
ソリン・マルコフ
古の吸血鬼プレインズウォーカー、ソリン・マルコフが故郷の次元に帰ってきた。だがマルコフ家の後継者はその一族から歓迎されておらず、本人もそれを期待していない。彼の過去を知る者は、彼を口汚く罵る。イニストラードでは、ソリン・マルコフは裏切り者なのだ。

マルコフ家はイニストラードでも最も有力な吸血鬼一族のひとつであり、ソリンはステンシアにあるマルコフ荘園の敷地で、最高の特権階級のみが享受できる「人生」を送ってきた。何世紀もの間、彼は吸血鬼によるイニストラードの人間の虐待――それはときに単なる虐殺であった――が段々と激しくなっていくのを目の当たりにしてきた。
吸血鬼はますます力をつけ人間を食い荒らしていったため、人類の存続そのものが危うく思えるほどになっていたのだ。すでに強力なプレインズウォーカーとなっていたソリン・マルコフは、それがどんな結末を迎えるかを予見していた。人類は乱獲の末に絶滅し、それによって吸血鬼も滅びることになるだろう。ソリンは何とかしてこれを食い止める必要があると悟っていた。
彼は何ヶ月、ときには何年にもわたってイニストラードから姿を消した。他の吸血鬼は彼がある種の隠者であり、付き合いの悪い風変わりな御曹司なのだと捉えていた。だがソリンは同胞に知られることなく多元宇宙を旅し、故郷の次元が抱える難題の解決方法を探していたのだった。何年にも及ぶ調査の末、彼は画期的な計画を携えて帰郷した――それによって彼は、自分が救う吸血鬼から排斥されることになる。
ソリンは闇の勢力に立ち向かう人間を後押しする、真の力を備えた宗教を生み出した。そして彼は生きた盟約を作り上げた。それはアヴァシンという名の天使で、人類とその捕食者との均衡を保つことのできる存在であった。実際のところ、ソリンが生んだ信仰の正体は、この次元の人間を守護するために組み上げられた一連のエンチャントや呪文であった。彼の仕事は成功を収めた。これをきっかけとして人間は力を取り戻し、再び人口を増やしていったのだ。その後何世紀にもわたってこの宗教は発展し、栄え、ソリンが当初予期した以上に複雑な構造を持つに至った。
この宗教の根幹をなすエンチャントを維持するために、イニストラードに永久にとどまるわけにはいかない。ソリンはそう考え、自分がいない間もこの魔法を「新鮮に」保つ手段を講じた。すなわち彼は、護法や呪文を繰り返し唱えることで、この信仰の守護の魔法全体が強化される仕組みを作ったのである。人間に護法を何度も唱えさせエンチャントの力を強く保つため、彼はアヴァシンを信仰の中心に据えて、この世界に浸透していた月や死後の世界についての俗信を採り入れた。

だが今、彼の天使は姿を消し、イニストラードの闇の脅威がまたしても人間に迫っている。ソリンはこの地に舞い戻り、アヴァシンを探し出して人類の絶滅を阻止せんとしている。