Day 1 Blog Archive

更新日 Event Coverage on 2005年 11月 5日

By Wizards of the Coast

TABLE OF CONTENTS

  • Blog - 9:22 p.m.: Round 7: 浅原 晃(神奈川) vs. 石田 格(東京)
    by Daisuke Kawasaki
  • Blog - 8:34 p.m.: Round 7: 有田 隆一(東京) vs. 森田 雅彦(大阪)
    by Koichiro Maki
  • Blog - 7:55 p.m.: Round 6: 三原 槙仁(大分) vs. 藤田 修(大阪)
    by Keita Mori
  • Blog - 7:03 p.m.: Round 5: 森 勝洋(東京) vs. 浅原 晃(神奈川)
    by Daisuke Kawasaki
  • Blog - 6:16 p.m.: 初日デッキ分布一覧
    by Daisuke Kawasaki
  • Blog - 5:48 p.m.: Round 4: 射場本 正巳(東京) vs. 中村 修平(大阪)
    by Koichiro Maki
  • Blog - 4:51 p.m.: 初めてのサイカ算
    by Koichiro Maki
  • Blog - 4:09 p.m.: エクステンデッドの基礎知識(アーキタイプ整理)
    by Koichiro Maki
  • Blog - 2:33 p.m.: Round 3: 中島 主税(神奈川) vs. 岩井 剛士(徳島)
    by Keita Mori
  • Blog - 12:29 p.m.: Friday Last Chance Trial Winner Decks
    by Event Coverage Staff
  • Blog - 11:08 a.m.: ラヴニカ参入後のエクステンデッドのおさらい
    by Keita Mori

BLOG

有田(左)、津村(右)とともにロスで決勝ラウンドへ進んだ藤田 剛史

「間違いなくロサンゼルスで活躍したデッキが跳梁することになるだろう」

と、前日の段階では強豪たちが口をそろえる。

まったく同じフォーマットの最初の試金石となったプロツアー・ロサンゼルスから、僅か一週間。実にタイトなスケジュールで開催されることになったのが、今回のグランプリ北九州。珠玉のデッキリストが公開されてからわずか5日というスパンでのイベントだから、フォーマットそのものに大変動をもたらすようなアーキタイプを作り出すには…あまりにも準備時間がなさすぎたと言えるだろう。ちなみに、オーストラリアのメルボルンとデンマークのコペンハーゲンでも今週末にグランプリが開催される。

そんな状態でむかえるグランプリ北九州だけに、ここで藤田 剛史(大阪)の言葉に耳を傾けてみようと思う。プロツアーのおさらいと、初日のフィールドで展開されるであろうメタゲームについて聞いてみた。

今さらながら藤田について簡単にご紹介しておくと、彼は昨年度の日本王者であり、マジックのオールスターゲームであるインビテーショナル(=Magic Invitational)に『デッキ構築の天才(Resident Genius)』として全世界のファンから投票で送り出されたほどのデッキデザイナーである。さらに、藤田は一週間前にもロサンゼルスで"Boros Deck Wins"を引っさげてのベスト8入賞を果たしたばかりで、彼のデッキは二つのエクステンデッド・プロツアーを連続して荒らしまわったことになった。

Pro Tour Los Angles 2005 Top 8 Decklists

――タイトなスケジュールでの連戦となりますが、帰国後の調整のほうはどうですか?

藤田:さすがに何も出来ていないっすね。正直、明日のグランプリに何で出場するかも決まってないですから。まあ、メタ次第やね。

――前日トライアルの様子を見た感じでは、藤田さんの"Boros Deck Wins"とか、Billy Moreno選手の"Madness Tog"デッキなんかが多かったようですね。やはり、明日は(※取材は金曜の段階)ロスで活躍したデッキがかなり多くなりそうな気配ですかね。

藤田:うん。たとえば"The Rock"とか"Goblins"みたいな、単純なデッキパワーではワンランク劣っているデッキでも、あたる相手次第で勝てるわけやしね。

――さて、今大会における注目デッキについておうかがいしていきたいのですが、さっそく藤田さんの"Boros Deck Wins"からということで。

藤田:これは親和と"The Rock"にだけは勝てるからね。あとは不利な試合ばっかりというデッキなんやけど(笑) まあ、早い、安い、相手の事故には確実につけこめる、と三拍子揃っているって感じかな。こういうフォーマットやし、三番目は特に重要やで。

――このデッキをロス終了後のメタゲームにあわせて調整する余地があるとしたら、どんな感じになるでしょう?

藤田:土地破壊からバーン、《溶鉄の雨/Molten Rain》とか《略奪/Pillage》を《マグマの噴流/Magma Jet》と《火山の鎚/Volcanic Hammer》に変える方向にシフトみたいな。まあ、いろいろ細かいところをいじれるのは魅力かもしれんね。

――ラヴニカ風に、ボロス(赤白)の次はゴルガリ(黒緑)ということで、「発掘(Dredge)」系メカニズムを活かしたデッキについて次にお聞きしたいと思います。ギルドランド全般を別にすると、ラヴニカ参入後のフォーマットでもっとも大きなインパクトを与えたシステムだと思いますが、今の段階ではいかがなものでしょう。

Golgari Grave-Troll

藤田:まず、ロスのデッキでは、とにかくヒゲ(準優勝したBilly Moreno)のデッキ("Madness- Tog")は強かった。強いデッキなら誰でも勝てるんやなって、久々に思い知らされた。

――では、同じ発掘系でも《ゴルガリの墓トロール/Golgari Grave-Troll》まで搭載した"Golgari Madness"だとか、"Dredge-a-Tog"なんかはどうですか?

藤田:《サイカトグ/Psychatog》っていうクリーチャーは単純に強いよね(笑) 発掘エンジンもやりおるとは思う。まあでも、"Golgari Madness"はネタバレしたことで、かなり威力が落ちてしまったと思う。

――たしかに、初日全勝だったCraig Jones(イングランド)選手がロスで初日全勝ながら、二日目では沈没していってしまいましたよね…

藤田:そうなんよね。みんな、予想以上に「発掘」で《サイカトグ/Psychatog》がすばやく巨大化することに慣れたから、なんとなくスルーしたら死んじゃった、みたいな現象が二日目ではなかったと思うしね。それに、ネタバレが進んで最初のターンのセットランドを見せただけなのに、《真髄の針/Pithing Needle》で《サイカトグ/Psychatog》を宣言されたり、《翻弄する魔道士/Meddling Mage》とか《陰謀団式療法/Cabal Therapy》でも狙い撃ちにされたり。ともかく、ネタバレした瞬間に「カード名を指定(Nam a Card)する」系がかなりキツくなってしまった。

――では、北九州では? もう賞味期限切れですか?

藤田:いや、さすがに一定水準をクリアしたデッキではあるっすよ。ただ、シークレットテクだったときの驚きはもうないぞ、っていうね。まあ、なんだかんだで「発掘」はおもろいしね。あと、「発掘」関係なく、ヒゲさんのデッキは単純に強い。というか、普通にマッドネスは強いし、サイカだってパワーカード。ごっついよ。

――では、"Red Deck Wins"なんかはどうです?

藤田:オレの(Boros Deck Wins)よりも"The Rock"には弱いっすね。でも、オレみたいのには強い(笑)

――《春の鼓動/Heartbeat of Spring》からの《精神の願望/Mind's Desire》はどうですか?

Smother

藤田:デッキ自体、水準以上に強いは強いけど、対策が進んでいるはず。たとえば《陰謀団式療法/Cabal Therapy》がもともとキツイし、赤ければ《血染めの月/Blood Moon》とか《紅蓮光電の柱/Pyrostatic Pillar》とかがサイドボードからね。特に《柱》はごっつい効くよ。サイドボード次第でぜんぜん勝率が変わる良い例やね。

――では、"Scepter Chant"こと"No Stick"(海外ではこちらが一般的)はどうです?

藤田:安定した強さがあるとは思うけど、正直良くわからない。まったく調整でもさわってないからね。

――それでは、親和は…

藤田:《戦争の報い、禍汰奇/Kataki, War's Wage》次第というか、オレのデッキがどれだけおるかによるというか、そんな感じもするっすね。あと、"Goblins"や"The Rock"みたいな少し落ちる連中でも、メタ次第でいけるからね。

――そんな中、藤田さんのデッキはどうなるんでしょう?

藤田:当日の朝まで決まらんかもね(笑) ただ、《サイカトグ/Psychatog》にせよ《野生の雑種犬/Wild Mongrel》にせよ、強いクリーチャーが明確になってきたので、黒ければ《燻し/Smother》を使いたいな、とは思ってますね。


Saturday, Nov 5: 12:29 p.m. - Friday Last Chance Trial Winner Decks

by Event Coverage Staff

Madness Tog

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Boros Deck Wins

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You Can Do It !

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Saturday, Nov 5: 2:33 p.m. - Round 3: 中島 主税(神奈川) vs. 岩井 剛士(徳島)

by Keita Mori
『マジック虎の穴』主催の中島 主税

この第3回戦で注目の対戦(Feature Match)に選び出された二人のプレイヤーは、一週間前にロサンゼルスで熾烈な戦いから帰ってきたばかりの猛者たちである。

四国を代表する強豪である岩井 剛士(徳島)は先週末に42位入賞(賞金825US$)を果たしているプレイヤーで、このグランプリでも連続してそのときのデッキ――青黒リアニメイト――を武器として臨む。

対して、東京都と神奈川県の境に位置する自宅が強豪プレイヤーたちのサロンとなっていることでも注目されているのが中島 主税。名古屋勢、大阪勢、広島勢と、まさに全国各地から有数のトッププレイヤーたちが『合宿』しにくるという彼の部屋は、通称『マジック虎の穴』。そこは今シーズン絶好調、現在Player of the Year(年間MVP)暫定首位の津村 健志(広島)も足しげく通いつめているほどの修練の場所である。

中島自身もプロツアー参戦多数、エクステンデッドで行われたグランプリ岡山でもベストに8入賞しているという古豪である。そんな中島のデッキは赤緑タッチ黒のビートダウンだ。

Game 1

先手を取った徳島の岩井がロケットスタート。《地底の大河/Underground River》から《入念な研究/Careful Study》を唱え、2枚の《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》を墓地に送り込む。さらに、青い《不運な研究者/Hapless Researcher》を刻印した《金属モックス/Chrome Mox》から、後手の中島のエンドステップに《留意/Mental Note》という素晴らしい開幕ターンを迎えた。早くも、リアニメート呪文で怪物を引っ張りあげるだけだ。

苦しい表情の中島はフェッチランド《樹木茂る山麓/Wooded Foothills》起動から《森/Forest》をおき、《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》を呼び出した。

さて、2ターン目にフェッチランドから《沼》を置いた岩井は《入念な研究》2枚目を使用するもリアニメート呪文はなく、《陰謀団式療法/Cabal Therapy》で《トロールの苦行者/Troll Ascetic》を指定した。岩井のこの読みはズバリ的中し、確認出来た中島の手札は《トロールの苦行者》と《火炎舌のカヴー/Flametongue Kavu》のほかは土地だらけという内容だった。

さて、2ターン目に《トロール》というプランを失ってしまった中島は、《エルフ》でアタックしつつフェッチランドをセットするだけで第2ターンを終えることになる。対する岩井は迎える3枚目の《入念な研究》を使用してライブラリーを掘り進み、中島に《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer》を場に展開されたターンの終了ステップにも《深遠の覗き見/Peer Through Depths》から《留意/Mental Note》を獲得。これを岩井は第4ターン目にそのままプレイし、とうとう――累計21枚のカードを墓地に送り込んだ段階で――《生+死/Life+Death》を引き当てることが出来たのだった。

しかし、《死》は、リアニメートの代償として「点数で見たマナコスト」分のライフを要求するために、ファッティ光臨を果たしつつも岩井のライフも残り6点と危険水域に。

ここで中島は《渋面の溶岩使い》の能力を起動してから4ターン目に《野生の雑種犬/Wild Mongrel》を召喚し、5ターン目に《炎の稲妻/Firebolt》のバックアップと全軍突撃によってライフを削りきることに成功した。

中島 1-0 岩井

Game 2

2戦続けての先手スタートとなった岩井。開幕ターンに《入念な研究/Careful Study》から2枚の《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》を埋めるという、どこか我々にデジャヴを覚えさせる滑り出しとなる。

しかしながら、今度は第2ターンのフェッチランド起動からの《留意/Mental Note》経由で第3ターンに《縫合/Stitch Together》でリアニメートに成功する岩井。中島は《陰謀団式療法/Cabal Therapy》によって相手の手札を確認してから投了ということになった。

岩井 1-1 中島

PTLAでも賞金を獲得している岩井剛士

Game 3

そして、岩井はこの第3ゲームでも後手2ターン目に《怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath》を《死》で一本釣りすることに成功する。

岩井 2-1 中島

墓地活用というキーワードでは、ゴルガリ・ギルドの「発掘」システムにばかり注目が集まっているきらいがある今日この頃。しかし、この試合の第2・第3ゲームのような圧倒的なパフォーマンスを見せつけられてしまった今となっては、皆さんに『青黒リアニメーター』の存在への注意を喚起しないわけには行かなくなった。


Saturday, Nov 5: 4:09 p.m. - エクステンデッドの基礎知識(アーキタイプ整理)

by Koichiro Maki

・Antoine Ruel – サイカトグ
・藤田 剛史 – BDW(ボロスデックウィン)
・Chris McDaniel – ハートビートデザイア
・津村 健志 – Dredgatog
・Billy Moreno – マッドネスサイカ
・Chin-Hsiang Chang – RDW(レッドデックウィン)
・有田 隆一 – セプターチャント
・Ervin Tormos – PT Junk

これらが、先週末に行われたばかりのプロツアーロサンゼルスでトップ8に勝ち残ったデッキだ。それから僅か一週間という期間を考えると、それほどアバンギャルドな勢力分布の激変は想像し難い。おそらくは、これらのデッキを原形にし、若干の変更を加えたデッキが多く使用されるに違いない。

では、現在のエクステンデッド環境でどんなデッキが流行しているのか、それを把握しやすいように、これらのデッキをタイプ別に分類し説明を加えてみよう。

■ウイニー+火力 タイプ

RDW、BDW、PTジャンク等の赤単もしくは赤白(ボロス)がこれに該当する。《今田家の猟犬、勇丸/Isamaru, Hound of Konda》《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer》《凍らし/Frostling》のような1~2マナの極低マナ域のクリーチャーに《溶岩の投げ矢/Lava Dart》《炎の稲妻/Firebolt》のような火力を組み合わせるデッキだ。これを支えるのが、《略奪/Pillage》や《溶鉄の雨/Molten Rain》といった土地破壊呪文。序盤にクリーチャーを展開した後に、相手のマナ展開を妨害し、その間にダメージを積み重ねる。ゴールがキャプテン翼的に地平線から迫り上がってくれば、後は火力呪文でフィニッシュという作戦だ。

この戦略にとって強い追い風となっているのが、ラヴニカで導入されたギルドランドの存在だ。対戦相手の多くが自らライフを減らしてくれることが多く、相手を倒すのに必要なダメージが減るわけだ。

「ギルドランドは、俺が使えばマナ事故防止のいいカードだし、相手が使えば勝手に2ダメくらってくれる更にいいカード。」
 - 藤田 剛史

■ウイニー+カウンター タイプ

マッドネスサイカがこれに該当する。低マナのクリーチャーにピンポイント用のカウンター呪文を織り交ぜたデッキタイプで、古くはカウンタースリバーなんかがこれにあたる。《神の怒り/Wrath of God》のような比較的重い呪文を使ったコントロール系デッキに強いアーキタイプだ。

かつて、スタンダード環境で幾度となく対決を繰り広げた《野生の雑種犬/Wild Mongrel》と《サイカトグ/Psychatog》を一つのデッキに融合させたのが、Billy Moreno(アメリカ) の使用するマッドネスサイカだ。2マナ域の緑クリーチャーと、3マナ域の青黒クリーチャー。この全く方向性の異なるマナベースの同居を可能としたのが、先ほども説明にあげたギルドランドだ。ギルドランドは二つの基本土地タイプを持つので、フェッチランドと組み合わせればどれだけ慇懃無礼なマナ構成でも結構なんとかなってしまうのだ。ただし、その代償としてデッキはプレイヤーに大量のライフを要求してくる。なので、ライフを直接攻められるコントロール系のデッキでは思い切った運用が難しく、Billy のように攻める多色デッキでこそ真価を発揮することになる。

■アグレッシブコントロール タイプ

サイカトグをデッキの核として、それをコントロール要素で肉付けしたデッキがここに該当する。ロサンゼルスには、二種類のサイカトグデッキが登場するが、その方向性は大きく異なる。Antoine Ruel(フランス) が使用したのは純正バージョンで、カウンター能力には優れるが除去能力は低め。逆に津村が使用したドレッジ型バージョンは、カウンター能力はそれほどではないが、パーマネント除去能力に優れる。この違いは、それぞれのデッキがどんな環境を予想したかに起因する。津村バージョンのデッキビルダーである石田 格(東京)は、戦前に環境最強デッキとして考えられていた親和にデッキを強くシフトさせていたのだ。逆に、Antoine は親和ではなく、もっとコントロール色の強い環境を意識している。

手札と墓地をパンプに使うサイカトグデッキでは、いかにして追加カードを得るかが重要なポイントとなるが、かつてその役目を担っていた《直観/Intuition》からの《蓄積した知識/Accumulated Knowledge》という定番ギミックは環境から消えてしまった。では、彼等はどうその穴を埋めたのだろうか?

Antoineは最も確実なルートを選んだ。《嘘か真か/Fact or Fiction》《けちな贈り物/Gifts Ungiven》《知識の渇望/Thirst for Knowledge》《綿密な分析/Deep Analysis》。唱えれば手札が増える呪文をふんだんに取り入れ、質実剛健的にカードを増やす。

石田は別のルートを選んだ。同じく《けちな贈り物/Gifts Ungiven》を使ってはいるが、それは単純に手札を増やすためじゃない。そこには、ラヴニカがもたらしたもう一つの爆弾が仕掛けてあった。そう、《壌土からの生命/Life from the Loam》だ。これに関しては説明が長くなるので、別記事の中で説明しよう。

 「《壌土からの生命/Life from the Loam》は《噴出/Gush》の変わりです」
石田 格

■コントロール タイプ

セプターチャントがこれに該当する。ただし正確に書くと、セプターチャントには、《思考停止/Brain Freeze》という必殺パターンもあるので、純粋なコントロールデッキではないのだが、今回の中では最もコントロール要素が強いので、あえてこのタイプに分類しておく。

デッキの全ては、妨害のためのカードで構成されている。《マナ漏出/Mana Leak》《対抗呪文/Counterspell》《禁制/Prohibit》のようなカウンター呪文と、《火+氷/Fire/Ice》《神の怒り/Wrath of God》といったクリーチャー除去呪文、それに、弾薬補充のためのカードドロー呪文、そして、デッキ名にもなっている《等時の王笏/Isochron Scepter》だ。

Isochron Scepter

このバージョンの特徴は、《狡猾な願い/Cunning Wish》を使うデッキでありながら、サイドボードの願い用エリアが極端に絞られていることにある。

「普通のサイドボードをして、たとえば《賛美されし天使/Exalted Angel》とかの枠を取るなり増やすなりして、あきらかに相性のかわるマッチアップに備えるべきだと考えたからです」
- 鍛冶 友浩

■コンボ タイプ

"Starwars Kid" と呼ばれるChris McDaniel(アメリカ)が使用したハートビートデザイアがこれに該当する。デザイアは何かしらの方法で余剰マナを生み出し、そのマナを利用してストームを稼ぎ、《精神の願望/Mind's Desire》を爆発させるデッキだ。元々は、その役目をマナを軽減してくれる《夜景学院の使い魔/Nightscape Familiar》や《サファイアの大メダル/Sapphire Medallion》等が担っていたが、環境の変動と共に使用できなくなってしまった。それを補ったのが、プロツアーフィラデルフィアでも活躍した《春の鼓動/Heartbeat of Spring》だ。唱えるのに必要なマナを減らすのではなく、マナ自体を増やす。このコロンブスの卵的な発想の転換は、予想以上の成功を Chris にもたらした。

Chris にとって、各種ウイニー系デッキが活躍していたのも好条件だった。メインに2枚、サイドに2枚用意された《一瞬の平和/Moment's Peace》は、繰り返し相手の致命的な攻撃を受け流し続けたのだ。


Saturday, Nov 5: 4:51 p.m. - 初めてのサイカ算

by Koichiro Maki
Life from the Loam

現在のエクステンデッド環境で熱く注目されているのが、《けちな贈り物/Gifts Ungiven》と《壌土からの生命/Life from the Loam》を使用したカードエンジンだ。

スタンダードにもクリーチャーになる土地や、クリーチャー除去能力を持った土地は存在するが、エクステンデッド環境になると、土地は直接カードに結びつくからだ。サイクリング能力が付いたサイクリングランドや、《セファリッドの円形競技場/Cephalid Coliseum》がその仕掛け人ならぬ仕掛けカード。《壌土からの生命/Life from the Loam》でこれらのカードを回収すれば、それらは更に別のカードへと変わっていく。しかも、《壌土からの生命/Life from the Loam》には発掘があるので、墓地にある限り何度でも使い回しが効く。

このドローエンジンをサイカトグと組み合わせたのが、プロツアーロサンゼルスで石田格がデザインしたドレッジ型サイカトグ(Dredge-a-Tog)である。かつてあった《噴出/Gush》サイカに動きは似ていて、気をつけていないと予想外の角度から致命的なダメージを叩き出す。非常に動きの面倒なエンジンなので、簡単に動きをまとめてみよう。

ここでは最も解りやすい状況にする為に、場には既に《サイカトグ/Psychatog》が出ていて手札には《けちな贈り物/Gifts Ungiven》が一枚。墓地には何もカードが落ちていなかったとする。

さあ。

4マナが揃ったら、相手のターン終了時に、《けちな贈り物/Gifts Ungiven》を唱える。基本的な選択カードは、二種類のサイクリングランド、《汚染された三角州》、《壌土からの生命/Life from the Loam》だ。

仮に相手が、《壌土からの生命/Life from the Loam》と《汚染された三角州/Polluted Delta》を手札に加わるカードとして選んだことにしよう。場に《サイカトグ/Psychatog》がいればどれを選ぼうと影響はない。

手札: 壌土、汚染
墓地: けち、土地、土地
サイカトグ: +0/+0

アップキープで《壌土からの生命/Life from the Loam》を《サイカトグ/Psychatog》のパンプに使い墓地に落とす。通常ドローを《壌土からの生命/Life from the Loam》の発掘に使用すると、手札に《壌土からの生命/Life from the Loam》が戻り、墓地には3枚のカードが落ちる。

手札: 壌土、三角州
墓地: けち、サイクリング土地、サイクリング土地、?、?、?
サイカトグ: +1/+1

ここで、墓地にある土地の枚数を確実に3枚にするために、手札の《汚染された三角州/Polluted Delta》を《サイカトグ/Psychatog》のパンプに使用して墓地に落とす。

手札: 壌土
墓地: けち、サイクリング土地、サイクリング土地、?、?、?、汚染
サイカトグ: +2/+2

では、いよいよ《壌土からの生命/Life from the Loam》を唱えよう。墓地には?のカードを除いても3枚の土地があるので、それを全て回収する。

手札: サイクリング土地、サイクリング土地、汚染
墓地: けち、?、?、?、壌土
サイカトグ: +2/+2

回収したサイクリングランドでサイクリングを行い、そのドローを《壌土からの生命/Life from the Loam》の発掘に使用する。発掘の効果で、更に墓地に3枚のカードが落ちる。

手札: サイクリング土地、汚染、浄土
墓地: けち、?、?、?、サイクリング土地、?、?、?
サイカトグ: +2/+2

三角州をセットしてから起動し、サイクリング土地をサイカトグのパンプに使用する。これで、場には、丁度2回目の《壌土からの生命/Life from the Loam》を使用するだけのマナが残っている計算になる。

手札: 浄土
墓地: けち、?、?、?、サイクリング土地、?、?、?、サイクリング土地、汚染
サイカトグ: +3/+3

Gifts Ungiven

二度目の《壌土からの生命/Life from the Loam》で、サイクリング土地と、先ほど起動して墓地に落ちた《汚染された三角州/Polluted Delta》を回収する。これで全てマナは使い切った計算になる。

手札: サイクリング土地、サイクリング土地、汚染
墓地: けち、?、?、?、?、?、?、壌土
サイカトグ: +3/+3

では、いよいよ全ての手札と墓地をサイカトグのパンプに使用することにしよう。まずは手札から。

手札: 
墓地: けち、?、?、?、?、?、?、壌土、サイクリング土地、サイクリング土地、三角州
サイカトグ: +6/+6

 続いて墓地。

手札: 
墓地: 
サイカトグ: +11.5/+11.5

なんと、たった一枚の《けちな贈り物/Gifts Ungiven》が、11.5点分ものカードに化けるのである! 元々のサイカのパワーと足して考えるとパワーは12.5点であり、仮に相手が一度フェッチからギルドランドをアンタップ状態で場に出した場合、相手のライフは17に減っているので…

17-12.5=4.5
4.5÷1.5=3

《けちな贈り物/Gifts Ungiven》を唱えた段階で墓地に何もカードが無くとも、手札に何か3枚カードがあれば、それだけで致死量に到達することになる。

こわ。


Saturday, Nov 5: 5:48 p.m. - Round 4: 射場本 正巳(東京) vs. 中村 修平(大阪)

by Koichiro Maki
現在、年間MVP争いで6位につけている中村 修

いよいよ、3Bye軍団の登場だ。まずはその中から日本の誇る地雷系デッキビルダーの一人である射場本と、今年度Player of the Year レースで現在6位(54点)につけている中村の一戦をお送りしよう。世界選手権まで残されたイベント数は僅かであり、一位の津村が72点と突き抜けてしまったので、ここからの逆転には相当のミラクルが必要なのは間違いないが、ここで優勝すればその差はぐっと縮まるわけで、喉から手が出まくっているに違いない。

Game 1

秒でフェッチを起動した先手の中村とは対照的に、後手の射場本はじっくりとプランを練った。この違いは、二人が使うデッキの差からきている。中村が使うのはロサンゼルスでも使ったBDW(ボロス・デック・ウィン)。殴って燃やして勝利を狙う、質実剛健ライオンまっしぐらなデッキだ。対して射場本が使うのは、《不朽の理想/Enduring Ideal》デッキ。そう、一度唱えたが最後、二度と他の呪文は使えなくなる歴伝呪文を使用するデッキだ。

Enduring Ideal

2ターン目に中村は《ゴブリンの軍団兵/Goblin Legionnaire》を召喚すると、射場本は《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》で呼応する。これらが一度刃を交え、《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》が土地探しの旅にちょっくら出かけると、その間に射場本が探す土地だけ確認しながら《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》を場に。

長老が届けた土地にセットランドを含めて、射場本の前には、《平地/Plains》《山/Mountain》《寺院の庭/Temple Garden》《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire》と並んだ。明らかに何かとんでもないことをしでかしそうな土地の並びだ。中村も、勿論その並びを見て訝しみ、頭の中では想像を逞しくする。

既にここまでの動きで、何かしらの遅いコントロール系デッキであることは伺いしれるが…

射場本は《燃え立つ願い/Burning Wish》から、《紅蓮地獄/Pyroclasm》を入手。だが、中村の場には《ゴブリンの軍団兵/Goblin Legionnaire》が存在し、プリベントに必要な白マナもアンタップされたまま。なので、そのまま使うわけではなく、場に《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を設置。

Decree of Silence

中村は、ここで《稲妻のらせん/Lightning Helix》を唱え、アンタップすると2体で攻撃。射場本のライフを、16から、12へと減らす。射場本の場にはまだ起動前のフェッチランドがあるので、実質的なライフは11だ。中村は、場に《銀騎士/Silver Knight》を追加。

ここで、射場本はフェッチを起動。予定通りライフを11に。普通なら、出てきた土地を使って《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を使えるところだが、選択したのはギルドランド。ライフを攻め込まれているので、アンタップ状態で出すことはかなわず、《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》の起動は先送りに。

悩んだ末に《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》を使わず普通にドロー。相手の場には、パワー2のクリーチャーが3体。うち一体は火力にもなる《ゴブリンの軍団兵/Goblin Legionnaire》なので、相当追いつめられている感がある。しかも、先ほど入手した《紅蓮地獄/Pyroclasm》では、目の前の《銀騎士/Silver Knight》は殺せない。

ここで射場本は、セットしたフェッチランドを起動しギルドランドをアンタップ状態でセットすると、《破滅的な行為/Pernicious Deed》を設置&起動。すかさず《ゴブリンの軍団兵/Goblin Legionnaire》が射場本へと飛ぶ。射場本のライフは、フェッチとギルドランドの分も込みで一気に6へと。

だが、とにもかくにも、中村の場は綺麗になった。場だけは。

アンタップすると、中村はすかさず手札からカードを。

Solitary Confinement

《黒焦げ/Char》+《炎の稲妻/Firebolt

ぴったり。

中村 1- 0 射場本

Game 2

「やるかな。」という射場本の声に、中村もただ一言、「はい。」

《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》から《ゴブリンの軍団兵/Goblin Legionnaire》と快調に展開する中村だが、今回は射場本がこれらを《紅蓮地獄/Pyroclasm》でさらりと流す。中村もリプレイスとして、《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer》を追加するが、そこには更に《神の怒り/Wrath of God》という贅沢な追撃が

序盤の攻勢をいなすことに成功した射場本は、《燃え立つ願い/Burning Wish》で《不朽の理想/Enduring Ideal》を。これでようやく中村も相手の正体を完全に把握した。そして、除去しなければならないクリーチャーは出てこないことも。

すかさず、《黒焦げ/Char》から《稲妻のらせん/Lightning Helix》に繋げ、一気に射場本のライフを10へと減らす。更に、射場本がマナが揃うまでの時間稼ぎに設置した《独房監禁/Solitary Confinement》にも、すかさず《解呪/Disenchant》を。

なんとか、《不朽の理想/Enduring Ideal》を使われる前に!

Form of the Dragon

だが、射場本が次のターン動く。《煮えたぎる歌/Seething Song》から出たマナを利用し、一気に《不朽の理想/Enduring Ideal》を詠唱する。

まずは、3度まで呪文を打ち消す《静寂の命令/Decree of Silence》が。次に、相手地上クリーチャーの攻撃を止めつつ、相手に毎ターン5点のダメージを与える《ドラゴン変化/Form of the Dragon》が。それらは毎ターン増えていき…

中村、一言。

「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ」

中村 1 – 1 射場本

Game 3

完全にお互いの正体は明らかとなった。中村のBDWは、とにかく殴って燃やすデッキだ。カウンター等のパーミッション能力は皆無。なんとか先手の利を活かして、射場本がセットアップする前にゲームを終わらせるしかない。逆に射場本はどれだけ序盤の勢いを殺せるかが勝負。

まずは、中村が《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》から。第一関門クリアだ。このライオンが1噛みすると続けて、何かを召喚しようと…

Savannah Lions

だが、ここで中村が止まった。先ほど《紅蓮地獄/Pyroclasm》で流された場面が脳裏でリフレインしたに違いない。出さねば射場本のライフを攻められない。だが、出せば一気に除去される可能性が。そして、そのリフレインを全て消化しきってから、中村は意を決して《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》を場に送った。

迎えた射場本のターン。《紅蓮地獄/Pyroclasm》は…なかった。《遥か見/Farseek》でマナを増やしターンを終える。ほっと息をついた中村は攻撃を行い、射場本から4点のライフを奪う。

だが、マナを延ばしたのには意味があった。射場本は《破滅的な行為/Pernicious Deed》を設置すると、2体のライオンをまとめて流す。

そして、中村が《今田家の猟犬、勇丸/Isamaru, Hound of Konda》を場に送りこんだところで、再びあの音が聞こえてきた。ぐつぐつと煮詰まる《煮えたぎる歌/Seething Song》の音が。

《不朽の理想/Enduring Ideal》始動。直ぐに、《静寂の命令/Decree of Silence》と《ドラゴン変化/Form of the Dragon》が並んだ。

地雷デッキといえば射場本

殴れないし、燃やせない。デッキの動きの両輪をもがれてしまった中村は苦悩する。逆に、射場本の気分は、もはや仕事を終えた風呂上がり。《ドラゴン変化/Form of the Dragon》が確実に5点のクロックを刻みながら地上を止めてくれるし、相手が火力を連打する動きを見せるならば《静寂の命令/Decree of Silence》を追加すればよい。

そして、そこに《独房監禁/Solitary Confinement》までもが。

もう、本体に火力も届きません。

ロサンゼルスでは、親和がその強さ故にメタられた。
今度は、ロスで活躍したデッキがメタられる番なのである。

中村 1 – 2 射場本


Saturday, Nov 5: 6:16 p.m. - 初日デッキ分布一覧

by Daisuke Kawasaki
アーキタイプ 小計 デッキ 使用者数
赤系ビートダウン 67 Boros Deck Wins 47
    バーン 7
    ゴブリン 5
    歌ゴブリン 5
    Red Deck Wins 2
    ゴブリン召集 1
サイカトグ 35 二色サイカトグ 20
    Dredge-A-Tog 15
マッドネス 26 Madness 'Tog 12
    Golgari Madness 12
    UG Madness 2
Mercy Rock 23 純正 13
    Levyタイプ  10
親和 15   15
The Rock (マルカデス) 12   12
Scepter Chant 11   11
Heartbeat Desire 11   11
その他ビートダウン 16 ステロイド 4
    白ウィニータッチ青 2
    白緑発掘 2
    RGWウィニー 2
    RBビートダウン 2
    GWBウィニー 1
    BBB 1
    SSS 1
    ソリューション 1
その他コントロール 16 黒白 6
    黒単 4
    サイクリング 3
    黒緑 2
    ポンザ 2
    GBWミラーリ 2
    青黒コントロール 2
    フィンキュラ 1
Rogue 31 リアニメイト 7
    CAL 4
    平等化 4
    トロン 3
    歴伝 2
    緑白トークン 2
    ブレイズ 2
    行進抹消 1
    ターボフォグ 1
    鞘虫ヘイト 1
    DDT 1
    ゴブリン対立 1
    緑単ビーコン 1
    青黒赤Magnivore 1
    赤単マナ加速 1
    アイアンワークス 1
    赤単コインフリップ 1

新環境になって間もないエクステンデッド環境。

強豪たちが口をそろえて「PTLAからの日があいていなすぎる」と語る今回のGP北九州。
やはり、メタはPTLAの影響を強く受けたものになってしまっているのだろうか?

■赤系ビートダウン 67名

BDW 47
バーン 7
ゴブリン 5
歌ゴブリン 5
RDW 2
ゴブリン召集 1

PTLAのトップ8に3人を送り出したという実績を勝ってか、BDWが今回の一番人気となった。全体の約17%、実に6人に1人以上がBDWを使っているというデータとなった。

赤系のビートダウンデックへと範囲を広げると、25%弱、4人に1人が山を置いてダメージを与える事を選択したのだ。

使用しているプレイヤーを見ても、元祖BDW「デック構築の天才」藤田 剛史(大阪)や「やる気のイデア」志村 一郎(茨城)、中村 修平(大阪)などなどスターぞろいだ。

恐らく、多くのプレイヤーがメタの中心と考え、対策してきているであろうこのデックだが、今回もトップ8入りは確実なのではないだろうか。

■サイカトグ 35名

2色サイカトグ 20
dredge-a-tog 15

続く2番人気には、多くのプレイヤーが「環境を支配している」と名前を挙げる《サイカトグ/Psychatog》を中心としたデックが名乗りを挙げる事となった。分類の便宜上、ここではいわゆるパーミッションタイプのサイカトグデックの人数を挙げているが、この後で登場するMadness 'Togも、墓地循環シナジーの締めくくりとして《サイカトグ/Psychatog》が採用されており、この人数(24人)を加えると、59名と赤系ビートダウンに迫る人数のプレイヤーがこのクリーチャーをデックに投入しているのだ。

ただし、同じサイカトグデックでも、墓地活用による爆発力を重視したDredge-A-Tog(主な使用プレイヤー:石田 格(東京)・大澤 拓也(神奈川)など)と、Dredge-A-Togも含む同系へのカードパワーとサイドボードでのクリーチャー対策に優れた昔ながらの2色サイカトグ(主な使用プレイヤー:有田 隆一(東京)・平林 和哉(滋賀)など)ではデックの動きも得意とする相手もまるで変わってくる。

PTLAでは2色サイカトグに軍配があがったが、この北九州の地ではどちらに勝利の女神は微笑むのか。

■マッドネス 26名

madness 'tog 12
golgari madness 12
UG madness 2

そして、3番人気は発掘という新しい墓地活用エンジンを手に入れ、またギルドランドのおかげで墓地活用とあまりにも相性のよい(そして共鳴者でもある)《サイカトグ/Psychatog》をタッチする事が可能になったマッドネス系のデックがランクインした。

この項では《サイカトグ/Psychatog》入りの中で《ゴルガリの墓トロール/Golgari Grave-Troll》を採用してないものをmadness 'tog、採用している物をgolgari madnessと分類した。

また、大塚 高太郎(愛知)と板東 潤一郎(茨城)という共にマッドネスを得意デックとする二人が共同開発したデックを持ち込んでいることも印象的だ。

■Mercy Rock 23名

純正 13
Levyタイプ 10

Kataki, War's Wage

日本では「京都迷宮案内」としても知られる、いわゆるビートダウン色の強い緑黒デックであるMercy Rockが意外にも人気を集めた。

前シーズンでも人気を集めた従来のバージョンと別に、PTLAでRaphael Levy(フランス)が持ち込んだ手札破壊を強力にフィーチャーしたバージョンが人気を集めているのも理由の一つであろう。藤田 修(京都)が使用しているのもLevyの使用しているバージョンから墓地対策などを強化させたバージョンだ。

■親和 15名

PTLA前は、「頭ひとつ抜けたデックパワー」と評された親和だが、BDWの躍進とそれに伴って環境に《戦争の報い、禍汰奇/Kataki, War's Wage》があふれかえった事によって多くのトッププレイヤーが使用する事を躊躇したためこの人数となった。

トッププレイヤー、特に2色サイカトグを選択したプレイヤーの多くはメタゲームから親和をほとんど排除しており、その裏をかいて大活躍できるかどうか注目したい。

■The Rock/マルカデス 12名

ラヴニカで黒緑という色が強化されたものの、エクステンデッドの黒緑デックの代表格であったマルカデスはDredge-A-TogやMercy Rockに及ばないこの人数となった。

白をタッチしたり、《けちな贈り物/Gifts Ungiven》の助けを借りていっそドメイン風にしたりと色々なバージョンが試行錯誤されてはいるが、それが結果にどうつながっていくのか見守っていきたいと思う。

■No Stick/セプターチャント 11名

PTLAでは有田をトップ8に導いたセプターチャントだが、今回有田はセプターチャントの使用を見送っている。

一方で、森 勝洋(東京)によるチューンのバージョンを大礒 正嗣(広島)・津村 健志(広島)という今や日本を代表する二人が使用している。
使用している人数は決して多くないが、デック自体のポテンシャルと使用プレイヤーのポテンシャルから、上位でよく見かけるデックとなるだろう。

■Heartbeat Desire 11名

PTLAでは意外な活躍を見せたデザイアだが、今回、サイカトグやLevyタイプの黒緑が増えるだろうと言うメタゲームからか、はたまたPTLAで痛い目にあったプレイヤーが多かったせいかあまり使用人数は伸びなかった。

主なトッププレイヤーとしては塩津 龍馬(愛知)がこのデックタイプを選択している。

■その他ビートダウン 16名

ステロイド 4
白ウィニータッチ青 2
白緑発掘 2
RGWウィニー 2
RBビートダウン 2
GWBウィニー 1
BBB 1
SSS 1
ソリューション 1

ここで少数派のビートダウンデックに目を向けてみよう。

まずは中島 主税(茨城)などトッププレイヤーにも愛好者のいるステロイド。ラヴニカで優秀な火力が追加され、サイズで上回る分BDWを食い物に出来る可能性が多い。

Wrath of God

また、ラヴニカで多色強力スペルが多数追加された為か、様々な多色ウィニーを試してみているプレイヤーも入るようだ。中にはBBB(Bear Bounce Burn 2マナ2/2クリーチャー(通称熊)のクロックを火力とバウンスでサポートするデックタイプ)やSSS(赤白青の《稲妻の天使/Lightning Angel》入りビートダウン)のような懐かしいデックタイプも存在している。

■その他コントロール 16名

黒白 6
黒単 4
サイクリング 3
黒緑 2
ポンザ 2
GBWミラーリ 2
青黒コントロール 2
フィンキュラ 1

少数派のコントロールはやはり黒系が大部分を占める。

だが構成は、黒単・黒緑が《陰謀団の貴重品室/Cabal Coffers》を利用したトーメント以来の黒コントロールであるのに対して、黒白は、白の《神の怒り/Wrath of God》を中心とした全体除去に黒の単体除去を組み合わせた形とかなりの差異がある。

セプターチャントなどに厳しいと言われている黒コントロールだが、BDW中心のメタゲームとなった今回、メタゲームに風穴を開ける事が出来るだろうか。

■独自路線/Rogue 31名

リアニメイト 7
CAL 4
平等化 4
トロン 3
歴伝 2
緑白トークン 2
ブレイズ 2(RB/UB)
行進抹消 1
ターボフォグ 1
鞘虫ヘイト 1
DDT 1
ゴブリン対立 1
緑単ビーコン 1
青黒赤Magnivore 1
赤単マナ加速 1
アイアンワークス 1
赤単コインフリップ 1

いわゆるローグデックにも軽く触れておこう。

今回のローグデックの中でもっとも注目を集めるのが、三原 槙仁(福岡)がデザインし、日本チャンピオン諸藤 拓馬(福岡)GP岡山チャンピオン志岐 和政(長崎)の3人が選択しているCALと呼ばれる《壌土からの生命/Life from the Loam》とサイクリングランドのエンジンを利用したコントロールデックではないだろうか?

また、浅原 晃(神奈川)はPTLAに続いて《平等化/Balancing Act》を軸にしたデックを、今回はサイドボードにシークレットテックを仕込み強化したデック、その名もG.o.D.(God of the Deck)を持ち込んでいる。

赤系ビートダウンとサイカトグを使用したデックが会場の半分を占める結果となったGP北九州。だが、一方で様々な個性的なデックが生まれる兆候もちらほらと見え隠れしている。果たしてこの環境のソリューションはどのデッキか?


Saturday, Nov 5: 7:03 p.m. - Round 5: 森 勝洋(東京) vs. 浅原 晃(神奈川)

by Daisuke Kawasaki
デッキの命名にも注目の浅原 晃

長い間最前線でマジックを続けていると、プレイヤー同士の間でも様々な因縁や宿命、ジンクスが芽生えてくるものだ。

例えば、同じく第5ラウンドでフィーチャリングされ、隣のテーブルで戦っている石田 格(東京)と志岐 和政(長崎)の場合、同じくエクステンデッドを舞台に熱い戦いが繰り広げられたGP岡山において、予選から破竹の快進撃を続ける石田を決勝戦で志岐が返り討ちにしたという因縁がある。エクステンデッドの借りはエクステンデッドで、と石田が考えたかどうかは筆者の及び知れないところだが、やはりお互い何かしら思うところはあるのではないだろうか。

一方、本題の浅原対森だが、この二人にはどのような因縁があるのだろうか?

共に浅原連合のメンバーとして、最近では森が共に調整する機会は減っているとはいえ、切磋琢磨しているチームメイトであり、またお互いが超一流のデックビルダーでもある。

今回浅原が持ち込んだデックは、PTLAで使用した《平等化/Balancing Act》デックに、サイドボードにシークレットテックを仕込んだエクテン版G.o.D.(God of the Deck)である。浅原にデックの完成度を尋ねた所、

「《サルカトグ/Sarcatog》入れ損ねましたのでダメですね」

Sarcatog

との回答。まったく浅原のコメントは役に立った事がない。

ちなみに、「《サイカトグ/Psychatog》じゃないのですか?」と筆者が聞いた所「あ、それは本当にありでしたね…」だそうだ。浅原は何処まで本気なのだかわからない。

一方、森のデックは独自のチューンを施したセプターチャントだ。「世界のISO」こと大礒 正嗣(広島)をもってして「信頼のモリカツブランド」と評させるほど森チューンのデックには信頼感がある。それは、今回多くのトッププレイヤーたちがモリカツブランドのセプターチャントを選択している事からもうかがい知れるだろう。

森と浅原のデックがエクステンデッドで戦うといえば思い出されるのが荒堀 和明(東京)が優勝したGP仙台である。このとき、トップ8のうち過半数を超える5人がモリカツ型と呼ばれる森がチューンした(もしくはそれを元ネタとした)トリックスを使用していた。だが、そんなモリカツ型トリックスの荒波を渡りきり、荒堀を王座へと導いたのは浅原のゾンビプリズンだった。

お互いのデックビルダーとしての意地がぶつかりあうのか。
果たして、二人の間にはどのような因縁が、ジンクスがあるのだろうか。

Game 1

先攻は森。ノーランドの手札を少し考えた後にマリガンを宣言。

宣言後にライブラリーのトップをめくり、それが土地であった事を確認すると「うわ、勝ってた!」と一言。

森といえば、ノーランドノータイムキープなど様々な逸話を残している事でも有名だが、やはり人間は丸くなっていくものなのだろうか? そんな筆者やギャラリーの視線を感じてか、「まだ若いまだ若い」とつぶやきながら6枚の手札を確認。土地は《平地/Plains》1枚。これを森はノータイムでキープ。浅原はマリガンなし。

Fact or Fiction

《平地/Plains》をセットした森が浅原にターンを渡した後、森が平地をタップする事は一切なかった。浅原が何の不自由なく着々とマナベースを揃えていくのを横目で見ながら、ドローをしてはため息をつき、手札をディスカードする。森の墓地に並ぶカードたちでキャストされたものは一枚もない。端的に言えば土地を引かなかった。

浅原 1-0 森

「浅原さんとやると必ずマリガンするよー」ぼやく森。
「そういう運命なんだよ」とにやにやする浅原。

Game 2

先攻は続いて森。今度はお互いマリガン無し。

森は「マリガンなかったからには勝ったね」と上機嫌。

お互いが淡々と土地をならべつつ、森が《嘘か真か/Fact or Fiction》。めくれたのは、土地が3枚と《金属モックス/Chrome Mox》、そして《嘘か真か/Fact or Fiction》。

当然、1:4にわけられ、引き続き《嘘か真か/Fact or Fiction》。

めくれた中に《狡猾な願い/Cunning Wish》が含まれており、森はそこから《オアリムの詠唱/Orim's Chant》へとアクセス。手札にもともとあった《等時の王笏/Isochron Scepter》をキャストしそこに《オアリムの詠唱/Orim's Chant》を刻印した。ソーサリーがメインとなる浅原のデックにとって非常にキツイ展開だ。

だが、浅原と森の因縁はこんな事には屈さない。

森がマリガンしないで順調にデックを動かしていた事は何を意味するのか?

まず、浅原は《等時の王笏/Isochron Scepter》に《帰化/Naturalize》をキャスト。当然これを森はカウンターするが、続いて浅原は森の《島/Island》に《火+氷/Fire+Ice》のIceをキャスト。ちなみに森のアンタップ状態の土地は3枚。《島/Island》をタップされると青マナが2マナでなくなる状態だ。森はしばらく悩んだ末にこれを通す。

そして浅原のターン。アップキープに森は残った2枚の土地をタップして《等時の王笏/Isochron Scepter》の能力を起動して《オアリムの詠唱/Orim's Chant》のコピーをプレイ…するはずだったのだが、浅原が《等時の王笏/Isochron Scepter》の能力起動にスタックしての《オアリムの詠唱/Orim's Chant》でこれを逆に禁止してしまったのだ。

Isochron Scepter

そして、手も足もでない状態の森に対して土地を全部サクリファイスからの《平等化/Balancing Act》《土を食うもの/Terravore》コンボを決め森を投了させた。

 「ひどいよ!全部そろってんじゃん! 揃いすぎだよ!」

そう、森が標準的なドローをしていたという事は…浅原は当然それ以上のドローをしているのである。

お互いが超一流のデックビルダーという前フリとなんら関係の無いオチで申し訳ないが、これが現実なのである。ご了承いただきたい。

浅原 2-0 森

浅原と森は圧倒的なスピードでゲームを終わらせた。

どのくらい圧倒的かというと…もう一つの因縁の対決である石田・志岐戦はまだ1本目。しかも石田の《破滅的な行為/Pernicious Deed》によって一度場がまっさらになった所だったくらいだ。

浅原とは相性が悪いという森 勝洋

ちなみに、Dredge-A-Togの石田と、三原デザインのCALと呼ばれるシークレットデックの対決だが、1本目は上記状況から、またお互いの《サイカトグ/Psychatog》と《ゾンビの横行/Zombie Infestation》がにらみ合う展開から、石田の《破滅的な行為/Pernicious Deed》が再びブロッカーをなぎ倒して致死量のダメージを叩き込み終了。

2本目は激しい手札破壊と発掘合戦の後に石田の《消えないこだま/Haunting Echoes》がささり(なにしろお互い物凄いスピードで墓地を肥やしているのだ)デックの中身を見られる前に志岐が投了。GP決勝の借りを返した、というにはまだ早いかもしれないが、とにかくこちらは因縁に一応のけりをつけた形となった。

しかし、三原のデックの正体が中々判明しないものである。今回一番のシークレットテックであるといっても過言ではないかもしれない。

石田 2-0 志岐


Saturday, Nov 5: 7:55 p.m. - Round 6: 三原 槙仁(大分) vs. 藤田 修(大阪)

by Keita Mori
今季のグランプリ台北で 'Deck X' を披露して優勝している藤田 修

先ほどの記事でライターの川崎が軽く触れているトピックなのだが、ロサンゼルス・デッキだらけのフィールドに意欲作を持ち込んだ「噂の人」が三原 槙仁(大分)だ。三原といえば今年の日本選手権で諸藤 拓馬(福岡)を優勝に導いた"Razor Tron"デッキの製作者としてその名を知らしめた名伯楽であり、シングルプレイヤーとして彼自身も日本選手権に決勝ラウンド進出を果たしている強豪。そんな三原が文字通りの「注目の試合」でまみえる相手が大阪の藤田 修(大阪)だ。

藤田はプロツアー・アムステルダム(ミラディンブロック・ドラフト)で準優勝を果たしているというワールドクラスのトッププレイヤーである。『デッキ構築の天才』藤田 剛史(大阪)の片腕として、その名作デッキをシェアされて構築戦に臨むことも多い彼だが、今シーズンのグランプリ台北を優勝したときはオリジナルデザインでのことだった。《けちな贈り物/Gifts Ungiven》コントロールが環境を支配していった中を切り裂いた彼の白青デッキは、"Deck X"と命名され、世界に広まった。

二人の強豪の対決、そして「噂の」三原の地雷ぶりに注目したい一戦だ。

Game 1

藤田がこのグランプリでプレイしているデッキのデザイナー欄を見ると、そこにはRaphael Levy(フランス)という名前がクレジットされている。藤田が第1ゲームで見せた輝きは、まさしくそのLevyの緑黒ビートダウンデッキのエッセンシャルな部分を抽出したかのような、滑らかで凶悪な動きだった。

先手の藤田は《金属モックス/Chrome Mox》に《化膿/Putrefy》を刻印し、セットランドとあわせてので《闇の腹心/Dark Confidant》召喚からゲームをスタート。後手の三原がタップインで赤いサイクリングランドを置くだけだった中、アップキープに《腹心》によってめくられた《獣群の呼び声/Call of the Herd》を第2ターンにプレイし、場には早くも2/1と3/3のアタッカーが整列することになった。ありていに言うと5点のダメージクロックだ。

Dark Confidant

フェッチランドからの《湿った墓/Watery Grave》タップインという静かな動きしか出来ない三原へ向けて、藤田は第3ターンに3発の《陰謀団式療法/Cabal Therapy》を(最後の1回は出したばかりの《極楽鳥/Birds of Paradise》を生贄に捧げてのフラッシュバック)叩き込み、《燃え立つ願い/Burning Wish》と《突撃の地鳴り/Seismic Assault》を墓地に送り込んだ。

…《突撃の地鳴り/Seismic Assault》!?

ともあれ、5点のダメージを叩き出すアタッカーたちが大暴れする中、藤田は4ターン目にも《腹心》のドロー能力によって3枚目の《陰謀団式療法/Cabal Therapy》を手に入れ、これで三原の最後の希望であった《永遠の証人/Eternal Witness》をも奪い取り、まもなく三原が投了ということになった。

藤田 1-0 三原

Game 2

先手三原が黒サイクリングランドこと《やせた原野/Barren Moor》をタップインしてゲームを始める中、《金属モックス/Chrome Mox》を絡めて第1ターンに《闇の腹心/Dark Confidant》の召喚からロケットスタートを果たす藤田。

「そいつ強いですよねえ…」

とため息をつきながら、三原は《やせた原野/Barren Moor》をタップして手札の《やせた原野/Barren Moor》をサイクリングしてカードを1枚引き、ここで引き当てた《極楽鳥/Birds of Paradise》を《樹木茂る山麓/Wooded Foothills》フェッチの《森/Forest》から召喚するという第2ターンだ。

藤田は《闇の腹心/Dark Confidant》でライブラリーをめくり、これは《沼/Swamp》。

Seismic Assault

「なんて強さだ…」と三原がこぼす中、藤田は《強迫/Duress》プレイ。《燃え立つ願い/Burning Wish》と《壌土からの生命/Life from the Loam》の二択で前者が墓地へと落とされる。

これを受けて三原は手札のサイクリングランドをキャントリップし、墓地にある1枚のフェッチランドと2枚のサイクリングランドを《壌土からの生命/Life from the Loam》で回収した。

《壌土からの生命/Life from the Loam》がサイクリングランドとフェッチランドを巻き込んですさまじいアドバンテージを稼ぎ出すというエンジンを…三原 槙仁は「より直接的な」殺傷兵器として昇華させた。ご明察の通り、第1ゲームでちらりと見えた《突撃の地鳴り/Seismic Assault》が砲台なのである。

藤田は《萎縮した卑劣漢/Withered Wretch》で墓地の《壌土からの生命/Life from the Loam》を1枚ゲームから除外することに成功するが、すでに2枚目の《壌土からの生命/Life from the Loam》を手札に持っていた三原はサイクル、サイクル、フェッチという暴力的なデッキ圧縮を進める。

そして、第4ターンにプレイマットへと置かれた《突撃の地鳴り/Seismic Assault》が、凶悪なる「発掘」システムとともに死の協奏曲を奏でる。

三原 1-1 藤田

《突撃の地鳴り/Seismic Assault》爆弾を披露する三原 槙仁

Game 3

三原の手の内を熟知した今、藤田はすばやいダメージクロックと手札破壊呪文が必要だった。そして、先手マリガンを選択。さすがに6枚という初手からモックスがらみのロケットスタートを果たすことはかなわず、フェッチランドを起動するだけの第1ターンから、第2ターンにBob Maherこと《闇の腹心/Dark Confidant》を召喚することになった。

一方で三原は開幕ターンのフェッチランド起動から《極楽鳥/Birds of Paradise》スタートで、2ターン目にも手札の土地をサイクリングしたうえで《壌土からの生命/Life from the Loam》を使い、サイクリングランド1枚とフェッチランド1枚を回収するという具合にエンジンを暖気し始めた。

第3ターンを迎えた藤田は《闇の腹心》で《闇の腹心》をめくりだし、《陰謀団式療法/Cabal Therapy》の表裏(フラッシュバックは呼びたてホヤホヤの《腹心》がコスト)で三原の手札を攻撃した。

「もっちろん《突撃の地鳴り/Seismic Assault》」

藤田の宣言は明快で、そして的確だった。

三原のハンドにあった呪文は2枚の《突撃の地鳴り/Seismic Assault》と1枚の《燃え立つ願い/Burning Wish》だけだったので、藤田はそれらをすべて叩き落す。

しかし、フェッチ、サイクリング、サイクリング(どちらかのキャントリップを「発掘」起動に置き換えたり)という驚異的なエンジンはあっという間に三原に新鮮なカードたちを供給していく。そして、《燃え立つ願い/Burning Wish》でのウィッシュボードから《紅蓮地獄/Pyroclasm》を唱え、新顔の《惑乱の死霊/Hypnotic Specter》ともども藤田軍を瓦解させる。

それでも「発掘」手札破壊こと《悪夢の虚空/Nightmare Void》を撃ちながら藤田は2体目の《死霊》を召喚し、さらにアドバンテージの権化と呼ばれた《獣群の呼び声/Call of the Herd》から3/3象トークンを展開し、なんとか《突撃の地鳴り/Seismic Assault》を引かれる前に試合を終えるための準備を整える。そうだ、《陰謀団式療法》で2枚《地鳴り》を捨てさせたじゃないか。

しかし、九州男児はひたすらに「発掘」し、サイクリングし、フェッチする。この愚直なまでの繰り返しの最中に《独房監禁/Solitary Confinement》などのカードが墓地へと落ちていくが、三原はとうとう暗証番号を探り当てた。

《永遠の証人/Eternal Witness》。

そうだ。進入経路は正攻法に限らなくてもいい。
リソースは再利用すればいいのだ。

かくて、三原は圧倒的なスピードで土地をかき集め、フェッチランドやギルドランドによって傷ついていた藤田の14点のライフを一撃で屠った。

三原 2-1 藤田

かつて《土地税/Land Tax》と《大地の刃/Land's Edge》という凶悪なタッグが世間を騒がせていたことを、我々は想起せずにはいられない結末だった。

"Confinement-Assault-Life"こと"S.A.L"。これは要チェック。


Saturday, Nov 5: 8:34 p.m. - Round 7: 有田 隆一(東京) vs. 森田 雅彦(大阪)

by Koichiro Maki
有田 隆一

有田は遅咲きのプレイヤーだ。マジック歴は長いが、大きく花開いたのは昨年になってから。だが、それ以来はコンスタントに成績を残している。2004PTコロンバス、2004PTシアトル、2005PTロサンゼルス、既にプロツアー最終日進出回数は3回だ。

一方の森田も、プロツアーでの大きな成功こそないものの、グランプリでは世界最強クラスの成績を残すプレイヤー。特に準優勝させたら世界一と言っても過言では無いだろう。静岡、福岡、札幌、仙台、台湾、横浜。ざっと思い浮かべるだけでも大量の銀カップがずらり。

この二人が、初日全勝をかけて相まみえた。

Game 1

ロスではセプターチャントでトップ8入りしている有田だが、今回は優勝した Antoine スタイルのサイカを選択。逆に、森田は有田が使っていたセプターチャントを使用している。

がちがちのコントロール対決だけあって、序盤のゲーム展開は緩め。だが、5枚土地が並んだぐらいから次第にテンポが上がっていく。

最初の呪文は、有田からだった。《嘘か真か/Fact or Fiction》。だが、これには森田の《吸収/Absorb》が突き刺さる。だが、次のターン終了時にも、有田は再度《嘘か真か/Fact or Fiction》。今度は通り、有田の手札には《堂々巡り/Circular Logic》《ブーメラン/Boomerang》《魔力の乱れ/Force Spike》が加わる。

ここからは、互いにカードを引き合う時間だ。《知識の渇望/Thirst for Knowledge》《嘘か真か/Fact or Fiction》が飛び交い、互いに一撃の切れ味を高めていく。必然として、しばしの後、二人の前には呪文ではないクリーチャーが並ぶこととなった。

有田の前には、二体の《隠れ石/Stalking Stones》。
森田の前には、《正義の命令/Decree of Justice》のサイクリングが生み出した数体の兵士。

有田は、《燻し/Smother》を使用し兵士を十分に減らすと、2体の《隠れ石/Stalking Stones》による攻撃を宣言した。

だが、森田は静かに《狡猾な願い/Cunning Wish》をプレイ。有田がこれに頷くと、《翼の破片/Wing Shards》を取り出し、そのまま唱えた。

2枚の《堂々巡り/Circular Logic》を使用し、なんどかカウンターに成功した有田だが、《翼の破片/Wing Shards》は、そのストーム能力によって、1体の《隠れ石/Stalking Stones》を撃墜した。

ここで流れが大きく変わった。有田は攻めての半分を失い、その変わりに、森田は貴重な時を得た。森田は、再び《正義の命令/Decree of Justice》を使用し兵士の増産に成功。

その波に、有田は飲み込まれていった。

森田 1 – 0 有田

Game 2

Meloku the Clouded Mirror

森田のターン終了時に有田が土地を《ブーメラン/Boomerang》で戻す。だが、そこからまたしばらくはゲームの序盤だ。

実質的な動きが出たのは、有田の場に6枚土地が並んでから。《強迫/Duress》を挟み森田の手札を攻めながら、《隠れ石/Stalking Stones》を変身させてクロックを確保。初号機こそ《狡猾な願い/Cunning Wish》経由で森田が調達した《解呪/Disenchant》の前に崩れ落ちるが、弐号機が着実にダメージを重ねる。

森田の《神の怒り/Wrath of God》がカウンターされ、ライフが8まで押し込まれたところで有田は《サイカトグ/Psychatog》をプレイした。

今更書くまでもないが、既に墓地の枚数は余裕で致死レベル。森田はゆっくりと考えをまとめた後に、これを受け入れる。そして、それに対抗して《正義の命令/Decree of Justice》を。X=7。《不可思議/Wonder》の力を借りて飛ばない限り、相当硬い防御網だ。

ここで有田は、更に押した。《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》の召喚にチャレンジする。

森田の《対抗呪文/Counterspell》に有田が、《堂々巡り/Circular Logic》を合わせると、そのマッドネス前に、《狡猾な願い/Cunning Wish》から《オアリムの詠唱/Orim's Chant》を調達し、詠唱。準備を重ねた有田は、これすらも《堂々巡り/Circular Logic》で撃墜し、無事に《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》が着地するのものの…

森田は、そこで《神の怒り/Wrath of God》。

《隠れ石/Stalking Stones》が、《サイカトグ/Psychatog》が、《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》が、次々と墓地に送られていく。完全に静けさを取り戻した場に、森田の《賛美されし天使/Exalted Angel》が、変異状態で登場した。

だが、有田は更にここで《サイカトグ/Psychatog》を合わせてきた。カウンターの無かった森田はこれを容認するしかなく、天使は攻撃にいけなくなった。

有田は、「グッドカード!」と笑顔を見せると、《綿密な分析/Deep Analysis》をプレイ。引いたカードにあった、《ブーメラン/Boomerang》を森田の天使に使用し、遮る者が無くなったレッドゾーンに《サイカトグ/Psychatog》を送り込む。

森田 雅彦

だが、天使を追放した代償は大きかった。マナが無くなり見守るしかなくなった有田の前で、森田は《狡猾な願い/Cunning Wish》のプレイを宣言した。選ばれたカードは、Game 1で有田の攻撃陣をずたずたに引き裂いた《翼の破片/Wing Shards》だ。

天使の残した翼が、破片となって敵を退けたのだ。

全力の攻撃を返された有田に、再び舞い降りた天使に対抗する力は残されていなかった。

遠く離れたメルボルンの地で戦う戦友、テリー・ソーに少しばかり遅れて、森田も全く同じデッキで初日全勝の成績を残したことになる。北九州とメルボルン、二つの会場を同じデッキが制する奇跡はおこるのだろうか。

明日の動向もお見逃し無く。

森田 2 - 1 有田


Saturday, Nov 5: 9:22 p.m. - Round 7: 浅原 晃(神奈川) vs. 石田 格(東京)

by Daisuke Kawasaki
初日全勝をかけて闘う浅原

さて、エクステンデッドのGPの例としていささかふるいGP仙台をRound 5の記事で引用したが、もう少し昔話にお付き合い願いたい。

さて、GP仙台においてトップ8のうち5人を占めたモリカツ型トリックスや優勝したゾンビプリズンの陰に隠れがちかもだが、もう一人の偉大なデックビルダーの活躍も忘れてはならない。

Benzo(《納墓/Entomb》による強力サーチリアニメイトと、《生き埋め/Buried Alive》からの《ゴブリンの太守スクイー/Squee, Goblin Nabob》から発生するアドバンテージを軸にした黒単墓地活用デック)からはじまる《生き埋め/Buried Alive》-《ゴブリンの太守スクイー/Squee, Goblin Nabob》エンジンを組み込んだ黒緑のWild Zonbieというアーキタイプを僅かな時間で完成させ、見事トップ8を決めた男がいるのである。

当時、浅原 晃(神奈川)たちは、調整していたゾンビプリズンが直前のGPラスベガスになって登場したWild Zonbieというアーキタイプに対して非常に不利である事は認識していたが、短期間で完成形にまで調整できる人間などいないだろうと高を括っていた。そんな浅原の想像を超える完成度のWild Zombieを完成させ、浅原を予選ラウンドで打ち倒し、トップ8進出の夢を打ち砕いたのが、石田 格(東京)その人である。

現在では、中島 主税(神奈川)の家を中心としたコミュニティで時によき相談相手として、時によきライバルとしてお互いに切磋琢磨しあう二人が、舞台を北の仙台から南の北九州へ移し、初日全勝をかけて再び合間見える。

デックは浅原が前述した「サイドボードは飾り」平等化デックこと、G.o.D.。
石田は当然PTLAで話題をさらったDredge-A-Togである。

はたして歴史は繰り返すのか?それとも浅原がその奇抜な発想で歴史の環を断ち切るのか?

Game 1

浅原がサイカとの対戦時に指標としている事があるという。

浅原 「《テラリオン/Terrarion》に対してどう対処するか、それにつきますね。正直《テラリオン/Terrarion》にカウンタースペルを使ってくれるサイカには負けませんね。ちなみに、専門用語でテラサイカっていうんですが。」

どこの専門用語かはわからないが浅原はこう語った。そんな浅原に質問をしてみた。内容は「《魔力の乱れ/Force Spike》でカウンターしてきた場合はどうか?」である。

浅原 「やばいですね。そこで《魔力の乱れ/Force Spike》をちゃんともってるのも強いですし」

Force Spike

そして石田はきっちりと浅原の《テラリオン/Terrarion》を《魔力の乱れ/Force Spike》でカウンターして見せたのである。先手を取っていた浅原ではあったが、浅原のデックの土地はそのほとんどがタップインで場に出てくる為、後手の《魔力の乱れ/Force Spike》が間にあってしまうのだ。これもまた、浅原が《魔力の乱れ/Force Spike》を決めてくるサイカを恐れる理由に他ならない。

だが、だからといって負けると決まった訳ではない。《魔力の乱れ/Force Spike》を撃ってくるサイカは楽に勝たせてくれないというだけの話である。

浅原は《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》や《燃え立つ願い/Burning Wish》を活用して手札を充実させながら緻密にゲームプランを練り上げていく。そして、手札に全てのパーツがそろった浅原は、石田が《けちな贈り物/Gifts Ungiven》経由で《壌土からの生命/Life from the Loam》エンジンを回し始めた隙を狙って、動き始めた。

まず、石田の3枚しかないアンタップ状態の土地のうち一枚を《火+氷/Fire+Ice》のIceでタップ。続いて自分のターンに《オアリムの詠唱/Orim's Chant》でカウンターを燻りだす作戦だ。これを石田はそのままスルー。ならば遠慮なくとばかりに浅原は全ての土地をサクリファイスしてからの《平等化/Balancing Act》・《土を食うもの/Terravore》の必殺パターンを叩き込んだ。

さて、普通の対戦ならば、ここで浅原winとでも書くべき場面である。並みのプレイヤーなら諦めて投了してもおかしくない。しかし相手は《テラリオン/Terrarion》に《魔力の乱れ/Force Spike》を撃つ男、石田 格である。

もくもくと土地を並べると、《チェイナーの布告/Chainer's Edict》キャストで《土を食うもの/Terravore》を除去。そこから《サイカトグ/Psychatog》召喚へとつなげ一気に逆転を果たしたのである。

石田 1-0 浅原

Game 2

先攻は浅原。

初手は《火+氷/Fire+Ice》が2枚に《燃え立つ願い/Burning Wish》《オアリムの詠唱/Orim's Chant》《土を食うもの/Terravore》《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》と充実しているが、スペルが充実しすぎて土地が1枚しかない。もちろん、《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》もあるので一か八かで勝負をするという方法もあるのだが、浅原は熟考の上でマリガンを選択した。めくったライブラリートップは……土地。

そして、おかわりとばかりにもう一回。まるでRound 5の森 勝洋(東京)を思わせるマリガンだ。

後手の石田が、2ダメージくらいつつ《強迫/Duress》をうち、浅原の《平等化/Balancing Act》を捨てさせるところからゲームスタート。

その後石田は順当にランドをサイクリングから《壌土からの生命/Life from the Loam》を引き当て、魔の墓地循環エンジンを作動させる準備を整えた。そのエンジンが生み出したリソースを貪り食べるのは…石田自身もこの環境を大きく支配しているカードと名前を挙げている《サイカトグ/Psychatog》だ。

Dredge-A-Togの《サイカトグ/Psychatog》は油断していると即死レベルの大きさにまで育つ。まだ発掘と《サイカトグ/Psychatog》のシナジーが明確になっていなかったPTLA初日。中村 修平(大阪)が何気なくスルーした4ターン目の《サイカトグ/Psychatog》がそのままもりもりと中村に止めを刺すのに十分なサイズまで成長したというのは有名な話だ。

当然、それが判りきっている浅原は《サイカトグ/Psychatog》への回答を探す事とする。

まずは《燃え立つ願い/Burning Wish》。石田は《堂々巡り/Circular Logic》をキャストするが、石田の墓地は(《壌土からの生命/Life from the Loam》の効果で)3枚であり、5マナ生み出せる浅原は当然3マナを支払う。

浅原が願いで持ってきたのは《無垢の血/Innocent Blood》。石田はなんら抵抗する事無く《サイカトグ/Psychatog》を墓地へと置く。これでなんとか場は五分だ。確かに浅原の手札には今のところ驚異は無いが、それは石田だって同じはずである。

そう考えてか、なんでかはわからないが、もしかしたら、あまった1マナを有効活用しようとしたのかもしれない。とにかく、浅原は最後の1マナをタップしてキャストしてしまったのである、あのスペルを。

そのスペルとは

《テラリオン/Terrarion》。

そして石田がキャストするのは《魔力の乱れ/Force Spike》。

ロスでベスト4に津村 健志を送り込んだデッキを調整し、北九州で爆発を見せた石田 格

もちろん、この場での1マナ同士のスペルの1:1交換が大きな影響を場に与えるとは考えがたい。

だが、お互いが土地を並べあった数ターン後に《消えないこだま/Haunting Echoes》のキャストで対戦相手を投了させたのは…

石田だった。

石田 2-0 浅原

やはり歴史は繰り返すのか。

浅原は自らのテラサイカ理論の裏をかかれて敗北する事になった。

いや、墓地活用デックの氾濫を見越して《消えないこだま/Haunting Echoes》を採用した石田の勝利か。

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