モダンの生命

更新日 Making Magic on 2019年 5月 27日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

 先週、イーサンと私が、熱心なプレイヤーに照準を合わせた複雑で郷愁あふれるサプリメント製品を作るというアイデアを、いかにして1週間のハッカソンのプロジェクトにして、最終的に2019年の革新的製品にしたかという話をした。どのようにチームを構成し、最初に多相メカニズムを接着剤としてセットに入れることから始めたという話をした。今週は、このセットに投入した数多くのテーマについての話をしよう。また、長年のプレイヤーを笑顔にする、とても心躍るプレビュー・カードも用意している。さて、それでは『モダンホライゾン』の展望デザインの話をしよう。

多相

 まず最初に、先週取り上げたことについてもう少し掘り下げることにする。多相は、このセットの接着剤として使われるためにファイルに追加された。これによって可能になったことがいくつかある。

#1 - 部族テーマを散らす

 通常、セットでは、そのセットに一定レベルで存在していない限り(つまり、そのクリーチャー・タイプの開封比が充分大きくない限り)、アンコモン以下に部族テーマを入れるのは難しい。多相を持つクリーチャーをいくらか入れることで、すべてのクリーチャー・タイプについてその閾値を超えさせることができるようになり、あらゆる部族カードが採用できるようになるのだ。これはプレイヤーたちがずっと望んでいたカードを追加する上で非常に役に立つ。また、これから見る通り、部族要素はこのセットの基軸の大きな基礎となっている。

#2 - 単純なカードを作る

 『モダンホライゾン』は全体としてスタンダードで使えるセットよりも高い複雑さのレベルの製品として作られたものではあるが、それでも投入できる複雑さには限りがある。多相の存在により、バニラ(他のことは何もしない)、フレンチバニラ(クリーチャー・キーワードを1個か2個持っているだけ)、あるいは他に1行だけのルール文を持つ、といったカードを相当数作ることができるようになった。

#3 - 古いカードへの振り返り

 多相カードの多くは、多相能力無しでこれまでも何回も繰り返している昔の単純なカードを振り返っている。

 多相は白と黒に存在し、緑と多色とアーティファクトにも少量存在している。さらに、我々はコンセプターに、このメカニズムの新しい外見的特徴を作ってもらった。

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スリヴァー

 『モダンホライゾン』のテーマの元になったのは、プレイヤーたちからの絶え間ない要求だった。私が言われたテーマの中では、「スリヴァーを再録してほしい」というのが一番多かったのではないだろうか。スリヴァーは『テンペスト』ブロックで初登場した。その後『オンスロート』ブロックで再登場し、さらに『時のらせん』ブロック、そして『基本セット2014』、『基本セット2015』でも再登場した。スリヴァーは、『アルファ版』の《疫病ネズミ》に触発された、お互いに能力を共有し、集団意識を表すクリーチャーの種族である。(厳密には、スリヴァーは集団意識を用いて新しい身体の部品を形作る方法を共有する、形を変える生物であり、それによって新しい能力を得ている。)

 スリヴァーに関する最大の課題の1つが、長年の間に何回も登場させてきたことで、スリヴァーのデザイン空間の多くをすでに食いつぶしてしまっていることである。それぞれがキーワード能力を持たなければならず、まだ使っていない常盤木キーワードはそれほど残っていないのだ。しかし、『未来予知』から魅力的な小技が学び取れた。大量のメカニズムが使えるセットに入れる場合、スリヴァーはスリヴァーの存在しなかったセットで登場したクリーチャー能力と組み合わせていくことができるようになるのだ。『モダンホライゾン』は間違いなくそういうセットである。多相によって可能になった部族テーマと組み合わせると、このセットはスリヴァーを再登場させるのに最適な場所だと思われた。

 スリヴァーは(訳注:原文では誤ってChangelingになっています)5色全てに存在するが、赤と白に集中しているので、このセットをドラフトしてスリヴァーをプレイしたいと思う諸君には、ボロス色にこだわることをお勧めしておこう。

 次に行く前に、デザイナーの話をしておきたい。スリヴァーをデザインするにあたって楽しいことの1つは、常にお互いに先んじようとすることだった。チームの他の全員が「それは無理だ」と言うようなスリヴァーをデザインできたなら、それはうまいことやったということである。正直なところ、私がデザインした時にまさか日の目を見ることはないだろうと思っていたものが数体あったので、我々のスリヴァーのデザインでプレイデザインに許容されたものの多さには驚いている。これは、スリヴァー・ファンの諸君に、心躍る新しいスリヴァーが待っているということを伝えているだけである。

忍者

 もう1つよく要求されているのが、忍者をもっと増やしてほしいということである。マジックで忍者が初登場した『神河謀反』には、9体しかいなかった。『統率者(2018年版)』では、2体の忍者が増えた。『Unstable』ではさらに3体増えた。これで全部だ。マジック史すべてを振り返っても忍者は14体しか印刷されておらず、黒枠に限るなら11体だけなのだ。(ここで言っているのはタイプ行に「忍者」と書かれているものだけであり、《霧衣の究極体》や多相クリーチャーは数に入っていない。)間違いなく、抑圧された要求が存在する。そして『モダンホライゾン』は部族テーマに寄っているので、忍者はふさわしいと思えた。

 最初に決定したことは、忍者をすでに忍者が登場したことがある色である青と黒に限ることだった。黒枠の忍者はこれまでどれも忍術能力を持っていたので、ほとんどの忍者には忍術能力を与えることにしたが、低いレアリティには少しだけ持たないものを作ることにした。ただし、それらも忍者らしく感じられるようなメカニズムを持たせるようにした。

 忍者に関する我々の目的は2つあった。1つ目に、それを青黒のドラフトの戦略にしたいと考えた。2つ目に、充分な忍者(や忍者関連のカード)を投入することで、プレイヤーが忍者デッキを組みやすいようにしたいと考えた。私は、これらの課題を達成していると楽観的に考えている。諸君、よい忍者を!

ゴブリン

 プレイヤーがドラフトの基柱にするのを楽しみ、またモダンでも使えるような部族テーマは何だろうか。ゴブリンと答えた諸君は、小見出しを読むことができているようだ。そう、ゴブリンはいくつかの理由から、このセットの楽しい追加になると考えられた。第1に、モダンにはプレイヤーが楽しんでいて数枚の新しいカードを使える、さまざまなゴブリン・デッキが存在している。第2に、ゴブリンには長く有名なマジックの歴史があり、何枚かのゴブリン・カードを再録することも、また昔の有名なゴブリン系カードを振り返るような(あるいは、他の部族カードをゴブリン系カードに変換した)新カードを作ることもできるのだ。

 そのために、我々はゴブリンを2色目に広げる必要があった。歴史上、ゴブリン陣営を2色目に広げたセットは2つある。『ローウィン』ブロックでは、ゴブリンは赤と黒に存在した。『Unstable』では、ゴブリンは赤と緑に存在した。(厳密に言えば、『シャドウムーア』には緑のゴブリンもいたが、その数はわずかだった。)黒には唯一の黒のゴブリンが多く、銀枠よりも黒枠のほうが前例としてふさわしいので、黒を2色目として採用することにした。

 ドラフトでの黒赤ゴブリンのアーキタイプは、大量のゴブリン・トークンを生成し、それをさまざまな方法で生け贄に捧げられるようにすることでゴブリンの混沌性を扱ったものである。スリヴァーや忍者と同じく、多相テーマ(黒で。赤には多相は存在しない)はデッキを埋める助けになる。

さまざまな部族

 多相という基礎によって、1枚限りの部族カードを大量に入れることもできるようになった。それらは、2つの基本的な用途を意識してデザインされている。1つ目に、何年にも渡って受けてきた部族のリクエストが大量にあるということ。それらすべてを満たすような部族テーマを作ることはできなかったが、そのクリーチャー・タイプのファンには自分のデッキを強化する助けとなる部族カードを1枚与えることができた。2つ目に、これはプレイヤーがドラフトの基柱にしたいと考えるような楽しいことに思えた。できるだけ多様なカードを選び、そして多相という接着剤を使ってそれらをプレイするのだ。この2つ目のテーマはリミテッド向けだが、同時にカジュアル構築でも使えるものであった。

 多相は白と黒に集中しているので、低いレアリティの1枚だけの部族カードはその2色のどちらかでなければならない。他の色やその組み合わせにも部族で利益を得るカードはありうるが、それらは構築の基柱カードとなるような高いレアリティに存在していることが多いのだ。

 他に多相が果たしていることは、プレイヤーがさまざまな部族テーマを、スリヴァーや忍者やゴブリンからカを借りてプレイできるようにすることである。スリヴァーは白に多く、忍者とゴブリンは黒に多い。つまり、白黒でさまざまな部族を使ったデッキをドラフトするプレイヤーは、他のプレイヤーがドラフトするカードの一部にも興味があるということであり、我々はドラフトごとに多様性が出るようになるためにこのセットにそう組み込んだのだ。諸君が最も楽しむ部族向けの部族で利益を得るカードを求めていた諸君全員が満足できるものを我々が作るということは約束できないが、諸君の多くには少なくとも1枚の新しい部族カードを(そして、そうでない諸君にも、大量の多相カードを)提供するだろう。

氷雪

 もう1つ、非常に多かった要求が、氷雪カードをもっと作ってほしい、特に氷雪基本土地を再録してほしいというものだった。興味深いことに、氷雪テーマが採用されたのはセットデザイン中のことであった。初期には、我々は他の土地関連のテーマを掘り下げていたが、どれもうまく行かなかったのだ。セットデザインの途中で、プレイヤーが共通して求めている土地関連のものはないかと聞かれて、氷雪土地を取り上げることになったのだ。

 氷雪基本土地は、最初は氷雪土地だけを参照する何枚かのカードと同時に、『アイスエイジ』で印刷された。『アライアンス』では氷雪テーマへの振り返りがわずかにあった(このセットのデザイナーには、このセットを『アイスエイジ』の続編にするという意図はなかったので、このセットにあった数枚の氷雪カードはデベロップによって作られたものであった)。しかし、土地は存在しなかった。『コールドスナップ』は『アイスエイジ』ブロックの「失われた」第3セットとしてデザインされたものだったので、氷雪テーマが再登場しており、氷雪マナをコストとして使い、氷雪という特殊タイプを土地以外のパーマネントにも持たせた。『コールドスナップ』では、氷雪基本土地の再録も行なわれた。『コールドスナップ』に収録されたことで氷雪基本土地はモダンで使用可能になり、カードパワーの高い氷雪関連カードの存在によってプレイヤーがそれを求めるようになったという点でこれは重要だった。

 セットデザインは氷雪基本土地のサイクルで(そして他ならぬフルアート枠で)収録することを決めた。

冠雪の平地冠雪の島冠雪の沼

冠雪の山冠雪の森

 それを補助するため、彼らはさらに、氷雪パーマネントをコントロールしていることを参照するカードや氷雪マナをコストとして持つカードといった、何枚もの氷雪関連カードを入れた。このテーマは(自然と水の色である)緑と青に割り当てられ、ドラフトのデッキ・アーキタイプとして採用された。また、氷雪テーマはアーティファクトにも、少量ながら白と黒にも存在する。

墓地の土地

 テーマの多くはプレイヤーの要求を叶えようとすることから生まれたものだが、そうでないものもある。その好例が、「墓地の土地」テーマである。昔のメカニズムを持ったカードを作っていて、もっともふさわしいと思われる色に入れていったところ、赤や緑に入れていたメカニズム(キーワードもそうでないものも)の多くは土地を墓地に置くものだったことに気がついた。土地が墓地にあることで利益を得るカードを数枚追加しただけで、突然、それまで関係なかったカードがシナジーを持って動くようになったのだ。これは、デッキ・アーキタイプに編み入れることができるような、繰り返されるテーマを見つけることができる状況の好例である。

 特定のメカニズム的テーマに加えて、『モダンホライゾン』にはいくつかの目標に向かっていた。

大量のメカニズム

 我々は、『時のらせん』のようなセットを作ろうと試みていた。そのために必要だったものの1つが、大量の、さまざまなキーワードだった。特に熱心なプレイヤーたちが『時のらせん』を愛しく思っていた理由の1つが、昔のキーワードを大量に使っていたことである。それらのキーワードをもう一度使えたり、それらをお互いに組み合わせたりすることはとても楽しかったのだ。我々はその雰囲気をもう一度作りたかったので、『モダンホライゾン』は可能な限り多くのメカニズムを使うという方針だった。これは、諸君がこのセットをプレイした時に体験できることの1つだ。過去からのメカニズムがあふれそうなほど詰まっているのだ。そう、そうすると複雑さは増すことになるが、とても独特なプレイ経験を生み出すことにもなる。このセットのハッカソンでのコードネームが「退廃」だったのは無意味ではないのだ。

大量のシナジー

 『時のらせん』ブロックがしたことの中で今回真似たものには、もう1つ、大量のシナジーをセットに編み込むというものがある。クールなコンボはマジックの歴史の豊潤な部分であり、このセットのリミテッド経験によってマジックの過去を混ぜ合わせたことで巧みさを感じられるようにしたいと考えたのだ。これは、似たような要素(墓地、インスタントやソーサリー、クリーチャーの戦闘、など)を扱っているマジックのメカニズムの多くはお互いに上手く噛み合う、自由度の高いカードを作ることができるという事実に基づいた部分が大きい。このセットをプレイすると、これまでに派手で魅力的な方法では組み合わせたことがなかったものを組み合わせることができる瞬間が多くあることに気づくだろう。

郷愁

 この製品は熱心なプレイヤー向けなので、可能な限り郷愁にも寄せるようにした。つまり、可能なときには既存のものにつなげるということをすべての工程で意識していたということである。ただし、それらの既存のものがレンズ状である、つまりその元ネタに気づけばカードに追加されるが、気づかなくてもそのカードを体験する邪魔にはならない、ようにすることが技だった。このセットは、メカニズム的にもクリエイティブ的にも、イースターエッグはマジックの過去への参照でいっぱいである。この記事を書くために、私はこのセット全体を見返し、そしてカードを見ては満面の笑みを浮かべたのだ。長かれ短かれマジックをプレイしてきたマジックのファンなら、私と同じようにこのセット全体を見たら笑顔になることだろう。

他のフォーマット

 『モダンホライゾン』という名前はもちろんこのセットがモダン向けであることを示唆しているが、我々はそこにとどまりはしない。このセットはあらゆる種類のマジック・プレイヤー向けである。例えば、統率者戦プレイヤー向けのおもちゃが大量にあるようにするためにかなりの時間をかけた。伝説のクリーチャーがたくさんいて、その中にはプレイヤーがずっと望んでいたマジックの過去の人物も大量にいる。キューブのプレイヤーには、昔のメカニズムを使った新カードを大量に入れたし、その中には過去にはそのメカニズムが存在しなかった色のものも多い。カジュアル・プレイヤーには、新しいクリーチャー・デッキを作れるように大量の部族カードを入れた。ヴォーソス向けには、とにかく大量の、マジックの物語や人物、世界への参照が含まれている。その中には初めてカードになったものもある。(今日のプレビュー・カードはそんな中の1枚だ。)基本的に、このセットはマジックを愛し、ちょっとだけ高い複雑さに怯えていない諸君みんなのためのものである。プレビューに今後も注目してくれれば、このセットに欲しいものが何もないという人はほとんどいないということがわかることだろう。

 統率者戦プレイヤーやヴォーソス向けのカードを作るという話になれば、今日のプレビュー・カードがある。少しばかり風変わりなものだ。プレイヤーが長年カード化を求めてきた人物の、伝説のクリーチャー・カードである。長年だ! それでは、ヨーグモスをお目にかけよう。そうだ。私のプレビュー・カードはヨーグモスだ。公式に言えば、《スランの医師、ヨーグモス》(つまり若いヨーグモス)である。

ここをクリックして《スランの医師、ヨーグモス》を表示

スランの医師、ヨーグモス

 ヨーグモスは、マジックのほぼ一番最初から(兄弟戦争が描かれた、史上2つ目にあたるエキスパンション『アンティキティー』で)存在した人物である。ヨーグモスはスランの一員である人間の医師として登場し、その後にファイレクシア人を率いるようになった(現在新ファイレクシアにいるものではなく、初期の種族である)。そして、ファイレクシアの世界(これも最初のもの)を作ったのだ。このセットでは+1/+1カウンターと-1/-1カウンターの両方が存在できるということを正気に決定していた。これは高い複雑さを目指していたからである。-1/-1カウンターを生成することと増殖を組み合わせることで、ヨーグモスにファイレクシアの関与が近づいていることを暗示できると考えたのだ。なんにせよ、私のメールボックスが指標にできるなら、ヨーグモスがカード化されたことは多くのプレイヤーを満足させられうことだろう。

モダン一家

 本日はここまで。このセットの多くのテーマを見てきたことを楽しんでもらえたなら幸いである。『モダンホライゾン』を正しく理解するにはプレイする必要があるということはどれだけ強調してもし足りない。これは通常のリミテッドとは違うが、しかしとにかく楽しいのだ。諸君にはぜひプレイして、そして感想を聞かせてもらいたい。私にメールや、ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagram)を通じて、今日私が語ったことやその他『モダンホライゾン』に関する考えを聞かせてくれたまえ。私がこのセットにどれほど自慢に思っているか、諸君がこれを体験してくれるのを待ちきれない気持ちでいるかが伝わっていれば幸いである。

 それではまた次回、「900回記念」でお会いしよう。

 その日まで、我々が『モダンホライゾン』を作っていたときと同じようにあなたが『モダンホライゾン』をプレイして笑顔になれますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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