私は毎回、自分の記事の最後に、意見を受け取るための連絡先を掲載している。(念のために書くと、TwitterTumblrBeyondBasicsMagic@gmail.comへのメールで受け付けている。)その中には、意見を送ることに熱心な読者もいてくれるんだ! 今日は、ジョナサン・ホワイトフィールド/Jonathan Whitefieldがメールで送ってくれた、素晴らしい話題を取り上げたい。ジョナサンの話はこのようなものだ。

「僕はターン終了ステップに呪文を唱えることが多い。だが、インスタントをアップキープに唱えるプレイヤーを見たことがある……。ターン終了ステップ、アップキープ、メイン・フェイズ、あるいは他のタイミングのどこでプレイするのが正しいのかについて、あなたがどう考えているのかを知りたい」

 素晴らしい質問だよ、ジョナサン。そして回答を適切に行うために、少し戻って状況を整理しよう。

 インスタントはソーサリーと比較したとき、大きな利点が1つある。インスタントはいつでもプレイ可能だ。ということは基本的に、自分のターンや相手のターンも合わせて、最低でもターンあたり10のプレイ機会が訪れる。

 インスタントをいつ唱えればよいか、理解しているだろうか? ああ、それが勝ち負けを決める差になるかもしれない。

 基本的に、あらゆるインスタントに通じる大原則が1つある。それは……

ぎりぎりまで待つ

 マジックはさまざまな要素を合わせ持つゲームだが、その多くを占めるのが情報のゲームとしての要素だ。

 対戦相手にこちらの情報が伝わる時期が遅いほど、適切でないプレイを相手がしてしまう可能性は上昇する。その情報を見ていれば、するはずがないようなプレイをね。

 例えば、手札に《最後の報賞》があるとしよう。

 こちらのライフは3点。対戦相手は2体の《ハイエナの群れ》をコントロールしていて、こちらには《巨大百足》がいる。

 今すぐ《最後の報賞》を唱えると、どうなるだろうか? それを見た以上、対戦相手は《巨大百足》に《ハイエナの群れ》を単体で突っ込ませたりはしないだろう。

 では、使わずに待っていると、どうなるだろうか?

 インスタントであることを生かして、待ってから《最後の報賞》を使おうとする場合、対戦相手は2体で攻撃してくる可能性が高い。そうすれば、そのうち1体を追放し、もう1体はブロックして返り討ちにすることで、実質2対1交換となる。これが、少し待つ理由だ。

 こういった事例は、マジックをプレイしていれば何度も繰り返し遭遇する。対戦相手のターンに唱えるために、瞬速持ちのクリーチャーを手札に残したりもするだろう。あるいは、手札にあるのは《突風撃》だが、《取り消し》があるかのように3マナを残しているとか。インスタントはすぐには使わない、という経験則は、多くのマジック・プレイヤーが早い段階で身につけるだろう。(もしこれについてすでに知っていたなら、ジョナサンの質問の本質に到達するまで、あともう2項目付き合ってくれ。)

 それからもちろん、どこで使うのかというと……

対戦相手のターン終了ステップ中に呪文を唱える

 今は2ターン目だ。手札には《予期》がある。

 それはこのターンにプレイ可能だ。そして、手札にある唯一の2マナのカードでもある。この《予期》を、自分のターン中にプレイしてもいい……

 ……しかしそうせずに、対戦相手のターン終了ステップになってから唱えるつもりだ。

 ターンの進行について知っているかどうかはともかく、各ターンの終わりには、ターン終了ステップが訪れる。この休憩のための小さなオアシスでは、どちらのプレイヤーもインスタントを唱えることが可能だ。しかしここまで進行すれば、対戦相手はさらにクリーチャーを出したりソーサリーを唱えたりすることはできない。しかもその上、こちらがアンタップする直前でもある。つまり、対戦相手のターン終了ステップに何かしたとしても、その後すぐにアンタップするので、マナ・コストは「実質タダ」になるわけだ。

 それらを総合して考えてみよう。ああ、《予期》をターン終了ステップに唱えることについてね。

  • 2マナを残しているので、対戦相手はこのターン、打ち消しや除去を警戒して行動せざるを得なかった。
  • この2ターン目に対戦相手がどのように行動したかを確認してから、《予期》で見たカードを選択することができた。
  • 予期》は3枚のカードを見るので、箇条書きも3つ欲しかった。

 これら3つが(わかってる、2つだ)、プレイを少し待つ合理的な理由だ。もちろん、他にプレイ可能な2マナのインスタントを持っている場合は、その別の何かを唱える必要があるかどうか見極められる、という理由については言うまでもないだろう。

 ああ、ターン終了時まで待たないほうがいい場合、というものもある。例えば、先ほど述べた《最後の報賞》は戦闘フェイズ中に唱えたいはずだ。しかし、カードを引くような効果の場合は、ターン終了時まで待つ意味合いが大きい。

 これら2点は基本中の基本となる。インスタントに関する判断の基本となる大原則は、対戦相手に与える情報はできるだけ少なくすること、そして相手のターン終了ステップにプレイすること、この2つだ。

 わかったかな? それはよかった。何しろ、これからジョナサンの質問について考えていくんだからね……

原則を無視する

 対戦相手のターンにインスタントを唱えることに慣れていなかったり、ターン終了ステップを意識していなかったなら、前述の原則に従うことで慣れていけるだろう。まだそうしていなかったのであれば、対戦相手のターンにインスタントを唱えるという意識は、あなたのプレイの改善に大きく貢献する。

 しかしすでにそうしているプレイヤーは、そんな原則のことは全く意識していないはずだ。

 それも当然だろう。マジックのプレイというものは、ゲームに勝つ最高のチャンスを得られると判断できた時に行動するものだ。ありきたりな原則にしたがい、インスタントなら何でも相手のターン終了時に唱えるというのは、実際には間違っている場合がある。脳内でいくつかの原則に機械的に従うのではなく、呪文を唱える最高のタイミングについて考えなければならないんだ。

 そしてここから、ジョナサンの質問の本質へと続く。

 そのために、読者のみんなが予想していなかった題材を取り上げたい。『時のらせん』ブロック構築だ。

 何年も前に、私は『時のらせん』ブロック構築で開催されたプロツアー予選に参加していた。対戦は好調で、私はいくつかの勝利を重ねていた。使っていたのは、除去呪文を満載したコントロール・デッキだ。このときは環境の初期段階で、どんなデッキが主流かはまだまだ判明していなかった。

 そのイベントの半ばで、私は緑の速攻デッキと対戦することになった。対戦相手は3/3のクリーチャーを出しているが、こちらのライフはまだ7点あり、手札には除去も十分にある。ほぼ勝てると踏んでいた。

 そして、ああ……『時のらせん』ブロック構築を体験していた読者なら、どうなるか見当がつくかもしれない。

 私はターンを終了した。相手は攻撃してきた。私は、何かあればさらに対応可能なように準備しつつ、除去呪文を唱えた。すると、対戦相手はあるカードを提示してきたんだ。

 うん、計画はご破算だ。

 最近は、打ち消せない、対応できない、+5/+5修整と被覆を与える、などという水準のやりたい放題なコンバット・トリック(訳注1)はほとんど見られない。しかしこの経験は忘れられないものだった。このフォーマットに存在するカードを把握し、どうなるかを考えていれば、私はきっと自分のターン中にそのクリーチャーを除去して、そのままゲームに勝てたことだろう。

(訳注1:コンバット・トリック/戦闘フェイズ中に、クリーチャーを支援する呪文や能力)

 次のプロツアー予選では、私は《岩石樹の祈り》を搭載した緑のデッキを使っていた。そして私は、全く同じことを何人もの対戦相手に対して(時には同じマッチ中に2回!)行い、上位8名にも入ったんだ。相手はインスタントの使い時を盲目的に判断しているようだったね。

 考えず、プレイをしては、いけないよ。

 最も合理的なタイミングでインスタントを使おう。時にそれは、クリーチャーを確実に除去したければ、相手のマナが足りないこちらのターン中にインスタント除去を使う、というようなことだ。

 原則から外れてしまうけれども、そこでインスタントを唱えることが正しい状況について、よくある5つの事例を説明してみよう。

1.コンバット・トリックを警戒する

 《感電》のような、ダメージを与える類の除去を用いている場合、コンバット・トリックとかち合うと悲惨なことになる。

 相手が《ハイエナの群れ》をコントロールしていて、手札の《感電》で除去したい、という状況だとしよう。

 前述の原則に従い、ターンを終了する。相手が《ハイエナの群れ》で攻撃してくるまで待って、《感電》を唱える。何も問題はないよね?

 相手が対応してこない限りは。

 除去呪文は《凶暴な力》によって、お互い手札のカードを1枚ずつ失うだけの結果となった――しかもその過程で6点のダメージまで受けてしまった!

 実際のところ、プレイを遅らせることから得られたものは多くなかった。おそらく対戦相手は、攻撃の前に呪文を唱えたりはせず、マナを残したまま攻撃して、第2メイン・フェイズになってから呪文を唱えるだろう。となると、ここで自分のメイン・フェイズに《感電》を使うことが問題となる状況は、対戦相手が攻撃の前に行動を起こすことによってこちらの判断が変わる場合ぐらいだ。例えば、対戦相手が速攻クリーチャーを使っているなら、そちらに《感電》を使いたかったかもしれないが、自分のターンに使っていては変えようがない。

 どちらが良いとは一概に言えないだろう。自分のターンに《感電》を使い、相手のターンに《栄光をもたらすもの》が出てきたら、失敗したと思うんじゃないかな。とは言えそれは、より多い状況に対して適切に対応する上でついて回るリスクにすぎない。

 そしてこれは、ダメージによる除去呪文だけの話ではないんだ。除去呪文に対応してクリーチャーを手札に戻せるバウンス(訳注2)呪文や、呪禁を与える呪文などに対しても、同じことが言える。

(訳注2:バウンス/戦場のカードを手札に戻す)

 コンバット・トリックには気をつけよう。

2.打ち消し呪文をかわす

 対戦相手が打ち消し呪文を持っていると判断できる場合、自分のターンにインスタントを唱えることには大いに意味がある。

 対戦相手が青を含んだデッキを使っていて、マナを全て使い切っているとしよう。ああ、今がインスタントを唱える好機かもしれない。相手のターン終了時まで待つこともできるが、それにどのような利点があるだろう? それは状況に応じて変わってくる。しかし、そのつど自問できることがあるんだ。「相手に打ち消し呪文があるとすればどうだろうか?」

取り消し》 アート:Mathias Kollros

 どちらのターンに唱えても大きな違いがなく、そのインスタントを打ち消されたくないのであれば、今のうちに唱えてしまおう。(もちろん、《取り消し》と1対1交換になっても問題ないのであれば、待つこともできる。)

 しかし青いデッキがマナを残している場合はどうだろうか? まあ、その場合は……

3.相手のターンに打ち消し呪文を使わせる

 対戦相手が打ち消し呪文を持っていて、マナを残し続けているなら、相手のアップキープ・ステップに行動したい。

 なぜだろうか? ああ、これには2つの重要な理由がある。ドロー・ステップの前なので、まだ対戦相手はカードを引いていない(ため、打ち消し呪文のようなこちらのインスタントとやり合うための新しい武器がライブラリーの一番上にあったとしても、まだ引かれていない)。そして、もし手札にある呪文でこちらの呪文を打ち消す場合、相手は相手自身のターンに行動しなければならず、土地をタップしなければならない。

 要するに、こちらの呪文を対戦相手が《取り消し》した場合、相手は少なくともこのターン、使えるマナが3マナ分減ることになる。

 これには危険がないわけでもない。このときにクリーチャーを対象にダメージ呪文を使っていたなら、(また)《凶暴な力》を使われるような可能性はある。しかしとりわけ構築フォーマット、つまり対戦相手のデッキのおおよそが予想できる場合、これは素晴らしい手段となる。

 伝統的に、これはコントロール同士の対戦において呪文を唱える定番のタイミングだ。なぜかって? そうだな、例えば対戦相手のアップキープ・ステップに《奔流の機械巨人》を唱えてみよう。

 対戦相手は打ち消し呪文を使ってきて、こちらも打ち消し呪文で対応する。それに対して相手はもう一度打ち消しを使う。まあたぶん、《奔流の機械巨人》は打ち消されるだろう……しかし対戦相手はこれにより、かなりの土地をタップすることになった! この後、こちらは自分のターンに入ってすべての土地をアンタップするわけだが、相手が打ち消しのために使った土地はまだタップ状態のままだ。それこそが、本当に通したい脅威を通すための、完璧なタイミングだ!

4.さらなる脅威を狙い撃つ

 これは他の例とは少し違う。選択のために通常よりも長く機会をうかがうというものだ。

 手札に《最後の報賞》があって、対戦相手がまた《ハイエナの群れ》をコントロールしているとしよう。(きっと相手は《ハイエナの群れ》が本当に大好きなんだね。)

 対戦相手が《ハイエナの群れ》で攻撃してきた。そして何らかの理由で、それに《最後の報賞》を撃ちたいとしよう。

 しかし、使うのを待つという選択肢もあるんだ。

 3点を食らい、対戦相手のターン終了ステップに《最後の報賞》を唱えることができる。それだけだと3点のダメージを受けた意味はないね。しかし、相手がもっと強力なクリーチャーを唱えようとしていた場合、そちらに《最後の報賞》を使えるんだ!

 本質的に、自問している内容はこうだ。「対戦相手が次に出すクリーチャーを除去するという選択肢には、このダメージを受けるだけの価値があるだろうか?」

 その答えがイエスとなることもあれば、ノーとなることもあるだろう。しかし多くの場合、待つ価値があるはずだ。待つことで脅威に対処し、自分のターンに逆にこちらが脅威を展開する……これでゲームの流れは一気にこちらのものとなる。

5.カードを引いてすぐ行動する

 あなたは9枚の土地をコントロールしており、墓地には《開拓 // 精神》がある。

 自分のターンに何もせず、相手のターン終了時に《精神》を唱え、2枚のカードを引いてすぐ自分のターンを迎える。そうするのは簡単な話であり、標準的なプレイでもある。

 しかし、手札に行動できる何かがない場合は、自分のメイン・フェイズにすぐ《精神》をプレイすべき場合も多い。

 それにより土地を引けば、そのターンに土地を置ける。クリーチャーを引けば、出せるかもしれない。メイン・フェイズに動く価値は多いにある!

 たいていの場合は、ドロー呪文を相手のターン終了ステップに唱えることが――とりわけ、除去や打ち消し呪文を同時に構えているなら――正しいプレイングになる。しかし他にやることがないなら、自分のターンにドロー呪文をすぐ使って行動してもいいんじゃないかな。

うまいインスタント

 インスタント速度で行動できるのは利点だ――しかしその利点を生かすことだけに腐心すると、損害ともなりうる。覚えておこう。インスタントは対戦相手のターンに唱えてもよいだけであり、対戦相手のターンに唱えなくてもよいんだ。

 マジックでは、普段ないようなタイミングで呪文を唱える状況が、他にもたくさんある。相手のドロー・ステップ中に、今引いたカードを捨てさせるとか。戦闘開始ステップに除去することで、攻撃時に誘発する能力を使わせないとか。私のお気に入りだが、対戦相手が《溢れかえる岸辺》のようなフェッチランドで土地を持ってくるのに対応して《ヴェンディリオン三人衆》を出して、相手が使おうとしていた呪文を抜いてしまう、なんて一風変わったこともできるぞ。

 しかしどんな時であっても、いつ唱えるのがよいかを考え続けるようにしよう。利点と欠点を考慮しよう。機械的に判断するのではなく、能動的に判断しよう。可能性を模索し続けることで、最高のインスタント使いになれるはずだ。

 そしてもし、今回の記事から得るものがなかったのなら、これだけ覚えておいてくれ。『時のらせん』ブロック構築をプレイするときは、相手に《岩石樹の祈り》を使わせちゃいけないぞ。

 ジョナサン、素晴らしい質問を送ってくれてありがとう。他に似たような話題について提案がある読者はいるかな? 私に教えてほしい! TwitterTumblr、あるいはBeyondBasicsMagic@Gmail.comに(済まないが英語で)伝えてくれれば、いつでも読ませてもらうよ。

 また来週!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com

(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing)