なぜリークは困るのか

更新日 Feature on 2015年 12月 21日

By Trick Jarrett

Patrick "Trick" Jarrett oversees web content and social media for Magic, and acts as the publisher of DailyMTG.com and Magic content on the web. He's an ardent Commander player and lover of the game he's played since Ice Age.

 皆さまこんにちは。

 ここ数週間は多くのことが起きました。『ゲートウォッチの誓い』において、通常ではありえない情報のリークが起こったのです。そこで私は、この機会に皆さまと少しお話をしたいと思います。

 ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社員とともに新セットをどのように皆さまにお披露目していくか、その計画を練ることが、私の仕事の中でもとても大事なものです。マジック・コミュニティの皆さまに新セットの魅力をお伝えできるよう様々なコンテンツを配置していくのは、非常に複雑な難しい仕事です。そのため、社外の方がちょっとした楽しみのために私たちの想定していない形で情報をリークしてしまうと、とても多くの人が計画を見直さなくてはいけなくなるのです。

「マジックのこれからを知る」ことをめぐっては、プレイヤーの皆さまと、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストとの間に葛藤は避けられません。マジックの大前提は「変化を続けること」であり、この前提があるからこそ、私たちの思い描く流れとプレイヤーの皆さまの「次にどんなものが来るのか知りたい」という欲求は、常にせめぎ合っているのです。

 私もかつてマジックのファン・サイトを運営し、ときどき何かの情報をリークしていた者として、そういった情報の魅力はよくわかります。リークは新しい話題を提供し、それを公開すればアクセス数の増加に繋がりますから。ただしひとつだけ、誤解しないでください――情報のリークはジャーナリズムではありません。あくまで自分の欲求を満たすための利己的な行動なのです。

 リークがジャーナリズムではないという理由は、マジックの情報は隠蔽されているわけではないからです。例えばこんな情報が明かされても、そこに秘密はありません――ラヴニカにおけるゴブリンの労働環境やゼンディカー次元の水質、ミラディンの気候変動(これにはもしかしたら秘密が隠されているかもしれませんね)。リークの情報はすべて、いずれ皆さまに公開されるものです。決して悪意をもって伏せているわけではないその情報を公開するというのは、知的財産を泥棒するようなものなのです。そう、泥棒なのです。私たちが皆さまにお披露目し「どうぞご覧ください」とするはずだったものを先に公開するのは、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社やマジック・コミュニティからそれを盗むということなのです。

 もし友人の家のバスルームで陽性反応の出ている妊娠検査薬を見つけたとして、あなたはFacebookで友人の妊娠を発表するでしょうか? そんなことをしたら酷い人だと思われますよね! それはあなたが発表するべきニュースではなく、発表のタイミングは友人本人やそのご家族が決めることなのです。

 コジレックについての情報が早い段階でリークされなかった場合、私たちはどのようにコジレックを公開し、それを中心に盛り上げたのでしょうか? その計画をお話ししましょう。まずはウラモグの血族と「ゲートウォッチ」の戦いの物語を数週間にわたってお送りし、それから12月9日の「Uncharted Realms」にて、コジレックがちょっとした悪さを働く様子を描いて公式に登場させる予定でした。その日からマジック・コミュニティはコジレックについての話で盛り上がり、物語を手がかりにどんなカードになるのか、想像が飛び交う日々が続きます。そして次の週末のワールド・マジック・カップにて、カードとなったコジレックの全貌と新たな「無色マナ・シンボル」を披露。さらに《大いなる歪み、コジレック》と無色マナ・シンボルのご説明をした後に、(実際に私たちがそうしたように)新たな無色マナ・シンボルを備えた「Zendikar Expedition」版の《古えの墳墓》を皆さまにお披露目する予定だったのです。

 結局のところ、私たちはこの計画の通りに事を進めました。しかし不幸にも、マジック・コミュニティの大半の人がすでに《大いなる歪み、コジレック》を知っていました。コジレックが海門前の大海から姿を現す? ああそう。ワールド・マジック・カップの生放送中に《大いなる歪み、コジレック》を公開? ふーん。無色マナ・シンボルの解説? 紛らわしいな――前後関係を失い、順番が乱れた結果、計画全体が損なわれてしまいました。マジック・ファンの皆さまは、私たちがご提供するはずだった最高の体験をかすめ取られたのです。

 数年前にマーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterが記事で書いた(参考:リンク先は英語)ように、新セットのプレビューとは映画のトレーラー映像と同じものです。このセットでは一体どんなキャラクターが登場し、何が起こるのか、といった様々なことを皆さまにご紹介する手段として、最高のものなのです。

http://media.wizards.com/2015/images/daily/cardart_M14_Feldon-of-the-Third-Path.jpg

第三の道のフェルドン》 アート:Chase Stone

 上映前の映画に当てはめてみましょう。皆さまは次のどちらを目にした方が、その映画を観たくなりますか? アーティストとディレクターとマーケティングが総力を尽くし、皆さまに最も効果的な宣伝ができるよう練り上げられたトレーラー映像? それとも、物語中の重要なシーンをいくつか抜き出した草稿を読んでから観たいですか? 確かに、草稿を読みたくなる気持ちもあるかもしれません。ですがその時点で得られるものは洗練されたものではなく、完成したものでもなく、そしてその映画への期待を大いに高めるようなものでもないのです。これと同様に、マジックの情報がリークされてしまうと情報公開の順番が乱れ、私たちが皆さまのために苦労して作り上げた最高の体験がマジック・コミュニティ全体に伝わらなくなってしまうのです。

 私たちのポリシーは引き続き、基本的に情報のリークに対しては声明を出さないという形を維持していきます。13年前、当時のマジック・マーケティング・ディレクターを務めていたカイル・マレー/Kyle Murrayが、そのとき起こった問題から得た教訓として記事(リンク先は英語)を書きました。リークされた情報が正しいと認めても誤っていると否定しても、おそらく根本的な解決にはなりません。それどころか、その後のあらゆるうわさ話に回答しなければならなくなる、という大きな問題が発生します。後になってコメントを差し控える旨を決定したところで、問題はさらに大きくなるのです。

 情報のリークについて私たちが声明を発表したのは、私がウィザーズに入社して以来数えるほどしかありません。それも、私たちから行動を起こさざるを得なくなった場合だけです。

 どうか誤解しないでください。私たちはきちんと、情報のリークを重大なものであると捉えています。社内の調査チームに加えて外部機関とも連携して調査を行い、リークがどこでどのように起きたのかを毎回把握しています。私たちは、リークに携わった方のDCI番号を無効にし、プレインズウォーカー・ポイントのアカウントを停止するといった安易な対応は取りません。ただし、私たちの知的財産やマジック・コミュニティを守るために必要なら、刑事民事問わず訴訟に踏み切ります。

 その理由とは?

  • ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社では、マジック・コミュニティ、すなわち皆さまのために奥深いゲーム体験を生み出すことを目指し、文字通り何百人というメンバーが世界中で骨身を惜しまず働いています。これが私たちの熱意です。情報のリークが起きてしまうと、その熱意の結晶が損なわれ、マジック・コミュニティが体験するものを奪ってしまいます。
  • 情報のリークは、公平でないアドバンテージを生み出します――その情報は正式なルートをたどらず世に出てしまい、マジックとの関わりが深くないプレイヤーまで広く行き渡ることはありません。したがって、プレイヤー間で情報のアドバンテージ差が生まれるのです。
  • 情報のリークは、第一印象の悪化を招きます。すべてがそうではありませんが、カードそのものと前後関係が合わせて公開されたときに100%の魅力が引き出されるようデザインされたカードにとって、その情報が漏れることは致命的なことです(マジック全体にとっても健全とは言えません)。これは、ゲームを滅ぼすほどのパワー・インフレに繋がりかねないのです。

 私たちのデザインしているゲームが情報のリークに強いものでないなら、他に選ぶべき道はリーク自体を減らすために全力を尽くすしかありません。私たちはそれに取り組んでいます。私たちの財産がこっそり社外へ持ち出されないように、厳しいセキュリティ体制を敷いています。そのため、オンライン上で未公開の情報が流れていたら、皆さんの目にしているそれは盗まれたものであり、私たちにはリークに関わった人物を追跡し然るべき処置を取る義務があります。

 今回、『ゲートウォッチの誓い』についての情報のリークが起きたことで、私たちの取り組みがどれだけうまく機能していたのかがあっさり忘れ去られてしまうことになりました。まるで私たちが注意散漫で本を読みながら「ははっ、まだ誤植が見つかんないよ」と取り組んでいたかのように。あるいはバスに乗っていて「これなら時間に間に合うぞ!」という意識を持っていないかのように。代わり映えのない取り組みは、現状を維持するのみに留まります。それでは注目を集められないのです。

 この記事が、今後すべてのリークを防いでくれるでしょうか? それがあり得ないことは承知していますが、私は心からそうなることを願っています。ここで語った私の言葉は、コミュニティに一石を投じるものになるでしょうか? 確かなことは言えませんが、そうなるかもしれませんね。

 では、次の情報はどんなものになるでしょう?

 どうか楽しみにして、お待ちください。

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