ギルドパクトに署名を

更新日 Feature on 2006年 1月 9日

By Rei Nakazawa

Translated by Yoshiya Shindo

 ギルド条約はラヴニカを数千年の間安定させてきました。しかし、十のギルドがこの惑星の派遣を争うようになったとき、何かが壊れてしまう可能性も常にあるのです。ギルドパクトではこの巨大な都市の物語の続きと、三つのギルドが語られます。マッド・サイエンティスト、偽りの僧侶、怒れるアナーキストなどが世界を駆け巡り、物事はトーナメントでもクリエイティブな設定でも面白いことになっていきそうです。

 さて、ギルドについて話をする前に、まずは私の最初のラヴニカに関するコラムで約束した、この次元をさらに広い視点で見た光景と言うのをお話していきましょう。ギルドパクトとは、まあこのセットの名前なんですが、そもそも流血と私利私欲の中から産まれた協定なのです。その創成者たちは、引き続く戦乱でラヴニカが破壊されることを望んでいませんでしたが、その一方で自分達の集団ができるだけ長く政権の座につけるように言葉を選んでいきました。“パルンズ”と呼ばれた十のギルドの大元の創成者たちは、自分たちの魔力を集め、それ自身に強制力のある協定を作り上げました。ギルドパクトの中の同意事項が破られた場合、それを拒む魔法の力が自動的に働くのです。しかし、こういった特別な協定がある状態でも、ギルドは法の条文を捻じ曲げて穴や矛盾点を探し、条約の精霊を出し抜く方法を見つけたのです。ギルドはそうやって自分達が望むことは何でも成し遂げてきました(ところで、ラヴニカのセットによる舞台が幕開けした時点で、パルンズの中で未だに存命なのは、ボロス軍のラジア、イゼット団のニヴ=ミゼット、ディミーア家のザデック、ラクドス教団のラクドスの四人だけです)。

 ご存知の通り、伸び続けるラヴニカの人口は自然を押さえつけ、孤立した小さな庭や公園などにそれらを押し込んでいきました。しかし、現実世界で鳩や鼠がそこらにいいるのと同様に、この世界でもあちこちをうろつきまわる野生の生物がいます。その中のいくつかは、下水道のガリアルや尖塔の上のドレイクのように、自分にとって一番落ち着く場所を住処とします。あるいは、セレズニアの乗馬となったペガサスや、シミックが生体実験に使っている巨大蛙など、ギルドが己の目的の為に用いているものもあります。そして、ドラゴンなどのように危険だと認識された種族は、ほとんど絶滅するところまで狩り立てられました。ちっぽけな種族をできるかぎり無視している猛獣もいますし、間接的に特定のギルドを支援することで餌を得て巣を作る場所を確保し、彼らと共存している種族もあります。後者は金枠や混成枠のカードで表される野生の動物の一群ですね。彼らが手なずけられていないからといって、彼らが勝手にギルドを助けることはないなんて思わないほうがいいですよ。ラヴニカ上の誰もが、あるいはすべての生き物が、何らかの形でギルドに使えているんですからね。

 ラヴニカ市民の大部分はギルドのメンバーではありません。しかし、ギルドパクトのおかげで、数が多いからといって抑圧から解放されているわけではありません。ギルドにとって、一般の男女や子供は単なる顧客であり、崇拝者であり、奴隷であり、実験材料なのです――言い換えれば、道具に過ぎません。無力で物事のよくわからない平均的市民には、ギルド抜きの生活など考えられませんし、むしろ頭を低くして権力闘争に巻き込まれないように祈るばかりなのです。しかし、世の中には少数の、まあごくごく少数ですが、ギルドに反抗する者もいます。ギルドによる独占を破るため、隣近所や自分の地域を安全に保ちつことに一所懸命な人もいます。あるいはラヴニカを、ギルドパクトの前の、まだ巨大都市になる前に戻す方法を探している人もいます。好戦的なドルイドの集まりであるヨーア教団もその一角です。その他にも、都市とギルドのために地下に潜らざるをえなかった、神の如き力を持つ古代の生物ネフィリムを進行する謎の集団もあります。しかし、彼らは自分達が干渉している勢力を真に理解しているんでしょうか?

 それでもまあ、どの角度から見ているにせよ、ラヴニカの中核はギルドであり、そこにさらに三つが権力の場所を求めて立ち上がってきます。最初のギルドは、“失われしギルド”であるグルール一族です。数世紀にわたる政治的、あるいは軍事的な打撃のために、かつては立派だったこのギルドは壊滅し、数十もの個別の戦闘部族にと分裂してしまいました。グルールはラヴニカの廃墟や貧民街をうろつき、無節操な怒りで土地を引っ掻き回すことで生き延びています。それぞれの部族には個別の軍団と独自の主導者がいて、それぞれが独自の行動を取っていますが、それぞれの目的は一つ、完璧な無政府状態です。彼らの望みは自分たちを受け入れない都市を壊滅させ、彼らをこんな立場に追いやったギルドを破壊することです。本来ならこの行動は庶民階級にとっては英雄的なはずなのですが、彼らの態度の大きさや見境の無い破壊欲求は、結局グルールが根っこのところではギルドであると言う事実を心に植えつけていきます。そんなわけで、グルールの一般的な側面は、言ってしまえば“追いはぎ”ギルドであり、その偽の面の下には煮えたぎる怒りを隠しているのです。

 文明から落ちこぼれた者たちの最後のよりどころであるグルールの軍勢には、歪んだ人型をした生き物や、血に飢えたゴブリン、軍団の後をつけて死体を食らい、瓦礫の山に巣くうワームや猛獣などがいます。グルールの力とは、ものすごい破壊力にあります。都市の一区画などは、戦闘部族一個があれば破壊されてしまいます。そして、彼らがばらばらの部族である以上、何十もの襲撃が同時に起こることも多々あり、“文明化”されたギルドにとっては、その脅威を止めたり、あるいはグルールを根絶したりするのは非常に難しくなっています。グルールには全体を統べる主導者はいませんが、彼らは強さに敬意を払っています。そして、彼らの部族の長すべての中でも、腹音鳴らしが最強です。彼はグルールの中でも最も凶暴な戦士の一人であり、最大の戦闘部族の長であり、噂によればグルールのパルンズの末裔とのことです。そんなわけで、この凶暴な一つ目巨人は、最大規模の破壊的な襲撃では大抵はリーダーとなっています。

 次は、ラヴニカの文明生活のほとんどを運営する責任を持つイゼット団です。イゼットは下水道を設計し、鋳造所を建設し、必需品から贅沢品まであらゆる品物を市場に卸しています。彼らは根っこでは研究者であり製作者なのですが、満足することはなく、より素晴らしい道具や素晴らしい魔法を追い求め続けています。事実、彼らは魔法がなぜどのように機能するか、そして“次元宇宙”理論へと続く知識、さらにそれがラヴニカの生と死にどう影響しているかに関する考察を理解している唯一の人々です。イゼットは自分の仕事に夢中になっている分、ラヴニカの政治や日々の裏取引にはほとんど興味がありません。一方で、彼らの興味自身も常に変わっていきます。イゼットは飽きるのも早く、ある思い付きや理論からすぐ別なものに飛びついてしまいます。その結果、イゼットの事業は、完成に至るまでに何人もの魔術師の手を経ていくことになります。しかし、誰かが自分の混乱をまとめてくれることはまったく気にしません。彼らにとって興味があるのは自分の仕事のことがほとんどなのです。ドラゴンの魔術師であり、ギルドの創設者であるニヴ=ミゼットは、このギルドを表すにはまさしくうってつけです。彼らはこの惑星で最も知性ある生物ですが、彼の気性は黒焦げの弟子を生み出してしまうのがオチです。彼の生み出したものの中に、彼が次世代のイゼットの従僕と考えている人口精霊、奇魔がいます。しかし、現在ではその役目はゴブリンが担っています。イゼットのゴブリンは、自分達の知性や有用性に比べると高度に肥大した意見を述べる傾向にあります。一方で悪い点は、彼らは状況を察するのが非常に遅く、新たな奇魔が自分の地位を脅かしていると言う事実をぼんやりとしか理解していません。まとめると、この手の内部抗争や奇妙な行動にもかかわらず、イゼットがこの惑星上で最も優れた魔法と魔術道具の作り手である事実は否定できないでしょう。

 オルゾフ組は、かつては誠実な教徒でしたが、今日では彼らにとっての神とは権力と富です。彼らが古き信仰の名残を残しているのは、権力構成における自分の立場を固めるためであり、多数を操るためであるのは言うまでもないことです。オルゾフは商売を生きがいとし、彼らは呪文から地所から奴隷まであらゆる物を売買します。彼らは月市の創設者でもあります。そこはありとあらゆるものが適正な価格を払えば手に入れられる闇市場です。オルゾフの取り引きにおける技術、あるいは賄賂のやりようなどもあり、彼らの影響はアゾリウスの最高裁のてっぺんから通りの溝の底にまで及んでいます。

 彼らの下僕には生命を吹き込まれたガーゴイルや、死体(大抵はオルゾフの下級のリーダーですが)から生み出されたスラルなどがいます。オルゾフの最も裕福で力のある者が死んだとき、複雑な屍術の儀式を執り行って、通常その人物を縛っている闇の力から解き放ち、幽霊として蘇らせます。そんなわけで、彼らの霊議会にはギルド創設の日々からの、最も優れていて最もずる賢く、最も知性ある面々が揃っているのです。彼らの数世紀にわたる経験に自分達の法律家の腕をくわえた結果、オルゾフはギルドパクトをねじ曲げて優位を得る点に関しては最も優れたギルドとなりました。彼らには戦場における強さはありませんが、その分、富と陰謀に関しては秀でているのです。

 このリストの最後にオルゾフを持ってきたのは、ギルドパクトの小説の主人公がオルゾフの一員、テイサ・カルロフだからです。アグルス・コスの旅はまだ続いていますが、今回注目されているのは、頭がよく抜け目の無いオルゾフの法術士のテイサです。よく吟味された言葉のいくつか、あるいはよく計画された微笑ひとつで、彼女は実質的にはどんな人物でも彼女の望むように踊らせることができます。小説の出だしで、彼女は大きな力と富を得る機会を得ます。真のオルゾフなら見逃せないような機会です。しかし、彼女のように知性と野心にあふれた人物でも、ギルドによって使われています。彼らにとって不幸だったのは、彼女には反抗すべき知性も材料もそろっていたことです。彼女が惑星全体を一つとする力に逆らったとき、いったい何が起こるのでしょうか?

 その結果は小説のお楽しみですが、まあ皆さんもお気づきの通り、テイサはカードにもなります。それはこんなカードです。

 オルゾフの面々は霊体というものについて何らかの知識を備えていますが、テイサも例外でないのは見ての通りでしょう。彼女のクリーチャーを取り除く能力は法を操る技術を示していますし、代々の強力な力の方は言うまでもありません。それらを合わせると、あなたの敵に対して強烈な一撃を加える力を秘めることになります。これにいくらかの生け贄能力を組み合わせると、あなたの手元には飛行クリーチャー軍団が揃うばかりでなく、その邪魔となる相手クリーチャーを排除することもできるようになるのです! ラヴニカほどの厳しい世界では、うまくやっていくためには特別な何かが必要で、テイサはその中でもピカイチでしょう。

 もちろん、ギルドもラヴニカも、その全体像を見せていませんし、秘密をすべて明らかにもしていません。答えを求めている謎も残っていますし、いまだに光りの当たらないところに潜んでいる影もあります。しかし次の時までは、ギルドパクトがもたらすカードをお楽しみください。そして、ラヴニカで最も一般的で有益な信条に従うことをお忘れなく。「誰も信じるなかれ」……。

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