Translated by Yoshiya Shindo
先週、僕が著者別アーカイブを見ていて気がついたんだけど、僕はかつて『本気プレイヤーの海を泳ぐ』を書いていた頃ほどPTQに参加しなくなったようだ。僕はかつてシーズンごとに4~5回以上は出ていたし、様々なグランプリトライアルや賞金トーナメントにも参加していた。今でもシーズンごとに1回なり2回なりはなんとかしているけど、取材の旅やらその他諸々のおかげで、僕はゲームに別なやり方で関わっていく人生にだんだんかわっているようだ。
ただ、勘違いしないで欲しい。僕のマジックに対する情熱は減ったわけじゃない――ごくわずかも、だ。ただ、一連の週末をPTQにはせ参じ続けるのが大変になってきたってだけだ。でも、そんな僕でも絶対に逃せないトーナメントが一つある。事実、僕は2005年のカレンダーを手に入れるや、すぐに今度の週末に丸印をつけたぐらいだし(正直言えば、そいつが売りに出されるのを待ってたこともあって、そう期間があったわけじゃない)、その週末にかち合いそうなスケジュールを全部かわしてきた 。神河謀叛のプレリリースは、僕が絶対にのがしたくないとーなめんとのひとつだ。
あなたたちの多くだって、プレリリースに関して僕と同じ気持ちを持っていると思う。新しいカードを手にできる最初の機会だし、実際にそれで戦うこともできる。もしあなたがそんな人なら、今回のコラムの一部はあなた向けじゃなく(もっとも、あなたのタイプはともかく、画面を下までやっていけばプレビューカードがお目見えする)、これまでプレリリースに参加したことの無い人を神河謀叛の手の内に飛び込ませようってためのものだ。
プレリリースに参加する理由は数多くある。これまでトーナメントに参加したことが無い人でも、だ。ちょっと怖気づくような気分になるかもしれないけど、プレリリーストーナメントは一番気楽だし、一番楽しいし、あなたが認定マジックの経験をスタートするにはもっとも控えめなイベントだ。“認定”トーナメントって言葉はちょっと不気味で堅苦しくて、カジュアルなマジックプレイヤーにとっては尻ごみするかもしれないけど、それが意味するところは、ウィザーズ社が決めた標準仕様にしたがってきちんと公平にトーナメントが進められるってことに過ぎない。
認定トーナメントに参加するために必要なことは、無料のDCIメンバーシップに登録してDCI番号を受け取ることだけだ。こうすれば、今後の対戦記録が保存されて、公式のレーティング——将棋の段級位みたいなものだ――が自動的に計算される。自分のDCI番号を使えば、自分のレーティングが世界と比べてどのぐらいかがすぐわかる。国内での順位を調べることも可能だ——もっと狭い地域でチェックできる場合もある。また、登録にはそれ以外の利点もある。僕はウィザーズ社の組織化プレイ部のマネージャーのマイケル・ギルズに、読者を代表してこの恩恵の話を聞いてきた。
![]() Michael Gills |
「DCIに登録してDCI認定イベントに参加することは、より大きく活発なゲームのコミュニティに参加する第一歩です。DCIイベントに出ることで、皆さんと同じゲームを楽しんでいる仲間と出会うことができますし、腕を競い合うこともできます。そして、DCIの認定イベントに参加することで即座に得られる利点(レーティング、順位、イベントの賞品、栄誉など)以外にも、ウィザーズ社は人気ゲーム(マジック、ダンジョンズ&ドラゴンズなど)に対し、プレイヤー報奨プログラムを提供しています。マジックのプレイヤー報奨プログラム(無料です!)のメンバーは、DCI番号が刻印された特別のメンバーカード、DCI認定トーナメントに参加した回数に応じて年に何回か送られるプレゼント(他では手に入らないプロモーションカードなど)、独自の戦略記事やイベントカレンダーなどが掲載されたMPRメールマガジン(英語)などを受け取ることができます。実質的に、我々はプレイに対して様々なお返しをしてるんですよ!」
プロモーションカードと言えば……プレリリースイベントに参加すると、プレリリースのプレイヤーにだけ配られる特別な記念品のフォイルのカードがもらえる。何のカードかって? それは教えられないんだ。何せ、僕も知らないんでね。それは新しいセットのレアのフォイル版だ。これまでのフォイルカードには、イラストが違いなどの独自の設定がされていて、さらに記念の日付が刷られている。 これはトレードでもいい評価になるし、マジックの歴史を記録する上でも素晴らしいものだ。僕のコレクションのファイルも、何ページかはここ数年のプレリリースカードで埋まっている。それらを見直して、これまでのプレリリーストーナメントを思い出すのも楽しいものだ。

ただ一言だけ言っておくと、そのカードはシールドデッキでは使えない。それはあなたがもらえるおまけだから、ファイルにしまって後で使い道を考えよう。あなたが参加費(一般的には3,000円ぐらい)を払うことで手に入れられるのは、神河物語のトーナメントパック1つと、神河謀叛のブースターパック3つだ。普通のシールド戦のトーナメントよりブースターが一つ多いけど、ブロックの2つ目と3つ目のセットでは、新作をより多く味わってもらうためにこうなっている。
カードを手に入れたら、それを色別に分けよう。大会でチェックリストを使う場合には、さらにコレクター番号順に分けるといい。その場合、手に入れたカードをすべて記入する必要がある。あるカードを1枚手に入れたなら、「Total」と書かれた欄に「1」と書き込む。2枚なら「2」と書き込むし、場合によっては「3」なんて書き込む可能性もあるだろうけど、とりあえずやらなくちゃいけないことはそれだけだ。全部のカードを記入したら、大抵はそのカードをそのまま使うことにはならない。
これは初心者にとっては面倒かもしれない。シールド戦のトーナメントにおいては、プレイヤーがパックの内容を登録して、それを主催者が一度集めて配りなおすというのが一般的だ。そうすることによりパックの中身が記録されることになり、トーナメントの正当性が保障される。例えば、あなたが当たった相手のカードの内容があまりにも不条理だったとしよう……こうすることで、他の人があらかじめデッキの内容を確認することができる。一言で言ってしまえば、あなたはまず誰か他の人のパックの中身を確認して、あなたは誰か知らない人が確認したパックでデッキを組むことになる。
パックの登録が終わって、自分用のパックが届いたら、それで40枚以上のデッキを組む。望むなら40枚を超えるカードでデッキを組んでもかまわないけど、あまりお勧めしないね。どうしても40枚を超えなくちゃいけないんなら、マナの比率を再計算して追加のカードを入れるのをお忘れなく。一般的には、クリーチャーと呪文をあわせて23枚、土地が17枚というのがお勧めだ。僕の場合、クリーチャーを17~18枚入れて、残りをいい感じの除去と戦闘トリックで埋めるのが好きだ。さらに、とにかく2色で収まるようにできるだけ努力することにしている。3色目を付け加える場合、それは除去を1~2枚だけにして、色マナも1個だけでいいものしか入れない。つまり、例えば青白デッキを組んだとして、黒をタッチするなら《霊魂の奪取/Rend Spirit》か《肉体の奪取/Rend Flesh》か《引き込み/Pull Under》ぐらいだろう。その手のデッキに《汚れ/Befoul》や《貪る強欲/Devouring Greed》はまず入れない。デッキに入る沼はせいぜい2枚か3枚だけだろうから、必要な黒マナが増える事態は回避したいんだ。
土曜学校の担当のジョン・カーターは、神河謀叛入りのシールドを組む際にこんなアドバイスをしてくれている。「神河謀叛では連繋に新たなパターンが登場します。カードを読む際に、それが秘儀なのかどうかを確認し、呪文の宣言やコストの支払いのタイミングに気を払ってください」
おそらくジョンの頭の中には、この手のカードが浮かんでるんだろうね。

このカードは、それ自身は除去ではないものの、今週末よく目にかけるであろう戦闘トリックカードのいい例だ——こいつは注意しなくちゃいけない。このカードの素晴らしさは、他の呪文のためにタップアウトしている状態でもこの呪文が使えることだ。戦闘中にいやらしい《苔の神/Moss Kami》を除去するためにタップアウトしながら《引き込み》を撃ちつつ、ブロックに参加している《古の法の神/Kami of Ancient Law》をタップしながら《百爪の一撃/Hundred Talon Strike》をそこに連繋し、相手の《浪人の犬師/Ronin Houndmaster》を撃ち落とすことが可能になる。
思うに、ジョンのアドバイスは、他にも連繋コストは様々なものがあって、神河物語だけのリミテッドでは起こりえなかった様々な可能性が開けることを意味してるんだろう。デッキを組む際は、じっくりとカードを読むことをお忘れなく。
「マジックの歴史において、攻撃クリーチャーを何かでブロックするよりは、えてして通した方が安全だった。相手の変異クリーチャーはデカブツかもしれない。通した方が無難だ。相手のマナが立ってるから、何かの戦闘トリックを食らうよりは2点通した方がいいだろう。相手は明らかに自爆っぽい突っ込み方をしている。何か持ってるのか? リスクを負うよりは……等々。私が忍術を気に入っている一番の理由は、プレイヤーがこの事実をもう一度考え直さなくちゃいけなくなったことにある。神河謀叛のテストの最中に一番嬉しかったのは、リスクを犯して攻撃クリーチャーをブロックするほうが正しいプレイングであることがほとんどだったことだ。私はいつでも、通ることで有利になる変異クリーチャーをもっと増やすべきだったと思ってたんだけど、忍者が十分いることで、これが現実的なものになったね(まあ、対戦相手が青か黒をプレイしてるときだけだけど)」
「神河謀叛のテスト中の別の話だけど、《戦に狂える浪人/Battle-Mad Ronin》が忍者と絡むとすごいことになるよ!」 ランディはにやりとしながら付け加えた。
さらに、ルールグルでありピンバッジのコレクターであるジョン・カーターはプレリリースにおいてもベテランで、新人のために役に立つ情報を教えてくれた。「プレリリースの多くは、フライトとかポッドと呼ばれる単位で行われます。最初から参加してもいいですけど、友達とのんびり行って一緒に遊ぶのもいいでしょう。ちょっとだけ寝坊して、飲み物と食べ物を持っていきましょう。こうすれば、お腹がすいたからトーナメント会場から帰るなんて事態にはならず、一日中楽しむことができます。あらかじめ何人かで取り決めをしておいて、一緒に参加するのも悪くありません。前日から泊り込みもいいでしょうし、どこかで落ち合ってもいいでしょう。」
マイク・ガプティル、グランプリ・コロンバス(2001年) マイク・ガプティルはプロフェッショナルイベント運営—略称PES(Professional Event Service)—のリーダーだ。PESはセットごとに多くのプレリリースイベントを執り行っているが、それは世界でも最高レベルのトーナメントだ。プレリリースでどんなイベントがあるか、彼以上にうまく説明できる人物なんていないだろう?
「プレリリースのいい点は、そこで参加できるイベントの幅が広いことだ。その結果、新しいカードを手に入れてゲームするだけじゃなく、トレードしたり食事たりする時間を確保することもできる。PESのプレリリースでは、4つの異なったタイプのイベントが行われる。メインの大規模イベント、32人単位のフライト、3人チーム戦、ブースター・ドラフトだ。
メインイベントはプレリリースの中でも最大のもので、賞品も最高だ。優勝者は神河謀叛2ボックス、2~8位は1ボックスもらえる。9~16位は0.5ボックスだ。このイベントは10時に始まるんで、一日の大半をそれに割けるんじゃなければ、このイベントはお勧めしない。
「プレリリースにあまり長い間いられないなら、32人フライトに参加するのが一番だろう。このイベントは繰り返し開催されるし、メインイベントほど長くもないから、1日に複数回出ることも可能だ。賞品もなかなかだ。優勝は神河謀叛1ボックスで、ベスト8なら悪く無い賞品が出る。2位で18パック、3~4位で9パック、5~8位で6パックが賞品で提供される。我々のプレリリースだと、32人フライトは8時前には始まるね。最初のフライトが始まるのは大抵7:15分あたりさ!」
「3人チーム戦に関してはスコット・ララビーが仕切ってるから、こっちの話はこれ以上は説明しないけど、これは週末で一番楽しいイベントだし、家族にとっては最良の選択肢だ。」
「ブースター・ドラフトはイベントの後半に始まるけど、ちょっと待てばすぐに開催される。このイベントは楽しいし短いし、新しいカードを手に入れるチャンスもある。ただし、プレリリースカードは配られないから注意。我々のプレリリースでは、ブースター・ドラフトの上位2名に、優勝者9パック、準優勝者3パックをプレゼントしているね。」
スコット・ララビー、グランプリ・サンディエゴ(1999) まったくその通り。一日に渡って実にたくさんのイベントが開催されているんだ。シールド戦のフライトもいくつか立つし、ブースター・ドラフトやチーム戦まである。ウィザーズ社のDCIプログラム・マネージャースコット・ララビーは3人チーム戦を大プッシュしている。
「チームシールド戦は特に面白いよ。プレリリースでの楽しみ(新しいセット、おまけのプレミアカード等)は全部そこに揃ってる。それに、プレイヤーは友人や家族と一緒にプレイできるから、プレリリースの楽しみを分かち合えるのさ。限定されたカードプールでデッキを組むことは、プレイヤーにとって新しい発見だろうね。」
それに、PTQの常連もこれを読んでいると思うけど……このチーム戦は認定戦なんで、プロツアー・アトランタのチーム戦に招待されるのにほんのちょっとだけポイントが足りない――予選通過は1750点が必要だ――場合、今週末は世の中がエクステンデッドに変わってしまう前の最後のチャンスだろう。プレリリースでがんばればこのレーティング招待のラインを突破できるチームは、まあ100チームを下らないだろう。
あなたがPTQの超ベテランでも、あるいは認定トーナメントに初めて足をかけようという初心者でも、あなたにふさわしいイベントがきっとあるはずだ。初めてトーナメントに参加するのなら、地元のトーナメントでどんな特別なイベントがあるかをあらかじめ調べておくことをお勧めする。主催者がアーティストをゲストに呼んだり、イベントでカードを買ってくれるバイヤーが出たりすることもある。地元のイベントはこちらを参照。
今週初めてこのイベントに参加するなら、スタッフに一言声をかけて、今回が初めてのトーナメントであることを告げるといい。疑問に思っていることは何でも答えてくれるだろうし、初のイベントもかなりスムーズに進むことだろう。主催者にとっても、あなたが今後のイベントに出てくれるようなら、あなたと出会えたことを感謝してくれるだろうからね!
それと、周りの参加者にもぜひ話しかけてみよう。マジックのトーナメントにおける最も素晴らしいことのひとつが、友達ができることだ。トーナメントに初参加したとき、自分が飢えた鮫の中の新鮮なお肉のような感じになって怖がってしまうプレイヤーがいる。でも、プレリリースの雰囲気はもっと気さくで好意的だ。色々とイベントやデッキやプレイングについて教えてくれるベテランの人もいるだろうし、トレードの機会もあるだろう。
あなたの参加するのがニューヨークシティのイベントなら、土曜日は僕が参加してるから、見つけたら声をかけて欲しいね。それじゃ、会場でお会いしよう!