Live Coverage of 2005 Pro Tour Nagoya

更新日 Event Coverage on 2005年 1月 27日

By Keita Mori

いまから一年前、いわゆるトリプル・ミラディン環境化のロチェスター・ドラフトをフォーマット(競技種目)としたプロツアー・アムステルダムが行われた。そして、今になって私がこのイベントの取材を振り返ってみて、もっとも印象に残っている出来事の一つが、「もっとも強いコモンの装備品」の評価がイベントの前後で大きく変わったことである。

Bonesplitter

ミラディンというのは、エキスパンションそれ自体が大々的にアーティファクトをフューチャーしたセットだった。それこそ、開封したブースターの中身の過半数が「銀色」(昔風に言うならば「茶色」)だったり、5色のうちどれか1色のカードがまったく出現しなかったり、ということもあったという特異な環境なのだ。畏怖能力がほとんど意味をなさず、評価対象とならなかったのも印象的である。

そのミラディンというセットがフューチャーしていた「新システム」は、場に展開しているアーティファクトの数によってプレイコストが安くなるという「親和・アーティファクト/Affinity for Artifacts」、かつてのインベイジョン・ブロックの「キッカー/Kicker」を髣髴とさせる「双呪/Entwine」、さらにはクリーチャー強化型のアーティファクトである「装備/Equipment」などだった。

そんな中、リミテッド環境の主役であるクリーチャーを恒久的に強化できるパーマネントということで、やはり「装備」は注目の存在だった。実際、白いコモンクリーチャーに《レオニンの居衛/Leonin Den-Guard》や《空狩人の若人/Skyhunter Cub》といった「装備品と組み合わさることで驚異的なパフォーマンスを見せる優良クリーチャー」が存在したため、ある程度の枚数の装備品を集める前提での「白・装備系」というドラフティング・アーキタイプも存在したほどだった。そして、多くのプレイヤーがコモンで最も優れたミラディンの装備品として挙げたのが・・・《骨断ちの矛槍/Bonesplitter》だった。

たしかに、開幕1ターン目に展開されたこの装備品が、2ターン目に登場した《レオニンの居衛》や3ターン目の《空狩人の若人》に装着されてしまい、それだけで決定的なダメージを負わせてしまうという展開も珍しくなかった。プレイヤーが白くなければ、「ブロックされない」3マナ2/2クリーチャーである《ニューロックのスパイ/Neurok Spy》だとか、それこそ適当なフライング・クリーチャーにつけてやるだけでいい。また、本来なら一方的に戦闘で殺されてしまうはずの1/1チャンプブロッカーでさえ、なぜか3/3クリーチャーのアタックをけん制できるようにもなる「たった1マナのアーティファクト」だった。それが《骨断ちの矛槍/Bonesplitter》なのだ。ある意味、アムステルダムのロチェスター・ドラフトでこのカードがファーストピックされていったのは当然だった。それだけ多くのプレイヤーが、この《骨断ちの矛槍》を「コモンでは最高の一枚」と評価していたのだ。私個人も、これはきわめて自然なことと受け止めていた覚えがある。

しかし、アムステルダムでの「勝ち組」の白いドラフターたちが優先してピックしていた装備品は《骨断ちの矛槍/Bonesplitter》ではなかった。同じく1マナ域の装備品、《ヴィリジアンの長弓/Viridian Longbow》がシークレットテクだった。

Viridian Longbow

これは、自陣のクリーチャー1体を文字通りの「ティム化」させるものだ。ただ、これが起動できるようになるまでに「かかる時間が少し悠長である」というのが欠点として指摘されていて、超一流のカードとしては評価されない理由に挙げられていた。もっとも、膠着した状況下で対戦相手の本体を確実に狙撃し続けることができる「直接ダメージ源」となることや、自軍の複数のクリーチャーにかわるがわる矢筒をもたせて「2点以上のタフネスをもつクリーチャーを除去することが出来る」という応用力の高さは評価されていた。しかし、たとえば実際にこの《長弓》が2点のダメージを出すためには、召喚酔いに影響されていない2体のクリーチャーと、あわせて6マナの装備コストを要求する。やはり、「悪くは無いカードだけれど、《骨断ちの矛槍/Bonesplitter》が与えてくれるテンポには勝てない」という声が強かった。たしかに、わかりやすい、単純なカードパワーが《骨断ちの矛槍/Bonesplitter》にはあったので、そういう意味では対照的な二枚だったかもしれない。

ともあれ、そんなご時世だったから、アメリカの名ドラフターであるMike TurianEugene Harveyは、《ヴィリジアンの長弓/Viridian Longbow》を「自分たちの仲間内でドラフトするときよりもはるかに簡単に、そして確実に集めることができた」わけだった。

「白というと《まばゆい光線/Blinding Beam》と《骨断ちの矛槍/Bonesplitter》ばかりに注意が集まっていて、おかげで僕は自分の理想系としているデッキを作り上げることが容易だった。もちろん、《光線》や《矛槍》はあるに越したことはないけれど、人気が集まることが明白なカードに頼らない勝ちパターンはあったほうがいいよね」とは、今ではMTG.comのレポーターとなっているTurianの言葉。ちなみに、「白使いには《骨断ちの矛槍/Bonesplitter》ばかりに注意がいっていた人が多かったおかげで、《まばゆい光線/Blinding Beam》についても、僕らが想定していたよりも取りやすかった」とのことだ。

そんなこんなで、Mike Turianは悠々と決勝ラウンド(ベスト8)に進出を果たした。それに伴って、イベントも後半となってくると、《ヴィリジアンの長弓/Viridian Longbow》の評価もうなぎのぼりとなり、この装備品は初手取りされることも当たり前になっていった。やられてみて初めて思い知ること、というのはあるものである。

もっとも、「リミテッド世界最強」のNicolai Herzogがそのプロツアーの優勝を掴み取った決勝ドラフトのデッキは・・・シークレットテクも何もあったものではない、けれんみなど欠片ほども無いようなパワーデッキ。《腐食ナメクジ/Molder Slug》や《氷の干渉器/Icy Manipulator》が、まさにカードパワーの何たるかを我々に思い知らせてくれた結末だった。しかし、準々決勝敗退ながら、長いスイスラウンドを安定した成績で勝ち上がったTurianも勝ち組であったことは間違いない。

ここで私たちがプロツアー・アムステルダムから学ぶべきことは「真価に気づかれていないカードを探してみよう」ということだ。これはイベントを観戦する側が楽しむ上でも大きなポイントだと思われる。

たとえば、オデッセイ・ブロックのリミテッド戦だったグランプリ静岡で森田 雅彦(大阪)が準優勝したときに披露した赤いコモンの2枚コンボ、『真空波動拳』などはビッグサプライズそのものだった。《意気沮喪/Demoralize》と《入門の儀式/Rites of Initiation》という2枚のカードは、当時のドラフティングでは「ゴミくず」扱いされていたもので、実際に森田は「ドラフトの最後の数枚」という局面で確実にこれらをピックすることができた。

また、最近の例では、これまた「キング・オヴ・グランプリ」森田 雅彦が、神河物語3パックの環境だったグランプリ横浜の決勝ドラフトで目新しいアプローチを見せてくれた。それは「秘儀/Arcane・連携/Splice」という神河物語の新システムを最大限に活用しての《思考の鈍化/Dampen Thought》デッキで、対戦相手のライブラリーを攻撃することで勝利を目指すというものだった。これも「ほかのアーキタイプからしたらゴミくずのようなカード」を構成パーツに多く含んだテクニカルなスペルデッキだったわけだが、残念ながら、サプライズ要素としての賞味期限はとっくにオーバーしてしまっていると言わざるを得ない。今の段階ではプロツアー級の強豪たちにとっては既知のテクニックで、たとえばアメリカのチーム・グランプリに優勝したチーム:B(コロン・ビー)のGadiel Szleiferが決勝ラウンドで実際にこのアーキタイプを構築している。

グランプリ三冠王者、森田 雅彦(大阪)はオデッセイ・ブロックと神河ブロックのグランプリで「新しいテクニック」を披露してくれている

森田やSzleiferのドラフティングが観戦記事で取り上げられたのに伴って、リミテッド戦略を語る多くのコラムで"Danpen Deck"は取り上げられるようになり、その対策も様々に紹介されている。さらに、一挙手一投足が白日の下にさらされてしまうロチェスター・ドラフトでは、「こっそりと狙う」ことが不可能で、ちょっとしたヘイトドラフト(妨害工作)だけでガタガタにされてしまうリスクが常につきまとう。それでもこれはこのアーキタイプをプロツアー名古屋で見ることは出来るかもしれないが、もはや既知のデッキ」としてとらえるべきだ。

果たして、このイベントでブレイクすることになる「秘宝」としては何が考えられるのか、ウェブ観戦をなさっている皆さんにも考えてみていただきたい。今回の記事で2回も名前が挙がった森田 雅彦など、そういった意味では要注目なのではないだろうか。

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