死の接触
我々は《茂みのバジリスク》以来、長い歴史を積み重ねてきた。
《茂みのバジリスク》は、『アルファ版』で登場したクリーチャーだ。接死の原型と言える能力を持っていて、さまざまな印象深い記録が思い出されることだろう。(《茂みのバジリスク》と《寄せ餌》のぶっ壊れコンボで対戦相手をロックし続けた人は手をあげて!)それ以降何年にも渡って、《茂みのバジリスク》や同類の能力を持つカードが登場するものの、キーワード化はされてこなかった。
《茂みのバジリスク》は《低地のバジリスク》になり……ついには《大いなるバジリスク》となる。
接死というキーワード能力は『未来予知』で(《ソーンウィールドの射手》のおかげで)初登場し、その後『ローウィン』でより存在感を増すことになった。それは特にほとんどのリミテッド環境で――そして構築環境でも――顕著に表れる。なぜなら、《チフス鼠》から《不屈の神ロナス》に至るまで、それがどんなクリーチャーであっても、接死での相打ち狙いには対戦相手をしかめっ面にさせる効果があるからだ。
どうして接死について話しているのかって? ああ、メカニズムについて扱う記事シリーズの最新作は、接死について扱ってみようと思ってね!(過去の記事は「飛行という発明」と「先手必勝」だ。)
なぜ今回は接死が題材となったのか? ああ、今や破滅の刻が訪れ……多くの人々が眼前に死の接触を感じ取っているからさ。
準備はいいかな? 接死について調べてみよう!
接死を深く知る
まず何よりも接死が得意なのは、戦闘で相手のクリーチャーを確実に倒すことだ。
その点で言えば、飛行や先制攻撃と同様に、接死も「クリーチャー戦闘キーワード」分類にすっぽり収まる。対戦相手がクリーチャーをほとんど使ってこないならば、接死はあまり役に立たないだろう。例えば、スタンダードのメタゲーム(訳注1)でコントロール・デッキが流行している場合、接死はほぼ無意味だ。あるいは対戦相手が飛行クリーチャーでこちらを攻撃してくる場合も、飛行を持っていない接死持ちクリーチャーにできることはほとんどない。
(訳注1:メタゲーム/どんなデッキやカードが流行しているか)
ああ、欠点はそんなところだ。となると、接死の強いところはどこだろう?
接死のありようは少々興味深い。クリーチャーが戦闘で勝てるなら、接死は何もしない。しかし戦闘で負けるなら、それと確実に相打ちを取ってくれる、というのが接死の良いところだ。例えば《墓所のタイタン》にとって、接死は相性の良い能力とは言えないだろう。
となると、接死を必要とするのは、対戦相手がこちらよりも大きいクリーチャーを持っている時だ。
緑には大型クリーチャーが余るほどいるので、結果的に緑に対して効果的ではあるものの、接死はどの色が相手でも役に立つ。重要なのは、大きさで相手を上回れない時に、攻撃を通したり守りを固めたりするのに役立つ道具である、という点だ。
その2つの状況について話を進めてみよう。
攻撃的な接死
攻撃時における接死の基本的な強さとは、攻撃に行ける、という影響をもたらすところにある。
あなたは『アモンケット』ドラフトに参加し、速攻系の黒赤デッキを組むことができた。今は相手のライフを10点にまで減らしたところで、そこまではいいのだが、手札を全て使い切り、墓地から使えるカードもない。対戦相手はここで《巨大百足》を引き当てて、小型クリーチャーを並べているこちらに対して盤面を膠着させることに成功した。
こちらには2/1の《ネフ一門の鉄球戦士》と3/2の《悪意のアムムト》がいるものの、攻撃に向かえば《巨大百足》に食われてしまう。
しかし幸運にも、あなたはほかにもう1体、《不毛地の蠍》を戦場に出していた。
《不毛地の蠍》なら、この状態でも安全に攻撃ができる。対戦相手は《不毛地の蠍》と相打ちを取るか――そうしてもらえると、次のターンでさらにクリーチャーを出されない限りは、残りのクリーチャーで攻撃できるようになるので嬉しい取引だ――もしくは2点のダメージを本体で受けて敗北に近づくか、いずれかを選ばなければならない。対戦相手から手痛い反撃を受けることはない――《巨大百足》で攻撃してきても、残りの2体で相打ちを取るか、攻撃を通して次のターン3体で反撃するかを、こちらが選択できる。
攻撃時に接死が強いと言えるもう1つの状況は、2体でブロックされるような場面だ。
防御側は1体の攻撃クリーチャーを2体でブロック可能なため、さまざまな状況でもともと有利な立場にある。それは事実だが、接死は複数のブロッカーすべてと相打ちを取ってくれる可能性があるので、その問題を軽減できるだろう。(少なくとも、その問題に対処するだけのパワーを持ったクリーチャーであればね。)
相打ちを取れると言えば、接死が活躍しやすいのは防御時のほうかもしれない。
防御的な接死
マジック開発部の奈落(ゲームデザイン時に共用エリアとして使っている場所を我々は「奈落」と呼んでいる)でよく行われる議論が、「《チフス鼠》はどのくらい強いのか?」というものだ。
攻める側として見ると、大した戦力ではない。対戦相手は1点ダメージを受けることを選択するだけになるし、1マナ1/1クリーチャーは使いたいと思うものでもないだろう。
ところが防御に回ると、《チフス鼠》は《殺害》にも似た役割を果たしうる。もちろん、ブロックに入る前に除去されてしまうところは大きな違いだ――しかし除去呪文の餌食となるのであれば、1マナのクリーチャーとしては十分な活躍だろう。
私はドラフトでコントロール・デッキを組むとき、接死持ちのクリーチャーを入れておくのが好きだ。速攻相手なら2/2や3/3と相打ちを取ることで序盤にライフをかなり温存できるし、大型クリーチャーを何枚も採用している遅いデッキに対しても、その動きを停滞させる追加の擬似除去呪文として利用できる。
接死持ちクリーチャーで防御を固めるときの1つの鍵は、対戦相手がクリーチャーを並べている場合、接死持ちクリーチャーで攻撃してはいけない、という点だ。
何らかの影響を与えることは確実なので、攻撃に向かわせたいと思いがちかもしれない。しかし通常は、思ったほど良い結果にはならないだろう。対戦相手は、喜んで相打ちを取って戦場から接死持ちのクリーチャーを排除するか、あるいは接死持ちクリーチャーの攻撃をそのまま通す。いずれにせよ、こちらに向かって反撃する余地を与えてしまうんだ。
こちらのデッキが遅かったり、あるいは防御に回っている状態の時は、接死持ちのクリーチャーで戦闘するかどうかはよく考えよう。除去呪文をまだ使いたくないのであれば、戦線を膠着させられるそのクリーチャーを戦闘で失うのはまだ早いかもしれない。
接死との連携
接死に関する重要な要素について、触れずに終わるのはよろしくないだろう。接死を使ったコンボについて話そう!
接死はダメージを与えることを要求する――戦闘ダメージだけではない。
《突き抜けの矢》と《マラキールの使い魔》を取り上げてみよう。どちらもそれだけでは取るに足らないカードだ。
しかし一緒に使うと、《戦慄をなす者ヴィザラ》が出来上がる。
やり方はいくつかあるが、「ピンガー(ping-er)」と呼ばれる、能力でダメージを与えることができるクリーチャーに接死を持たせるか、あるいは逆に接死持ちのクリーチャーにダメージを飛ばす能力を持たせることで、このコンボを実行できる。それは《活力のカルトーシュ》で対戦相手のクリーチャーを確実に倒すのと同じぐらい簡単で、《歩行バリスタ》に接死を持たせるのと同じぐらい巧妙だ。対戦相手がもだえ苦しむのを眺める楽しみもついてくるぞ。
デッキをどう仕上げるかはともかく、これはかなり強力なコンボとなる可能性があるので、関連するカードには常に注意を払っておこう。(ドラフトで《死の男爵》と《死を運ぶソクター》を一緒に使った時のことは忘れられないよ……あれはよかった!)
接死ピンガーほどのひどさはないが、接死とトランプルも簡単にコンボができる。
この2つを一緒に持たせるのも効果が高い。各ブロック・クリーチャーに1点ずつ与えるだけで、残るダメージをすべて対戦相手に通すことができる。《凶暴な力》のようなカードは、《不毛地の蠍》の攻撃で対戦相手に致命傷を与えるための素晴らしい手段となるだろう。ブロックしてくるクリーチャーがどんなに巨大であっても、同じ成果が得られるぞ。
もちろん、相性の良い組み合わせはこの2つだけではない。先制攻撃も接死があればより効果的だ。触れた敵を全て先に倒し、反撃を受けずに済む。
接死は飛行や先制攻撃に比べれば相乗効果を生み出しやすい能力だ。そこからアドバンテージを得る機会を見逃さないように!
終わりに触れて
これにて接死の考察を終了する! この混乱の『破滅の刻』において、あなたが戦い抜く助けとなれば幸いだ。新しいデッキを組む時やドラフトで取るカードを決める時に、接死について理解しているかどうかが結果を変えるかもしれない。
何か疑問や考えがあるかな? ぜひとも聞かせてほしい! TwitterやTumblrで尋ねるか、あるいはBeyondBasicsMagic@gmail.comに(すまないが英語で)メールして、いつでも意見を伝えてくれ。このメカニズムを解説するシリーズを気に入ってくれているかな? 次に扱ってほしい、あるいは興味のあるメカニズムは何だろうか? 聞く準備はできているよ。
次回の「Beyond the Basics」でまた会おう!
Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com
(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing)