
つい先日に行われたグランプリ香港のベスト8進出者リストの中には2人の日本人の名前があった。一人は世界的にも名前の通用するという日本屈指の強豪、大礒正嗣。大礒はプロツアー横浜準優勝という堂々たるパフォーマンスを見せつけて昨シーズンの新人王に輝いた人物で、アジア勢の中で唯一プロツアー決勝ラウンドを二回経験しているという非凡なプレイヤーでもある。
そして、その一方で・・・もう一人のプレイヤーは国内でもまだあまり知られていないであろうという人物だった。おそらく「Takuya Osawa」という英語のスペリングから漢字での名前の綴りがなかなか連想できない方も多かったのではないだろうか。ここでは、大礒とともに栄光の舞台にたった「大澤 拓也」にスポットライトをあててみよう。
大澤は現在19歳という若手のプレイヤーで、躍進著しい浅原連合でプレイスキルを磨いている。大きなトーナメントでの成功はグランプリ香港でのベスト8入賞がはじめてで、中島主税などにいわせると「今回の勝利で自身がついた、というか、ちょっとした風格が出てきたように思える」とか。
大澤のプレイヤーとしてのキャリアは意外なほど長く、はじめてトーナメントに出場したのは中学生の頃で、エキスパンションとしてはウルザ・ズレガシーがリリースされたばかりという時期だった。マジックに出会うまでは坊主頭の野球少年だったという大澤だが、今はいっぱしのプロプレイヤーも顔負けの濃密なマジック漬けの時間を送っている。香港から戻ってから仙台へと遠征してくるまでの一週間あまりも浅原晃、高桑祥広、森勝洋といった面々と四六時中ドラフティング三昧という時間を過ごしてきたそうだ。
おそらく、他を大きく圧倒する練習量、ともに時間を過ごす面子の濃さ、というのがこのプロツアー・サンディエゴ予選シーズンで大きな成果をあげている浅原連合の強さということになるだろう。これは構築プロツアーで大阪の藤田剛史のコロニーが見せ付ける強さに通じるものだ。そして、今や大澤はその輪の中心的な一人である。
「正直なところ、今日のシールドはゴッドデッキじゃないです。でも、戦えます」
控えめに、しかし力強く微笑んだ大澤。彼の話ではグランプリ香港でもあたえられたシールドデッキはいわゆる「普通のデッキ」そのものだったそうで、そこで勝ち上がってみせたことが彼の自身に繋がっているのだろう。
「とりあえずドラフトにとりあえずたりつくのが目標ですね」
と語る大澤。つまり、シールドデッキでの予選さえ切り抜けてしまえば、十分に彼にとって勝機はあるという認識なのだろう。事実、《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》をデザインしたJens ThorenやフランスのRuel兄弟といった強豪ぞろいのグランプリ香港で大澤は結果を残している。ちなみに彼がこのフォーマットで得意としているのは「ほとんど青単色に近いスタイルの親和」デッキということで、アーティファクトのピックにはとくに注意し、研究を重ねてきているという。
・・・はたして大澤がどのようなドラフティング技術を見せてくれるだろうか?
これは日曜日の注目すべきトピックのひとつと断言できるだろう。