2マナへの歩み

更新日 Daily Deck on 2012年 4月 13日

By Zac Hill

 君はある日アヴァシンの帰還に2マナのプレインズウォーカーを作りたいと決めたと言いだした。

「いや、仮にって話だよ。」

 それにはどうするといいだろう?

 まずはブロックを振り返ってみよう。イニストラードは黒のプレインズウォーカー《ヴェールのリリアナ》と、(時折月が出ればすぐに黒くなる)緑のプレインズウォーカー《情け知らずのガラク》がいる。そして闇の隆盛ではプレイパターン的には"白"の系統に入る白黒のプレインズウォーカー《イニストラードの君主、ソリン》がいる。そうなると青か赤のプレインズウォーカーを作りたくなってくるだろう。どちらの選択もとても合理的に思えるが、君ならどちらを選ぶだろうか?

 おそらく、少なくともスタンダードに衝撃を与えるようなプレインズウォーカーにしたいだろう。だが青を見てみると2マナ圏には既に悪ガキたちが幅を利かせている。


 この2マナ圏に5枚目のキーカードを加えることは明らかにやり過ぎなので、まだ開拓の余地がある赤の2マナ圏へと方針を転換することを決めた。

 マジックの歴史上、ほとんどの赤デッキの重要な部分を担っている赤の2マナのカードで、新プレインズウォーカーがリリースされるまさにその時点でもスタンダードで適正なカード、それは:


 その通り。古き良き「ちょっとだけ強化された3点ダメージ」だ。基本的な要求。従来型通り。全く特別ではない。マジックが20年近くも続いてきた秘訣の一つは、スタンダードで使えるカードのパワーレベルをほぼ一定に保ってきたことだ。時折そうでないこともあるが、特定のマナ・コストでプレイ可能になる呪文は限られていて、それを大幅に上回った強力なカードは印刷しないというのがポイントだ。よって、あなたの2マナの赤のプレインズウォーカーは《火葬》と同程度のカードである必要がある。

 OK。わかった。全く難しくないと思っただろ?

 結果的にはその通りだ。ただ問題は2つの点を強いられることだ。それは、複雑さと、いい言葉が見つからないが「壮大さ」とでも言うべきものだ。

 複雑さへの取り組みは単純で、与えられたカードに選択肢を増やせばよいのだが、注目すべき、より難しい点はパワーレベルだ。の2/1は常にの2/1として扱われ、そして、それはいかなる環境制限下においてもその評価は容易だ。だが、「, :対象のクリーチャー1体をタップする。」という能力を持った1/1や、死亡したときに1/1スピリットになる 1/1はどうだろうか? それらはパワーレベル的には同じ水準だが、あとの2つは評価が非常に難しく、それらが導入された時の特定のメタゲーム内部への影響や関わり合いに左右される。となると、1つの能力とパワーとタフネスのセットの代わりに、適切な上限も下限も前例にない、3種の忠誠度コストとそれに応じた3つの能力と、初期の忠誠度の組み合わせを考えることが複雑な問題であることは想像に難くない。まして、それが正確に環境に対してどう機能するかを見極めるのは非常に非常に難しい。

絡み根の霊》 アート: Jason Chan

 「壮大さ」の問題は簡単には定義できない。マジックのほとんどの時間において2マナの呪文というのは、実質的には平凡だ。それらは間を埋めてデッキの一貫性を補う働きをする。それらはあなたのデッキのベストカードとなりえる――例として《差し戻し/Remand》、《根の壁/Wall of Roots》、《絡み根の霊》、《火+氷/Fire // Ice》が考えられる――が、あなたのゲームの勝利には直結していない。実際に、フォーマットを明らかに決定づける2マナの呪文――《ラノワールの使者ロフェロス/Rofellos》、《石鍛冶の神秘家》、《闇の腹心/Dark Confidant》、《苦花》を思い出してくれ――は強力過ぎだ。なので2マナカードが満たすべきパワーレベルのターゲットは、本質的に、ブースタードラフトで最初にピックするコモンのような役割だ。私はよく、それらを「安定」と形容する。

 残念なことに、プレインズウォーカーたちは基本的に「安定」とは対極に位置する。それらは記憶に残り、心を揺さぶり、劇的で、素晴らしくなくてはならない。それらは物語を創り、2つとないゲームのプレイをもたらし、特別なものでなくてはならない。それらは戦場に降臨することにより物語を改変し、その存在を布告することに意義がなくてはならない。端的に言えば、2マナらしい呪文を欲しいとは思っていない。

 もしあなたが2マナのプレインズウォーカーを作る仕事がしたいなら、あなたはそれがヒットしたときに明らかに強力過ぎにならないよう、適切に表現する方法に挑戦し、その方法を理解しなければならない。あなたは壮大だという「感じ」を、壮大なプレイパターンを早めることなく描かなければならない。

これが我々の出した答えだ。:


 ご覧のとおり、上述の問題に対して2つの基本的な方法を用いた。(1)その力をある種のデッキのみに利益をもたらすように制限し、比較的影響の狭いカードにし、(2)《火葬》のように直ちに利益を得られるものではないが、時間をかければ《突然の衝撃》や《暴動》になるカードにした。言い換えると、時間をかければ大いなるパワーが解放されるということだ。

〈悪鬼の血脈、ティボルト〉 アート: Peter Mohrbacher

 それぞれの構成パーツを順番にチェックして、こいつが何をしてくれるか見ていってみよう。


 2マナ圏のカードは《火葬》程度に抑えられるべきだということは既に話した。必要なマナをでなくにすることにより、カードパワーをもっと大きくしてもよくなる。これは2マナ圏の橋渡しをティボルトに任せるために重要なことだ。


 わかってる。君はこう言うだろう。忠誠度2は少ない。でも、すぐに3にするだろ。序盤に出すから生き延びるには十分じゃないか。その上、君は赤だ――邪魔する奴らをこんがり焼くのが楽しいんじゃないか!

 真面目な話として、プレインズウォーカーの「隠れた」利点の一つは、ライフを得る効果の代わりとして忠誠度が機能することだ。なぜならあなたはそれを盤面から速やかに排除しようとするからだ。――そしてしばしばカードに書いている以上の恩恵を受ける、なぜならほとんどのパーマネントは1回でちょうどその数字のダメージを与えられず、大まかな数字となるからだ。したがってコストの小さいプレインズウォーカーに高い忠誠度を置くことはできず、それをしてしまうと、それらはミニ《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch》として機能し始め、テキスト以外の追加効果を生み出してしまうのだ。


 我々は今までに2つの3マナ・プレインズウォーカーを印刷した。それは《ジェイス・ベレレン》と《ヴェールのリリアナ》だ。いずれの場合も、それらの「+」能力はカードアドバンテージの観点で中立にはなっているが、適切な構築のデッキであればその釣りあいは有利へと傾く。ティボルトの場合も、似たような仕組みだ。基本的なレベルで言えば、ティボルトの能力を起動することにより平均パワーレベルの手札を、それ以上の平均パワーレベルにしようとし、その結果、あなたの手札の総合的な質を「アップグレード」させる。そして、潜在的な能力の上限は明らかだ。もしあなたの手札に単一の基本土地しかないとしても、ティボルトの能力が起動できることによって実質カード半枚あるようなものになる。さらに盤上にプレインズウォーカーがあれば、それは馬鹿にならない。

 明らかに第1段階の操作ではないだろう。もし、あなたのデッキがフラッシュバック・カードが一杯入っているものであったり、他の何らかの理由(《堀葬の儀式》? 《炎の中の過去》??)があるものであれば、それらの呪文が手札にあるか墓地にあるかはさほど気にする必要がない。このシチュエーションでは、基本的にティボルトは毎ターンあなたにカードをもたらし、速度を生み出し、彼のより強力な能力に達する。すなわち、


 だ。もし1回でもティボルトの2番目の能力を起動できれば、明らかに素晴らしい恩恵を得られる。つまるところは《突然の衝撃》、《嘘か真か》のようなカードを引く呪文や《激動/Upheaval》のようなすべてを手札へ戻すような効果に支配された時期にトーナメントで好まれた、コストが4マナの呪文だ。その上、プレインズウォーカーを除去するのに困るようなデッキでは、この能力がきわめて有効に機能することになる。ティボルトが睨みを利かせているうちは、《熟慮》、《禁忌の錬金術》、《聖別されたスフィンクス》といったドロー呪文満載の青・黒コントロール・デッキにしたくないだろう。ここで、レガシーでよく使われる、各プレイヤーにそれぞれ4点のダメージを与えるカード《火炎の裂け目/Flame Rift》を取り上げてみよう。ティボルト4枚をサイドアウトしてこれに入れ替えると、特に相手が手札を空にするように仕向けた後などは効果てきめんだ。もちろん、《火炎の裂け目/Flame Rift》が使用できるデッキは限られるが、その限られるデッキには「とても使用範囲が狭いが極めて強力」なティボルトの性質が活かされるのだ。そして、これと組み合わせて使うことで、さらに強力になることが容易に想像できるカードが・・・ちょっと待ってくれ、電話だ。

「もしもし、トリック?(訳注:トリック/TrickはDailyMTGの編集者)

 ああ、うん。うまく行ってるよ。

 まったくその通り。くわいのベーコン包みを試してみなって。絶対すごいから。

 え、なんだって?

 そのカードは非公開だ? え?

 ああ。やばいな。話はここまでにしとくよ、兄弟。

 ありがとう。いや、いつでも。うん。

 お前もな。

 またな。」

 あー、なので対戦相手の手札をいっぱいにさせるために決していかなるどんなメカニズムも使わないでくれ。違う。そうじゃないな。何を話してたんだっけ。一体なんでそんなことを言い出したんだ?


 真の化け物がここにいた。《暴動》?2マナで??

 明らかにプレインズウォーカーの最終奥義は大打撃になるようにデザインされていて、上の一文は段違いだ。さらに、対戦相手がクリーチャーを4体も出していたとしたら、ティボルトを攻撃してクリーチャーの反逆を防いでくるに違いないとは思わないか?

 それは適正な懸念だ、だが再びプレインズウォーカーの「強力だが限られている」という要素がお目見えする。 ひょっとするとあなたは防御的にプレイするかもしれない。また、ひょっとすると死にそうなターンに《濃霧》のような効果を使うかもしれない。または――より可能性が高い――ひょっとするとタイタンデッキと対戦したとき、極めて早く彼を出し、《墓所のタイタン》が間に合わないような状況を作り上げるかも知れない。いずれにしろこれを見てくれ。これはまさに究極奥義の名にふさわしく強力で、2ターン目から盤上にいた場合、それは通常8マナで与えられる価値に比べ途方もなく大きな潜在能力を生み出す。そして嵐はそれだけに収まらず、こいつは多人数戦で大災害を引き起こす・・・。


 これで完成だ。ウィザーズに入ってここ3年の中で、2マナのプレインズウォーカーを作ることは最も難しい挑戦のひとつだったが、我々の努力によって生み出せたことに喜んでいる。加えて――彼がハーフデビルであることをうまく示せた。

 しかしこれは私にとってのサイドストーリーに過ぎない。君たちはティボルトをどういう風に使う予定だい? ぜひフォーラムやTwitterやメールで僕に教えてくれ!

 来週は対策するカードについてだ。

Zac (@zdch)

(Tr. Shin'ichiro Tachibana / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)



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