先手必勝
先制攻撃。それはマジックが始まったときから存在していたメカニズムだ。
《白騎士》と《黒騎士》という伝統的な対立像から《Lance》のようなカードへの知られざる進出までを含め、先制攻撃は確かに存在していた。それは1993年から今までずっとあり続け、変わることなく先にダメージを与え続けている。
そして23年以上行われ続けているゲームプレイから得られるのは、このメカニズムについて学ぶための重要な教訓だ。その中には第一印象……ファースト・インプレッション(あるいはファースト・ストライク)では分かりにくい教訓もある。
少し前に、飛行というメカニズムとその多様な扱い方について、「飛行という発明」という記事を書いた。今日は、先制攻撃について同様に解説していこうと思う。
先手を取っての一撃をお見舞いする準備はいいかな? いくぞ!
一番槍
先制攻撃は、たまにクリーチャーにくっついているちょっとしたテキストに過ぎず、特に関係のないものだと思われがちだが、ゲームプレイに大きな影響を与えるものだ。先制攻撃が何をするのかを一言で表すならば、これが本質を捉えているだろう。「先制攻撃は、戦闘でそのクリーチャーが他のクリーチャーを追い払えるようにする。」
それは飛行のように回避能力の形をとる場合もあるが、飛行とは違い、大規模な防御形態をとることもある。今日はその両方を見ていこう。
しかし先に考えたいことがある。先制攻撃持ちのクリーチャーが欲しい状況とは、どんなものだろうか?
先制攻撃は「クリーチャー戦闘キーワード」という枠組みに分類される。つまり、対戦相手のデッキにクリーチャーが入っている場合に、大きく影響するということだ。逆に、対戦相手がクリーチャーを入れていなかったり、先制攻撃の意味がほとんどない大型クリーチャー数体でゲームを終わらせるつもりであれば、先制攻撃はほとんど何もしない。
「飛行という発明」から同様の例を用いてみよう。クリーチャーが入っていない《パラドックス装置》デッキと対戦している場合、先制攻撃は何もしない。同様に、主な勝ち手段として《奔流の機械巨人》を利用するコントロール・デッキに対しても、先制攻撃はあまり役に立たないだろう。空を飛んでいない機械巨人を回避する助けになる飛行とは異なり、先制攻撃は十分に先制攻撃持ちを並べることができれば、ようやく機械巨人が攻撃を躊躇するかもしれない、という程度だ。素晴らしいとは言えない。
しかしながら、クリーチャーを展開しあうデッキ同士の対戦であれば、先制攻撃は極めて効果的だ。そして飛行が攻撃を押し通す点で強い能力である一方、先制攻撃は防御能力という別要素を併せ持っている。飛行ではあまり恩恵を受けられない要素だ。
では、先制攻撃の2つの形態それぞれについて調べていこう。
侵略のための攻撃
攻撃に向かわせる場合、先制攻撃は序盤にかなり強く、ゲームが進むにつれてかなり弱くなっていく。
序盤は、本質的には回避能力となる。対戦相手は、こちらの先制攻撃持ちクリーチャーの攻撃に対して、0対1交換を――つまり「チャンプブロック(訳注1)」を――迫られるだろう。
(訳注1:チャンプブロック/時間稼ぎのために、やられることが確定していながら行うブロック)
《異端聖戦士、サリア》で攻撃したとき、対戦相手が《巻きつき蛇》でしかブロックできない場合、実際にブロックされることはほとんどない。《巻きつき蛇》を無意味に失うことになるからだ。
ところが、この展開にパワー2のクリーチャーを1体追加するだけで、その内容はすぐに変わってしまう。対戦相手の《巻きつき蛇》が2体だとしよう。そこに《異端聖戦士、サリア》で攻撃した場合、対戦相手はサリアを2体でブロックできる。先制攻撃で1体を倒すが、そのあと残った側からの通常ダメージでサリアは倒されてしまう。
この一連の流れの中で、対戦相手のこの行動には多少の危険が伴っている。こちらに除去呪文やパンプアップ(訳注2)呪文があれば、その1枚を使うだけで対戦相手のカード2枚……《巻きつき蛇》2体を倒すことが可能だ。しかし、基本的には、クリーチャーがお互いに並び始めると、先制攻撃持ちの攻撃は複数のクリーチャーでブロックするだけで容易に排除できるようになっていく。
(訳注2:パンプアップ/クリーチャーのパワーやタフネスを上昇させる効果)
デッキに除去を満載しておけば、先制攻撃の強さは確実に上昇する。かなり攻撃的でダメージをどんどん与えるデッキであれば、後半のことは考慮せず序盤から可能な限りダメージを与える形となり、先制攻撃の力も高まる。
では、防御的な計画を立てている場合はどうだろうか?
先制しての防衛
先制攻撃というメカニズムが攻撃的か防御的かと尋ねれば、ほとんどのプレイヤーは攻撃的だと答えるんじゃないだろうか。攻撃を押し通し、パワーに関係し、しかも名前に攻撃と書いてある!
ところが、すべての攻撃的な場面での役割を十分に考慮したとしても、先制攻撃が真に活躍するのは防御的な場面だろう。私は、先制攻撃はその攻撃的な要素に比べると、防御的な要素のほうがはるかに強力だ、と主張したい。理由は次の通りだ。
先制攻撃で攻撃したとき、対戦相手は2体(あるいは3体、4体、以下略)でブロックすることで、先制攻撃持ちクリーチャーを確実に倒すことができる。単にクリーチャーを複数用いるだけで、先にダメージを与えるという先制攻撃固有の利点をつぶせてしまうんだ。
ところが先制攻撃持ちが防御に回ると、そうはならない。攻撃クリーチャーが何体いても、先制攻撃持ちのブロッカーと対峙するのはそのうちの1体だ。よって、先制攻撃持ちのクリーチャーが防御のためにアンタップしているところに攻撃を通すのは困難を極める。
『カラデシュ』のリミテッド環境から例を取り上げてみよう。こちらは《変速の名手》を、対戦相手は3体の《博覧会の歓迎者》をそれぞれコントロールしている。
こちらのクリーチャーは1体、対戦相手のクリーチャーは3体だ。しかしこちらには先制攻撃がある!
もしこちらから攻撃すれば、対戦相手は単にダブル(かトリプル)ブロックして、1対1交換を済ませるだろう。それでは先制攻撃があってもなくても同じ結果だ。
しかし防御に徹したらどうだろう? この2/1先制攻撃1体で、3体すべてを立ち往生させられる。《博覧会の歓迎者》を1体失う覚悟で全てのクリーチャーを攻撃させて、こちらのライフを削りに来る……そんな状況にでもならない限り、対戦相手は攻撃してこないだろう。
先制攻撃持ちが複数並ぶと、突破はさらに難しくなる! マジックの開発部では、これを「先制攻撃の壁」と呼んでいる。(先制攻撃を持つ壁の存在を考えると、混乱を招く呼称かもしれない。)先制攻撃持ちのクリーチャーが1体増えるごとに、そこへ向かっての攻撃がより困難になることを表現しているんだ。
それを説明するために、少し状況を変えてみよう。今度は、《僧帽地帯をうろつくもの》の出番だ!
こちらは《変速の名手》を3体コントロールしているが、対戦相手は《僧帽地帯をうろつくもの》を2体コントロールしている。相手のクリーチャーは強大だ!
対戦相手のライフが2以下でないなら、《変速の名手》で攻撃してはいけない。無駄死にだ。
……ではもう一度、この状況で防御に回ってみよう。対戦相手は《僧帽地帯をうろつくもの》で攻撃することができない! 攻撃してきた《僧帽地帯をうろつくもの》を《変速の名手》3体でブロックすることで、こちらはクリーチャーを全く失わずに《僧帽地帯をうろつくもの》を撃退可能だ。
これが先制攻撃の本当の強さだ。先制攻撃についてリミテッドで最も見かける間違いの1つが、ブロックのために温存しておくべき状況であるにもかかわらず、先制攻撃持ちクリーチャーで攻撃してしまい、余計なダメージを受けてしまうというプレイだ。常に自問してみよう。今、状況的に攻めているのは自分と相手のどちらだろうか? 自分が攻める状況にないのであれば、先制攻撃持ちを残しておいて相手の攻撃をけん制することで、状況を改善していけるだろう。
スリーストライク、アウト
実際のゲームで先制攻撃を戦術的に用いる方法について、理解してもらえたのなら幸いだ。これはマジックの中心的メカニズムの1つであり、よりよく運用できればより良い結果が得られるだろう。
構築環境においては相手のデッキによってメカニズムの当たり外れが出てしまうが、リミテッドではほぼ常に関係してくる――そして先制攻撃は、自分が攻撃していても防御していても、考慮しておくべき強力な能力であることに間違いはない。
今回の記事について何か考えや疑問があるなら、ぜひとも聞かせてほしい! Twitter、Tumblr、あるいは昔ながらのメールがよければBeyondBasicsMagic@gmail.comに(済まないが英語で)感想を送ってくれればいつでも拝見させてもらうよ。
また来週会おう。それまでは、先手必勝できているといいね!
Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com
(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing)