つめ、身づくろいをするため? そっちはあまり関係ないかもね。

 ギルドの主導者であるドラゴンが空中で炎を撒き散らす偉大なる様を全力で模そうとしているイゼットの魔術師の面々のことをなんていうか知ってるかい? もちろん、“竜装者”さ。そりゃニヴ=ミゼットの高みにある姿から言えば、竜装者はしょぼい失敗作さ。でも、彼はやつらの努力と結果を評価している。だから彼らの事を“竜装者”って呼んでいるんだ。

遥か昔、ニヴ=ミゼットがギルドパクトの文章を記憶から一滴の水に刻んでいる最中に、彼は鍛えることができ、軽く、耐火性のある金属を発明した。彼はこの画期的な金属を“ミジウム”と命名したんだ。もちろん、ニヴ=ミゼットからつけられてるね。その後彼はギルドパクトの記録を終えたんだけど、その滴を蒸発させてしまうと、同じことをムカデの触覚にやりはじめた。これ全部が一分半の間の出来事だ。

 ミジウムは、他のギルドも含めたラヴニカ全体にとって有益な資源となった。ニヴ=ミゼットにとって、彼の才能を他のギルドの間抜けな面々に分け与えない理由は無かったからね。彼らの限界のあるボキャブラリーの中に、彼の名前なり創造物なりを入れておくなんて当然のことだろう?

 さて、ここまでくれば、僕の“水源”って言葉に意味があるのもわかってもらえるだろう。文句を言ってくるとは思わないし、そうだとしても――今回の追加のプレビューはなかなかのものだったろう。今回はここまでにしておこうと思う。イゼットに関する美味しいところは少し取っておかないとね。でも、君たちを置いてきぼりにする前に、今回のカード《火想者ニヴ=ミゼット/ Niv-Mizzet, the Firemind》のフレイバー・テキストに少し光りを当てておこう。

(Z–)90º – (E–N²W)90ºt = 1

 こいつはいったい何だろう!? 僕がいえるのはこれだけだ。これは単なるでたらめ文じゃないよ。これはニヴ=ミゼットの口から出る最初で最後の言葉だ――イゼット的な考えがあれば一発で解読できる、クイズっぽい類の文なのさ。

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