フレイバーテキストは我が心に寄り添ってきた。私は十年近くこの小さな珠玉を書いてきたが、注意深く選別されたわずかばかりの文章の中に面白さ、知識、興味、力強さ、そして粋がどれほど込められているか、いつも感嘆させられる。
もし長い著作が文学の荒れ野を統べるド偉い恐竜だとしたら、フレイバーテキストの断片達は灌木の中に隠れながらその尻を蹴っ飛ばす温血の哺乳動物だ。
私はこの仕事に熱中している時、フレイバーテキストは物語を一つにまとめるモルタルのようなものだ。ストーリーを語る他の媒体との間にある割れ目の間に入って、それらをぴったりと埋めてくれる。他のどこでも手に入らない、物語の情報と次元的フレイバーだ。
フレイバーテキストに込められたもの、そしてフレイバーテキストが表現するものは果てしない。
長い間、愛されてきた多くのフレイバーテキストがある。
カエルのフレイバーテキスト。
《蛙変化》 基本セット2012
「ゲコッ」

アート:Warren Mahy
粋な一節。
《溶岩の斧》 基本セット2010
「そらよッ!」

アート:Brian Snoddy
粋な一節、最新版。
《溶岩の斧》 基本セット2014
燃え尽きた手斧のまぎれもない強化版。

アート:Brian Snoddy
ちょっと代数学的なフレイバーテキスト。
《火想者ニヴ=ミゼット》 ギルドパクト
(Z→)90°- (E-N2W)90°t = 1

アート:Todd Lockwood
そして何度も何度も繰り返し再録され続けるフレイバーテキスト。
《平和な心》 基本セット2014
グラックは生まれて初めて、ほんわかふわふわした気持ちになった。

アート:Robert Bliss
二十周年ウィークを記念して、私はマジックのフェイスブックページにて最も愛されたフレイバーテキストを選ぶことにした。私はそこでフレイバー愛好家達へと、彼らの勇者達をフレイバー闘技場に送り込んでくれと求めた。皆が見て驚嘆してくれるように。
三千通近い提出があった。そして一覧に載らない多くの、とても多くの素晴らしいフレイバーテキストもあった。だけどここに挙げたもの達は、何度も何度も顔を出していた。
これが君達、フレイバー愛好家達が選んだフレイバーテキスト二十選、順不同だ! (注:フレイバーテキストの訳は最新の版のものです。)
#1 《丸焼け》 第8版基本セット
もちろん、火に火で立ち向かってもいいさ。火がありゃ何にでも立ち向かえるだろう。
――特務魔道師、ヤヤ・バラード

#2 《峡谷のミノタウルス》 基本セット2014
「ここの崖を登り、崩れ橋を渡って、逆側の火口坂を戦いながら下がっていくことになります。」
「これは峡谷の一番の近道じゃなかったのか?」
「間違いないです。」
「それならそんな――」
「駄目です。」

アート:Steve Prescott
#3 《霊感》 ラヴニカへの回帰
「31日目:ついに時間の逆転実験に成功した!」
「30日目:これはちとマズイかもしれん。」
――首席イズマグナスの日誌

アート:Izzy
#4 《ゴブリンの手投げ弾》 基本セット2012
一般的なゴブリンの空力性能を馬鹿にするもんじゃない。

アート:Kev Walker
#5 《移し変え》 基本セット2013
「実際、極めて単純なことだが、二本足で歩いて間もないお前には、少々説明に時間が掛かりそうだ。」
――ジェイス・ベレレンから野生語りのガラクへ

アート:Izzy
#6 《 有象無象の大砲》 第8版基本セット
ステップ1:君の従兄弟を見つける。
ステップ2:君の従兄弟を大砲に入れる。
ステップ3:別の従兄弟を見つける。

#7 《ゴブリン気球部隊》 基本セット2011
「敵が近くまで来すぎだぞ! 急げ! ひき蛙を膨らませろ!」

アート:Lars Grant-West
#8 《順応する跳ね顎》 ギルド門侵犯
「あー、カエルがもっと要るな。」
――シミックの生術師、グリスタン

アート:Thomas Jedruszek
#9 《超大なベイロス》 基本セット2010
そいつの餌は、果物、植物、森の小動物、森のデカい動物、森そのもの、果樹園、果樹園の農夫、小都市などだ。

アート:Mark Tedin
#10 《最後の言葉》 ダークスティール
いつか、誰かが私を打ち負かすだろう。 だがそれは今日ではないし、お前にでもない。

アート:Scott M. Fischer
#11 《憎悪》 エクソダス
お前の肉から皮膚を、骨から肉を引きはがしてやる。骨についてる肉片も全部こそげ落としてやる。それでもまだ十分じゃないんだ。
――グレヴェン・イル=ヴェクからジェラードへ

アート:Brom
#12 《樫の力》 第10版基本セット
おいらがこいつをどこに植えるか、当ててみな!

アート:Jeremy Jarvis
#13 《魔力のとげ》 基本セット2012
「人々がなぜ諸刃の剣が良くないというのかわからないな。剣なんだぞ。刃が二つもある。」
――ピット・ファイター、カマール

アート:Jeff Miracola
#14 《怒り狂うゴブリン》 基本セット2010
彼は世界に対して怒り、家族に対して怒り、自分の人生に対して怒っていた。だが、だいたいは理由もなく怒っていたんだ。

アート:Jeff Miracola
#15 《殺戮の波》 アヴァシンの帰還
「悪魔を探しに来たのに、この次元は天使だらけ。天使なんて大嫌い。」
――リリアナ・ヴェス

アート:Steve Argyle
#16 《ラノワールのエルフ》 基本セット2012
小枝を踏み折れば、骨を折ってあがないとする。
――ラノワールの侵入者への処罰

アート:Kev Walker
#17 《焼炉の仔》 基本セット2013
ドラゴンの子供には、人間とは何なのか理解できない――殺されるのがいやなら、なんで彼らは肉と宝物でできてるんだろう?

アート:Matt Cavotta
#18 《ファイレクシアの大男》 第8版基本セット
なんにも考えないし、感じない
ぜんぜん笑わないし、泣きもしない
朝から晩まで一生懸命
兵隊さん殺すしかやりゃしない
――オネイアンの童謡

#19 《光雷原》 エルドラージ覚醒
ゴブリンをたくさん殺そうとするなら、防御を面白おかしいものに見せろ。

アート:Eric Deschamps
#20 《狂気の祭壇》 テンペスト
お前が狂気になると言うことではないのさ。狂気にしてくれと哀願するようになることなのさ。
――ヴォルラス

アート:Brom
加えて私はRamp;Dの同僚達へと呼びかけて、好みのフレイバーテキストを投票してもらった。ここにいくつか、彼らの今までで一番のお気に入り達を列挙しよう。
#1 《ゴブリンの戦術家、半心臓のイッブ》 時のらせん
俺以外の全員――突撃!

アート:Wayne Reynolds
#2 《面晶体のカニ》 ゼンディカー
面晶体の混乱した思考は、偉大であり矮小である。

アート:Jesper Ejsing
#3 《太陽の戦車》 ミラージュ
太陽は月を追う。月が疲れてしまうまで。そして今度は背負って運ぶ。月が元気で/前を走り出すまで。
――「夜と昼の恋歌」

アート:Gerry Grace
#4 《ゴブリンの攻勢》 ウルザズ・サーガ
まったく嫌な奴らさ。

アート:Carl Critchlow
#5 《スカークの探鉱者》 オンスロート
「ゴブリンは好きだよ。 やつらは死ぬときにおかしな弾ける音を立てるからね。」
――狂気を招く者ブレイズ

アート:Doug Chaffee
#6 《道迷い》 ギルド門侵犯
フブルスプは昔から人ごみが嫌いだった。

アート:David Palumbo
#7 《始祖グリーヴィル》 プレーンシフト
すべてのグリーヴィルの始祖。

アート:Andrew Robinson
#8 《ルアゴイフ》 アイスエイジ
「ああ! ハンス、逃げて! ルアゴイフよ!」
――サッフィー・エリクスドッターの最期の言葉

アート:Pete Venters
#9 《ゴブリンの付け火屋》 基本セット2013
大きな力は、自分をも殺してしまうほどの大きな危険を伴う。

アート:Wayne Reynolds
#10 《補償金》 ミラージュ
失礼、村を焼いてしまった。この金で別の村でも……。

アート:Douglas Shuler
#11 《ゴブリンの戦囃し》 基本セット2013
どういうわけか、ゴブリンは道化の派兵に戦術的優位性を見出した。

アート:Steve Prescott
#12 《悪名の騎士》 基本セット2013
「貴様の法は、貴様の骨と同じように、砕かれるために存在するのだ。」

アート:Peter Mohrbacher
#13 《消失》 ビジョンズ
不注意だった。炎に夢中の子供のように時間と戯れるとは。
――テフェリー

アート:John Matson
#14 《 鎧のペガサス》 第6版基本セット
沼インプと出会って、どう切り抜けたのかと尋ねられても、鎧のペガサスはたてがみを振って、げっぷするだけだった。

アート:Andrew Robinson
#15 《嵐血の狂戦士》 基本セット2012
戦争が神である者にとって、血は聖なるものである。

アート:Min Yum
#16 《忌むべき者の軍団》 イニストラード
ときに死は扉を叩く。ときに死は壁をぶち破る。

アート:Ryan Pancoast
#17 《尖塔の連射》 デュエルデッキ:ヴェンセール vs. コス
ゴブリンの教室では、2,071個の生き残りのためのコツが教えられる。 フレックが覚えていたのは2,070個だけだった。

アート:Ryan Pancoast
#18 《インプの悪戯》 次元の混乱
罪なき者は罪ある者の犯罪の報いを受けるのか?もちろんその通り。それこそが弱者の運命と言うものだ。
――ニコル・ボーラス

アート:Thomas M. Baxa
#19 《脱水》 第8版基本セット
太陽に嘆いてみても、お前の涙すらお前を見捨てる。
――マリット・レイジの見習い僧

アート:Arnie Swekel
#20 《災難の瀬戸際》 基本セット2012
「お前が忘却の瀬戸際にいるなら、喜んで私の手で最後の一押しをしてあげよう。」
――リリアナ・ヴェス

この一覧には無いけれど、私に寄り添い続けてくれている何千ものフレイバーテキストがある。そして私がここに「入れるべき」一つを考えるにはこの先数週間かかるだろう。だが私は思うんだ――君達を面白くさせ、にやりと笑わせ、満足げに笑わせ、たじろがせ、驚嘆させ、思案させ、友達と一緒にお喋りをさせる、素晴らしいフレイバーの宝石たちが溢れんばかりにあるというのは、同じくらいいいことだと。これはほんの一部だったが、楽しん頂けただろうか。
ああ、私はフレイバー鉱山に戻る時間だ。だがチャンネルはそのままだ、ヴォーソスのみんな! 私達はいつかの未来に定番となる、もっと沢山のフレイバーを料理して君達の近所のカードショップへと届けるからさ!
(Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)