価値を見出す
こういった状況を想像してみよう。
スタンダードの緑を中心としたミッドレンジ・デッキ同士の対戦で、今はにらみ合いになっているところだ。こちらのデッキは白黒緑で、相手のデッキもほぼ同じ内容に思える。
お互いに展開したものの一進一退の攻防を繰り返して長期戦となり、相打ちや対処によってどちらも大量のリソース(訳注1)を消費した。どちらも手札は無く、どちらもライフは6点で、お互いに大量の基本土地が並んでいる。
(訳注1:リソース/資源。ゲームの中で他の要素のために消費・交換できるもの)
こちらのターン、ライブラリーからカードを1枚引く。カードを見てみると、こいつが見返してきた。
《改革派の結集者》の能力であなたの墓地から戦場に出せるカードの中で最も魅力的なのは、強化された状態で出せる《森の代言者》だろう。どうしようか?
今回はこれを題材にしてみよう。
価値の発見
《改革派の結集者》は、そこからすべての「価値」を得るためには他の条件を満たさなければならない、という種類のカードだ。
確かに、条件を満たさずとも3/2ではあるが、ただの3/2を構築環境のデッキに入れるつもりはないだろう。紛争の能力を当てにしての採用だ。
価値が減じる例は、マジックのあらゆるところでいくらでも見受けられる。昂揚していない《墓後家蜘蛛、イシュカナ》。クリーチャー1体に使う《血のやりとり》。手札から《不屈の追跡者》を出せるようになる前に手掛かり・トークンを使ってしまう、それだけでも同じことだ。それは真価を発揮できるようになる前にそのカードを使う選択をした、ということになる。
そうだとしても、それは時に正しい選択となる! それはマーシャル・サトクリフ/Marshall Sutcliffeの心(と、私の心)を砕くかもしれないが、価値を最大限に高めるまで待つことが常に正しいプレイになるとは限らないんだ。
これを忘れないでほしい。マジックの競技世界において本当に意味がある絶対の価値――絶対の優位――とは、カードをより多く引くことやテンポを取ることではなく、相手の手札や、何で対処すべきか、ゲームの流れ、などを読み切ることでもない。ゲームに勝つこと、それだけだ。他のすべては手段に過ぎない。勝利を得たいのならば、ゲームに勝つしかない。
私は《紅蓮地獄》で自分のクリーチャー4体を巻き込み、1体の《群れネズミ》でチャンプブロック(訳注2)し、自分の呪文を打ち消してゲームに勝ったことがある。勝利に繋がることがあるなら、(もちろん、ルールで認められている範囲で)それを実行すべきだ。
(訳注2:チャンプブロック/時間稼ぎのために、やられることが確定していながら行うブロック)
よし。では、今扱っている問題に取り掛かろう。すぐに《改革派の結集者》を唱えて、対戦相手のライフを脅かすべきだろうか? それとも、巨大な《森の代言者》を戦線へと復帰させるために、紛争が使えるようになるまで待つべきだろうか?
こういった状況下において確認すべきこととして、主に3つの要素が挙げられると私は考えている。それぞれを見ていこう!
リスクとリターン
今回用意したような状況において私がまず確認したいのは、リスクとリターンがどの程度かということだ。互いのライフは6点。それぞれの選択肢におけるリスクは何だろうか?
《改革派の結集者》を出す場合、対戦相手が2ターン連続で土地を引けばゲームに勝てる、というリターンがある――まったく簡単だ。
一度3点のダメージを与えた後に、対戦相手がクリーチャーを引いたとしよう。それでもまだこの選択肢は功を奏している。相手はそれを手札に温存できない。同様の状況にあるとすれば、対戦相手は紛争能力を利用するために《改革派の結集者》を残しておく、という選択が取れないんだ。ブロックに回すために出すしかない。
しかし一方でリスクもある。《改革派の結集者》で乗り越えられないブロッカーが出てきたり、クリーチャー除去呪文を引かれた場合、将来得られるはずだった《森の代言者》を「投げ捨てた」も同然となる。そしてその場合は、《森の代言者》を取り戻してさえいれば、と思わされることになるだろう。もし対戦相手が《森の代言者》を引いて出してきたとすれば、焦って出した《改革派の結集者》は、ただ自分の首を絞めるだけの足手まといになってしまうだろう!
続けて、コインの裏側……もう一方の選択肢を見てみよう。
良い面についてだが、《森の代言者》を手に入れることで得られる利益は莫大だ。試合展開がこれまでと同様に一進一退の攻防となるようなら、どこかで《改革派の結集者》によって《森の代言者》を戦場に戻せる可能性は十分にある。この長期戦において起こりうることから考えれば、ほぼ確実だろう。
悪い面は、もちろん、紛争の能力を発生させる何かを引ける保証がない、というところだ。次からの数ターン、土地を引き続けるかもしれない。
さらに問題なのは、こちらのライフも残り少ないことだ――もし対戦相手が脅威となるクリーチャーを引いてきた場合は、ブロックするために結局《改革派の結集者》を出さざるを得ないかもしれない。それは劣勢に陥るということだ。喜んで相打ちを取ろうとしたくても、その前に対戦相手は除去呪文を引いてこちらにブロックをさせない、といったことが起こりうる。
このような状況では、取れる選択肢それぞれについて、リスクとリターンを推し量ってみよう。ゲームの勝利に一番近いものは何だろうか?
この手法を用いることで、思ったよりはっきりとした答えが出ることがある。時に、それは「ブロックのために今《墓後家蜘蛛、イシュカナ》を出さなければ、負けが決まってしまう」というような単純なものだ。また、あるクリーチャー1体に3体と同等の価値があるなら、喜んで《血のやりとり》を使うだろう――こちらに《血のやりとり》があると考えて、相手が2体目以降を温存しているなら、なおさらだね。
よし、それぞれの道のりについて、利点と欠点を確認できたはずだ。ではそれぞれの状況の背景についてはどうだろうか?
自分の状況の背景
ここから情報に基づいて決定するには、自分のデッキと戦場の状態からわかることが何かを考えなければならない。
確認の時間を取ろう。自分の墓地には何が落ちているか。使ったものは何か、そしてまだデッキに残っているものは何かを考えよう。
この状況では基本的に、紛争を誘発させられる何かを引き込む可能性がほとんどないのであれば、《改革派の結集者》を唱えるだろう。仮にデッキの残りが30枚で、その手段が3枚しか残っていないとすれば、ゲームがもっと長引くという見込みでもない限り、私はその10%のチャンスには賭けないだろう。
逆もまた真なりだ。紛争できる可能性が極めて高いならば、《改革派の結集者》を温存するほうが妥当と言える。
デッキに残っている土地は、あと何枚だろうか?
ほかに引くことができる脅威には、何があるだろうか?
対戦相手がこちらを排除する前にもう3点を与えればいいだけ、という状況に持ち込めるかもしれない。簡単かつ確実に3点を与えられる火力呪文や速攻持ちのクリーチャーなどは、デッキに残っているだろうか? それとも、クリーチャーをもっと引くことに頼るしかないだろうか?
これらは、自分のデッキを確認するための質問の一部だ。
当然のことだが、ライフの数が違えば、同じ状況であっても話が違ってくるだろう。対戦相手のライフがすでに3であれば、一撃で倒せるのだから絶対に脅威を展開する。20であれば、《改革派の結集者》は温存するだろう。
状況の背景について考えるのであれば……
相手の状況の背景
……考えなければならないのは、自分のデッキについてだけではない。相手のデッキについてもだ!
対戦相手が何を引く可能性があるか、分かるだろうか? こういう時、私は相手の墓地に何があるかや、この対戦で相手が使ってきたカードについて、振り返って確認することが多い。
引かれたらそのまま負けてしまうようなカードは、対戦相手のデッキに残っているだろうか? 例えば、《死の宿敵、ソリン》のようなプレインズウォーカーが入っていることを知っているなら、それを引かれるリスクを考慮するだろう。つまり、《改革派の結集者》を攻撃に向かわせることで、速やかにゲームを終わらせるということだ。(対照的に、相手のデッキに脅威が少ないとすれば、もう少しじっくり展開しても問題ないだろう。)
相手のデッキに手札破壊は入っているだろうか? もし入っているなら、手札にカードを保持しておくのは良くない。
この対戦で相手が使ったカードには、どんなものがあっただろうか? まだ使っていないものは? 相手のデッキに除去が多いはずなのに、まだ1枚しか使われていなければ、除去を引かれる可能性が高そうだ。
自分が何を引けるか、何ができるかを把握することと同じくらい、対戦相手が何を得ようとしているのかを理解することは重要と言える。ここでゲームを終わらせなければまずいことになると気づくことが、優れたプレイに繋がるだろう。
適切な価値
攻撃的になるべきか、防御的になるべきか? 楽観的に見るべきか、悲観的に見るべきか? 安全を取るべきか、強欲に狙うべきか? どうするか、もう決めただろうか?
上記2つの状況背景から明らかではあるが、得られる情報は完全ではない。それでも判断材料にはなる。
私ならどうするかって? たぶん《改革派の結集者》を唱えるほうを選ぶかな。より攻撃的な選択肢ということにはなるが、相手のドロー2枚分を無力化できれば勝てる。それに、対戦相手が何か引いたとしても、こちらも引けば十分対応できる。相手がブロッカーを引いたとしても、こちらは除去呪文を引き当てた――というようにね。
ではあなたの考えはどうかな? あなたならどうする? TwitterやTumblrで伝えたり、Redditへ投稿したり、シアトルの高速道路に看板を立てたり、あるいは他の方法で私の気を引いて、考えを教えてほしいな。
また来週会おう。全ての状況で正しい価値を見出せますように――そして『霊気紛争』を楽しもう!
Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com
(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing)