渡る次元の歩き方
プレインズウォーカーは、現代のマジックにおいては不可欠なものの1つだ。このゲームが誕生してから行われた最大の変化の1つであり、今やこのカード・タイプが生まれてからほぼ10年が経過した。もうプレインズウォーカーは、すっかり受け入れられている。
プレインズウォーカーは、試合展開に大きな影響を与えることができる。いったん戦場に出れば、注目と警戒を強いる存在だ。いかに適切にプレイするかによって、勝ち負けに影響が出るだろう。
しかし、プレインズウォーカーをどのように扱うかが重要であるのと同様に、どのように対抗するかもまた重要なことだ。
自分で使っているかどうかはともかく、プレインズウォーカーに遭遇することは多いだろう――そしてプレインズウォーカーはマジックのカード・タイプの中で唯一、クリーチャーで直接攻撃できる存在だ。プレインズウォーカーを直接狙うべき時、そして無視して対戦相手を攻撃すべき時を知っておけば、それが勝ち負けの差に繋がってくる。
それで、どう戦えばいいだろうか? それぞれの行動は、どのような場合に取るべきだろうか?
今日はこれを題材に話を進めよう。
プレインズウォーカーの影響力
プレインズウォーカーは、有利さをじわじわと増加させていく装置だ。
ああ、「世界を旅し、魔法の助けを借りて驚くべき偉業を成し遂げる一行」が持っていたような指輪が無いことは知っているが、端的に言って優位増加装置であることは事実だ。戦場に出ているプレインズウォーカーは、毎ターン何らかの利益を生み出してくれる。例えその利益がわずかなものであっても、最終的にそのプレインズウォーカーは敵対するものを飲み込んでしまうだろう。
例として、『霊気紛争』で登場した、最も新しいテゼレットを見てみよう。
確かに、毎ターン、エーテリウム電池を生成するだけでは、脅威に思えないかもしれない。それでも、生け贄に捧げることで1マナを得られるアーティファクトの数は、毎ターン増えていく。
しかしテゼレットを放置し、エーテリウム電池の生成をさせるがままにしていては、いずれその電池に打ち負かされるだろう――アーティファクトの数を利用してこちらのクリーチャーを全滅させられるか、あるいは生ける5/5と化した無数の電池のご挨拶によって、文字通り打ち負かされることでね。
例えわずかな利益であっても、致命的なものとなりうる。
ほぼ全てのプレインズウォーカーが持っている「究極奥義」は、その後の展開に幅を与えてくれる。優位増加装置であるだけでなく、それらゆっくりとした有利さのすべてが、最終的には巨大な力の爆発につながっていくんだ。妨害さえされなければ、プレインズウォーカーは戦場に出て活躍するだけでなく、ついでに対戦相手も倒してくれるという一挙両得なカードになれる。
これらを考慮すると、プレインズウォーカーを出されたときの基本的な対処方法はこうなる。まだ決着が付きそうにないなら、プレインズウォーカーを攻撃すべきだ。もうすぐ対戦相手を倒せそうな状態で、そのプレインズウォーカーが(トークンを生成するなどの能力で)こちらの動きを妨害できそうになければ、対戦相手に狙いを定めるべきだ。
もちろん、この基準は状況によって少々変わってくるだろう。しかし方針を定める補助とするには良い基準だ。
先を読む
マジックでは常に、先を読むことが重要となる――そしてプレインズウォーカーが関連してくる場合は、とりわけ先を読む必要がある。
対戦相手がプレインズウォーカーをコントロールしているのであれば、この先の数ターンに渡ってそのプレインズウォーカーがどのような効果を発揮し、それを止めるにはどうしなければならないかについて、考えておかなければならない。
対戦相手が、忠誠度6の《反逆の先導者、チャンドラ》をコントロールしているとしよう。
忠誠度を[+1]する起動型能力そのものは、即座に大問題とはならないかもしれない。呪文を唱えられることや2点のダメージを受けることについて、そこまで気にしてはいないだろう。
しかし間違いなく、奥義の紋章については大いに警戒しているはずだ――そして、現在のターンのうちに、それを阻止する方法についてあらかじめ考えなければならない。
次のターンにどうなるか考えてみよう。こちらがそれを阻止できるような強力な影響を及ぼさない限り、まず対戦相手は[+1]の能力を使うだろう。つまり、その次から奥義を使えるようになるということだ。そして、もし今のターンにクリーチャーを出さないとすれば、最もチャンドラに攻撃を通す必要がある次のターンで、その対処方法が利用できなくなってしまう。
すでに戦場にクリーチャーを出していてチャンドラを攻撃できるとしても、このターンのうちに手札のクリーチャーも(出せるなら)出しておくだろう。対戦相手の手札に複数の除去呪文や全体除去呪文があって、結局奥義を使われてしまうかもしれない。しかしそれでも、ここで忠誠カウンターを確実に減らす準備はしておきたいはずだ。
そして忠誠カウンターを少々減らすだけに終わるとしても、いずれはどこかでチャンドラを排除するために踏み込まなければならない――そして奥義から遠ざけるためには、攻撃が不可欠だ。
奥義は問題ではない、と判断している場合を除いてね。
対戦相手のライフが4で、相手は忠誠度が6の《反逆の先導者、チャンドラ》をコントロールしている。どちらのプレイヤーも手札にカードはない。こちらは《真鍮の災い魔》を引いて、そのまま唱える。
どちらを攻撃すべきだろうか?
チャンドラを攻撃すれば、忠誠度は3に減る。対戦相手を攻撃すれば、ライフは1に減る。
さて、この先はどうなるのか、考えてみよう。
チャンドラを攻撃していた場合、忠誠度は3になる。次のターンに対戦相手は、[-3]能力を使って《真鍮の災い魔》を排除するか、[+1]能力でカードの使用機会を得つつ、チャンドラ陥落に2ターン以上費やすように要求してくるだろう。奥義の問題を排除し、圧力をかけることに成功しているので、これは素晴らしい成果だと言える。
対戦相手を攻撃していた場合、興味深い状況が生まれる。次のターンに対戦相手は、[-3]能力を使うことで《真鍮の災い魔》を排除する。これはチャンドラに攻撃して忠誠度を減らすのと同じ減少数だ。しかしチャンドラを攻撃していた場合とは違い、直ちに別のクリーチャーを展開して、残ったチャンドラの忠誠度を減らさなければならない。基本的に、チャンドラを攻撃したほうがずっと良さそうだ。ただし……
そう、お分かりかとは思うが、この提示している状況、こちらが使っているのは赤いデッキだ。火力呪文や速攻クリーチャーが多く採用されているだろう。(既にそのうちの1枚は確認している!)決着を付けられるカードの多さから考えて、対戦相手のライフを1にすることで直後のドローで勝てる可能性を最大に高められると思うのであれば、そうすることが正しいかもしれない。ある程度、自分のライフやデッキ構成に依存する判断ではあるけれどもね。
いずれにせよ、先を読むことが重要だ。《真鍮の災い魔》を戦場に展開した時点で、ゲームが決まる可能性は高い――正しい判断を確実に下しておきたい。
次元渡りを忘れずに
ここまでに、プレインズウォーカーを前にしてどのようにプレイするかについて、いくつかの経験則、理論、事例から述べてきた。だがもう一度、簡潔で覚えやすい言葉を残そう。
悩んだときは、プレインズウォーカーを攻撃しよう。
プレインズウォーカーを攻撃しなかったことでゲームを落とすプレイヤーを、数多く見てきた。忠誠カウンターが溜まっているアジャニを攻撃するよりも、対戦相手のライフを5にするほうが正しいプレイだ、プレインズウォーカーは問題じゃない、と言い切るのは簡単だ……しかし全体除去呪文1発で、アジャニを攻略することはほぼ不可能となる。それはアジャニを排除して対戦相手のライフが11、という状況よりもはるかに問題だと言えよう。
全てを踏まえたうえで、計画を立てよう。自分の計画を把握し――どのような結果につながるかを把握しよう。対戦相手に全体除去呪文をトップデッキ(訳注1)されると負けてしまうということを理解した上で、それでも対戦相手を直接攻撃するという判断を下すのが正しいのかもしれない。まずは何よりも、自分が何を目指して行動しているのかを、あらかじめ理解しておこう。
(訳注1:トップデッキ/問題に対処できるカードが無い状況で、ライブラリーから解決策を引き当てること)
そしてそれは、どんな状況にあっても役に立つ考え方だ。
プレインズウォーカーを攻撃する状況について考えるにあたって、有用で啓発的な内容だったと思ってくれたなら嬉しいよ! 何か疑問や感想があれば、ぜひ聞かせてほしい。TwitterやTumblr、あるいはBeyondBasicsMagic@gmail.comに(すまないが英語で)メールを出してくれれば、いつでも読ませてもらうよ。話を聞かせてもらえるのは素晴らしいことだから、どんなことでも送ってほしいな!
また来週会おう。それまであなたが、対戦相手のプレインズウォーカーをすべて倒せますように!
Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com
(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing)