
夢ではない。現実なのだ。 大観衆の見守るテレヴィジョンマッチでたった今までマスターズの決勝を戦っていたのは Panzer Hunters の石田格であり、安藤玲二であり、百瀬和之であったのだ。 そして今、この 4 日間の総決算といってもいいマッチがここで展開されるのであり、そこには藤田剛史の姿が確かにあるのだ。 まさに、新時代の幕開けを垣間見ている思いが強い。
その、日本中の期待を一心に集めた藤田に相対する Zvi が構築してきたのは、青白のコントロール性の高いビートダウンデッキ。「コントロール性の高いビートダウン」という表現そのものに齟齬があるかもしれないが、実際にそうなのだからいたしかたない。 Zvi のデッキとのスパーリングを幾度にも渡って行ってきた藤田の感想によると、「カウンター・シャンブラーにとってこの青白はかなりキツイ」対戦になるだろうとのことであったが、ここまでの藤田の軌跡を見つめてきた一人としては、藤田の執念じみた今回の強さを信じてみたいものだった。
Game 1
先手 Zvi は平地が 1 枚しかない状態のハンドをキープ。これが裏目にでてしまい、序盤の土地事故という事態を迎えてしまった。 仮に藤田がステロイドか何かを使っていたのならここで勝負は決まってしまったことだろう。しかし、藤田が Zvi のもたつく間に展開できた攻撃的パーマネントはといえば、3 体の《貪欲なネズミ》くらいのもので、いまいちパンチにかけるものだった。
気が付くと、《ガリーナの騎士》、《翻弄する魔道士》、プロテクション:黒の《万物の声》、《嵐景学院の弟子》といったパーマネントを展開されるにいたってしまい、いつの間にやら情勢は一転。 藤田は《ヨーグモスの行動計画》からの逆襲を目論んだのだが、リアクションデッキとしての性質の強い Zvi にとっては、藤田のターンに一度しかスペルを唱えられないという誓約は好都合であった。15 ターン目には《万物の声》に対して藤田が迎え撃った《蝕み》を悠々と《吸収》し、次ターンにはブロッカーを《排撃》して、最後の防御を突破していったのだった。
土地事故につけこめなかった藤田と、窮地から脱していった Zvi Mowshowitz 。流れが明らかに変わりつつあったことは確かであろう。
Zvi 1-0

Game 2
流れはまちがいなく Zvi Mowshowitz にある。 観衆のすべてにそう確信させる展開だった。
先手をとった藤田が自ターンにはじめて能動的にパーマネントを展開できたのは、第 7 ターンの《行動計画》のキャストであった。もちろん、それまでの Zvi の行動に対してまったくリアクションを取れなかったわけではないのだが、すでに《嵐景学院の弟子》、《ガリーナの騎士》といったパーマネントが間隙を縫うかのように展開されてしまっており、ライフ面での喪失は辛いものがあった。
《行動計画》状況下での《嘘か真か》を《撹乱》され、《ガリーナの騎士》への《はね返り》は《撹乱》経由で《吸収》され、Zvi のさらなる《ガリーナの騎士》への《蝕み》は《反論》されてしまった。
「きっついなあ・・・」
Zvi 2 - 0

Game 3
後手の Zvi は、初手に《聖戦の騎士》をみつけると、例の「キシシシ・・・」という独特の笑い声をあげた。 対する藤田には後が無い。2 タ-ン目《夜景学院の使い魔》、続いて《頭の混乱》で青を指定。そこで公開されたハンドは以下のようなものであった。…ちなみに、相手の場は 2 枚の土地と《ガリーナの騎士》が一体。
《聖戦の騎士》* 2、《完全なる反射》、《排撃》
藤田はここで《反射》に驚きつつも、《排撃》を捨てさせた。 《完全なる反射》のテキストは以下のとおり。いずれかのプレイヤーがクリーチャー呪文をプレイするたびに、すべての反射(Reflection)を破壊する。その後で、そのプレイヤーは、そのクリーチャー呪文の点数で見たマナ・コストと等しいパワーとタフネスを持つ、白の反射クリーチャー・トークンを1個場に出す。 返しで当然《完全なる反射》。《聖戦の騎士》が《禁制》されてしまったものの、 4 / 4 トークンが場にあらわれた。 さらに Zvi の攻勢はとまらない。 《ガリーナの騎士》こそ《反論》されてしまったが、プロテクション:黒の《万物の声》、《排撃》を指定した《翻弄する魔道士》と連打して勝負を決めた。
Zvi 3 - 0