今日の「Beyond the Basics」は、いつもとは少し違うかな。

 あなたがマジックを遊び、上達したいと考えるなら、学びたいことはいくつかあるだろう。適切な戦闘の戦術。打ち消し呪文への対処。マリガンでの判断の基準。これらはこれまでの記事で扱ってきたことであり、今後扱い続ける内容だ。

 しかしマジックにのめり込むと、他にもいろいろなことが起こり始める。他の人々があなたに尋ねるようになる。あなたが必要としている、地元のイベントで勝つための技術とは全く異なる、別の知識が必要な質問……あなたの心に恐怖と興奮の両方を引き起こす質問をだ。

「マジックの遊び方を教えてもらえますか?」

 私たちはみんなマジックが大好きだ。これは世界で最も素晴らしいゲームだ。ところが、素晴らしいプレイヤーであったとしても、素晴らしい教え手としてそれに必要な技術を身に着けているとは限らない。

 そして時には、その逆もありうる。誰かから教えてほしいと言われるのではなく、あなた自身がどうしてもマジックを布教したい――それも、できれば上手に教えたい、と思っているかもしれない。何にしろ、第一印象は大事なものだ。

 マジックを遊び続ける限り、そのような場面に何度も遭遇することになる。そこで今日は、マジックの遊び方を他の人に教える、ティーチングのやり方について話すつもりだ。

 ではやってみよう!

教材

 私は、私たちが良く知る大好きなゲームの遊び方を、何百人もの人々に教えてきた。ウィザーズは、最も良い教え方を常に把握するよう努めている。そこから言えば、成果が大きく違ってくる要素が存在する点は疑う余地がない。この難題の鍵となる部分は、ゲームを教えるために用いるデッキをどうするか、だ。

 まあ、昔のデッキで教えることも不可能ではないね。私は母親にマジックを教える時に《修繕》デッキと《燎原の火》デッキを使ったので、可能か不可能かで言えば可能ということになる。(可能というだけで、母親がもう一度やってみたいと言い出すことは無かったわけだが。)

 可能とはいうものの、競技向けに完璧に調整されたモダンのデッキを用意するよりは、基本的な要素を紹介できる内容から始めたほうが圧倒的にやりやすいだろう。

 さて、こんな風に思った人もいるんじゃないかな。「猿でもわかる教え方と称して商品を売り付けるための文句が始まるぞ、気をつけよう」と。確かに、比較的安価な「プレインズウォーカー・デッキ」を購入すれば最初の教材として手堅いものが手に入るね、と紹介できるのは事実かな(……おっと、つい紹介してしまった)。私が常に一番の方法としてお勧めしているのは、地元のカードショップに行って無料の「ウェルカム・デッキ」がないか尋ねることだ。

 ああ、その通り。「ウェルカム・デッキ」は無料だ。

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 これらは我々が作成に多くの時間を費やし、最高のマジック初体験が得られるよう磨きぬいたデッキだ。それをハロウィンのキャンディみたいに無料で手渡すだけでいい。地元のショップを訪ねて、いくつか用意してもらうといいだろう。

 しかしショップにまで足を延ばせない場合は、どうすればいいだろうか? つまりどういう状況かというと、友達が遊びに来ているときにマジックに興味を持ってくれて、遊び方を教えてほしいと言われたときに、10分ほどで何かを用意しなければならない、というような時だね。

 まあ、私は個人的に、ティーチング用のデッキを組んで用意しておくようにしている。それらは通常、私がドラフトのときに使ったデッキにちょっとした変更を加えたものだ。しかしその場で組む必要がある場合は、コモンの束から特定の1色のカードを16枚ほど抜き出し、その色の基本土地を14枚ほど用意して、デッキとしてシャッフルすればティーチング用に使えるだろう。

 どのようなやり方をするとしても、以下のいくつかのルールに沿って行うことをお勧めする。

  • 1色か2色のデッキを使おう。色の問題が起こらないようにして、分かりやすく扱いやすい状態にしておく。
  • 土地を多めにしよう。その最初のゲームで友達が何かを確実に唱えられるようにしたいし、土地が伸びないよりは土地が余ったほうが遊べる。
  • カード・タイプを少なくしておこう。基本的な遊び方を知る上で覚えておかなければならないこと(そして教えなければならないこと!)が少なくなるので、最初の負担が減る。私としては土地、クリーチャー、ソーサリー、そしてインスタントは最初に教えたい要素だが、問題なさそうならアーティファクトやエンチャントを含めてもいいだろう。クリーチャーは外せないと思う。
  • できる限りカードの複雑さは減らしたい。単純なコンバット・トリック(訳注1)や除去呪文を用意しておくこともそうだが、ここではバニラ(訳注2)・クリーチャーが役に立つ。ブロックごとに存在する独自のキーワード・メカニズムを持つカードは、遊び方を覚えようとしている人々にとっては余分だ。あなたにとって簡単に思えることであっても、新しいプレイヤーにとっては全てが新たな要素であり、一度に覚えることが増えてしまう。
  • ほとんどの呪文を軽いカードにすれば、ゲームがよく動くだろう。それだけでも悪くないが、何枚か重いカードを入れておくことも重要だ。そういったカードの素晴らしさにも気付いてもらえるし、ゲームの決着をつける良い手段が確保できる。

(訳注1:コンバット・トリック/戦闘フェイズ中に、クリーチャーを支援する呪文や能力)

(訳注2:バニラ/能力を持たないクリーチャーの通称)

 これらは、ティーチングのためのデッキを組む時に考えるべき、大事な要素のほんの一部だ。

 何が言いたいかというと、例えば自分のデッキ置き場からデッキを選ぶことが唯一の選択肢だとすれば、最も簡単に紹介できるものを選ぶ、ということだ。クリーチャー重視のデッキはティーチング向きだね。『デュエルデッキ』はこれからマジックを始めようとする人向けに使うには内容が複雑だとは思うが、各フォーマットの競技的デッキよりはティーチング向きだ。もし持っているのがそれらだけなら、『デュエルデッキ』のほうを使うといい。

 デッキは用意できたかな? 素晴らしいね! どのやり方を選んだとしても、とにかく準備はできた。

 では……次は?

ステップ0:相手のことを知る

 これを「ステップ0」と呼ぶのは、これがティーチングの前に考えるべきことだからだ。

 人はみな違う。そしてあなたが誰かに遊び方を教えるのは、おそらくあなたがその人と知り合いだからだろう。私が説明していることは、私が考えた最上のティーチング方法であり、ウィザーズが遊び方を教えるためのより良い方法であると基本的に信じているものだ。しかし、遊び方を教えようとしている相手のことを最もよく知っているのは、私ではなくあなただろう。もしかしたら、その人が覚えやすい特定のやり方があるかもしれない。そう思ったなら、それを試してみるといいだろう!

 我々が既に経験している、もうひとつの大事なことがある。その人の持っている知識を利用してマジックの遊び方を理解することに繋げられれば、それはティーチングの大きな助けとなる、ということだ。例えば、教える側と学ぶ側の双方が知っている何か別のゲームがあれば、すでに理解しているそれらの共通語を用いてマジックの要素を伝えられるだろう。

 最後になるが、相手が楽しめると思える方法を考えて、マジックで刺激的な体験をしてもらおう。私はマジックは最高のゲームだと思っているので、マジックが大好きだということ、そして他のプレイヤーが何を求めてどのようにマジックを楽しんでいるか、というところからティーチングを始める。マジックは1つのゲームの中にあらゆるゲームが詰まっていて、まさに誰もが楽しめるものなんだ。

 よし。「ステップ0」についてはこれで十分だ。では、実際に遊び方を教えるためのステップに移ろう!

ステップ1:目的を説明する

 誰かにゲームの遊び方を教える時、私が最初に伝えたいのは、そのゲームの目的だ。ゲームで行うことはすべて、目的に向かうようになっている。例えば、バスケットボールの試合であれば、試合が終わるまでに得点をできるだけ稼ぐ、という目的を伝えてから、得点を稼ぐことを中心に全てを組み上げていく。

 したがってマジックの場合、プレイヤー双方が20点のライフを持って始める、ということを教えることから開始する。「お互いにライフを20点持って始める。目的は、自分のライフが0になる前に相手のライフを0にすることだ。先に相手のライフを0にすれば勝ちだね! そのために、クリーチャーや呪文を色々と使っていくんだ」という感じかな。

 よし。目的は分かった! では、どうやって達成するのかを説明していこう。

ステップ2:色、土地、そして呪文を唱えることについて説明する

 マジックの基本はマナ方式にある。これはゲームを理解するために欠かせない、根本的な要素だ。この段階では、以下の内容をしっかり伝えたい。

  1. マジックには5つの色があり、それぞれに長所と短所があること(5つあるということだけでいい。それぞれがどのような特徴を持つかまでを説明する必要はないだろう)
  2. 手札の呪文を使うために土地が必要なこと
  3. 自分のターンごとに1度、手札から土地を1枚出せること
  4. 呪文を使うために必要なマナは、土地をタップすることで生み出せること
  5. マナ・コストの見方(「{2}{R}は、使うために土地が3つ必要で、そのうち1つは赤マナを出せる土地でなければならない、ということだね」)
  6. タップしたカードは自分のターンのはじめにアンタップすること

 これらの基本的な概念を伝えることができれば、すでにティーチングは大きく前進したと言える。経験者にとっては大したことのない内容と感じることもあるだろう――まあ、そうかもしれない。しかしこのような大量の情報をかみ砕いてさっと提示することができれば、新しいプレイヤーが遊び方を覚える上で大きな助けとなる。

ステップ3:基本的なカード・タイプについて説明する

 ここでは、土地以外にどんなカード・タイプがあるのかを簡単に説明していく。つまりは、クリーチャーとインスタント/ソーサリー呪文だ。

 これらの違いを強調しておくといいだろう。クリーチャーは唱えると戦場に残り、使い続けることができる。インスタントとソーサリーは、使って効果を発揮したら終わる、使い捨てのカードだ。

 どうやって戦闘するかとか、それぞれの呪文がどういう効果を持つかとか、その他余計なことはここでは触れない。物事を複雑にしすぎないよう、慎重に、慎重に進めよう。慣れている側としてはすべてを話してしまいたくなるものだが、どうかその衝動を抑えて、私と一緒にゆっくり次のステップへと進んでくれ。

ステップ4:シャッフルして、7枚引いて、始めよう!

 ちょっと待った――他の説明は無しで、手札を引いて始めてしまうって!?

 その通り。

 ゲームの最も面白い部分は、ルールを覚えるところではなく、ゲームをプレイするところにある。人によるかもしれないが、私は5分以上説明だけが続くと飽きてしまう。実際にゲームを始めて、どのようなことが起こるのか体験しながら伝えるほうがずっと楽しめるね。

 まだ戦闘について教える必要はない。クリーチャーを出すだけで十分だし、そうなってから次のステップに進めばいいんだ。

 直観に反していると思うかもしれない。しかし長年の調査から言えば、ほとんどの場合、最初からすべてを説明するよりも、ゲームを始めてしまうほうがはるかに効果的なんだ。ああ、そうではない人もいるかもしれない――これは教えようとしている相手がどうなのか知っておく、ステップ0の実状次第だね。しかしほとんどの場合は、ここでゲームを始めてしまうほうがいいだろう。

ステップ5:お互いに何ターンか進めてみる

 私が遊び方を教えるときは、お互いの手札が見える状態で最初のゲームを始めることが多い。

 こうすることで、相手ができることを確認しつつ、うまくゲームを進められるよう相手の手札の使い方をアドバイスできるようになるからだ。ともあれ重要なのは、相手が何かを行うようにすることなので、「その最初の手札に土地とクリーチャーはある?」とか「よし、そっちの2ターン目だ――出せるクリーチャーはあるかな?」というように質問で確認しながら進めてもうまくいくだろう。手札を見せ合ってプレイすれば、それらの手間を省けるというだけだ。

 すべてのターンで何もかもを事細かに説明する必要はない。単に「カードを引いて、土地を出して。他に何か出せるものは? なければこっちのターンかな」というぐらいで十分だ。最初の数ターンはそれで問題ないだろう……

運命の扉》 アート:Larry MacDougall

ステップ6:戦闘!

 どちらかがクリーチャーを出して、その後そのプレイヤーのターンが訪れたならば、戦闘の説明をする時間だ!

 私はここでパワーとタフネスの両方について説明する。(「パワーはそのクリーチャーが与えるダメージの数だ。タフネスは、同じターン中にそこまでダメージを受けると死ぬ数だ。」というようにね。)

 私の場合は、攻撃できるクリーチャーをタップして(あるいはさせて)、クリーチャーは攻撃するためにタップが必要である、という説明から始める。そしてブロックされなければ相手プレイヤーにダメージを与えることになり、そのパワーと同じ数だけそのプレイヤーのライフが失われる、と続ける。

 ほかにもいくつか重要な要素がある。

  • 防御側のプレイヤーがクリーチャーをコントロールしていないなら、ブロックについてはまだ説明しない。相手には、クリーチャーがいればブロックされる可能性がある、とだけ伝えて、ライフを減らしながらダメージの仕組みについて説明する。
  • 防御側のプレイヤーがクリーチャーをコントロールしているなら、ブロックについて解説していこう。防御側プレイヤーがどうやってブロックするかや、タップしているクリーチャーはブロックに参加できないこと、ブロックしたクリーチャーとブロックされたクリーチャーは互いにダメージを与えあうこと、ダメージはターンの終了時に無くなることなどを説明する。
  • クリーチャーはプレイヤーを攻撃し、ブロックするかどうかは相手が選ぶということを説明する。新規プレイヤーに多い、本当によくある誤解は、クリーチャーでクリーチャーを攻撃できると思うことだ。ここは教える時にはっきりとさせておく。
  • そのクリーチャーが戦闘に関係する能力を持っている場合、どういうものかを説明する。

 クリーチャーで攻撃するときに他にもクリーチャーが存在しているならば、そこでそれぞれが取りうる選択肢すべてについて実行するとどうなるかやってみて、戦闘の仕組みをより幅広く説明するとよいだろう。

 そして最後に、もしそれが不利になる攻撃であれば、相手に無理やり実行させないようにしよう――どうなってしまうか説明するだけでいい。特に理由なく2/3のいるところに2/2で攻撃を仕掛けるような、間違ったプレイを覚えてしまうかもしれないからね。

ステップ7:少しずつ説明していく

 土地をプレイする、呪文を唱える、カードをタップしたりアンタップしたりする、といった要点をいったん覚えたならば、基本的なことは出揃った! その先がどうなるかは分からないが、後は何かが起こるたびにそれについて説明していけば、ゲームを決着に導けるだろう。

 非パーマネント呪文がまだ使われていない状況であったとしても、あらかじめインスタントやソーサリーは使い捨てであると説明しておけば、何かしらの基本的な呪文が登場したときに理解してもらいやすくなるはずだ。手札を見せ合ってプレイしている場合は、唱える適切な状況がやってきたときに教えてあげよう。

 説明が必要なことは他にもたくさんある。戦闘に関係するキーワード能力、起動型能力、エンチャントやアーティファクトやプレインズウォーカーについて、などなど。しかしそれらが見えたり出てきたりするたびに分かりやすくかみ砕いて説明していけば、マジックというゲーム、その驚異的なタペストリーをゆっくりと広げていくことができるだろう。

 ティーチングで最初のゲームを終えた後は、もう一度遊んでみようと誘うのが私のやり方だ。2回目は、こちらから行動を促す必要があると感じない限りは、相手に自分で考えてもらうと宣言してね。誰もがそうしてきたように、相手が自分自身で考えてプレイを選択できるようにすることが重要だ。

その他の助言

 ここまで挙げた内容の他にも、ティーチングの際に意識しておくべきことはいくつかある。

  • 全てを説明する必要はない。一番最初に書いたことからもわかる通り、これは重要なことだ。先に述べたが、新しいプレイヤーに遊んでもらうことこそが、ティーチングでもっとも大事なことだ。マジックには発見と学びが無数に存在する――無色マナは実は『ゲートウォッチの誓い』のエルドラージを唱えるために必要となる、なんて話を今する必要はない。ティーチングに使っているデッキと関係ないことは、遊び終わるまで説明してはいけない。
  • 自分で考えてもらうことが重要だ。相手の行動を完全に「操作」して、何をするのが正しいのか、すべてを教えてしまいたいという欲求があるかもしれない。 土地を出すことやターンごとにカードを引くことなどを忘れないよう、声をかけて導くべきではある。しかし何をするかについては、相手が自分で決断できるようにしよう。ゲームの最初から最後まで誰かの言いなりになって勝利するよりも、自分のやりたいことをやって負けるほうが楽しいんじゃないかな。
  • 何かに対応して行動できる、ということを教えるのは素晴らしいが、複雑になる可能性がある。呪文に対応して行動するやり方を知ることは、マジックにおいて重要であり、かつ面白い要素だ。私の場合は、スタックのやり方を最初からすぐ教えることはしていない。呪文の仕組みの基礎を理解してもらってから、この要素へと進もう。
  • 詳しい説明は、質問されてからにしよう。相手から何かゲームの仕組みについて聞かれたり、特定の出来事が起こったなら、ゲームの深い部分やそれに関するルールを説明する良い機会だ。マジックが提供する幅広い世界を味わってもらうのは素敵なことだね。
  • 楽しもう! 覚えておいてくれ。こちらの目的は、マジックの遊び方を教えることだ。目的を見失わないように。(まあ、大丈夫だと思うけどね。)相手が失敗したときに巻き戻したり、初手に土地が無ければまた7枚からやり直す、といったことは、浅瀬で泳ぎ方を覚える助けになるだろう。まだ深いところへ潜る段階ではないんだ。

教え方を学ぼう

 私がもっとも報われたと感じることの1つは、新しいプレイヤーにマジックの遊び方を教えて、彼らの顔に興奮が浮かび上がるのを見る時だ。新しいプレイヤーにこの素晴らしいゲームを紹介しながら夢中になって遊んでいる時の気持ちは、私が参加したすべてのイベントの、私が戦ったどの試合とも比べられないものだ。

 あなたのまわりの人々にマジックの遊び方を教えるための技術を、十分に伝えられたことを願うよ。

 何か疑問、考え、あるいは意見はあるかな? ぜひとも聞かせてほしい! TwitterTumblrか、あるいはbeyondbasicsmagic@gmail.comに(すまないが英語で)メールを送ってくれれば、いつでも読ませてもらうよ。

 また来週の「Beyond the Basics」で会おう!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com

(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing)