ドラゴンとともに

更新日 Making Magic on 2013年 5月 1日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

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 『ドラゴンの迷路』プレビューが終わり、いよいよカードの話――私の場合、カードの話の話をする時期がやってきた。今日はプレイヤーズ・ガイドを片手に、『ドラゴンの迷路』のデザインに関する話を思い浮かぶままに綴っていこう。面白そうだと思うかね? それでは、始めよう。

 しばしば語ってきた通り、開発部はカードに関する膨大な議論を行う。ほとんどのプレイヤーがそのことは理解しているだろうが、どのカードに関して論争が行われているかは想像もできないだろう。例えば、その一例がこの《ワームの到来》である。

 このカードのどこに議論の余地があるのだろうか? まず我々はこれをラヴニカへの回帰に入れるために作ったが、少しばかりドラマチックな味付けをすると、こんな議論があった(私は賛成側だったのだ)

賛成: 「5/5の緑のワーム・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す」というのインスタント。いいじゃないか。

反対: 嫌ですよ。

賛成: なんでだ?

反対: 普通にクリーチャーにすればいいじゃないですか。

賛成: 居住メカニズムがあるから、コピーしたくなるトークンが欲しいんだよ。

反対: そんなこと、ユーザーがわかると思いますか? 最初に引いたカードがこれだったらどう思います?

賛成: それこそがマジックじゃないか。カードを読んで、すぐにその理由がわかるとは限らない。それから、その理由を把握しようとするんだ。なんでこれがクリーチャーじゃなく、トークンなのか? ってね。

反対: 「すごい……のかな? ちょっと使い方を考えてみよう」と思わせるカードじゃなく、「わあ、こいつはすごい」と言わせるカードを作ったらいいじゃないですか。

賛成: 全てのカードがそうであるべきだとは言ってない。ただ、そういうカードもあるべきなんだ。

反対: あるにしても高いレアリティに2〜3枚、ブロックの後半のほうがいいんじゃないですか?

賛成: そうだな、じゃあ『ドラゴンの迷路』に入れることにしよう。


 そして《ワームの到来》は『ドラゴンの迷路』に入ることになったのだ。

 リチャード・ガーフィールドは、マジックを作ったときに《クローン》というカードを作った。

 いろいろな面白いことをこなし、イカしたシェイプシフターである《クローン》は、すぐにみんなのお気に入りになった。みんなは言いすぎにしても、ほとんどの人が気に入ったんだ。気に入らなかったのは、ルール系の人々だった。《クローン》は当時のルールでは正しく処理できなかったからだ。問題は簡単に解決できるものではなかったので、長年にわたってクローンを作ることは禁じられていた。


 ウルザズ・サーガの時、私の主張が通って、ルール・マネージャーが《クローン》のルールを作ってくれた。そこで私はウルザズ・サーガのリード・デザイナーであったマイク・エリオット/Mike Elliottを説得して、《クローン》をセットに入れてもらった。イラストが出来た後になって、ルール・マネージャーは《クローン》の新しいルールが役に立っていないことに気付き、そのカードは《クローン》ではなくなることになった。

 我々は緊急にこのイラストにふさわしいカードを作ることになった。そのイラストは、《クローン》のイラストを元にしたものだった。最終的にできたのが、このカードだった。


 後のルール・マネージャーは《クローン》のルールを整備したが、この緊急に作ったカードは大人気を博した。「スーパーマン」とも呼ばれる《変異種》は、デザイナーとデベロッパーがよく参照するカードに名を連ねることになったのだ。この話をしているのは、《霊異種》が、その名前からもわかるとおり、《変異種》の一種だからである。

 大論争を引き起こしたのは、他の《変異種》系カードが起動型能力を5つ持っているのに、このカードは起動型能力を4つしか持っていないことである。論点は、明滅効果がクリーチャーをアンタップすると同時に被覆を与えるような振る舞いをするということだった。このカードが4つしか起動型能力を持たない本当の理由は、ふさわしい5つめの能力がなかったからである。我々は探したのだ。デベロップはこのカードを評価に回し、同じコメントを得た。明滅効果はこのデザインの鍵だが、長すぎて5つめの起動型能力を入れられなかったのだ。

 最終的に、我々は明滅効果を使うことにした。おそらく、プレイヤーからは「5つめの起動型能力はどこ?」というメールが大量に届くことだろう。

 もっとも単純なカードにもっとも複雑な話が絡んでいるのはよくあることだ。バニラの1/3に一体どんな物語があるのかと? それが、あるのだ。毎週火曜日、我々はデザインやデベロップに関する技術的問題を取り扱い議論を交わす、「カード技術/Card Crafting」と呼ばれるミーティングを開いている。

 何度も議題に上っている問題の1つに、黒と赤の類似性(白と緑の類似性も議題に上るが、それは今回の主題ではない)がある。この2つの色はかなりの部分が重複しており、開発部はカード技術のいくらかを費やしてよりはっきりと差を付けようと努力してきているのだ。

 類似点の1つとして、黒と赤がどちらもタフネスよりもパワーが大きいクリーチャーに寄る傾向があるということがわかっている。この2つの色を差別化するとなれば、どちらかの色でタフネスの方が大きいことがしばしばあるというようにすることが重要である。議論の結果、パワー高タフネス低がよりふさわしいのは、衝動で動き、慎重に考えるということをしない赤だということになった。

 つまり、黒には、タフネスの方がパワーよりも大きいクリーチャーが存在するようになる。《破滅小径の悪党》は、黒のクリーチャーの将来の姿を示しているカードのうちの1枚なのだ。

 このブロックの第3セットは面白い位置にある。ブロックの前半でギルドに生じた差異を埋めると同時に、ギルドの新しいデザイン空間を掘り出さなければならない。《猛火の猛士》はその後者の一例である。「ギルド門侵犯」でのボロス・デッキは、クリーチャーを可能な限り並べることが全てだった。《猛火の猛士》はボロス・プレイヤーにインスタントやソーサリーを使う数を考え、そして調整することを求めるカードである。

 《猛火の猛士》は同時に、『ドラゴンの迷路』が推奨しているあることをこなしている。ドラフトの速度が落ちていること、そしてブースター・パックの組み合わせから、プレイヤーは3色を使う傾向にある。《猛火の猛士》は、既に大量のインスタントやソーサリーを擁しているイゼットと組み合わせて使うようにデザインされたボロスのカードなのだ。前回前々回のコラムで語ってきた通り、『ドラゴンの迷路』には多くの目的があった。それを処理するための最善の方法の1つが、複数の目的を果たすカードを作ることである。《猛火の猛士》はその類のカードの1枚なのだ。

 デザイナーはしばしば、あり得ないほど奇妙なことをする。《狩りの仕込み》はその一例である。私がこのカードに興味を持ったのは、緑青であると同時にシミックのカードであり、両方のレベルでデザインされているからである。意味が掴めない諸君もいるだろうが、これがどれだけ難しいことか、私はよくわかっている。特に《狩りの仕込み》のような単純なデザインではなおのことだ。

 なぜ、プレイヤーの大半が気に入るとは思えない要素を持つカードを作るのか? そこにはいくつかの理由が存在する。

  1. 気に入る一団もいて、そのプレイヤーはこれでマジックに思い入れを持つ。ジョークというものは、一部の人にウケればいいのだ。理解するにも教養が必要なのである。
  2. プレイヤーが気付いてすらいなくても、その方がずっと美しい。美が重要なのは直接的な理由ではなく、間接的な理由からである。美しいカードには、理由がわからない受け手でも魅力を感じるものだ。
  3. カードが強くて、それ自身に注目を集めなくて、クリエイティブ・チームに問題がなければ、それ以上何を追加しようというのか?

 私は、私の仕事が好きだ。私の家族が好きだ。どちらにもかなりの時間と意識を注いでいる。そのため、私はしばしば限界を超えて働くことがあり、その結果、ミーティング中に居眠りをしてしまうことがある。なぜこの話をしているかというと、このカードのデザインの物語は『ドラゴンの迷路』のデザイン・ミーティング中に始まるからである。チームは穴を埋めようと、多色のイゼットのクリーチャーを探しており、ブレインストーミングが行われていた。私ははっと目が覚めた。チームはカードを作ろうとしている。今必要なカードは何かを聞いて、数秒後にこのカードを閃いたのだった。

 ここで、そう小さいとは言えない秘密を明かそう。私は、良いトップダウン・デザインが好きだ。「良い」と言ったのは、本当に特別なトップダウン・デザインというのは貴重な消耗品だからである。鍵は、それまでに組み合わされたことのないメカニズムを組み合わせ、そのカードのフレイバーの本質を完全に再現することである。《雇われ拷問者》はあらゆるものを組み合わせたことによる完璧な成果品である。従って、このセットにおける私のお気に入りのカードなのである。

 これもまた、このセットにおける私のお気に入りのカードの1枚である。その理由は2つあり、1つはデザイナー的観点から、1つはプレイヤー的観点からだ。デザイナー的理由は、このカードのシミックらしさである。シミックはマッド・サイエンティストのギルドだが、それらしいと言えるような要素はほとんど存在しなかった。もちろん、彼らが作ったものは目にしているが、その作業中の姿を見る機会はほとんどなかったのだ。少なくとも、メカニズム的にそうだと言えるものはなかった。《混成体の培養》は、実験を描いたトップダウン・デザインによってその問題を解決している。

 プレイヤー的理由は、このカードの元になったのが遠い昔のお気に入りカードだったからである。


 その昔、私は緑青のウィニー・ビートダウン・デッキを使っていた。そのデッキの鍵は、数体のクリーチャーを素早く出し、数ターンで20点与えるというものだった。そのために、ブロック・クリーチャーに対処する軽いカードが必要で、最初は《》こそその答えだと思ったのだ。対戦相手のクリーチャーを強化するのだが、それは即座ではなく3ターンも後の話であり、それまでにはゲームは終わっている。

 すぐに私は自分の誤りに気がついた(エンチャントできるのは自分のコントロールしているクリーチャーだけだ)が、このカードは面白かったので使い続けた。《混成体の培養》のようなカードを目にするたび、《》を思い出すのだ。《》と《混成体の培養》の最大の違いは、《混成体の培養》のほうが速く、そしてコントロール可能だというところだ。私はシミックをプレイしてこれを目にするたび、幸せになるのだ。

 このカードがプレビューで公開されて以来、同じ質問をずっと受け続けている。「なぜこの土地は伝説の土地ではないのか」だ。答えは2つある。

  1. 伝説の土地はもう作らない:初心者にとって、伝説の土地のゲーム・プレイは良いものではない。初期に引くためには4枚入れたいが(なんと言っても土地なのだ)、1枚しかプレイすることができない。そして、残ったカードは《露天鉱床》(面白さを台無しにするカードの代表)と化してしまう。また、土地としてひとまとめに置かれていると、気付かずに2枚目を出してしまうこともある。それでは台無しだ、ということで、非常に稀な例外(《ウギンの目》、見てるんだか見られてるんだか)を除いて、伝説の土地は作らないことにしたのだ。
  2. クリエイティブ的に伝説の土地ではない:マジックにおいて、土地カードは実際の土地を表しているというわけではなく、その土地から得られるマナとの繋がりを表している。ある特定の場所を複数回タップしてマナを出すことは可能である。同じキャラクターを2体出すことができないからといって、同じ場所を複数回タップしてマナを出すこともできないということにはならない。

 《ウギンの目》のような例外を作るのなら、なぜ今回は例外にしなかったのか? 《ウギンの目》は戦場に複数枚出されたくなかったので、「伝説の」という特殊タイプを与えてフレイバーと同時にメカニズム的制限を課した。《迷路の終わり》にはそういう問題は存在しない。4枚戦場に出されても、特に問題はないのだ。

 「ギルド門侵犯」で「研磨/Grind」(土地カードがめくれるまでライブラリーの一番上からカードを削っていくというメカニズム)がディミーアのメカニズムだった頃、デザイン・チームは研磨に数字を着けるべきかどうか議論していた。必要性を示すため、「研磨3を行う」というサボタージュ能力つきのクリーチャーを作った。私の記憶が正しければ、そのクリーチャーは飛行を持っていなかったと思う。

 ディミーアのメカニズムが研磨から暗号になって、研磨カードが大量に残されたので、このカードがはじき出された。『ドラゴンの迷路』のチームは、これをディミーアの勇者にすることに決め、研磨を3から4にして、さらに飛行まで与えたのだった。

 諸君の質問に答えよう。「これは《Mana Drain》か?」

 基本的には、その通りだ。《Mana Drain》は無色のマナだけを精製したが、それは細かいことだ。《原形質捉え》は、《Mana Drain》の適正な色やコストに関する長年の議論から生まれたカードである。呪文を打ち消すという部分は間違いなく青だが、マナを生み出すのは緑か赤だ。この2つの能力を兼ね備えるとなると、青赤よりも緑青の方がいいと感じられた。


 何にせよ、我々はこの議論を『ドラゴンの迷路』のデザイン・ミーティングの間にも何度となく繰り返してきた。そして、とりあえずの結論を付けることにした。《Mana Drain》のコストはどうあるべきか? それは、である。

 ああ、《ラル・ザレック》。彼のことを知っていた諸君は、彼の登場を彼を息を潜めて待っていたに違いない。彼のことを知らなかった諸君のために、これから紹介させてもらおう。数年前、デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズの最新作を作っていたとき、クリエイティブ・チームはプレインズウォーカーが不足していることに気がついた。さらに正確に言うと、デュエルズに入れたかったデッキ2つにふさわしいプレインズウォーカーがいなかったのだ。

 既存のプレインズウォーカーはどれもどちらのデッキにも合わなかったので、新しいプレインズウォーカーをデザインするという決定がなされた。人気が出たら、セットに入れることは可能だ。実際、すぐにラル・ザレックとキオーラ・アトゥアをカードにして欲しいというリクエストは来はじめた。マジックに取り入れるにあたって、ふさわしい舞台を与えなければならないことはわかっていたので、無理にねじ込むのでなく、ふさわしい舞台で登場させることにしたのだった。

 ラル・ザレックはラヴニカ出身でイゼット・ギルドの一員なので、このブロックで登場させるべきだと言うことは考えるまでもなかった。最大の問題は、どのセットで登場させるべきかだった。『ラヴニカへの回帰』か、それとも『ドラゴンの迷路』か(イゼットのプレインズウォーカーをイゼットの入っていない『ギルド門侵犯』に入れるのはおかしなことだ)。しばしの議論の末、『ラヴニカへの回帰』にはジェイスを入れることになった。名の知られたプレインズウォーカーを『ドラゴンの迷路』の「顔」にしたかったので、ラルを第3セットに回すことにした。諸君が彼との出会いを楽しんでくれることを期待している。

 キオーラ・アトゥアは? 彼女もやがて、ふさわしい舞台に巡り会ったときに登場することになるだろう。

 私のお気に入りのデザインは、何かの問題を解決しようとして結果的に他の問題も解決していることから来ている。今回の場合、《種喰らい》は進化を可能にするために作られた。考えは単純で、進化クリーチャーをもっと進化させるにはどうしたらいいかというと、大きなクリーチャーをより多く戦場に出せばいい、というものだった。そのためには? 手札に戻して、もう一度唱えられるようにすればいい。

 次のテクニックは、自分のクリーチャーを手札に戻すことをコストとして、平均よりも強いクリーチャーに作ったことだった。デッキを作るにあたって、不利な点を有利な点に変えること。それこそが多大な楽しみなのだ。プレイヤーが解鎖クリーチャーをリセットしたり、(留置などの)戦場に出たときの能力を持つクリーチャーを再利用したりするというのは楽しいことだ。これはリミテッド環境が3色に移行した中では、特に重要になる。

 待って、これはインベイジョンの《アルマジロの外套》じゃ?

 絆魂のような能力は今はただの絆魂になったが、本質的には、その通りだ。なぜ再録しなかったのか? クリエイティブ・チームが《アルマジロの外套》のフレイバーを良しとしなかったからである。遠い昔に作ったクリエイティブ・チームは別のチームで、当時は時々こういった冗談を使っていた。開発部はメカニズム的にはこのカードを戻したかったので、クリエイティブ・チームはこのカードの意味づけを改め、カードに新しい名前を与えたのだった。

 『ギルド門侵犯』のデザイン初期に、私は各ギルドに印象的な再録カードを与えようと試していた。ボロスの選択肢は明らかに《稲妻のらせん》だったが、やがて《炎まといの報復者》(《稲妻のらせん》を組み込んだ大隊カードと言える)を作り、《稲妻のらせん》をただ再録するよりもイカしていると決定した。

 『ドラゴンの迷路』では、《稲妻のらせん》に再挑戦した。再録カードが多すぎたので、このカードは調整され、《戦導者のらせん》に生まれ変わったのである。


 本日はここまで。いつもの通り、今日話題にしたカードに関するフィードバックを心待ちにしている。メール、掲示板、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+)で伝えて欲しい。

 それではまた次回、『ドラゴンの迷路』の別の一面を掘り下げる日にお会いしよう。

 その日まで、魔法のカードがあなたにも多くの物語を運んできてくれますように。


(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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